日本語でわかる最新の海外医学論文|page:659

MEK1/2阻害薬、KRAS変異陽性NSCLCの予後改善示せず/JAMA

 既治療の進行KRAS変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、ドセタキセル(DOC)にselumetinibを追加しても、DOC単剤に比べ無増悪生存(PFS)は改善されないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPasi A.Janne氏らが実施したSELECT-1試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年5月9日号に掲載された。KRAS変異は、肺腺がん患者の約25%に発現し、NSCLCで最も高頻度にみられる遺伝子変異であるが、これを標的とする分子標的薬で承認を得たものはない。KRAS変異は、MAPKキナーゼ(MEK)に関与するMAPK経路を含むシグナル伝達経路の下流の活性化によって腫瘍の増殖を促進する。selumetinibは、MEK1とMEK2を選択的に阻害する経口薬で、アロリスティックにKRAS変異を抑制する。

CDC「手術部位感染予防のためのガイドライン」18年ぶりの改訂

 米国疾病管理予防センター(CDC)は、「手術部位感染予防のためのガイドライン」を1999年以来18年ぶりに改訂し、エビデンスに基づく勧告を発表した。手術部位感染(SSI)治療のための人的および財政的負担の増加を背景に、専門家の意見を基に作成された1999年版から、エビデンスベースの新たなガイドラインに改訂された。著者らは「これらの勧告に基づく手術戦略を用いることで、SSIのおよそ半分が予防可能と推定される」と記している。

うつ病患者、身体症状から見つけて

 2017年5月17日、東京において塩野義製薬株式会社主催のプレスセミナーが開催され、「うつ傾向のある人の意識と行動に関するアンケート調査※1」の結果が、藤田保健衛生大学 精神神経医学 教授の内藤 宏氏より発表された。その後、患者の身近な相談医として日常診療にあたっている宮崎医院 院長の宮崎 仁氏を交え、うつ傾向のある患者とかかりつけ医のコミュニケーションについて語られた。

ブルガダ症候群におけるSCN5A遺伝子変異は心イベントの予測因子となるか

 ブルガダ症候群における遺伝子型形式と表現型の関連に関しては、依然として議論が続いている。国立循環器病研究センターの山形 研一郎氏ら研究グループは、SCN5A変異の有無により心イベントの発生率に差異がみられるかを検証するため、ブルガダ症候群発端者に限定したレジストリを構築し、長期追跡調査した。Circulation誌オンライン版3月24日号の掲載。

肥満が双極性障害の病態生理に影響

 双極性障害(BD)患者の60%以上で肥満が報告されている。肥満は、疾患の重症度を悪化させ、認知や機能アウトカムに影響を及ぼす。白質(white matter:WM)の異常は、BDの神経イメージング研究において、最も一貫して報告された知見の1つである。イタリア・Scientific Institute Ospedale San RaffaeleのElena Mazza氏らは、BD患者においてBMIとWM統合性が相関すると仮定し、検討を行った。Bipolar disorders誌2017年3月号の報告。

限定的エビデンスを基に承認された薬の市販後調査の傾向/BMJ

 米国食品医薬品局(FDA)が限定的エビデンスに基づき承認した新薬の、市販後のエビデンスの質と量を調べた結果、当初のものとはエビデンスが大きく変化しており、FDAが最初に承認した適応について、臨床的アウトカムを用いて有効性を確認した市販後の対照試験報告はわずかであることが、米国・ニューヨーク州立大学のAlison M. Pease氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかにされた。FDAはしばしば、主要エンドポイントが臨床的アウトカムではなく、疾患の代用マーカー(surrogate markers)を用いたpivotal試験(単一または複数)をエビデンスベースとした新薬についても承認を行っている。これらの新薬は、たとえ市販後臨床試験で有益性が期待できないと立証されても、その後も広く用いられている現実があるという。BMJ誌2017年5月3日号掲載の報告。

NSAIDで心筋梗塞リスクが増大?44万例の調査/BMJ

   NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)は急性心筋梗塞のリスクを増大させ、COX-2選択的阻害薬セレコキシブのリスクは従来型NSAIDと同等で、rofecoxib(米国で心血管系の副作用のため2004年に販売中止、日本では未発売)に比べて低いことが、カナダ・モントリオール大学のMichele Bally氏らの調査で明らかとなった。最初の1ヵ月が最もリスクが高く、用量が多いほど高リスクであることもわかった。研究の成果は、BMJ誌2017年5月9日号に掲載された。従来型およびCOX-2選択型NSAIDは、いずれも急性心筋梗塞のリスクを増大させることを示唆するエビデンスがあるが、用量や治療期間の影響、各薬剤のリスクの違いはよく知られていないという。

中等度リスクの患者に対する外科的大動脈弁置換術と経カテーテル大動脈弁留置術の比較(SURTAVI研究)(解説:今井 靖 氏)-681

大動脈弁狭窄症治療のゴールドスタンダードは外科的大動脈弁置換術であるが、高齢や心臓以外の合併疾患等の理由により開心術に耐えられないと判断された患者に対しては、対症療法しか手段がなかった。そのようななかで経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR/TAVI)が登場し、外科手術がハイリスクと考えられる重症大動脈弁狭窄症に対して実施されるようになった。

遺伝性の卵巣がん治療とPARP阻害薬の可能性

 2017年5月11日、都内で第7回アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・メディアセミナー「日本における遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)とそのアンメットニーズ」が開催された。演者である青木 大輔氏(慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室 教授)は、卵巣がんを中心にHBOC診療の実際について講演。「治癒の難しい卵巣がんにおいて、再発を遅らせることの意義は非常に大きい」と述べ、オラパリブをはじめとしたPARP阻害薬への期待を示した。

インスリン療法、1年後のHbA1cと投与量の増加は?~日本人コホート

 日本の前向きコホート研究(Diabetes Distress and Care Registry at Tenri:DDCRT)において、2型糖尿病患者への4つのインスリン療法のレジメンによる血糖コントロールについて調査したところ、多くの患者が1年後にHbA1cレベルおよびインスリン投与量の増加を示したことがわかった。インスリン投与量の増加については、基礎-ボーラス療法群で最も少なかったという。Journal of diabetes investigation誌オンライン版2017年5月11日号に掲載。

精神的健康を保つには、友人関係が重要

 友人たち(自身およびパートナーの)との社会的関係と、晩年カップルにおける抑うつ症状との個々の関連性を調査し、婚姻の質がその関連性を緩和するかについて、米国・マサチューセッツ・ボストン大学のSae Hwang Han氏らが調査を行った。The journals of gerontology誌オンライン版2017年4月26日号の報告。

潰瘍性大腸炎へのトファシチニブ、第III相試験の結果/NEJM

 米国・カリフォルニア大学のWilliam J. Sandborn氏らは、経口低分子ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)が、中等症~重症の活動性潰瘍性大腸炎に対する寛解導入・維持療法として有効であることを、3件の無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果、報告した。トファシチニブは、第II相試験で潰瘍性大腸炎に対する寛解導入療法としての効果が有望視されていた。NEJM誌2017年5月4日号掲載の報告。

スタチンのノセボ効果が明らかに/Lancet

 スタチン治療の有害事象について、いわゆる「ノセボ効果」が認められることが明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAjay Gupta氏らが、ASCOT-脂質低下療法(LLA)試験の二重盲検試験期と非盲検延長試験期の有害事象について解析した結果、盲検下ではみられなかったが非盲検下において、すなわち患者も医師もスタチン療法が実施されていると認識している場合にのみ、筋肉関連有害事象が過剰に報告されたという。これまで、無作為化二重盲検比較試験ではスタチン療法と有害事象との関連は示唆されていなかったが、観察研究では盲検試験に比べてさまざまな有害事象の増加が報告されていた。Lancet誌オンライン版2017年5月2日号掲載の報告。

保険収載された薬剤に関する市販後臨床試験はほとんどネガティブスタディだった(解説:折笠 秀樹 氏)-680

米国FDAで2005~12年に承認された117個の新規薬剤(123件の適応)を対象にして、市販後に実施された臨床試験758論文をレビューした。1つのピボタル研究だけで承認された割合が27%(=33/123適応)、複数の代替エンドポイント試験だけで承認された割合が40%(=49/123適応)、その両者で承認された割合が33%(=41/123適応)であった。複数の代替エンドポイント試験だけで承認された薬剤には、抗生物質や循環器・糖尿病治療薬が多かった。

小児期に身体活動時間が長いと乳がんリスク低い

 成人期における身体活動は乳がんリスクの低下と関連するが、成人前の身体活動との関連を検討した研究は少ない。米国ノースカロライナ大学のNicole M. Niehoff氏らが5万人超の大規模女性コホートで5~19歳時の身体活動を調査したところ、乳がん発症リスクとの間に逆相関が示された。Breast cancer research and treatment誌オンライン版2017年5月12日号に掲載。

慢性疼痛患者に対する医療用大麻、オピオイドとの比較

 慢性疼痛患者では、抑うつや不安を高率に合併している。オピオイド(OP)の処方は、疼痛の薬理学的治療において一般的な方法の1つであるが、米国および世界のいくつかの国において、疼痛管理のための医療用大麻(medical marijuana:MM)が増加している。イスラエル・アリエル大学のDaniel Feingold氏らは、OPおよびMMを処方された疼痛患者の、抑うつおよび不安レベルの比較を行った。Journal of affective disorders誌オンライン版2017年4月21日号の報告。

直近10年、新薬の32%に販売中止・枠組み警告/JAMA

 2001年からの10年間に米国食品医薬品局(FDA)で承認を受けた222種の新規治療薬のうち、安全性への懸念から、市販開始後に販売中止や枠組み警告の追加などに至ったものが32%あったことが明らかにされた。なかでも、生物学的製剤や精神疾患治療薬、迅速承認や当局承認締め切り間際に承認を受けたものでその発生率が有意に高く、著者は「これらの新しい治療薬は、生涯にわたる継続的な安全性モニタリングが必要であることを強調するものである」と述べている。米国・ブリガム・ウィメンズ病院のNicholas S. Downing氏らによる検討で、JAMA誌2017年5月9日号に発表された。