日本語でわかる最新の海外医学論文|page:658

統合失調症と気分障害の死亡率、高いのは

 精神疾患患者は、重大な公衆衛生上の懸念である過剰な死亡率を示す。韓国・延世大学校のWoorim Kim氏らは、統合失調症、気分障害、精神活性物質使用による精神的および行動的障害と診断された韓国人患者の全死因および自殺死亡率を調査し、これを一般人と比較した。Journal of Korean medical science誌2017年5月号の報告。

収縮性心不全への鉄補充、経口投与での効果は?/JAMA

 鉄欠乏を伴う左室駆出率(LVEF)が低下した収縮性心不全(HFrEF)患者では、経口高用量鉄補充療法を行っても運動耐容能は改善しないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のGregory D. Lewis氏らが行ったIRONOUT HF試験で示された。鉄欠乏は、HFrEF患者の約半数にみられ、生活機能の低下や死亡の独立の予測因子とされる。静脈内投与による鉄補充の良好な結果が報告されているが、高価で外来患者にとっては定期的な受診が負担となるのに対し、経口鉄補充は安価で容易に行えるが、心不全に対する効果は明らかではない。JAMA誌2017年5月16日号掲載の報告。

ケアプログラムは、急性期病院での終末期の質を改善するか/Lancet

 Care Programme for the Last Days of Life(CAREFuL)と呼ばれる終末期医療プログラムは、継続的なモニタリングを要するものの、急性期病院の高齢者病棟における臨死期の医療を改善する可能性があることが、ベルギー・ブリュッセル自由大学のKim Beernaert氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年5月16日号に掲載された。英国の高齢者の50%以上が、終末期医療の質が最良とは言えない環境の急性期病院で死亡するという。また、CAREFuLと同様のプログラムとして、リバプール・ケア・パスウェイ(LCP)がよく知られているが、既報の急性期病院でのクラスター無作為化試験はイタリアで行われたがん患者を対象とするものが1件あるのみで、この試験ではケアの質改善は確認されていない。

うつ病は認知症のリスクファクター or 初期マーカー

 うつ病は、認知症のリスクファクターとして知られているが、この関係が原因であるかはわかっていない。オーストラリア・西オーストラリア大学のO. P. Almeida氏らは、うつ病に関連する認知症が抗うつ薬使用により減少するか、うつ病への曝露と認知症が発症した時間との関係性を調査した。Translational psychiatry誌2017年5月2日号の報告。

難治性EGPAにメポリズマブは有用か?/NEJM

 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)患者において、標準治療へのメポリズマブ併用はプラセボ併用と比較し、寛解維持期間が有意に長く、持続的寛解を達成した患者の割合も高く、ステロイドの使用量も減少した。ただし、メポリズマブ群においてプロトコルで定義した寛解が得られた患者は、約半数のみであった。米国・National Jewish HealthのMichael E. Wechsler氏らが、EGPA患者を対象としたメポリズマブの第III相多施設共同無作為化二重盲検試験の結果を報告した。EGPAはチャーグ・ストラウス症候群として知られていた多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症で、患者の多くがステロイド治療に依存しており、再発することが多い。これまでの研究で、抗IL-5モノクローナル抗体薬であるメポリズマブは、好酸球数を減少させ、EGPA治療の効果が期待できると示唆されていた。NEJM誌2017年5月18日号掲載の報告。

高齢入院患者で担当医の年齢が上がるほど高い死亡率/BMJ

 内科疾患で緊急入院した65歳以上の患者の30日死亡率は、年間の担当患者数が多い医師を除き、若手医師の治療を受けた患者よりも年長医師の治療を受けた患者で高かった。米国・ハーバード公衆衛生大学院の津川友介氏らが、米国の急性期病院に入院したメディケア受給高齢患者のデータを用い、担当医の年齢で転帰に違いがあるかを検証し、報告した。これまでの研究で、年長医師は若手医師と比べて、医学的知識が乏しく、ガイドラインに準じた標準治療を行わないことが多く、診断・スクリーニング・予防的治療の質も劣ることが示唆されていた。しかし、医師の年齢が死亡率など患者の転帰に及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2017年5月16日号掲載の報告。

統合失調症とグルテンとの関係

 統合失調症は、さまざまな臨床症状を有する慢性疾患である。そして、疾患の発症タイプ、症状、経過に関しては、異質特性を示す。生涯有病率は1%と低いものの、重度の障害を引き起こす可能性がある。したがって、効率的な治療法を開発することは非常に重要である。いくつかの研究では、食事からグルテンを除去することで、統合失調症の症状が有意に改善するとの仮説が立てられている。また、疫学研究において、統合失調症患者のセリアック病(グルテンに対する自己免疫疾患)の有病率は、一般集団よりも約2倍であると報告されている。トルコ・バフチェシェヒル大学のCan Ergun氏らは、グルテンとセリアック病が統合失調症の発症に及ぼす影響を評価した。また、グルテンフリーの食事療法の効果、グルテンに対する抗体反応、脳腸軸相関、共通の遺伝的存在についても研究している。Nutritional neuroscience誌オンライン版2017年4月9日号の報告。

クリゾチニブ、ROS1陽性非小細胞肺がんに適応取得

 ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:梅田一郎)は、2017年5月18日(木)、メルクセローノ株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役社長:レオ・リー)とコ・プロモーションを行っている抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)が、新たな適応症として「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌の追加承認を取得したと発表。

evacetrapib、早期中止の第III相試験の結果/NEJM

 ハイリスク血管疾患の患者に対するコレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬evacetrapibの投与は、プラセボ投与と比較して、LDLコレステロール値を低下しHDLコレステロール値を上昇させるという従来確認されている脂質バイオマーカーの変化は見られたが、心血管イベント発生の低下は認められなかった。米国・クリーブランドクリニックのA. Michael Lincoff氏らによる、約1万2,000例を対象とした第III相・多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。evacetrapibについては第II相試験で、ベースラインからLDLコレステロール値を35%低下、HDLコレステロール値を130%上昇させた効果が確認されていた。NEJM誌2017年5月18日号掲載の報告。

米国医師の半数が企業から金銭受領、年総額2,600億円/JAMA

 2015年に企業から金銭を受け取った米国医師は全体の48%を占め、その総額は24億ドル(1ドル110円とすると2,640億円)であったことが明らかにされた。金銭受け取り者の割合は外科医がプライマリケア医と比べて約1.7倍高く、また、男性のほうが女性よりも高いことなども判明した。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のKathryn R. Tringale氏らが、米国公的医療保険の運営主体であるメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が作成する、企業から医師・医療機関への金銭供与に関する公開報告書「Open Payments」2015年版を基に調査・分析したもので、JAMA誌2017年5月2日号で発表した。

高血圧予防食、痛風リスクを低減/BMJ

 DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食は男性の痛風リスクを低減するのに対し、西洋型の食事(Western diet)はこれを増加させることが、米国・マサチューセッツ総合病院のSharan K. Rai氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年5月9日号に掲載された。DASH食は、果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を多く摂取し、塩分、砂糖などで甘くした飲料、赤身や加工肉の摂取を抑えた食事法で、血圧を低下させ、心血管疾患の予防にも推奨されている。西洋型の食事(赤身や加工肉、フライドポテト、精製穀類、甘い菓子、デザート)は、血清尿酸値を上昇させ、痛風リスクを増加させる多くの食品から成るのに対し、DASH食は、最近の無作為化試験で高尿酸血症患者の血清尿酸値を低下させると報告されているが、痛風のリスクに関するデータはこれまでなかったという。

急性期統合失調症、うつ病や不安症との鑑別に有用なマーカー

 うつ症状や不安症状は、統合失調症の早期または急性期においてみられる症状であり、適切な診断および治療を複雑化する。そのため、統合失調症とうつ病および不安症を分類する指標が早急に求められている。潜在的なバイオマーカーとして、統合失調症の3つのアップレギュレーションされたlncRNA、うつ病の6つのダウンレギュレーションされたlncRNA、全般不安症の3つのアップレギュレーションされたlncRNAが、lncRNAマイクロアレイプロファイリングおよびRT-PCRを用いて同定されている。中国・南京医科大学のXuelian Cui氏らは、潜在的なバイオマーカーによる、早期または急性期統合失調症の診断が可能かを検討した。American journal of medical genetics. Part B, Neuropsychiatric genetics誌オンライン版2017年3月28日号の報告。

緑内障患者の眼圧測定、GAT値の補正は誤差を拡大か

 緑内障の診断と治療においては、眼圧の正確な測定が重要となる。ゴールドマン圧平眼圧計(GAT)による測定では、補正が行われることがあるが、補正式の客観的な臨床評価はなされていない。スイス・チューリッヒ大学のJosephine Wachtl氏らは、前向きケースシリーズ研究を行い、角膜が薄く緑内障が進行している眼ではPascal dynamic contour tonometry(DCT)による測定値とGAT値の差が大きいことを明らかにした。補正式を用いてGAT値を補正することは、予測不可能な測定誤差をさらに拡大する危険性があることから、著者らは、「とくに角膜厚が薄い眼では、GAT値を当てにしないほうがいい。いかなる補正もやめるべきである」と警告を発している。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年5月11日号掲載の報告。