日本語でわかる最新の海外医学論文|page:565

低用量メトトレキサートは冠動脈疾患例のMACEを抑制せず:CIRT/AHA

 LDLコレステロール(LDL-C)を低下させることなくアテローム性動脈硬化性イベントを抑制したCANTOS試験は、心血管系(CV)イベント抑制における抗炎症療法の重要性を強く示唆した。メトトレキサート(MTX)も、機序は必ずしも明らかでないが抗炎症作用が知られている。また関節リウマチ例を対象とした観察研究や非ランダム化試験では、低用量MTXによるCVイベント抑制作用が報告されている。ではMTXも、アテローム性動脈硬化性イベントを減少させるだろうか? ランダム化試験"CIRT"の結果、その可能性は否定された。米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、11月10日、CANTOS試験の報告者でもある米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul Ridker氏が報告した。

capmatinib、MET変異NSCLCに良好な結果(GEOMETRY mono-1)/ESMO2018

METエクソン14スキッピング変異は非小細胞肺がん(NSCLC)の約3〜4%に同定される。この変異はドライバー遺伝子と考えられている。また、深刻な予後不良因子であり、標準治療にも免疫治療にも奏効しにくい。MET阻害薬capmatinib(INC280)は、MET受容体に高い親和性を持つTKIで、最も強力なMETエクソン14スキッピング阻害薬であり、単独およびEGFR-TKIとの併用でMET変異NSCLCに対し、有効性と管理可能な安全性プロファイルを示している。

ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連性が示唆された

 ベンゾジアゼピンの使用は、メンタルに関連する混乱や遅延を潜在的に引き起こす可能性がある。これらのよく知られているベンゾジアゼピンの副作用は、認知症と診断されるリスクの増加と関連しているといわれている。韓国・成均館大学校のKyung-Rock Park氏らは、ベンゾジアゼピンと認知症との関連について評価を行った。International Journal of Clinical Pharmacy誌オンライン版2018年10月26日号の報告。  2002~13年の韓国医療データベースよりデータを抽出した。ベンゾジアゼピン使用が認知症リスク増加と関連しているかを調査するため、Sequence symmetry analysis(SSA)を行った。新規のベンゾジアゼピン使用者と新規に認知症と診断された患者(ICD-10:F00~03、G30、G318)を定義した。ベンゾジアゼピンは、作用時間に基づき長時間作用型と短時間作用型の2群に分類した。結果の非因果的解釈の可能性を除外するため、抗うつ薬、オピオイド鎮痛薬、スタチンの使用者を活性比較者とした。関連性を同定するため、時間傾向調整順序比(ASR)と95%信頼区間(CI)を用いた。主要アウトカム指標は、ASRとした。

乾癬のようにみえて違う難治性皮膚疾患の掌蹠膿疱症

 2018年11月2日、ヤンセンファーマ株式会社は、都内において難治性皮膚疾患である「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」に関するプレスセミナーを開催した。セミナーでは、国内に患者が13万人ともいわれる本症の概要、疫学、治療法について説明が行われた。なお、同社では、既存の乾癬治療薬グセルクマブ(商品名:トレムフィア)の掌蹠膿疱症への適応追加につき、厚生労働省薬事・食品衛生審議会に11月8日に報告を行っている。

高血圧・喫煙・糖尿病は、男性以上に女性の心筋梗塞リスクを増加/BMJ

 心筋梗塞の発生率は、男性が女性の約3倍だが、心筋梗塞とそのリスク因子である高血圧、喫煙、糖尿病との関連は女性のほうが強いことが、英国・オックスフォード大学のElizabeth R C Millett氏らの調査で明らかとなった。さらに、心筋梗塞とリスク因子の関連の強さは、男女とも加齢とともに減弱するものの、女性における過剰なリスクは相対的に低下しないことも示された。研究の成果は、BMJ誌2018年11月7日号に掲載された。心筋梗塞の発生率は、若年時には女性が男性よりも低いが、加齢に伴いその差は小さくなる。以前のメタ解析において、心筋梗塞といくつかのリスク因子の関連に性差があることが示されているが、解析に含まれた試験には交絡因子調整の水準にばらつきがあり、年齢層別の性差の検討を行っていない試験も含まれたという。

スタチンにアリロクマブ追加で、ACS症例のイベント抑制/NEJM

 抗PCSK9モノクローナル抗体アリロクマブは、急性冠症候群(ACS)の既往歴を有し、高用量スタチン治療を行ってもアテローム生成性リポ蛋白の値が高い患者において、虚血性心血管イベントの再発リスクを有意に低減することが、米国・コロラド大学のGregory G. Schwartz氏らが行ったODYSSEY OUTCOMES試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年11月7日号に掲載された。ACS患者は、現行のエビデンスに基づく治療を行っても虚血性心血管イベントの再発リスクが高い。これまで、PCSK9抗体がACS発症後の心血管リスクを改善するかは不明とされていた。

高用量鉄剤静注は貧血改善や赤血球造血刺激因子製剤(ESA)節減には良いが…(解説:浦 信行 氏)-955

血液透析患者において、鉄剤静注は経口鉄剤投与に比較して貧血改善やESA節減には良いとする報告は、システマティックレビューではあるが2013年のBMJに報告されている。また、5万8,058例を対象とした観察研究において、高用量鉄剤静注群では低用量静注群に比較して投与量が400mg/月を超えると死亡や心血管リスクは上昇するが、それ以下では用量依存性にそれらのリスクを減らすとの2005年のAm J Soc Nephrolの報告もある。今回の研究はそれらと軌を一にする結果であり、前向き研究で高用量群と対照の低用量群との比較で示したことに大きな意義はあり、注目に値する。

MI後標準治療下でのhsCRP高値例、IL-1β抗体で心不全入院減少の可能性:CANTOS探索的解析/AHA

 慢性心不全例における、炎症性サイトカインの増加を報告する研究は少なくない。しかし、心不全例に対する抗炎症療法の有用性を検討したランダム化試験“ATTACH”と“RENEWAL”は、いずれも有用性を示せずに終わった。そこで、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrendan M. Everett氏らが、心筋梗塞(MI)後、非心不全例を含む高hsCRP例への抗炎症療法の心不全入院作用を検討すべく、ランダム化試験“CANTOS”の探索的解析(事前設定解析)を行った。その結果 、インターロイキン(IL)-1β抗体による用量依存性の心不全入院減少の可能性が示唆された。11月11日、米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会のRapid Fireセッションにおいて報告された。

統合失調症に関する10年間の調査~実臨床のためのレビューとレコメンド

 フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のF. Schurhoff氏らは、統合失調症専門家のための学術研究センター(FondaMental Academic Center of Expertise for Schizophrenia:FACE-SZ)グループによる最初の10年間のコホート研究について報告を行った。L'Encephale誌オンライン版2018年10月13日号の報告。  FACE-SZでは、700以上のコミュニティで安定している患者を募集し、現在まで評価を行っている。対象者は、平均年齢32歳、男性の割合75%、平均罹病期間11年、平均発症年齢21歳、統合失調症の平均未治療期間1.5年、喫煙者55%であった。

チクングニア熱ワクチン、安全性と有効性を確認/Lancet

 麻疹ウイルスベクターを用いた弱毒生チクングニアワクチン(MV-CHIK)は、優れた安全性・忍容性と、麻疹ウイルスに対する既存免疫と独立した良好な免疫原性を発揮することが示された。ドイツ・Rostock University Medical CenterのEmil C. Reisinger氏らによる、MV-CHIKの第II相の無作為化二重盲検プラセボ/実薬対照試験の結果で、著者は、「MV-CHIKは、世界的に懸念されている新興感染症チクングニア熱の予防ワクチン候補として有望である」とまとめている。チクングニア熱は新興ウイルス性疾患で、公衆衛生上の大きな脅威となっている。チクングニアウイルスに対する承認されたワクチンはなく、治療は対症療法に限られていた。Lancet誌オンライン版2018年11月5日号掲載の報告。

若年時の血圧高値、中年以降CVイベントを招く?/JAMA

 40歳未満の若年成人で、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドライン2017の「正常高値」「ステージ1高血圧」「ステージ2高血圧」の該当者は、正常血圧者と比較し、その後の心血管疾患(CVD)イベントのリスクが有意に高いことが示された。米国・デューク大学の矢野 裕一朗氏らが、前向きコホート研究「Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)研究」の解析結果を報告した。これまで、若年成人の血圧と中年期のCVDイベントとの関連についてはほとんど知られていない。著者は、「ACC/AHA血圧分類は、CVDイベントリスクが高い若年成人を特定するのに役立つと考えられる」とまとめている。JAMA誌2018年11月6日号掲載の報告。

青年期心血管疾患発症リスク評価における米国新規血圧分類の有用性の検証(CARDIA研究から)(解説:冨山博史氏)-953

従来、140/90mmHg以上が、高血圧として定義されてきた。しかし、2017年に発表された米国高血圧ガイドラインでは収縮期血圧120~129mmHgを血圧上昇(elevated blood pressure)、130~139/80~89mmHgをI度高血圧(StageI高血圧)とし、血圧異常の範疇を拡大することを提唱した。一方、2018年に発表された欧州高血圧ガイドラインでは血圧分類は従来のままで140/90mmHg以上を高血圧と定義している。こうした血圧異常の定義の乖離は、さまざまな議論を呼んでいる。

急性非代償性心不全例へのARNi、ACE阻害薬よりNT-proBNP濃度が低下:PIONEER-HF/AHA

 アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNi)は、2014年に報告されたPARADIGM-HF試験において、ACE阻害薬を上回る慢性心不全予後改善作用を示した。米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会ではそれに加え、急性心不全に対する有用性も示唆された。11月11日のLate Breaking Clinical TrialsセッションでEric J. Velazquez氏(米国・イェール大学)が報告したランダム化試験"PIONEER-HF"である。  PIONEER-HF試験の対象は、急性非代償性心不全(左室駆出率[LVEF]≦40%、NT-proBNP≧1,600pg/mL または BNP≧400pg/mL)で入院後、血行動態が安定した881例である。平均年齢は61歳、72%が男性だった。

高齢者が筋肉をつける毎日の食事とは

 現在わが国では、高齢者の寝たきり防止と健康寿命をいかに延伸させるかが、喫緊の課題となっている。いわゆるフレイルやサルコペニアの予防と筋力の維持は重要事項であるが、それには毎日の食事が大切な要素となる。  2018年10月31日、味の素株式会社は、都内で「シニアの筋肉づくり最前線 ~栄養バランスの良い食事とロイシン高配合必須アミノ酸による新提案~」をテーマにメディアセミナーを開催した。セミナーでは、栄養学、運動生理学のエキスパートのほか、料理家の浜内 千波氏も登壇し、考案した料理とそのレシピを説明した。

新規NK1受容体拮抗薬fosnetupitantの可能性/癌治療学会

 新規NK-1受容体拮抗薬fosnetupitantは、NK1受容体に対して高い選択性を有するnetuspitantのプロドラッグである。また、長い半減期を有し、第I相試験で日本人患者に良好な成績を示している。第56回日本癌治療学会学術集会では、浜松医科大学 乾 直輝氏らが、第II相Pro-NETU試験の結果を発表した。

双極I型障害と双極II型障害の親と子の間の精神病理的相違に関する横断研究

 双極I型障害(BP-I)および双極II型障害(BP-II)を有する親と子の間の精神病理学的な相違について、韓国・順天郷大学校のHyeon-Ah Lee氏らが検討を行った。Psychiatry Investigation誌オンライン版2018年10月26日号の報告。  対象は、BP-IまたはBP-IIの親を有する6~17歳の子供201例。感情病および統合失調症の児童用面接基準(K-SADS)- Present and Lifetime Version韓国版を用いて対照児の評価を行った。Lifetime DSM-5診断、うつ病、小児期のトラウマを含めた精神病理学的および臨床的特徴について評価を行った。Lifetime DSM-5診断は、6~11歳の小学生と12~17歳の青年の間でも比較を行った。

ペムブロリズマブ、単剤と化療併用で頭頸部扁平上皮がん1次治療のOS改善(KEYNOTE-048)/ESMO2018

 再発または転移性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)治療では、プラチナ製剤による化学療法後の2次治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ、ニボルマブの有効性が確認されており、本邦ではニボルマブが2017年3月に適応を取得している。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、HNSCCの1次治療におけるペムブロリズマブ単剤および、化学療法との併用療法が、抗EGFR抗体セツキシマブと化学療法の併用療法と比較して全生存期間(OS)を改善することが明らかになった。イェールがんセンターのBarbara Burtness氏が発表した第III相KEYNOTE-048試験の中間解析結果より。

シンポジウム「2040年のケアマネジメント論~AIによってケアマネジャーの仕事はどう変わるか~」開催

ITヘルスケア学会は、大田区後援のもと、シンポジウム「2040年のケアマネジメント論~AIによってケアマネジャーの仕事はどう変わるか~」を開催する。 「地域包括ケアシステム」の構築が最終段階を迎える一方、介護の質の向上や、労働人口減少および働き方改革を背景とした介護人材不足解消のためのAI活用が実用段階に入りつつある。2040年には、日本はどのように変化するのか、3名の演者による口演と、パネルディスカッションを行う。

40歳未満、130/80mmHg以上の10年CVDリスクは?/JAMA

 韓国の若年成人(20~39歳)において、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)が2017年に発表した高血圧ガイドライン(ACC/AHAガイドライン2017)の定義でステージ1・2の高血圧症者は、男女ともに正常血圧者と比較して、その後の心血管疾患(CVD)イベントリスクの増大と関連することが示された。韓国・ソウル大学校病院のJoung Sik Son氏らが、約249万例を中央値10年追跡して明らかにしたもので、ステージ1群の男性は1.25倍、女性は1.27倍高かったという。これまで、若年成人におけるACC/AHAガイドライン2017とその後のCVDリスクとの関連は検討されていなかった。JAMA誌2018年11月6日号掲載の報告。

COPD増悪リスク、3剤併用で有意に低減/BMJ

 症状が進行した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対し、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、吸入ステロイド(ICS)の3剤併用療法は、LAMA+LABA、ICS+LABAの2剤併用療法または単独療法に比べ、中等度/重度増悪リスクを低減し、肺機能および健康関連QOLは良好であることが示された。中国・Guangdong Medical UniversityのYayuan Zheng氏らが、21の無作為化比較試験についてメタ解析を行い明らかにしたもので、BMJ誌2018年11月6日号で発表した。研究グループは、既報のメタ解析では3剤併用療法と2剤併用療法を比較した増悪予防に関するエビデンスは十分ではなかったとして、本検討を行ったという。