日本語でわかる最新の海外医学論文|page:688

クリスマス直後は心不全の増悪が増える?

 以前の研究から、心疾患罹患率および心不全の増悪が冬に増加し、ホリデーシーズンごろがピークとなることが示唆されている。また、スポーツイベントでのすさまじい対決は、ファンの心血管アウトカムに影響を与えることが示されている。米国Lehigh Valley Hospital NetworkのMahek Shah氏らが、心不全での入院率と祝祭日との関連を検討したところ、祝祭日のうちクリスマスと独立記念日は、祝祭日直後の心不全入院が増加した一方、祝祭日当日は入院率が低かったことがわかった。この結果の理由について著者らは、祝祭日における過食、関連する感情的なストレス、運動の少なさ、祝祭日後の診療の遅れを挙げている。Clinical research in cardiology誌2016年10月号に掲載。

早期死亡リスクが最も低い人の特徴/BMJ

 BMI値範囲が18.5~22.4で、代替健康食指数(AHEI)が高く、身体活動度が高値で、飲酒は適度、たばこは吸わない人が、最も早期死亡リスクが低いことが、米国・ワシントン大学のNicola Veronese氏らによる、医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)と看護師健康調査(Nurses’ Health Study)の男女2つの大規模な前向きコホート研究の結果、明らかにされた。また、BMIが高値でも、1つでも低リスクの生活習慣因子を有していれば早期死亡リスクは減らせることも示された。先行研究で、やせ型の人は、代謝系の健康度が高く、2型糖尿病、心血管疾患、がん、全死因死亡のリスクが低いことが示されている。一方で、複数の疫学研究のデータで、過体重および軽度肥満でも、死亡リスクは減少することが示唆されていた。BMJ誌2016年11月24日号掲載の報告。

START研究が喘息診療の過去の幻想を拭い去った(解説:倉原 優 氏)-625

過去のガイドラインにおいて、吸入ステロイド薬(ICS)治療は1週間に2日を超えて症状がある喘息患者、すなわちpersistent asthmaに推奨されてきた歴史がある。それ以下の症状の喘息をintermittent asthmaと呼び、吸入短時間型β2刺激薬などでその都度発作を解除してきた。

HR陽性乳がんへのフルベストラント、PFSを有意に延長/Lancet

 ホルモン受容体(HR)陽性局所進行または転移乳がんに対し、フルベストラント(商品名:フェソロデックス)500mg投与はアナストロゾール1mg投与に対し、無増悪生存(PFS)を有意に延長し、有効性について優越性を示したことが、英国・ノッティンガム大学のJohn F R Robertson氏らによる第III相の国際多施設共同無作為化二重盲検試験FALCONの結果、報告された。HR陽性局所進行または転移乳がんは、アロマターゼ阻害薬が標準治療とされている。研究グループは、ホルモン療法既往のない閉経後患者を対象に、選択的エストロゲン受容体抑制薬のフルベストラントが、標準治療のアロマターゼ阻害薬と比べてPFSを改善するかを検討した。Lancet誌オンライン版2016年11月28日号掲載の報告。

PCSK9阻害薬とスタチン、効果も影響もほぼ同じ/NEJM

 PCSK9遺伝子多様体と、スタチンが標的とするHMGCR遺伝子多様体は、LDLコレステロール単位当たりの低下につき、心血管イベントリスクにはほぼ同様の低減効果を及ぼすことが、また糖尿病リスクには非常に類似した増大効果を及ぼすことが明らかにされた。また両遺伝子多様体の影響は、独立的かつ相加的であることも示された。米国・ウェイン州立大学のBrian A. Ference氏らによる遺伝子多様体スコア研究の結果で、NEJM誌2016年11月30日号で発表された。PCSK9の薬理学的阻害は、臨床試験で心血管疾患治療について評価がされている。しかし、スタチンと同様に、PCSK9阻害によるLDLコレステロール低下の心血管イベントおよび糖尿病のリスクへの影響は明らかにされていなかった。

認知症への抗精神病薬処方減少へ、ポイントは看護師

 認知症患者に対する抗精神病薬の処方決定は医師により行われるが、その主導権は看護師や看護助手が握っていることが多い。そのため、抗精神病薬の使用を減少させるためには、看護師や看護助手の要求理由を理解する必要がある。オランダ・トウェンテ大学のSarah I M Janus氏らは、態度、考え、行動制御が要求の意図に影響を与えると考えられる計画的行動理論に基づいて、この要求に対する影響要因の概要を示し、処方を要求する行動に影響を及ぼすかを検討した。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年11月21日号の報告。

オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCのPFSを6ヵ月延長:AURA3 試験

 AstraZeneca(米国)は2016年12月6日、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が、EGFR T790M変異陽性転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の新たな標準的2次治療としての可能性を支持するAURA3試験のデータを発表した。このオシメルチニブ初の無作為化第III相試験では、オシメルチニブが、プラチナ・ダブレット化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を5.7ヵ月改善したことを示した。この結果は、ウィーンで開催された第17回世界肺癌学会議(WCLC)で発表され、New England Journal of Medicine誌オンライン版に掲載された。

治療効果の男女差、慎重な精査が必要/BMJ

 性別と治療効果との統計学的に有意な相互作用というのは、思っていた予想よりもわずかに多く認められるだけで、また臨床的なエビデンスはほとんどないことを、米国・Meta-Research Innovation Center at Stanford(METRICS)のJoshua D Wallach氏らが、コクランメタ解析のシステマティックレビューを行い報告した。著者は、「執筆者、読者、ならびに学術誌のレビュワーと編集者は、サブグループ解析の信頼性を慎重に精査しなければならない。これまでに報告されている統計学的に有意な治療効果の男女差は、概して生物学的信頼性や臨床的重要性が乏しい」とまとめている。BMJ誌2016年11月24日号掲載の報告。

前糖尿病状態は心血管疾患リスクと関連/BMJ

 前糖尿病状態(耐糖能異常、空腹時血糖異常、HbA1c高値)は心血管疾患のリスク増加と関連しており、空腹時血糖値5.6mmol/L(=100.8mg/dL)以上またはHbA1c 39mmol/mol(NGSP 5.7%)以上で健康リスクが高まる可能性があることを、中国・第一人民病院のYuli Huang氏らが、前向きコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。前糖尿病状態の患者は世界的に増えているが、前糖尿病状態を定義する空腹時血糖異常やHbA1cのカットオフ値はガイドラインで異なっている。また、全死因死亡および心血管イベントとの関連性に関する報告も一貫していなかった。BMJ誌2016年11月23日号掲載の報告。

LDL-C低下によるプラークの退縮はどこまで可能か?(解説:平山 篤志 氏)-624

今回の米国心臓病学会のLate Braking Clinical Trialの目玉の1つである、GLAGOV試験の結果が発表された。試験のデザインは、冠動脈疾患患者にスタチンが投与されていてLDL-C値が80mg/dLを超える患者を対象に、スタチン治療のみを継続する群(プラセボ群)と、スタチン治療に抗PCSK9抗体であるエボロクマブを追加投与する群(エボロクマブ群)で、LDL-C値の低下の違いにより血管内超音波で測定したプラーク体積(percent atheroma volume)の変化の差を検討するものであった。

セロトニンの役割、生産性向上のために

 セロトニンは行動調整の多くの部分に関与している。セロトニンの複数の役割を統合する理論的な試みにおいて、セロトニンが遅延や処罰などの行動選択に与える負担(行動コスト)を調整していることが提議されている。フランス・ピエール・エ・マリー・キュリー大学のFlorent Meyniel氏らは、セロトニンがそれらとは違うタイプの行動コスト、たとえば努力(effort)なども行動調整しているのかについて検討した。eLife誌2016年11月8日号の報告。

4割が偽造医薬品!インターネット上に流通するED薬の実態

 国内でED(勃起不全)治療薬を製造・販売している製薬企業が合同で、インターネットから入手したED治療薬の調査を実施し、その結果を11月24日に都内で発表した。今回入手した医薬品を調査・分析した結果、4割が偽造医薬品であることが判明した。また、成分を分析した結果、有効成分の含量が150%含まれているものや、有効成分がほとんど含まれていないものがあった。また、正規品には存在しない規格の製品もみられたという。

飽和脂肪酸の多量摂取、冠動脈性心疾患リスクを増大/BMJ

 主要な飽和脂肪酸(SFA)の多量摂取は、冠動脈性心疾患リスクを増大することが、大規模コホート試験で確認された。また、摂取SFAのうち大半を占めるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の摂取エネルギーを、不飽和脂肪酸や植物性タンパク質などに置き換えると、同発症リスクは有意に低下し、なかでもパルミチン酸の置き換え低減効果が大きいことも示された。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のGeng Zong氏らが、医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)と看護師健康調査(Nurses’ Health Study)の男女2つの大規模コホートについて分析し明らかにしたもので、これまで大規模コホート試験で、個別の飽和脂肪酸と冠動脈性心疾患の関連を示した研究結果はほとんどなかったという。BMJ誌2016年11月23日号掲載の報告。

軽症喘息への低用量吸入ステロイドは?/Lancet

 症状発現頻度が週に0~2日の軽症喘息患者に対する低用量吸入コルチコステロイド(ICS)の投与は、症状増悪リスクを減らし、肺機能低下の予防効果もあることが示された。オーストラリア・シドニー大学のHelen K. Reddel氏らが、7,000例超の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験「START」の、事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2016年11月29日号で発表した。ICSは、喘息増悪と死亡率の低下に非常に有効であるが、症状発現頻度の低い喘息患者は、投与の対象に含まれていない。一方で、週に2日超の患者への投与は推奨されているが、そこを基準とするエビデンスは乏しかった。