週1回の投与で血友病患者のQOL向上へ イロクテイトがもたらす定期補充療法

提供元:ケアネット

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公開日:2015/03/17

 

 3月10日、都内においてバイオジェン・アイデック・ジャパン株式会社による血友病のプレスセミナーが、花房 秀次氏(荻窪病院 理事長/血液科 部長)を講師に迎え、開催された。これは同社の血友病A治療薬エフラロクトコグアルファ(商品名:イロクテイト)の発売に関連し行われたものである。

血友病の診療の今
 はじめに花房氏は、疾患概要について次のように説明を行った。
 血友病とは、止血に関与する数種類の凝固因子の1つが不足または欠乏している遺伝性の疾患(家族歴がなく突然変異で出現する場合もある)であり、血液凝固第VIII因子が不足・欠乏しているものを「血友病A」、血液凝固第IX因子が不足・欠乏しているものを「血友病B」と呼んでいる。
 患者は、全世界で約14万人。わが国では総患者数5,769人(うち血友病Aの患者は4,761人)、圧倒的に男性に多いのが特徴で、潜在的な患者も2,000人前後存在すると推定される。
 症状としては、出血時に血が止まりにくくなることはもちろん、重症化すると肘、膝などで関節内出血を繰り返し、これに伴う痛みや出血により日常行動に支障を来し、歩行困難を起こすなどQOLを著しく下げる。現在、根治治療法はなく、注射による凝固因子の出血時、予備的または定期補充療法が行われている。
 患者のライフサイクルでは、出産時、幼児期・青年期、高齢期でそれぞれリスクがあるが、ただ予後は良好で、定期補充療法を受けている患者は、健常人の平均寿命まで生存できるとされている。

患者QOLを改善する次のステージへ
 日常的に定期補充療法は、現在ガイドラインでも推奨されており、成人で週3回ほど行われ、出血頻度の減少、関節障害の予防に役立っている。しかし、年間150回超の静脈注射のアドヒアランスや注射時間の問題など、患者にとってはまだまだ煩わしいという声が聞かれ、長時間作用製剤への期待が高まっていた。
 今回発売されたエフラロクトコグアルファは、こうした期待に応えたもので、血友病Aに対し、生体内のヒト免疫グロブリンG1の自然な再循環経路を利用した機序により、血漿中に長く留まることができる性質を有する(血漿中消失半減期は約19時間)。定期的な投与により、週3~5日間隔、また患者状態によっては週1回の投与により出血を抑制する、長時間作用の血液凝固第VIII因子製剤である。
 臨床試験(n=165/多施設共同非盲検一部無作為化試験)における年間出血回数について、定期的投与では、出血時群(n=23)との比較によると週1回群(n=24)で76%減少、個別化群(週3~5回/n=118)では92%減少していた。同じく関節内出血での年間出血回数についても、出血時群では年間18.6回だったのに対し、週1回群、個別化群ともに0回だったと報告された。
 また、「本薬は予防的に病状進行を中等症、軽症に抑える効果がありそうだ」と花房氏は述べるともに、心配される副作用(n=164中の9例)については、「倦怠感、関節痛などの風邪症状程度の例しか報告されておらず、死亡例もない」とエフラロクトコグアルファに寄せる期待を語った。

血友病診療の発展と期待について
 最後に花房氏は、これからの展望として「今後は血液科の医師だけでなく整形外科や歯科、看護師、遺伝カウンセラーなどが連携する包括的ケアチームが必要であり、診断では短時間で精度の高い遺伝子検査ができること、治療薬ではさらなる長時間作用型製剤の開発、根治へ向け遺伝子治療薬の研究が期待される」と語った。
 また、課題として「患者への医療費助成継続の問題や、新治療薬発売後すぐに長期処方ができない現行制度下で、専門医偏在が診療に地域間格差を生じさせていることへの解決が必要」と語り、レクチャーを終了した。

参考資料
新薬情報:発売(イロクテイト静注用250・500・750・1000・1500・2000・3000)

(ケアネット 稲川 進)