日本語でわかる最新の海外医学論文|page:689

科学的検証の重要性(解説:岡 慎一氏)-622

妊婦、とくに母子感染予防に関するランダム化比較試験(RCT)は、なかなかやりにくいというのが定説であった。事実、HIV母子感染予防に関しても、AZT単剤の時代およびAZT+3TC+LPV/rが広く使われてきた時代においても、RCTのエビデンスに基づく結果からは少なく、主としてアフリカでの使用経験からの推奨であった。

日本人統合失調症、外来と入院でメタボ率が高いのは:新潟大

 統合失調症患者は、一般よりも平均余命が有意に短く、肥満やメタボリックシンドロームにつながる可能性のある不健全な生活習慣の問題にしばしば直面する。統合失調症患者におけるメタボリックシンドロームの構成要素である肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病の有病率を明確にする必要があるが、日本における大規模調査は不十分であったことから、新潟大学の須貝 拓朗氏らが調査を行った。PLOS ONE誌2016年11月17日号の報告。

視神経乳頭出血と緑内障発症の新たな関連

 視神経乳頭出血は、高眼圧患者における原発開放隅角緑内障(POAG)発症の独立した予測因子である。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のDonald L Budenz氏らが、前向きコホート研究Ocular Hypertension Treatment Study(OHTS)の参加者を対象とした検討において明らかにした。さらに、視神経乳頭出血の予測因子は、高眼圧患者におけるPOAGの予測因子と非常に類似していたことも示された。

早期診断が重症化を遅らせるゴーシェ病

 11月29日、サノフィ株式会社は、都内において「ゴーシェ病」に関するメディアセミナーを開催した。セミナーでは、疾患の概要ならびに成人ゴーシェ病患者の症例報告が行われた。ゴーシェ病とは、ライソゾーム病の1つで、先天性脂質代謝に異常を起こすまれな疾患である。小児から成人まで、あらゆる年齢で発症する可能性があり、肝脾腫、貧血、出血傾向、進行性の骨疾患など重篤な全身性の症状を引き起こす。

9価HPVワクチン、9~14歳への2回接種は男女とも有効/JAMA

 9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(メルク社製)の免疫原性について、9~14歳の男女児への2回投与(6または12ヵ月間隔で)は16~26歳の若年女性への3回投与(6ヵ月間で)に対し非劣性であることが、ノルウェー・ベルゲン大学のOle-Erik Iversen氏らによる非盲検非劣性免疫原性比較試験の結果、報告された。HPV感染は性器・肛門がん、疣贅を引き起こす。9価HPVワクチンは、子宮頸がんの90%に関与する高リスクの7つの型、および疣贅の90%に関与する2つの型のHPVに予防効果を示し、従来の2価および4価のHPVワクチンよりもカバー範囲が広い。JAMA誌オンライン版2016年11月21日号掲載の報告。

電子処方箋によって処方薬受け取り率が向上?

 処方薬の過小使用は臨床転帰不良と関連しており、米国では過小使用の多くは1次ノンアドヒアランス、すなわち、患者が処方薬を受け取っていないことが原因であるという。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のAdewole S. Adamson氏らは、医療の協調性を高めエラーを減少させると評価されている電子処方箋に着目し、1次ノンアドヒアランスへの影響について、後ろ向き研究で調べた。

医師の退職時期は? 早期退職の理由は?

 医師の退職計画と時期は、患者・病院・医療システムにとって重要である。無計画な早期の退職や遅い退職は、患者の安全性と人員配置の両方で悲惨な結果を招く。カナダ・トロント大学のMichelle Pannor Silver氏らは、医師の退職時期やプロセスにおける以下の4つの問い、(1)医師はいつ退職するのか?(2)なぜ早期退職するのか?(3)なぜ退職を遅らすのか?(4)どのような戦略が医師の定着や退職計画を促進するのか?について、既報の系統的レビューによって調査した。Human resources for health誌2016年11月号に掲載。

腎移植後のステロイド早期離脱は可能か/Lancet

 腎移植後のステロイド投与からの早期離脱のための、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(Rabbit-ATG、商品名:サイモグロブリン)またはバシリキシマブ(商品名:シムレクト)による抗体療法の、有効性と安全性に関する検討結果が報告された。免疫学的リスクが低い患者を対象に、移植後1年間の抗体療法後のステロイド早期中断を評価した結果、急性拒絶反応の予防効果はRabbit-ATGとバシリキシマブで同等であり、抗体療法後のステロイド早期中断は免疫抑制効果を低下せず、移植後糖尿病の発症に関する優位性が示された。ドイツ・アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクのOliver Thomusch氏らが、615例を対象に行った非盲検多施設共同無作為化対照試験の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2016年11月18日号掲載の報告。

新しい戦略に基づく認知症新薬開発ものがたり(解説:岡村 毅 氏)-621

臨床神経学の新しい時代の幕開けを告げる論文かもしれない。もっとも筆者は精神科医であり、神経学者からみれば素人みたいなものだ。東大にいると優秀な神経学者と親しく交流する機会が多く、彼らの頭脳明晰さには舌を巻く。きちんと解説できるだろうか…。一方で、万人に対してわかりやすく書くことは私の得意とする部分だと思い引き受けた。読み返すとやや劇画調だがご容赦いただきたい。

双極性障害、摂食障害合併はとくに注意が必要

 肥満は精神障害ではないが、DSM-5では、肥満と精神症候群との強い関連性を認めている。双極スペクトラム障害(BSD)やむちゃ食い障害(Binge Eating Disorder:BED)は、肥満患者において頻繁にみられる精神障害である。イタリア・University Magna Graecia of CatanzaroのCristina Segura-Garcia氏らは、肥満患者における、これら併存疾患に伴う精神病理学的相違と特有の接触行動を調査した。Journal of affective disorders誌2017年1月号の報告。

腹部大動脈瘤、手術の閾値の差が死亡率の差に関連するのか/NEJM

 イングランドでは、未破裂腹部大動脈瘤の手術施行率が米国の約半分で、大動脈瘤径が米国より5mm以上大きくなってから手術が行われ、瘤破裂率は2倍以上、瘤関連死亡率は3倍以上であることが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のAlan Karthikesalingam氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年11月24日号に掲載された。欧州血管外科学会議(ESVS)のガイドラインは、動脈瘤径が男性で55mm、女性では50mmを超えたら介入を考慮すべきとしているが、介入の至適な閾値が不確実であるため、実臨床ではかなりのばらつきがみられ、55mm未満での手術施行率は国によって6.4~29.0%の幅があるという。

緩和ケアの患者・介護者それぞれへの効果は?/JAMA

 末期患者への緩和ケアは、患者QOLや症状負担を改善する可能性があるが、介護者の転帰への効果は明確ではないことが、米国・ピッツバーグ大学のDio Kavalieratos氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22・29日号に掲載された。重篤な病態の患者のQOL改善は国際的な優先事項とされ、緩和ケアの焦点は、QOLの改善と、患者および家族の苦痛の軽減に置かれている。米国では、65%以上の病院が緩和ケアの入院プログラムを持ち、地域および外来ベースの緩和ケア提供モデルも増加しているが、実際の効果はよく知られていないという。

血栓除去術の鎮静管理は、全麻に比べ早期の神経学的改善をもたらさない(解説:中川原 譲二 氏)-620

Heidelberg大学病院神経科のSchonenberger氏らは、血栓除去術が行われた前方循環の急性虚血性脳卒中患者において、鎮静管理群と全身麻酔管理群を無作為に比較したところ、鎮静管理は24時間後の神経学的改善をもたらさなかったことを示した。この研究結果から、鎮静管理の利点を支持しないと結論した(JAMA誌オンライン版2016年10月26日号掲載の報告)。

なぜ必要? 4番目のIFNフリーC肝治療薬の価値とは

 インターフェロン(IFN)フリーのジェノタイプ1型C型肝炎治療薬として、これまでにダクラタスビル/アスナプレビル(商品名:ダクルインザ/スンベプラ)、ソホスブビル/レジパスビル(同:ハーボニー)、オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル(同:ヴィキラックス)の3つが発売されている。そこに、今年3月の申請から半年後の9月に承認されたエルバスビル/グラゾプレビル(同:エレルサ/グラジナ)が、11月18日に発売された。治療効果の高い薬剤があるなかで、新薬が発売される価値はどこにあるのか。11月29日、MSD株式会社主催の発売メディアセミナーにて、熊田 博光氏(虎の門病院分院長)がその価値について、今後の治療戦略とともに紹介した。