CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

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ケアネット

CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタートのイメージ

 CAR-T療法が、白血病や悪性リンパ腫に対する治療として実臨床で使用される日が近づいてきた。2019年3月、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法として国内で初めて、チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)が製造販売承認を取得した。これを受けて4月18日、都内でメディアセミナー(主催:ノバルティス ファーマ)が開催された。

 セミナーでは、豊嶋 崇徳氏(北海道大学大学院医学研究院血液内科 教授)、平松 英文氏(京都大学医学部附属病院小児科 講師)が登壇。CAR-T療法(キムリア)の適応症である再発・難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)について、それぞれ実臨床での展望を示した。

CAR-T細胞の製造と、実際のCAR-T療法の流れとは
 CAR-T療法の実施には、まずはじめに患者の末梢血から白血球が採取される。これは成分献血装置を用いた白血球アフェレーシスによって1~2時間かけて、T細胞を含む白血球成分が採取される。凍結保存処理後、米国の製造施設に輸送される。

 製造過程では、T細胞の遺伝子改変→細胞増殖→品質チェックというプロセスを経て、病院に製造されたCAR-T細胞(キムリア)が届けられる(最短で5~6週間程度)。患者には、体内のリンパ球を減らしてCAR-T細胞を増殖しやすくするために、リンパ球除去化学療法と呼ばれる前治療が施され(3~4日間)、その後、キムリアが点滴により輸注される(単回投与)。輸注後は通常1~2ヵ月の入院を経て、その後は外来で経過観察が行われる。

CAR-T療法(キムリア)のDLBCLへの有効性を確認、ただし慎重な適応判断が必要
 DLBCLは悪性リンパ腫の中で最も頻度が高く、約30~40%を占める。本邦における総患者数は約2万1,000人。あらゆる年齢で発症するが、とくに高齢になるにつれ増加する。ただし、小児では他のがんの発症が少ないため高い割合を示す。

 標準治療としてR-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)療法が確立されている。しかし、約50%の患者では無効か、再発する。これらの患者の次なる治療法は自家造血幹細胞移植だが、適応があるのはその半数以下で、さらに奏効した患者でも再発がありうる。

 こうした再発・難治性DLBCL患者に対するこれまでの救援化学療法の生存期間中央値は、6.3ヵ月1)。対するCAR-T療法であるキムリアの生存期間中央値は、日本人を含む第II相JULIET試験の結果12ヵ月で、奏効率は52%(うち完全奏効:40%)であった2)

 豊嶋氏はこの結果について、「12ヵ月時点の生存率という観点でみると、25%→50%に改善したという結果。すべての患者さんにとって“夢の治療法”とはいえないだろう。奏効する場合は1回の治療で効果が得られ、QOLも高い可能性がある。しかし、状態や進行速度によって、そもそもこの治療に進める患者さんは限られる。さらに製造の待ち時間、製造不良のリスクもある」として、患者やその家族に過度の期待を持たせることに対しては強い懸念を示した。

 臨床試験で多く発現したCAR-T療法(キムリア)の有害事象は、サイトカイン放出症候群(58%で発現、中等症以上は22%)、脳症(21%で発現、中等症以上は12%)など。低ガンマグロブリン血症に伴う免疫グロブリン補充療法は30%で実施された。有害事象による死亡事例はなかったが、「身体に対する治療負担の重さという観点でいえば、自家ではなく、同種造血幹細胞移植と近い。実臨床ではかなり慎重な有害事象のコントロールが必要になるだろう」と述べた。

CAR-T療法(キムリア)はB-ALLでも奏効例では高い効果、しかし輸注に至らない例も
 本邦におけるALLの総患者数は約5,000人。診断時の年齢中央値は15歳で、好発年齢は2~3歳。そして小児ALLの8割以上がB細胞性(B-ALL)と報告されている。1次治療は寛解導入療法・地固め療法・維持療法からなる多剤併用療法である。80~90%が2~3年にわたるこの強力な1次治療によって完全寛解に到達するが、小児患者の約20%で再発する。再発・難治患者の生存可能性は、小児で16~30%に留まる。

 平松氏は、承認の根拠となった第II相ELIANA試験3)の日本人成績について詳細を紹介した。日本人患者は、8例(5~24歳、前治療歴3~7回)が登録された。うち、製品不適格(製造されたが、うまく増殖しなかった)1例、製造を待機するうちに原病が悪化した1例を除く6例に、実際にCAR-T療法のキムリアが投与された。

 結果は、3例で完全寛解、1例で血球数回復が不十分な完全寛解が得られた。他2例では効果なしであった。同氏は、「寛解が得られた4例ではすべて微小残存病変も陰性。これは非常に高い効果」と話した。

 一方で、6例中5例が重症サイトカイン放出症候群を発症。集中治療室での濃厚な治療が必要となった。「全例が治療に反応しコントロールできたが、院内連携を強化し、新たな有害事象の発現を関連部門の医師が迅速に共有する必要がある」とした。

CAR-T療法(キムリア)はまず国内2~3施設で開始、ピーク時で年間250人の患者を想定
 最後に登壇したノバルティスファーマ オンコロジージャパン プレジデントのブライアン グラッツデン氏は、発売後の見通しについて説明。CAR-T療法のキムリアによる治療を行う医療機関は、細胞採取の品質確保や副作用管理について同社がトレーニングを実施し、認定した施設に限定するとした。発売初期、国内では2~3施設を予定しており、ピーク時の患者数はCAR-T細胞の製造におけるキャパシティもあり年間250人を想定しているという。また、薬価はまだ決定されていないが、米国で導入された「成功報酬型」の支払い方式は日本では採用されない見通しであることも示された。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

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