強迫症状に注意が必要な第二世代抗精神病薬は

これまで、第二世代抗精神病薬(SGA)誘発の強迫症状(obsessive-compulsive symptoms:OCS)に関するレビューの大半は、記述的な症例報告に焦点が当てられ、実験的な所見への注目が限定的であった。カナダ・Center for Addiction and Mental Health(CAMH)のTrehani M. Fonseka氏らは、統合失調症患者の強迫症状の新規発症および増悪に関係している第二世代抗精神病薬について、実験に基づく文献のレビューを行った。その結果、とくにクロザピンまたはオランザピンを用いた治療中は強迫症状についてルーチンのモニタリングが必要である所見が得られたことを報告した。Current Psychiatry Reports誌2014年11月号の掲載報告。
第二世代抗精神病薬の中でクロザピンは強迫性障害をもたらす症例も
症例報告研究において、第二世代抗精神病薬の中でクロザピン、オランザピン、リスペリドンは、強迫症状との関連が最も顕著な薬剤であることが示されている。OCSの共存は、治療効果、治療コンプライアンス、臨床予後を損ない回復を妨げる可能性がある。研究グループは、統合失調症患者における第二世代抗精神病薬の強迫症状への影響をレビューし、異なる治療(期間、用量、血清レベル)および薬理遺伝学的因子の役割を調べた。第二世代抗精神病薬の強迫症状への影響をレビューした主な結果は以下のとおり。
・レビューの結果、クロザピンが、統合失調症における強迫症状の最大リスクであることが示唆された。
・クロザピン治療を受けていた患者のうち20~28%が新規強迫症状を発症し、10~18%が強迫症状の増悪を来していた。
・また、クロザピンは、症例によっては強迫性障害(obsessive-compulsive disorder:OCD)をもたらしていた。
・オランザピンは、強迫症状について2番目に高リスクな第二世代抗精神病薬であった。オランザピン治療を受けていた統合失調症患者のうち11~20%が強迫症状を来していた。
・そのほかの第二世代抗精神病薬の強迫症状への影響を特徴付ける、実験的エビデンスは乏しかった。
・薬物誘発OCSについて、より長期の治療期間や遺伝的因子の関与を支持する実験結果があったが、それらの関連を解明するにはより多くの試験が必要と思われた。
・上記を踏まえて著者は、「統合失調症患者では、とくにクロザピンまたはオランザピンを用いたSGA治療期間中は、OCSに対する継続的なモニタリングをすべきである」とまとめている。
(ケアネット)
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