スタチンの効果、遺伝子リスクで異なる/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/03/17

 

 米国ハーバード・メディカル・スクールのJessica L Mega氏らは、JUPITER、CAREなど5試験の被験者データを分析し、冠動脈疾患の初発と再発両リスクを増大する遺伝子型に基づく遺伝リスクスコアを特定した。また、同スコアが最も高い人でスタチン治療の効果が最も大きいことも明らかにした。これまでの検討で、冠動脈疾患リスクと関連する複数の遺伝子型があることが示されていた。Lancet誌オンライン版2015年3月3日号掲載の報告より。

5試験のデータを分析し、遺伝リスクと冠動脈疾患の関連を調査
 遺伝リスクスコアを特定する分析には、住民ベースコホート試験1件(Malmo Diet and Cancer Study)と、無作為化試験4件[1次予防試験2件(JUPITER、ASCOT)、2次予防試験2件(CARE、PROVE IT-TIMI 22)]の被験者総計4万8,421例、イベント総計3,477例のデータが組み込まれた。

 研究グループは、従来臨床リスク因子で補正後、27の遺伝子型に基づく遺伝リスクスコアと、冠動脈疾患の発生(初発および再発)との関連を調べた。

 次に、その遺伝リスクスコアで層別化したうえで、スタチン治療による冠動脈疾患イベントの相対的および絶対的リスクの低下について調べた。

低・中・高リスク群を特定、高位になるほどイベント増大、スタチン治療効果大
 遺伝リスクスコアについては、被験者を、低リスク群(最小五分位群)、中リスク群(第2~4五分位群)、高リスク群(最大五分位群)の分類群としたときに、冠動脈疾患発生について有意な関連が提示された。

 低リスク群と比較した冠動脈疾患の多変量補正後ハザード比は、中リスク群は1.34(95%信頼区間:1.22~1.47、p<0.0001)、高リスク群は1.72(同:1.55~1.92、p<0.0001)であった。

 次に、無作為化試験4件で分析したスタチン治療の効果に関する検討では、相対リスクの低下は、低リスク群13%、中リスク群29%、高リスク群48%と、分類群が高位になるほど有意に増大することが認められた(p=0.0277)。

 また、絶対リスク低下についても同様の所見が認められ(p=0.0101)、1次予防試験被験者のデータの分析からは、冠動脈疾患イベント1件を予防するのに要する治療数(NNT)は、高リスク群は低リスク群のおよそ3分の1であることが判明した。具体的には、JUPITER試験の被験者における10年間のNNTは、低リスク群は66例、中リスク群は42例、高リスク群は25例であり、ASCOT試験の被験者についてはそれぞれ57例、47例、20例であった。