点滴誤投与と不適切な蘇生処置による患者死亡を公表/京大病院

提供元:ケアネット

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公開日:2019/11/22

 

 京都大学医学部附属病院は19日、腎機能障害のある入院男性(年齢非公表)に対し、造影CT検査の前処置として点滴投与を行う際、本来投与すべき薬剤の高濃度の同一成分製剤を誤って投与したうえ、男性が心停止を来した際に行った蘇生処置にもミスが重なったことにより、6日後に死亡させたと発表した。病院側は、医薬品取り違え対策としてシステム改修を実施するなどの再発防止策を講じたという。宮本 享病院長らが19日に記者会見を開き、「薬剤の誤った処方による死亡という、期待を裏切るような結果になり、誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げる」と謝罪した。

 京大病院によると、男性患者は造影剤による急性腎不全リスクがあり、入院患者の場合は腎保護用の生理食塩水を検査の6時間前に点滴投与する必要があったが、本件ではオーダーから検査までに十分な時間がなかったため、外来患者が造影CT検査を受ける際に使用する炭酸水素ナトリウムが投与されることとなった。その際、炭酸水素Na静注1.26%バッグ「フソー」を選択すべきところ、本来投与すべき薬剤の6.7倍濃度の同一成分製剤(商品名:メイロン静注8.4%)が処方された。

 点滴開始直後から、男性患者は血管痛や顔面のほてり、頸部の痺れ、頸部や手足がつるなどの異変や、医師を呼んでほしい旨をたびたび訴えたにもかかわらず、点滴は続行された。

 男性患者は、検査前後で計4時間にわたって高濃度の点滴が誤投与され、その後、病棟内で心停止の状態で発見された。すぐに蘇生処置が開始されたが、心臓マッサージを行った際、肺損傷が原因とみられる多量の出血が認められた。この段階で、処置に当たった医療チームのメンバーは、男性患者が抗凝固薬を服用していることを把握しておらず、中和薬投与のタイミングが遅れたという。男性患者は出血傾向が止まらず、6日後に死亡した。

 本件を受けて京大病院は、外部委員を含む調査委員会で一連の経緯について検証を進めるとともに、医薬品のオーダリングシステムを改修し、電子カルテ内の薬剤名を変更したり、多量の処方時には警告が表示されたりするなどの再発防止策を講じた。

 宮本病院長は本件について、「治療でよくなることを望んでおられた患者さんご本人とご家族には、薬剤の誤った処方による死亡という期待を裏切るような結果になり、誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。関係者のみならず病院職員の一人ひとりが自分たちのこととして受け止め、再発防止に努めてまいります」とのコメントを発表した。

(ケアネット 鄭 優子)