日本語でわかる最新の海外医学論文|page:660

眼圧計は漂白剤で消毒し、定期的に破損のチェックを

 眼圧計を安全に繰り返し使うための殺菌方法はないか。米国眼科学会を代表して米国・マイアミ大学のAnna K. Junk氏らが、システマティックレビューに基づき検討した結果、眼圧計の次亜塩素酸ナトリウム(希釈漂白剤)による消毒が、一般に眼科診療で院内感染と関連するアデノウイルスや単純ヘルペスウイルス(HSV)に対して効果的な殺菌法となることを報告した。なお、プリオン病の疑いがある患者の診療では使い捨て眼圧計チップの使用が望ましいこと、眼圧計プリズムは定期的に破損の徴候がないか調べる必要があるといった注意喚起も行っている。Ophthalmology誌オンライン版2017年7月11日号掲載の報告。

「働き方改革」は希望か、懸念か?勤務医1,000人に聞いた実態と本音

 来月召集される秋の臨時国会の焦点となっている「働き方改革」。昨年、電通社員の過労による自死事件でにわかに長時間労働の実態と弊害がクローズアップされ、見直しの機運が高まっている。そして、この動きは医療界にも少なからず影響を及ぼすことになるだろう。そこでケアネットでは、CareNet.comの医師会員を対象に働き方をめぐるアンケート調査を実施し、1,000人の労働事情について聞いた。

atalurenはデュシェンヌ型筋ジスに有用か?/Lancet

 ジストロフィン遺伝子にナンセンス変異を認めるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)患者(7~16歳男児)に対する、ataluren治療の有効性と安全性を評価する第III相の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果が発表された。主要エンドポイントとした6分間歩行(6MWD)のベースラインからの変化について、intention-to-treat(ITT)集団および事前規定サブグループのうちベースラインの6MWDが300m未満群または400m以上群においては、ataluren群とプラセボ群で有意差は示されなかったが、同300m以上400m未満群ではataluren群の有意な改善が記録されたという。米国・カリフォルニア大学デービス校のCraig M. McDonald氏らによる検討で、結果はLancet誌オンライン版2017年7月17日号で発表された。

新たなエビデンスを生み続けるMAMS(解説:榎本 裕 氏)-704

STAMPEDE試験といえば、2016年のLancet誌に出た報告が記憶に新しい。未治療の進行前立腺がんに対し、標準的なADTにドセタキセル(DTX)化学療法を6コース追加することで全生存率の有意な改善を示したものである。前年に同様の結果を報告したCHAARTED試験とともに、未治療進行前立腺がんの治療を変容しつつある(本邦では保険適応の問題から、普及にはまだ遠いが)。

悪性黒色腫とパーキンソン病、相互に発症リスク高

 米国・メイヨークリニックのLauren A. Dalvin氏らは、ロチェスター疫学プロジェクト(Rochester Epidemiology Project:REP)のデータを解析し、悪性黒色腫(皮膚および結膜、ブドウ膜)患者はパーキンソン病(PD)の、PD患者は悪性黒色腫の発症リスクが高く、両者に関連があることを明らかにした。著者は、「さらなる研究が必要であるが、今回の結果に基づき医師は、悪性黒色腫患者にはPDのリスクについてカウンセリングを行い、PD患者に対しては皮膚および眼の悪性黒色腫についてサーベイランスを行うことを検討すべきだろう」とまとめている。Mayo Clinic Proceedings誌2017年7月号掲載の報告。

抗精神病薬併用でQTc延長リスクは高まるか

 抗精神病薬は、多形性心室頻拍に関連しており、最悪の場合、心臓突然死につながる可能性がある。心拍数で補正したQT間隔(QTc)は、トルサードドポアントの臨床プロキシとして使用される。QTc間隔は、抗精神病薬単独療法で延長するが、併用療法でさらに延長するかはよくわかっていない。デンマーク・オーフス大学のAnja Elliott氏らは、統合失調症におけるQTc間隔と抗精神病薬単独療法および併用療法との関連を検討し、患者のQTc延長頻度を測定した。CNS spectrums誌オンライン版2017年6月29日号の報告。

イダルシズマブはダビガトラン中和薬として有用/NEJM

 イダルシズマブ(商品名:プリズバインド)の、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の中和薬としての有効性、安全性について検討した臨床試験「RE-VERSE AD」のフルコホート解析の結果が発表された。緊急時においてイダルシズマブは、迅速、完全かつ安全にダビガトランの抗凝固作用を中和することが示されたという。イダルシズマブの有用性は、同試験の登録開始90例の時点で行われた中間解析で示されていたが、今回、米国・トーマス・ジェファーソン大学のCharles V. Pollack氏らが全503例の解析を完了し、NEJM誌オンライン版2017年7月11日号で発表した。

幼児へのビタミンDはかぜ予防に有用か?/JAMA

 健康な1~5歳児に、毎日のビタミンDサプリメントを2,000IU投与しても、同400IUの投与と比較して、冬期の上気道感染症は減らないことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のMary Aglipay氏らによる無作為化試験の結果、示された。これまでの疫学的研究で、血清25-ヒドロキシビタミンDの低値とウイルス性上気道感染症の高リスクとの関連を支持するデータが示されていたが、冬期のビタミンD補給が小児のリスクを軽減するかについては明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は「ウイルス性上気道感染症予防を目的とした、小児における日常的な高用量ビタミンD補給は支持されない」とまとめている。JAMA誌2017年7月18日号掲載の報告。

急性脳卒中後の頭位、仰臥位 vs.頭部挙上のアウトカムを検討(中川原 譲二 氏)-703

急性脳卒中後の頭位について、仰臥位は脳血流の改善に寄与するが、一方で誤嚥性肺炎のリスクを高めるため、臨床現場ではさまざまな頭位がとられている。オーストラリア・George Institute for Global HealthのCraig S. Anderson氏らは、急性虚血性脳卒中患者のアウトカムが、脳灌流を増加させる仰臥位(背部は水平で顔は上向き)にすることで改善するかどうかを検討したHead Positioning in Acute Stroke Trial(HeadPoST研究)の結果をNEJM誌2017年6月22日号で報告した。

成人前のボディサイズが乳がんリスクと逆相関

 成人前の体の大きさが成人後の乳がんリスクと逆相関するが、この関連が腫瘍の特性によって異なるかどうかは不明である。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のMd Shajedur Rahman Shawon氏らが行ったプール解析により、その逆相関がさらに支持され、また18歳時の体の大きさと腫瘍サイズとの逆相関がみられた。腫瘍サイズとの逆相関について、著者らはマンモグラフィ密度が関わっているかもしれないと考察している。Breast cancer research誌2017年7月21日号に掲載。

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の安全性、専門家による評価

 アルツハイマー型認知症(AD)の罹患率は上昇し続けているが、認知機能障害への治療選択肢は限られている。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)は、認知機能低下に対しベネフィットをもたらすことを目指しているが、有害事象がないわけではない。最近では、新用量や新剤形が承認され、処方する前に各薬剤の安全性プロファイルを注意深く考慮する必要がある。カナダ・トロント大学のDana Mohammad氏らは、3種類のAChEIについて専門家による安全性評価を行った。Expert opinion on drug safety誌オンライン版2017年7月12日号の報告。

ebselenは騒音性難聴の予防に有効か?/Lancet

 騒音性一過性閾値変化(TTS)の予防に、新規グルタチオンペルオキシダーゼ1(GPx1)様物質ebselenの投与(400mgを1日2回)は有効かつ安全であることが示された。米国・Sound Pharmaceuticals社のJonathan Kil氏らが、若年成人を対象とした第II相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。先行研究において、急性騒音曝露後にGPx1活性が減少することや、ebselenが一過性騒音性難聴および永久性騒音性難聴の両方を軽減させることが動物実験で示されていた。騒音性難聴は、職業性または娯楽に関連した難聴の主たる原因であり、加齢性難聴の主要な決定要素でもあるが、その予防薬あるいは治療薬は開発されていない。著者は、「今回の結果は、急性騒音性難聴におけるGPx1活性の役割を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年7月14日号掲載の報告。

遠隔医療で炎症性腸疾患の外来受診と入院が減少/Lancet

 炎症性腸疾患(IBD)患者に対する遠隔医療(myIBDcoach)は安全で、標準治療と比較し外来受診と入院の頻度を減少させることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのMarin J de Jong氏らによる実用的多施設無作為化比較試験の結果、明らかとなった。IBDは、疾患の複雑さ、外来診療所へのプレッシャーの高まり、罹患率増加などにより、従来の状況では厳格で個別的な管理が困難となっているという。これまでに開発されたIBD患者の遠隔医療システムは、疾患活動性が軽度~中等度の特定の患者用でその効果は一貫していなかった。今回開発されたシステムはサブタイプを問わず適用可能であり、著者は「この自己管理ツールは、治療の個別化と価値に基づく医療(value-based health care)に向けたIBD治療の改革に役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年7月14日号掲載の報告。

転移性前立腺がんの初期治療の行方は?(解説:榎本 裕 氏)-702

1941年のHuggins and Hodgesの報告以来、転移性前立腺がん治療の中心はアンドロゲン除去療法(ADT)であった。近年、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対する治療薬が次々に登場し、治療戦略が大きく変容しているが、転移性前立腺がんの初期治療に関しては70年以上にわたってほとんど進歩がなかった。第1世代の抗アンドロゲン薬(ビカルタミド、フルタミドなど)を併用するMAB(maximum androgen blockade)療法が広く行われているが、OSに対するベネフィットを示す報告は少ない。

季節農家の労働者はうつ病になりやすいのか

 農家労働者の生活困難は、ストレスやうつ病リスク上昇をもたらすといわれている。これまでの限られた研究では、主に季節農家に集中していたが、先行研究では、移住農家労働者または両集団を調査している。米国・イーストカロライナ大学のBeth H. Chaney氏らは、季節農家労働者のうつ病レベルおよび抑うつ症状の予測因子について調査を行った。International journal of environmental research and public health誌2017年6月30日号の報告。

HER2陽性乳がんの延長アジュバントにneratinib承認

 米国食品医薬品局(FDA)は2017年7月17日、早期のHER2陽性乳がんの長期アジュバント治療に、pan-HERチロシンキナーゼ阻害薬neratinibを承認した。neratinib治療は、この対象患者で初となる延長アジュバント療法であり、がんの再発リスクをさらに下げるため初回治療後に行われる。neratinibの適応患者はトラスツズマブレジメンの既治療患者である。

食事のタイミングが体内時計を調節

 人間の概日系に対する食事のタイミングの影響についてあまりよくわかっていない。今回、英国・サリー大学のSophie M.T. Wehrens氏らの研究で、人間の分子時計が食事時刻によって調節される可能性が示された。決まった食事時刻は、末梢の概日リズムを同期させる役割を果たしており、とくに概日リズム障害患者、交代制勤務者、子午線を超える旅行者で関係するかもしれない。Current biology誌2017年6月19日号に掲載。

生体吸収性スキャフォールドの2年転帰:7試験メタ解析/Lancet

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)は、エベロリムス溶出金属ステント(EES)に比べ、2年時のステントに起因する有害事象の発現頻度は約1.3倍で、ステント血栓症は約3.4倍であることが示された。また、ステント留置後1~2年の間の両発症リスクも、BVS群がEES群に比べて高率だった。米国・コロンビア大学のZiad A. Ali氏らが、追跡2年以上の無作為化試験7件を対象に行ったメタ解析で明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2017年7月18日号で発表した。BVSは生体に完全に吸収されることでPCI後の長期アウトカムを改善する。これまでの無作為化試験で、1年時点の安全性・有効性の複合アウトカムについて、BVSの薬剤溶出金属ステントに対する非劣性は示されていたが、標的病変の心筋梗塞やデバイス血栓症の発現頻度の増大が確認されていた。また、BVS留置後1年を超えたアウトカムは明らかではなかった。

20歳頃~中年での体重増、慢性疾患リスクを増大/JAMA

 20歳前後から55歳にかけて体重が2.5~10.0kg増加した人は、ほぼ安定していた人に比べ、2型糖尿病や高血圧症、心血管疾患などの発症リスクが有意に高く、慢性疾患や認知機能・身体的障害などを有さずに健康な状態で年を重ねられる割合は低減することがわかった。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYan Zheng氏らが、看護師健康調査(Nurses’ Health Study:NHS)と医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-Up Study:HPFS)を基に行ったコホート研究の結果で、JAMA誌2017年7月18日号で発表した。