クロザピンと他の抗精神病薬による好中球減少症発症比較~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2019/04/29

 

 クロザピンは、他の抗精神病薬と比較し、好中球減少症との関連性が高いとの懸念から、ほとんどの国において、白血球数の定期的なモニタリングを行わなければ使用できない。しかしこれまで、対照研究のメタ解析により決定的に実証されてはいなかった。オーストラリア・クイーンズランド大学のNicholas Myles氏らは、他の抗精神病薬と比較したクロザピンの好中球減少症との関連性を評価するため、対照研究のメタ解析を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年3月13日号の報告。

 Medline(1948~2018年)、PsycINFO(1967~2018年)、Embase(1947~2018年)より検索を行った。エフェクトサイズの評価には、Mantel-Haenszelリスク比を使用したランダム効果メタ解析を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・クロザピンおよび他の抗精神病薬に関連した好中球減少症発症率についての研究は、20件抽出された。
・クロザピン群におけるリスク比は、他の抗精神病薬と比較し、有意な増加は認められなかった(Mantel-Haenszelリスク比:1.45、95%CI:0.87~2.42)。
・このことは、好中球絶対数(ANC)500/µL未満の重度の好中球減少症においても、同様であった(Mantel-Haenszelリスク比:1.65、95%CI:0.58~4.71)。
・クロザピンに関連した好中球減少症の相対リスクは、各抗精神病薬とも有意な関連は認められなかった。

 著者らは「対照研究のデータからは、クロザピンが他の抗精神病薬よりも、好中球減少症との関連性が強いとの結論に至らなかった。このことは、すべての抗精神病薬の使用に際し、血液学的モニタリングを実施すべきことを意味しているか、クロザピンに限定されたモニタリングが正当化されないことを意味している」としている。

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(鷹野 敦夫)