日本語でわかる最新の海外医学論文|page:542

日本人高齢者における身体活動と認知症発症との関連

 岡山大学のYangyang Liu氏らは、高齢者における定期的な身体活動と認知症発症リスクとの関連について評価を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年5月2日号の報告。  本検討は、岡山市で実施したレトロスペクティブコホート研究である。日本人高齢者5万1,477人を2008~14年にかけてフォローアップを行った。定期的な身体活動は、健康診断質問票を用いて評価を行った。認知症発症は、介護保険の認知症尺度を用いて評価した。身体活動のカテゴリ別の認知症発症率は、Cox比例ハザードモデル、95%信頼区間(CI)を用いて算出した。

脳内出血生存例への抗血小板療法は安全か/Lancet

 脳内出血の生存例は、出血性および閉塞性の血管疾患イベントのリスクが高いが、これらの患者で抗血小板薬が安全に使用可能かは明らかでないという。英国・エジンバラ大学のRustam Al-Shahi Salman氏らRESTART試験の研究グループは、抗血栓療法中に脳内出血を発症した患者への抗血小板療法は、これを行わない場合と比較して脳内出血再発率が低い傾向にあり、安全性は保持されることを示した。研究の詳細はLancet誌オンライン版2019年5月22日号に掲載された。

敗血症、新規の臨床病型4つを導出/JAMA

 敗血症は異質性の高い症候群だという。米国・ピッツバーグ大学のChristopher W. Seymour氏らは、患者データを後ろ向きに解析し、宿主反応パターンや臨床アウトカムと相関する敗血症の4つの新たな臨床病型を同定した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年5月19日号に掲載された。明確に分類された臨床病型が確立されれば、より精確な治療が可能となり、敗血症の治療法の改善に結び付く可能性があるため、検討が進められていた。

骨髄腫治療におけるCAR-T細胞療法が示す可能性とその問題点(解説:藤原弘氏)-1055

この令和元年5月初めに、NCIのKochenderfer博士等のグループからB-cell maturation antigen(BCMA)を標的分子として難治性多発性骨髄腫を対象疾患とするCAR-T細胞の1つであるbb2121を用いた第I相臨床試験の有望な観察結果がNew England Journal of Medicine誌に報告された。bb2121はBCMAを認識するマウス抗体の短鎖・長鎖可変領域を一本鎖とした細胞外ドメイン(scFv)と4-1BBとCD3ζを直列につないだ細胞内ドメインを持つ第2世代CAR-T細胞である。CD19 CAR-T細胞での経験と同様に、CD28型第2世代CAR-T細胞(Brudno JN, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2267-2280.)に比較して、輸注細胞の体内生存期間の延長傾向が得られている。このCAR-T細胞はBlueBird Bio/Celgeneが開発を進め、2017年にはFDAのBreakthrough Therapy designationを受けるなど、難治性骨髄腫に対する画期的な治療薬として期待されてきた経緯がある。日本国内でも、Celgeneが第II相試験(JapicCTI-184195)を計画している。

小児自閉スペクトラム症に対するメマンチンの有効性と安全性~第II相多施設共同研究

 小児自閉スペクトラム症に対するメマンチン徐放性製剤(ER)治療の有効性と長期安全性を評価するため、米国・スタンフォード大学のAntonio Y. Hardan氏らは、3つの第II相試験(MEM-MD-91、MEM-MD-68、MEM-MD-69)を実施した。Autism誌オンライン版2019年4月26日号の報告。  MEM-MD-91(50週間のオープンラベル試験)は、MEM-MD-68(12週間のランダム化二重盲検プラセボ対照治療中止試験)への登録のため、メマンチンER治療反応患者を同定した。MEM-MD-69(オープンラベル延長試験)では、MEM-MD-68とMEM-MD-91、MEM-MD-67(オープンラベル試験)の参加者に対し、メマンチンERで約48週間治療を行った。

パクリタキセル、薬物動態ガイド下投与で有害事象減少

 がん化学療法の有害事象の抑制に朗報となる知見が寄せられた。中国・同済大学上海肺科病院のJie Zhang氏らは、進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するカルボプラチン・パクリタキセル併用療法時のパクリタキセルの投与量について、体表面積に基づいた量と個別の薬物動態ガイド下での量を比較する、前向き無作為化臨床試験を行った。その結果、薬物動態ガイド下でのパクリタキセル投与は治療効果に悪影響を及ぼすことなくGrade4の血液毒性およびGrade2の神経障害を有意に低下させることが認められたという。British Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2019年5月11日号掲載の報告。

英国で脳卒中死亡率が半減、その要因は?/BMJ

 英国では、2001~10年の10年間で年齢調整脳卒中死亡率が半減したことが、英国・オックスフォード大学のOlena O. Seminog氏らによる英国内のデータベースを用いた解析の結果、明らかにされた。著者は「低下要因として、脳卒中の治療の進歩により死亡に至る患者が減少したことに起因していると思われる」と推測している。全体で致死率は40%低下し、致死率の低下は全年齢集団で確認された。また、脳卒中発生率も20%低下していたが、35~54歳では脳卒中発生率が増加しており、著者は「55歳より若い年齢層での脳卒中予防強化が大きな課題である」とも指摘している。英国で脳卒中死亡率が低下していることは知られていたが、この低下に影響している要因については明らかになっていなかった。BMJ誌2019年5月22日号掲載の報告。

軽症持続型喘息、ICSもLAMAも対プラセボで有意差なし/NEJM

 軽症持続型喘息患者の大多数は、喀痰中好酸球比率が低く、モメタゾン(吸入ステロイド)またはチオトロピウム(長時間作用性抗コリン薬)のいずれも反応性についてプラセボと有意差は認められないことが、米国・カリフォルニア大学のStephen C. Lazarus氏らによる、42週間の無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験「Steroids in Eosinophil Negative Asthma trial:SIENA試験」の結果、示された。軽症持続型喘息患者は、喀痰中の好酸球が2%未満と低値である場合がほとんどであり、このような患者に対する適切な治療法は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「好酸球低値の患者において、吸入ステロイドと他の治療法を比較する臨床試験が必要であることが示唆される」と提言している。NEJM誌2019年5月23日号掲載の報告。

経済毒性を日本人がん患者対象に要因別に評価した結果

 先ごろ約3,500万円の医薬品が登場し社会的関心を集めたが、高額な治療費・医薬品費がどのような“副作用”をもたらすのか。愛知県がんセンター中央病院の本多 和典氏らは、米国で開発されたがん患者の経済毒性(financial toxicity)を測定するツール「COmprehensive Score for Financial Toxicity:COST」の日本語版を作成し、これまで予備的研究として日本人がん患者におけるCOSTツールの使用可能性を少数例で評価していた。その実績を踏まえて今回、同氏らはCOSTツールを用いて日本人がん患者の経済毒性を評価する前向き調査を行い、日本人がん患者における経済毒性を要因別に評価した。

抗精神病薬の治療反応に対する性差の影響

 統合失調症などの精神疾患は、男性よりも女性において予後が良好だといわれており、女性では、入院頻度が低い、自殺率が低い、法的問題への関与が少ない、家族や友人との人間関係が良好な場合が多い。この差異が、抗精神病薬による治療反応の性差に起因するかどうかは、よくわかっていない。カナダ・トロント大学のMary V. Seeman氏は、過去10年間の主要医療データベースより得られた、抗精神病薬の治療反応における性差に関する定量的および定性的文献について、批判的レビューを行った。Neuropharmacology誌オンライン版2019年5月8日号の報告。

中等症~重症ARDS、早期神経筋遮断薬は無益か/NEJM

 中等症~重症の急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者において、早期cisatracurium持続注入と深鎮静を行っても、ルーチンの神経筋遮断を行わず目標鎮静深度がより浅い通常治療を行った場合と比べて、90日院内死亡リスクは減少しないことが示された。米国・国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)が資金援助するPETALネットワークが、1,000例超の患者を対象に行った無作為化比較試験で明らかにした。NEJM誌2019年5月19日号掲載の報告。

COPDの増悪頻度に抗IL-5抗体の追加は影響せず/NEJM

 中等度~きわめて重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)で、頻回の中等度または重度の増悪既往がある好酸球数220個/m3以上の患者において、抗インターロイキン-5受容体αモノクローナル抗体benralizumabのアドオン療法は、プラセボと比較してCOPD増悪の年率頻度を減少しないことが示された。米国・テンプル大学のGerard J. Criner氏らが、それぞれ1,000例超のCOPD患者を対象にした2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GALATHEA試験」と「TERRANOVA試験」の結果を、NEJM誌2019年5月20日号で発表した。

令和の新時代にはベアメタルステント不要である(解説:中川義久氏)-1054

新規の医療機器や薬剤を開発するときに、どのような項目を観察・測定して効果等を判定するかを定める必要がある。この評価項目のことをエンドポイントと呼び、有効性と安全性に大別される。冠動脈ステントの、有効性と安全性に関する一般的な認識は以下のものであった。ベアメタルステント(BMS)は、再狭窄が多く有効性は劣るが安全性に優れる。一方、薬剤溶出性ステント(DES)は、確実な再狭窄抑制効果から有効性は高いが安全性においてはBMSに劣る。それは、CypherとTAXUSに代表される第1世代DESでは、再狭窄抑制という有効性はあるが遅発性ステント血栓症に代表される安全性への懸念があったからである。このように、BMSとDESは、それぞれ「一長一短」があると理解されていた。

日本人男女の喫煙と膵がんリスク~35万人の解析

 喫煙と膵がんリスクの関連はすでによく知られているが、アジアの大規模集団における詳細な前向き評価は少ない。今回、愛知県がんセンターの小栁 友理子氏らが、日本人集団における10研究をプール解析したところ、喫煙と膵がんリスクの関連に男女差がある可能性が示され、男性では禁煙が膵がん予防に有益であることが示唆された。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2019年5月21日号に掲載。  本研究では、10の集団ベースのコホート研究のプール解析を行った。各研究のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)についてCox比例ハザード回帰を用いて計算し、これらの推定値をランダム効果モデルと統合して要約HRを推定した。

焦点性てんかん重積状態に対する薬理学的治療のレビュー

 てんかん重積状態(SE)は、罹患率や死亡率が高く、神経学的に急を要する。SEのタイプは、予後因子の1つであるといわれている。スペイン・Hospital Universitario Severo OchoaのN. Huertas Gonzalez氏らは、SE治療に関連するさまざまな学会や専門家グループの最新レコメンデーションおよび最新研究を分析し、焦点性SEのマネジメントに関する文献を評価した。Neurologia誌オンライン版2019年5月7日号の報告。  2008年8月~2018年8月に公表された成人の焦点性SEおよび他のタイプの薬理学的治療に関する研究をPubMedより検索した。

グルコサミン、心血管イベントを抑制/BMJ

 変形性関節症の痛みを軽減するためのグルコサミンの習慣的な補充療法が、心血管疾患イベントのリスクを低減しており、とくに喫煙者でその効果が高い可能性があることが、米国・テュレーン大学のHao Ma氏らによる前向きコホート研究で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2019年5月14日号に掲載された。グルコサミン補助剤を用いる補充療法は、変形性関節症の治療で一般的に使用されているが、疾患や関節痛の軽減への効果は議論が続いている。その一方で、最近の動物実験やヒトの横断研究により、心血管疾患の予防や死亡率の抑制において役割を担う可能性が示唆され、前向き研究のエビデンスが求められている。

IV期NSCLCに対するEGFR-TKIと放射線療法の併用

 EGFR変異を有するIV期の非小細胞肺がん(NSCLC)における1次治療として、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)と胸部放射線療法を組み合わせた有効性と安全性が、前向き研究により検討された。  今回、中国・Xinqiao Hospitalがん研究所のLinPeng Zheng氏らが行った研究結果は、The oncologist誌オンライン版2019年4月30日号に掲載された。末期NSCLCにおける1次治療としてのEGFR-TKIと胸部放射線療法の併用は、原発性肺病変の長期管理を可能にするかもしれない。

食塩摂取と肥満の関連~日本と中国・英国・米国

 食塩摂取が過体重や肥満の独立した危険因子である可能性が、いくつかの研究で報告されている。しかし以前の研究では、1日食塩摂取量を推定するために24時間蓄尿ではなく単回尿や食事思い出し法を用いていること、単一国や単施設のみの集団でのサンプルといった限界があった。今回、中国・西安交通大学のLong Zhou氏らは、International Study of Macro-/Micro-nutrients and Blood Pressure(INTERMAP研究)のデータから、日本、中国、英国、米国における、2回の24時間蓄尿で推定した食塩摂取量とBMIおよび過体重/肥満の有病率の関係を調査した。

術後疼痛への長期使用リスク、トラマドールvs.他オピオイド/BMJ

 短時間作用型オピオイド系鎮痛薬トラマドールは、一般に他の同種のオピオイドに比べ安全性が高いと考えられているが、相対的にリスクが低いことを支持するデータはないという。米国・メイヨークリニックのCornelius A. Thielsらは、術後の急性疼痛の治療にトラマドール単剤を投与された患者では、退院後の長期オピオイド使用のリスクが、他の同種のオピオイドよりも、むしろわずかに高いことを示した。研究の成果はBMJ誌2019年5月14日号に掲載された。