日本語でわかる最新の海外医学論文|page:661

オピオイド依存、代替維持療法で全死亡リスク減/BMJ

 オピオイド依存症患者に対する、メサドン(商品名:メサペイン)やブプレノルフィン(商品名:レペタン)を用いた代替維持療法は、全死因死亡および過剰摂取死亡のリスクを大きく低下させる。スペイン・国立疫学センターのLuis Sordo氏らが、コホート研究を対象にしたシステマティックレビューとメタ解析により明らかにした。検討では、メサドンの治療導入期と治療中止直後は、死亡リスクが高いことも明らかにされた。著者は、「こうしたリスクを減らすためには、公衆衛生と臨床戦略の両輪で対処する必要がある」と述べたうえで、「今回の所見は重要であると思われるが、さらなる検討で、死亡リスクとオピオイド代替療法の比較ならびにそれぞれの治療期との比較における潜在的交絡や選択的バイアスを明瞭にすることが求められる」とまとめている。BMJ誌2017年4月26日号で発表された。

便潜血陽性、大腸内視鏡検査はいつまでにすべきか/JAMA

 免疫学的便潜血検査(FIT)陽性患者に対するフォローアップ大腸内視鏡検査の実施時期を明らかにする検討が、米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニアの研究部門のDouglas A. Corley氏らにより行われた。その結果、8~30日に実施群と比べて10ヵ月以降実施群は、大腸がんリスクが有意に高く、診断時に進行大腸がん(Stage III、IV)であるケースが有意に多いことが示された。FITは大腸がんスクリーニングで用いられる一般的な検査法で、陽性の場合は大腸内視鏡検査のフォローアップを受けることが必要とされている。しかしフォローアップ実施までの期間にはばらつきがあり、そのことが腫瘍の進行と結び付いている可能性が示唆されていた。JAMA誌2017年4月25日号掲載の報告。

職業性ストレス対策、自身の気質認識がポイント:大阪市立大

 就労者の不眠症は、QOLを低下させ、健康管理費の経済的負担やワークパフォーマンスの損失を引き起こす。これまでの研究では、職業性ストレスと不眠症との関連は報告されていたが、労働安全衛生研究における気質には、あまり注目されていなかった。大阪市立大学の出口 裕彦氏らは、気質、職業性ストレス、不眠症との関連について検討を行った。PLOS ONE誌2017年4月13日号の報告。

冠動脈カルシウムが認知症に関連

 米国の疫学研究であるMESA(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)で、ベースライン時の冠動脈カルシウム(CAC)スコアが高いと、血管性危険因子、アポリポ蛋白E(APOE)-ε4、脳卒中発症に関係なく認知症リスクが有意に高かったことを、滋賀医科大学の藤吉 朗氏らが報告した。この結果は、血管損傷が認知症発症に関与するという仮説と一致する。Circulation: Cardiovascular Imaging誌2017年5月号に掲載。

腎疾患治療に格差、130ヵ国調査で明らかに/JAMA

 カナダ・アルバータ大学のAminu K. Bello氏らが、世界130ヵ国を対象に腎疾患への対応能力などについて調べた結果、地域間および地域内で、サービスや人的資源について顕著なばらつきが認められることが判明した。本研究は、「腎疾患は世界中で医療・公衆衛生上の重大な課題になっているが、ケアに関して入手できる情報は限定的である」として行われたが、結果を踏まえて著者は、「今回の調査の結果が、現在の各国の腎疾患治療の現状を正確に反映しているものならば、その質的改善に努めるよう知らしめるのに有用なものとなるだろう」と述べている。JAMA誌オンライン版2017年4月21日号掲載の報告。

腹部大動脈瘤、治療選択と予後に男女差/Lancet

 腹部大動脈瘤の治療・予後について男女差があることが、2000年以降に行われた試験データについて行った系統的レビューとメタ解析の結果、示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのPinar Ulug氏らが、ステントグラフト内挿術(EVAR)と外科的人工血管置換術(open repair)それぞれについて性別に調べた結果、女性は男性と比べてEVAR適応者の割合が低く、非介入率が高く、また手術死亡率が両修復術ともに高かったことが明らかにされた。本検討は、腹部大動脈瘤の予後は、女性のほうが男性よりも不良の可能性があるとの指摘を踏まえて行われたもので、結果を踏まえて著者は、「女性における腹部大動脈瘤治療マネジメントの改善が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2017年4月25日号掲載の報告。

冠動脈疾患発症および死亡の転帰に影響する独立危険因子としての体重変動(連続体重測定)の意義(解説:島田 俊夫 氏)-675

過体重、肥満がさまざまな病気の危険因子になることはよく知られた事実である。しかし、その一方で肥満パラドックスに関する報告もあり、肥満が病気の発症、死亡に対して保護的に働く可能性を示唆する論文も散見されるが、最近では選択バイアスと交絡因子とで説明可能であるとの考えが主流である。また、健常人では体重変動が独立した心血管疾患危険因子になることはすでに報告されているが、これまでの対象とは異なり本研究においては心血管疾患を有し、LDLコレステロールが130mg/dL未満の患者を対象に、体重変動が既存のリスクファクターとは独立した心血管疾患、死亡のリスクファクターになることをスタチンの効果を比較検討した臨床試験(TNT試験)の事後解析に基づく臨床研究の成果として、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された米国・ニューヨーク大学医学部Sripal Bangalore氏らの論文にコメントする。

欧米化された食事でも死亡リスクは低下?~JPHC研究

 JPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)において、日本人の食事パターンと全死因、がん、心血管疾患による死亡との関連を調査した結果、健康的な食事パターンと欧米化された食事パターンでは、全死因および心血管疾患の死亡リスクが低いことが示唆された。欧米化された食事パターンでの結果はこれまでの報告と矛盾するが、研究グループでは塩の摂取が少ないことや飽和脂肪酸の高摂取による寄与の可能性を考察している。PLOS ONE誌2017年4月26日号に掲載。

妊娠初期の抗うつ薬、児への影響は?/JAMA

 妊娠初期の妊婦の抗うつ薬服用は、交絡因子を調整すると非服用群と比較して早産のリスクがわずかに上昇したものの、在胎不当過小(SGA)、自閉症スペクトラム障害あるいは注意欠如・多動症(ADHD)のリスク増加との関連は確認されなかった。米国・インディアナ大学のAyesha C Sujan氏らが、「妊娠初期の抗うつ薬服用と出産や神経発達の問題との関連はセロトニンシグナル伝達の機能不全に起因する」という説の、対立仮説を検証する目的で行った後ろ向きコホート研究の結果を報告した。胎児期の抗うつ薬曝露は有害転帰と関連することが示唆されてきたが、先行研究では交絡が十分に説明されていなかった。JAMA誌2017年4月18日号掲載の報告。

ワルファリン服用者の骨は脆い?(解説:後藤 信哉 氏)-676

ワルファリンは、ビタミンK依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する抗凝固薬である。ワルファリン服用者にはビタミンKの摂取制限を指導する。ビタミンKは「ビタミン」であるため、摂取制限により「ビタミン」不足の症状が起こる場合がある。ビタミンKを必要とする生体反応として骨代謝は重要である。

うつ病になりやすいのは、太っている人、痩せている人?

 ボディサイズや体重変化とうつ病との関連(とくに低体重)は、システマティックにサマライズされていない。韓国・ソウル大学校のSun Jae Jung氏らは、ボディサイズ、体重変化とうつ病との関連を調査するため、システマティックレビューとメタ解析を行った。The British journal of psychiatry誌オンライン版2017年4月20日号の報告。

トラコーマによる逆まつげ、術後予後の改善には?

 トラコーマ性睫毛乱生症(TT)の術後の好ましくない予後が、世界的なトラコーマ撲滅への努力を妨げているという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のEsmael Habtamu氏らは、無作為化単盲検比較試験の二次データを用い、TTの最も頻度が高い2つの手術法(posterior lamellar tarsal rotation:PLTR、bilamellar tarsal rotation:BLTR)における、術後TT(PTT)、眼瞼輪郭異常(ECA)および肉芽腫の予測因子を解析した。その結果、TTにおける術後の予後不良は、不適切な周辺部切開、不規則な切開、非対称の縫合位置と減張、不十分な矯正および睫毛位置と関連していることを明らかにした。著者は、「これらに対処することでTT手術の予後が改善するだろう」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2017年4月21日号掲載の報告。

durvalumab、既治療の進行膀胱がんに迅速承認:FDA

 AstraZenecaとその生物製剤研究開発拠点MedImmuneは2017年5月1日、米国食品医薬品局(FDA)が、durvalumabに進行膀胱がんに対する迅速承認を与えたと発表した。適応は、プラチナ含有化学療法中・後、またはネオアジュバント・アジュバントのプラチナ含有化学療法から12ヵ月以内に進行した局所進行または転移性尿路上皮がん患者で、PD-L1発現の有無は問わない。確認試験における臨床的有益性の検証結果により承認の継続が決められる。

週末入院による死亡率への影響は限定的?

 埼玉医科大学の星島 宏氏らは、平日に比べ週末の入院で死亡リスクが高まる、いわゆる“週末効果”について、地域差や診断、研究のサブタイプによる影響を調べるため、5千万人以上を組み入れたメタアナリシスを実施した。その結果、5つの地域(北米、南米、ヨーロッパ、アジア、オセアニア大陸)で国や社会文化的背景の違いとは関係なく、週末に入院した患者の死亡リスクが高いことが示された。一方で、“週末効果”は入院時の診断などによって異なる限定的なもので、救急患者で週末入院の死亡リスクが高いことが示唆された。Medicine誌2017年4月号掲載の報告。

2040年の世界の推計医療費は?/Lancet

 世界各国の医療費(health spending)は経済発展と関連しているが、過去20年間の傾向や関連性を検証した結果、一概に関連があるとは言い切れず、財源が乏しい国では医療費は低いことが示唆されたという。米国・ワシントン大学のJoseph L. Dieleman氏らが、世界184ヵ国の過去の国内総生産(GDP)、全部門の財政支出、財源ごとの医療費などを分析し、2015~40年の推定医療費を推算して報告した。著者は、「政策の変更によって医療費の増大につながる可能性はあるが、最貧国にとって他国からの支援は欠かせないままと思われる」とまとめている。財源の規模、とくに財源の確保は、医療へのアクセスや医療のアウトカムに影響するといわれており、医療費は経済発展とともに増大することと、一方で、医療費財源の制度(health financing systems)の違いによって非常に大きなばらつきがみられることが指摘されている。研究グループは、世界の医療費の将来推計は、政策責任者および立案者にとって有益であり、資金調達の不足(financing gaps)を明らかにすることができるとして本検討を行った。Lancet誌オンライン版2017年4月19日号掲載の報告。

1日30本以上の喫煙で急性骨髄性白血病リスクが2倍超

 喫煙が白血病発症に関連したリスクとなることは従来の研究で報告されているが、その多くは欧米におけるものであり、日本人を対象とした大規模な研究はほとんど行われておらず、その関連性は不明であった。今回、愛知県がんセンター研究所遺伝子医療研究部の松尾 恵太郎氏らの研究により、男性で1日30本以上の喫煙者は、非喫煙者に比べ急性骨髄性白血病(AML)リスクが2.2倍となることが明らかになった。Journal of Epidemiology誌4月8日号に掲載。