日本語でわかる最新の海外医学論文|page:886

思春期の精神障害、多くは20代前半で消失/Lancet

 若年精神障害者の多くは、思春期に症状の発現がみられるが、発現が短期間であったり、とくに10代に限られている場合は、概して20代後半には症状の寛解がみられることが示された。オーストラリア・メルボルン大学のGeorge C Patton氏らが、ランダム抽出した中学生1,943例を14年間前向きに追跡したコホート試験の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2014年1月15日号掲載の報告より。

根絶戦略の成果は?日本のH.pylori除菌率10年推移

 ファーストラインとして施行されたアモキシシリンとクラリスロマイシンの併用療法によるヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の年間累積除菌率は65.3%で、徐々にではあるが、10年にわたり除菌率は有意に低下したことが、順天堂大学の佐々木 仁氏らによる研究で明らかになった。また、セカンドラインとして施行されたアモキシシリンとメトロニダゾールの併用療法の年間累積H.pylori除菌率は84.0%で、年ごとの除菌率に変化は認めなかった。著者は、「ファーストラインの除菌率は徐々に低下したものの、“日本の根絶戦略”は十分H.pylori除菌に貢献した」と結論づけた。Digestion誌オンライン版2013年12月12日号の報告。

手首骨折直後の激しい痛みは複合性局所疼痛症候群発症のレッドフラッグか?

 複合性局所疼痛症候群(CRPS)は手首骨折後にみられることがあるが、その発生頻度等は報告によって大きく異なっている。南オーストラリア大学のG. Lorimer Moseley氏らは大規模な前向きコホート研究を行い、手首を骨折し非手術療法で管理された患者の26例に1例がCRPSを発症し、骨折後早期の疼痛が強いとCRPSの発症リスクが増大することを明らかにした。

日本人多発性硬化症患者における認知機能障害の関連要因は:北海道医療センター

 多発性硬化症(MS)患者では認知機能障害がQOLに影響を及ぼしていること、また認知機能は抑うつや疲労感などと相関している可能性が示唆されていた。国立病院機構北海道医療センター臨床部長の新野 正明氏らは、日本人MS患者の認知機能障害について調べ、認知機能と無気力、疲労感、抑うつとの関連について評価を行った。その結果、同患者ではとくに情報処理速度の障害がみられ、認知機能障害が無気力や抑うつと関連していることなどを明らかにした。BMC Neurology誌2014年1月6日号の掲載報告。

2型糖尿病では診断時に肥満な人ほど死亡率が低いのは本当か?/NEJM

 2型糖尿病診断時のBMIと全死因死亡リスクにはJ字型の関係がみられ、標準体重の患者が最もリスクが低いことが、米国ハーバード公衆衛生大学院のDeirdre K Tobias氏らの検討で確認された。2型糖尿病患者における体重と死亡の関連は未解決の問題である。標準体重に比べ過体重や肥満の患者のほうが死亡率が低いことを示唆する報告があり、肥満パラドックス(obesity paradox)と呼ばれている。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告。

慢性C型肝炎のIFNフリー療法/NEJM

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型、2型または3型の患者について、ダクラタスビル(承認申請中)+ソホスブビル(国内未承認)の1日1回経口併用療法が、高率のSVR(持続性ウイルス学的著効)を達成したことが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のMark S. Sulkowski氏らが行った、211例の患者(前治療無効例を含む)を対象としたオープンラベル試験の結果で、治療終了後12週時点のSVRは各遺伝子型患者群で89~98%であったという。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告より。

夜間血圧は慢性腎臓病の発症に関連~大迫研究

 自由行動下血圧は標的臓器障害との関連が報告されているが、慢性腎臓病(CKD)発症の予測に意味を持つかどうかは確認されていない。仙台社会保険病院の菅野 厚博氏らは、大迫研究(Ohasama Study)において、一般の日本人843人のベースライン時の自由行動下血圧とCKDの発症率との関連を検討した。その結果、夜間血圧がCKD発症の予測因子として日中の血圧より優れており、CKDへの進行リスクの評価には自由行動下血圧測定が有用と考えられることを報告した。Journal of hypertension誌2013年12月号に掲載。

シリコンによる補強が椎体圧迫骨折の二次骨折リスクを軽減

 骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対し、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)というアクリル樹脂を用いた椎骨補強による治療が広く行われているが、合併症として処置部に隣接する椎骨の二次骨折が知られている。この二次骨折は、椎骨と比較してPMMAの剛性が高いことによると考えられることから、骨に近い生体力学的特性を有しているシリコンがPMMAの代替として期待されている。

小児の自殺企図リスク、SSRI/SNRI間で差はあるか

 抗うつ薬を服用する小児の自殺企図リスク増大について、SSRI、SNRIの服用者間で差異があるとのエビデンスはないことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のWilliam O. Cooper氏らが、自殺企図の医療記録のあった3万6,842例の小児コホートを後ろ向きに検討した結果、報告した。最近のデータで、SSRIやSNRIの治療を受ける小児および青少年患者で自殺行動のリスクが増大していることが示されていた。そのため、保護者、家族、医療提供者に著しい懸念が生じており、各抗うつ薬のリスクに対する関心が高まっていた。Pediatrics誌オンライン版2014年1月6日号の掲載報告。

高血糖でも血管合併症リスクが低い遺伝的素因が明らかに/JAMA

 高血糖であっても、グルコキナーゼ(GCK)遺伝子変異のある人は、微小血管性または大血管性合併症の罹患率は低いことが示された。英国・エクセター大学のAnna M. Steele氏らが横断研究を行い、明らかにした。糖尿病の血糖目標値は、合併症リスクを最小限とするために開発されたものだが、GCK遺伝子変異のある人は、出生時から軽度の空腹時高血糖を呈し、その値は1型および2型糖尿病での治療推奨値とほぼ同値であることが知られていた。JAMA誌2014年1月15日号掲載の報告より。

大腸がん術後の定期検査、全死亡率を減少させず/JAMA

 原発性大腸がんで根治目的の手術後、定期的にがん胎児性抗原(CEA)検査やCT検査を実施しても、症状がある時のみ診察するという最少のフォローアップに比べ、死亡率は減少しないようだ。一方で、再発した大腸がんに対する根治目的手術の実施率は、定期的にCEA検査やCT検査を行った群で有意に高率だった。英国・サウサンプトン大学のJohn N. Primrose氏らが行った無作為化前向き比較試験の結果、明らかにした。JAMA誌2014年1月15日号掲載の報告より。

不眠症への行動療法、夜間頻尿を軽減できるか

 不眠症に対する行動療法は夜間頻尿の軽減につながる可能性が示唆された。米国・ピッツバーグ大学のShachi Tyagi氏らが、不眠症と夜間頻尿を併発している60歳以上の地域住民を対象に、行動療法を行った場合と情報提供のみを行った場合を比較検討した結果、報告した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2014年1月2日号の掲載報告。

高齢の乾癬患者、非アルコール性脂肪性肝疾患併発が1.7倍

 高齢の乾癬患者は、非乾癬患者と比べて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有する割合が1.7倍高いことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのElla A.M. van der Voort氏らによる住民ベースのコホート研究の結果、明らかにされた。最近のケースコントロール試験で、乾癬患者でNAFLDの有病率が上昇していることが観察されていた。

進行期パーキンソン病に対する新たな遺伝子治療/Lancet

 進行期パーキンソン病に対し、新たな遺伝子治療「ProSavin」の有効性と安全性、忍容性を検討した第1/2相試験の結果が発表された。フランス・パリ第12大学のStephane Palfi氏らが同患者15例を、低・中・高用量投与の3群で12ヵ月間検討した結果、いずれの投与群でも安全性と忍容性が認められ、また全患者について運動症状の改善がみられたことを報告した。パーキンソン病では経口ドパミン補充療法が行われているが、治療が長期にわたると、運動合併症や衝動制御障害が起きることから根治につながる治療が求められている。Lancet誌オンライン版2014年1月9日号掲載の報告より。

破裂性腹部大動脈瘤に対する開腹手術 vs. 血管内修復術/BMJ

 破裂性腹部大動脈瘤に対する治療戦略について、血管内治療と外科治療では30日死亡率低下およびコストに差がないことが、無作為化試験の結果、示された。同治療戦略について検討する英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJanet T Powell氏らのIMPROVE試験研究グループが、30施設・613例について検討した結果、報告した。これまで選択的患者を対象とした英国内単施設の検討では、血管内治療が外科治療よりも30日死亡率が約30%低いことが示されていたが、他の施設や他国の多施設で行われた試験では、いずれも小規模試験だが両者間の違いは示されなかった。BMJ誌オンライン版2014年1月13日号掲載の報告より。

双極性障害の診断、DSM-IV-TRでは不十分

 双極性障害を正確に診断することは容易ではない。とくに、かかりつけ医においてはうつ病との鑑別が困難な場合も少なくない。スイス・チューリッヒ大学精神科病院のJules Angst氏らは、ICD-10基準で双極性障害(BD)と診断が付いている患者が、プライマリ・ケアの場面でDSM-IV-TRによってBDと診断されるかを検証した。その結果、診断された患者はわずかで、DSM-IV-TRのBD診断基準は限定的であることが示された。過去20年の間に、DSM-IVおよびDSM-IV-TRにおける軽躁病の診断概念が、非常に限定的であるとのエビデンスが蓄積されていた。Journal of Affective Disorders誌2014年1月号の掲載報告。

よいメタ解析、悪いメタ解析?(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(171)より-

 心房細動の脳卒中予防の適応取得を目指した、いわゆる新規経口抗凝固薬の開発試験の結果が出揃った。最後に残っていたのはTIMI groupの主導するENGAGE-TIMI 48試験であった。試験対象となったエドキサバンは、日本の第一三共の薬剤であったが、試験は実績のあるTIMI groupに持って行かれてしまった。ENGAGE TIMI 48試験は2013年11月のAHAにおいて発表された。それまでTIMI group以外のものは試験結果にアクセスすることはできない。最後に残った心房細動の脳卒中予防試験の結果を抱えているTIMI groupは、新規経口抗凝固薬の臨床試験の情報について昨年の11月まで圧倒的に有利な状況にあった。