日本語でわかる最新の海外医学論文|page:655

カペシタビンによる術後補助化学療法でHER2陰性乳がんの予後を改善/NEJM

 標準的な術前補助化学療法を受け、病理検査で浸潤がんの遺残が確認されたヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陰性乳がん患者において、標準的な術後治療にカペシタビンによる術後補助化学療法を加えると、無病生存(DFS)と全生存(OS)が改善することが、国立病院機構 大阪医療センターの増田 慎三氏らが実施したCREATE-X試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年6月1日号に掲載された。HER2陰性原発乳がんの術前補助化学療法の病理学的完全奏効(pCR)率は13~22%で、non-pCR例の再発リスクは20~30%とされ、これら遺残病変がみられるHER2陰性例への術後補助化学療法は確立されていない。カペシタビンはフルオロウラシルの経口プロドラッグで、消化器がんの術後補助化学療法や転移性乳がん(主に2次治療)の治療薬として用いられている。

認知症者への向精神薬投与は死亡率を高めているか

 認知症高齢者によく用いられる向精神薬は、死亡率の上昇と関連しているといわれている。これまでの研究では、このリスクに関する性差は調査されていない。スウェーデン・ウメオ大学のJon Brannstrom氏らは、認知症高齢者における抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの使用と2年間の死亡率との関連を分析し、性差に関する調査を行った。BMC pharmacology & toxicology誌2017年5月25日号の報告。

心不全・心機能低下のないAMI患者におけるβ遮断薬と死亡率の関係

 心不全のない急性心筋梗塞(AMI)患者において、β遮断薬が死亡率を低減させるかどうかについては、はっきりしていない。そこで英国リーズ大学のTatendashe B. Dondo氏らの研究グループは、左心機能の保たれたAMI患者において、β遮断薬と死亡率の関連について検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年6月号に掲載。

患者報告による症状モニターが、外来進行がんのOSを有意に延長/ASCO2017

 経口抗がん剤の増加により、外来診療が増加している。そのような中、患者の合併症管理は大きな問題となりつつある。進行がんでは症状が頻繁に起こるが、患者が医療者に報告するにはさまざまな障害がある。過去の研究結果によれば、診療医が患者の症状に気付くのは半分との報告ある。質の高いがん診療の管理には症状モニタリングが鍵といえる。そこで、Webベースによる症状モニタリングと患者報告を組み合わせたシステムと、通常ケアの結果を比較する大規模な単一施設無作為化比較試験の生存に関する結果が、University of North CarolinaのEthan Basch氏により米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表された。

地球温暖化で網膜剥離のリスク増加?

 外気温の上昇が、牽引性網膜剥離のリスク上昇と関連する可能性が、カナダ・ケベック州公衆衛生研究所(INSPQ)のNathalie Auger氏らによる検討で示された。網膜剥離で入院した患者について調査した結果、高い外気温が牽引性網膜剥離のリスク増加と関連している可能性が示唆されたという。著者は、「気候変動を考慮し、眼や他の感覚器に及ぼす熱波の影響をよく理解する必要がある」とまとめている。網膜剥離は視力障害の重大な原因であるが、これまで屋外の高温曝露との関連は検討されていなかった。Environmental Research誌オンライン版2017年5月23日号掲載の報告。

高齢者の術後せん妄予防にケタミン、悪影響の可能性/Lancet

 高齢者の術後せん妄予防目的のケタミン投与は、効果がないばかりか、幻覚やナイトメア症状を増大する可能性が、米国・セントルイス・ワシントン大学のMichael S. Avidan氏らによる国際多施設共同二重盲検無作為化試験「PODCAST」の結果、示された。せん妄は頻度が高く重大な術後合併症である。一方で、術後疼痛を軽減するために周術期静脈内ケタミンの投与がしばしば行われており、同投与のせん妄予防効果を示唆するエビデンスが報告されていた。研究グループは、高齢者の術後せん妄予防に対するケタミンの有効性評価を主要目的に今回の試験を行った。Lancet誌オンライン版2017年5月30日号掲載の報告。

アビラテロン+ADT、転移前立腺がんのOSを38%改善/ASCO2017

 アンドロゲン除去療法(ADT)+ドセタキセルはホルモン療法未治療前立腺がん(mHNPC)の標準治療となっている。一方、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は増加しており、米国では前立腺がんの3%、欧州では6%、さらにアジア・パシフィックでは60%を占める。CRPCでは早期から、アンドロゲン受容体のシグナル伝達再活性化がみられADTへの耐性となる可能性がある。ADTだけではアンドロゲン合成を阻害することはできない。去勢抵抗性発現以前に、CRPC治療薬であるアビラテロン酢酸エスエル(AA)を投与することで、mHNPCの生存は改善するのか。LATITUDE試験は、高リスクmHNPC患者において、ADTにAA+P(プレドニゾロン)を追加した臨床的利益を評価する第III相プラセボ対照二重盲検試験である。本試験の初回中間解析の結果が、フランスInstitute of Gustave RoussyのKarim Fizazi氏らにより米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表された。

実臨床における抗精神病薬持効性注射剤のメリット

 統合失調症における再発予防は、重要な目標である。しかし、統合失調症患者は抗精神病薬の服薬アドヒアランスが不良であり、それは度重なる再入院や実質的な治療費の負担をもたらす。イタリア・ASST-Monza Ospedale San GerardoのEnrico Biagi氏らは、統合失調症に対する長時間作用型持効性注射剤(LAI)抗精神病薬の文献レビューを行った。Advances in therapy誌2017年5月号の報告。

妊娠中の抗うつ薬服用と児のADHDの関連/BMJ

 母親の抗うつ薬服用と子供の注意欠如・多動症(ADHD)との関連について、住民ベースのコホート研究による知見が示された。中国・香港大学のKenneth K C Man氏らによる報告で、子供のADHDリスクは、母親が抗うつ薬を妊娠中服用していた群と妊娠前まで服用していた群で同程度であった。一方で、抗うつ薬服用の有無にかかわらず、精神障害を有する母親の子供はADHDリスクが高かったという。著者は、既報では家族のリスク因子を補正しておらず過大評価されている可能性を指摘し、「抗うつ薬服用とADHDの因果関係を決して否定はしないが、あるとしても関連の強さは既報よりも小さいものと思われる」とまとめている。BMJ誌2017年5月31日号掲載の報告。

ミノサイクリンは多発性硬化症進展リスクを抑制するか/NEJM

 初回の局所性脱髄イベント(clinically isolated syndrome:CIS)の発症後は、多発性硬化症への進展リスクが増大する。カナダ・カルガリー大学/フットヒルズ医療センターのLuanne M. Metz氏らは、CIS発症時にミノサイクリン投与を開始すると、6ヵ月時にはこの進展リスクが抑制されたが、24ヵ月時には効果は消失したとの研究結果を、NEJM誌2017年6月1日号で報告した。テトラサイクリン系抗菌薬ミノサイクリンは免疫調節特性を持ち、予備的なデータでは多発性硬化症への活性が示され、2つの小規模な臨床試験で有望な成果が提示されている。副作用として発疹、頭痛、めまい、光線過敏症がみられるものの、安全性プロファイルは良好とされ、まれだが重篤な合併症として偽脳腫瘍や過敏症症候群があり、長期の使用により色素沈着が生じる可能性があるという。

ニボルマブ、進行肝細胞がんへの挑戦/ASCO2017

 進行肝細胞がん(HCC)における1次治療薬の選択肢はソラフェニブ(商品名:ネクサバール)だけである。本年(2017年)レゴラフェニブ(商品名:スチバーガ)が2次治療薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認されたが、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブはこれらの患者集団における新たな選択肢となるのだろうか。

日本人の脳卒中予防に最適な身体活動量~JPHC研究

 欧米人より出血性脳卒中が多いアジア人での身体活動量と脳卒中の関連についての研究は少ない。わが国の多目的コホート研究であるJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)で、脳卒中予防のための身体活動の最適レベルを検討したところ、日本人では過度の激しい活動は出血性脳卒中の予防に有益ではなく、不利益にさえなる可能性があることが示唆された。今回の結果から、脳卒中予防には中等度の活動による中等度の身体活動量が最適であろうとしている。Stroke誌オンライン版2017年6月5日号に掲載。

高齢者糖尿病診療ガイドライン2017発刊

 「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」による 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」(2016年5月)を受け、2017年5月開催の第60回 日本糖尿病学会年次学術集会において、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』(編・著 日本老年医学会・日本糖尿病学会)が書籍として発刊された。

せん妄ケアの重要性、死亡率への影響を検証

 認知症入院患者は、せん妄リスクが高いが、認知症に併発したせん妄(delirium superimposed on dementia:DSD)が患者アウトカムに及ぼす影響については、あまり知られていない。ブラジル・サンパウロ大学のThiago J. Avelino-Silva氏らは、高齢者入院患者におけるDSDと院内死亡率および12ヵ月間の死亡率との関連を調査した。PLOS medicine誌2017年3月28日号の報告。

CVDリスクを予測する最新QRISK3モデルを検証/BMJ

 心血管疾患(CVD)の10年リスクを予測するQRISK2に新規リスク因子を加えた新しいQRISK3リスク予測モデルが開発され、英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが検証結果を発表した。追加された臨床変数は、慢性腎臓病(CKD)、収縮期血圧(SBP)の変動性、片頭痛、ステロイド薬、全身性エリテマトーデス(SLE)、非定型抗精神病薬、重度の精神疾患および勃起障害で、これらを組み入れたQRISK3は、医師が心疾患や脳卒中のリスクを特定するのに役立つ可能性が示されたという。現在、英国のプライマリケアではQRISK2が広く活用されているが、QRISK2では完全には捉えられないリスク因子もあり、CVDリスクの過小評価につながる可能性が指摘されていた。BMJ誌2017年5月23日号掲載の報告。

先天異常の原因、5人中4人は「未知」/BMJ

 米国・ユタ大学のMarcia L. Feldkamp氏らが実施したコホート研究の結果、主要な先天異常の5人に4人はその原因が不明であることが明らかとなった。著者は、「一次予防や治療の根拠となる基礎研究ならびにトランスレーショナル研究を早急に行う必要がある」と述べている。これまでは、病院ベースで既知の原因の有無別に先天異常の割合を評価した研究が2件あるだけだった。BMJ誌2017年5月30日号掲載の報告。

大規模個別患者データに基づくBayes流メタ解析が“非ステロイド性消炎鎮痛薬(COX-2を含む)が総じて急性心筋梗塞発症リスクを増加させる”と報告(解説:島田 俊夫 氏)-685

本論文では、急性心筋梗塞(AMI)発症の既往歴を有する6万1,460例を含む44万6,763例(38万5,303例はコントロール)の信頼できる大規模個別データ(カナダおよび欧州)を対象にAMIを主な評価項目とし、COX-2選択的阻害薬と従来型NSAIDsの使用と非使用者でAMI発症リスク差を検証するためにBayes流メタ解析が行われた。