日本語でわかる最新の海外医学論文|page:566

強迫症の最適治療に関する研究

 強迫症(OCD)の治療では、認知行動療法(CBT)や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)による薬物療法が行われる。単独療法よりも併用療法が優れている可能性があるものの、これを調査した研究はほとんどなかった。英国・Hertfordshire Partnership University NHS Foundation TrustのNaomi A. Fineberg氏らは、成人OCD患者を対象に、CBT、SSRI治療の単独または併用療法の治療効果について、比較検討を行った。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2018年8月15日号の報告。

安定胸痛への標準治療+CTA、5年アウトカムを改善/NEJM

 安定胸痛の患者に対し、標準治療に加えCT冠動脈造影(CTA)を行うことで、5年間の冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞の発生リスクは約4割低下することが示された。侵襲的冠動脈造影や冠血行再建術の5年実施率は、いずれも増加は認められなかったという。英国・エジンバラ大学のDavid E. Newby氏らによる、Scottish Computed Tomography of the Heart(SCOT-HEART)試験の結果で、NEJM誌2018年9月6日号で発表された。安定胸痛の患者への評価では、CTAにより診断の確実性が増すことが示されていたが、5年後の臨床アウトカムに及ぼす影響は不明であった。

抗インフル薬バロキサビルの第II相・第III相試験の結果/NEJM

 合併症を伴わない急性インフルエンザの思春期・成人患者へのバロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の単回投与は、症状緩和についてプラセボに対し優越性を示し、投与開始1日後時点のウイルス量低下についてプラセボおよびオセルタミビルに対する優越性が示された。安全性に関する明らかな懸念はなかったが、治療後にバロキサビルに対する感受性の低下を示す知見も観察されたという。米国・バージニア大学のFrederick G. Hayden氏らによる、日本と米国の患者を対象に行った2件の無作為化試験の結果で、NEJM誌2018年9月6日号で発表された。バロキサビル マルボキシルは、インフルエンザウイルス・キャップ依存性エンドヌクレアーゼ選択的阻害薬。前臨床モデル試験で、既存の抗ウイルス薬では効果が認められない耐性株を含むインフルエンザA型とB型に対して、治療活性が示されていた。

末梢静脈カテーテル留置は世界中で毎年20億回も行われている(解説:中澤達氏)-911

この論文を読んで、早朝7時の病棟を思い出した。同じ経験をされている方々も多いと思うが、朝食前の採血と末梢ライン留置は研修医の仕事だった。容易に静脈が確認できる患者さんでは失敗はしなかったが、静脈が表面から見えないときは緊張した。先方もこちらが医師1年生であることは認識しているのだから、失敗してsecond tryともなると、気まずい雰囲気にならないようなコミュニケーションが必須だった。手技を習得するというより、コミュニケーション能力の向上のためのトレーニングと思っていたほどだ。それは、手技時間だけで構築されるものではなく、日々の回診や処置や雑談から(信用・信頼、本当だろうか?)獲得されていたのだ。

ロシュ、世界肺癌会議(WCLC2018)で新データを発表

 Roche社は、2018年9月6日、カナダのトロントで9月23~26日に開催される2018年第世界肺癌会議(WCLC/IASLC 2018)において、さまざまな肺がんを対象とした臨床開発プログラムの新データが発表される旨を公表した。同会議では、3つのLate Breakerと5つの口頭発表を含む10個のアブストラクトが受理されたとしている。

統合失調症患者のADHD有病率

 英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのI. Arican氏らは、統合失調症患者のコホートにおける、小児期および成人の注意欠如多動症(ADHD)症状の頻度について調査を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2018年8月13日号の報告。  これまでのエビデンスを評価するため、システマティックレビューを実施した。ICD-10に基づき統合失調症と診断された126例を対象に、成人および小児期のADHD症状を調査するため、2つの自己報告アンケートを用いた。  統合失調症患者のADHD症状の頻度について主な調査結果は以下のとおり。

高血圧患者への降圧と脂質低下療法、その長期的効果は?/Lancet

 高血圧患者における、降圧療法および脂質低下療法が心血管死、全死因死亡に及ぼす長期的な効果は十分には検証されていないという。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAjay Gupta氏らは、ASCOT試験終了後に10年以上の長期フォローアップを行い(ASCOT Legacy試験)、Ca拮抗薬ベースの治療レジメンによる降圧療法と、スタチンによる脂質低下療法は、高血圧患者の死亡を長期に改善することを示した。Lancet誌オンライン版2018年8月26日号掲載の報告。

BRCA変異乳がんにおいてPARP阻害薬talazoparibはPFSを延長する−EMBRACA試験(解説:矢形寛氏)-910

PARP阻害薬であるオラパリブは本邦でもすでにBRCA変異乳がんで保険適応となっている。talazoparibは今のところ最も強力なPARP阻害薬であり、臨床試験の結果が期待されていた。PFSは標準治療の5.6ヵ月に比べ、talazoparib群で8.6ヵ月であり、有効ではあるもののオラパリブを超えるような大きな改善ではなかった。

インスリンが血糖に関係なくがんリスクに関連か~JPHC研究

 わが国の大規模前向きコホート研究(JPHC研究)より、数種類のがんにおいて、インスリン高値が高血糖とは関係なく、糖尿病関連のがん発症に関連する可能性が示唆された。著者らは「血漿インスリン値の検査は、糖尿病を発症していない人においても、がんリスクを評価するうえで妥当なオプションである」としている。International Journal of Cancer誌オンライン版2018年9月5日号に掲載。

なぜ美容整形手術を受けるのか、初の前向き観察研究

 美容整形手術の人気が高まっているにもかかわらず、手術を受ける患者の動機付けとなっている社会文化的な要因やQOLに関わる因子はあまり解明されていない。米国・ノースウェスタン大学のAmanda Maisel氏らは、患者がなぜ侵襲の少ない美容整形手術を受けるのかを包括的に評価する、初となる検討を行った。その結果、一般的な理由は、外見を良くしたいという願望に加えて、感情的、心理的、そして実用的な動機であることが明らかになったという。著者は、「患者の年齢や求める手術における相対的差異については、さらなる調査が必要だろう」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年8月15日号掲載の報告。

治療抵抗性うつ病と自殺率

 治療抵抗性うつ病(TRD)患者の30%では、生涯にわたり1回以上の自殺企図が認められる。しかし、治療開始後のTRD患者における、自殺企図および自殺完遂の発生率、特定の治療による自殺企図の増減については、不明であった。オランダ・アムステルダム大学のIsidoor O. Bergfeld氏らは、TRD患者における自殺率について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2018年8月1日号の報告。

ACS疑い例の高感度心筋トロポニン測定は、心筋梗塞を抑制するか/Lancet

 心筋トロポニンIの高感度アッセイは、心筋障害または心筋梗塞の約6分の1を再分類するが、1年以内の心筋梗塞または心血管死の発生には影響を及ぼさないことが、英国心臓財団Centre for Cardiovascular ScienceのAnoop SV Shah氏らが行ったHigh-STEACS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年8月28日号に掲載された。心筋梗塞のUniversal Definitionは、トロポニン測定値の健常基準集団の99パーセンタイル以上への上昇を、心筋梗塞の診断の閾値とするよう推奨しているが、この推奨値が臨床アウトカムを改善するかは不明だという。

先発配合剤の承認は医療費削減に逆行しているのではないか(解説:折笠秀樹氏)-909

本邦の医療用医薬品の中で、後発医薬品の数量ベースのシェアは70%と言われている。ちなみに、米国での同シェアは90%を超えている。売上ベースのシェアで見ると、30%より少し高い程度のようである。数量的には70%を占めていても、単価が先発医薬品に比べて安いのでこのようになるのだろう。

臨床研究法施行で何が変わったか~メリット・デメリット

 今年4月1日に「臨床研究法」が施行された。降圧薬に関する臨床研究でのデータ操作への疑念や、メーカーの関与といった問題の発覚から制定されたこの法律に、戸惑っている研究者も多いのではないだろうか。今回、今月末に日本で初めて開催されるICPM(International Conference on Pharmaceutical Medicine:国際製薬医学大会)2018の大会長である今村 恭子氏(東京大学大学院薬学系研究科ファーマコビジネス・イノベーション特任教授)とICPM組織委員会の広報担当である松山 琴音氏(日本医科大学研究統括センター副センター長/医療管理学特任教授)に、臨床研究法の要点、メリット・デメリット、研究を行う医師への影響などを伺った。なお、この法律については、ICPM2018と同時開催される第9回日本製薬医学会(JAPhMed)年次大会のセッションでも取り上げられる予定だ。

第2世代抗精神病薬と短期的死亡率に関するメタ解析

 重篤な精神疾患患者における寿命の短縮には、抗精神病薬の急速かつ生命に影響を及ぼす副作用が関与している可能性がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のJohannes Schneider-Thoma氏らは、この仮説を検証するため、抗精神病薬のプラセボ対照試験における死亡発生のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。The Lancet Psychiatry誌2018年8月号の報告。

冠動脈炎を非侵襲的に検出する新バイオマーカー/Lancet

 血管周囲の脂肪減衰指数(FAI)は、冠動脈の炎症を非侵襲的に検出する新たな画像バイオマーカーである。英国・オックスフォード大学のEvangelos K. Oikonomou氏らは、CRISP CT試験のアウトカムデータの事後解析を行い、血管周囲FAIは、冠動脈炎を定量的に測定することにより、冠動脈CT血管造影(CTA)における現行の最高水準の評価に加えて、心臓リスクの予測や再層別化の質の向上をもたらすことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年8月28日号に掲載された。冠動脈の炎症は、隣接する血管周囲の脂肪細胞における脂肪生成を阻害する。血管周囲FAIは、冠動脈CTA画像上で、血管周囲の脂肪減衰の変化を空間的にマッピングすることで冠動脈炎を捉えるが、その臨床アウトカムの予測能は不明であった。

心不全への遠隔管理の併用で予後が改善/Lancet

 明確に定義された心不全患者(心不全による最近の入院歴あり、大うつ病なし)では、通常治療に加えて構造化された遠隔患者管理による介入を行うと、予定外の心血管系の原因によって病院で過ごす時間が短縮し、全死因死亡も低減することが、ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のFriedrich Koehler氏らが行った「TIM-HF2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年8月25日号に掲載された。心不全患者の遠隔患者管理は、心代償不全の早期の臨床所見の検出に役立ち、それゆえ代償不全に陥った心不全が完全に出現する前に、適切な治療や処置を迅速に開始することが可能になるという。

“酒は百薬の長されど万病の元”という故事は飲酒の健康への利害を端的に語っており、認知症も例外にあらず!(解説:島田俊夫氏)-908

高齢者の認知症が大きな社会問題としてクローズアップされている。2018年8月1日にBMJ誌に掲載されたフランス・パリ・サクレー大学のSeverine Sabia氏らの「Whitehall IIコホート研究」の結果は、飲酒と認知症の関連を取り上げた時宜にかなう論文で興味深く、この小稿で取り上げた。これまで過度な飲酒が身体に悪影響を及ぼすことは広く周知されている。一般的に適量の飲酒は認知症に関して低リスク1)と考えられてきたが、詳細については不明な点も多い。