日本語でわかる最新の海外医学論文|page:542

不安や睡眠の質と飲酒との関係

 睡眠不足の人は、睡眠の質を高めるために不安を和らげようとするが、毎日の飲酒が不安や睡眠障害を緩和する要因であるかはよくわかっていない。台湾・輔仁大学のKe-Hsin Chueh氏らは、不安と睡眠の質との関連および毎日の飲酒が、睡眠不足の人の不安や睡眠の質に対し調整因子として働くかについて、検討を行った。The Journal of Nursing Research誌オンライン版2018年11月28日号の報告。  台湾北部で睡眠不足(ピッツバーグ睡眠質問票:5超)を報告した20~80歳の84例を対象に、横断研究を行った。

便秘が、全死亡・心血管イベントリスクと関連

 便秘は日常診療で最も遭遇する症状の1つであり、アテローム性動脈硬化症の発症と関連している(腸内微生物叢の変化による可能性)が、心血管イベント発症との関連についてはほとんど知られていない。今回、米国退役軍人コホートにおける研究から、便秘であることと便秘薬の使用がそれぞれ独立して、全死因死亡、CHD発症、虚血性脳卒中発症のリスクと関連していたことを、米国テネシー大学/虎の門病院の住田 圭一氏らが報告した。Atherosclerosis誌オンライン版2018年12月23日号に掲載。

円形脱毛症とうつ病、相互にリスク因子

 円形脱毛症(AA)の罹病は、後にうつ病を発症するリスクがある一方で、大うつ病性障害(うつ病、MDD)の罹病も後のAA発症の有意なリスク因子であることが、カナダ・カルガリー大学のIsabelle A. Vallerand氏らによって明らかになった。MDDのAA発症リスクに関しては、抗うつ薬使用が交絡因子であること(予防効果を確認)も示されたという。AAは脱毛の自己免疫疾患であり、患者にMDDなどの大きな精神的負担を強いる。一方で、多くの患者はAAを発症する前にメンタルヘルス症状を訴えることから、MDDとAA双方の関連が示唆されている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年1月16日号掲載の報告。

米国の外来抗菌薬処方、7例に1例は不適正/BMJ

 2016年の米国の外来診療における0~64歳(民間保険加入者)への抗菌薬処方のうち、23.2%が不適正で、28.5%は最新の診断コードに該当しないことが、米国・ミシガン大学のKao-Ping Chua氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年1月16日号に掲載された。国際疾病分類第9版改編版(ICD-9-CM)の診断コードおよび2015年以前のデータを使用した米国の研究では、外来患者への不適正な抗菌薬処方が広範に及ぶことが示されているが、2015年10月1日に、ICD-9-CMに替わって導入されたICD-10-CMに含まれる包括的な診断コード分類に基づく適正使用の検討は行われていなかった。

軽度アルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬のベネフィット

 アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI-AD)および軽度のアルツハイマー型認知症(ADdem)に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)の認知機能アウトカムについて、米国・セントルイス・ワシントン大学のJee-Young Han氏らが検討を行った。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌オンライン版2019年1月10日号の報告。  対象は、MCI-AD(臨床認知症評価法[CDR]:0または0.5)もしくは軽度ADdem(CDR:0.5または1)と臨床的に診断された2,242例。患者データは、National Alzheimer's Coordinating Center(NACC)の統一データセット(Uniform Data Set)より抽出した。

配偶者ががんと診断された人、1年以内の死亡率が2倍

 がん患者と一緒に暮らす配偶者において、心理社会的健康への悪影響だけでなく死亡リスクも増加する可能性が指摘されている。今回、東北大学の中谷 直樹氏らは、日本人集団の大崎コホート2006研究で、配偶者のがん診断と死亡率との関連について前向きコホート研究デザインにて検討した。その結果、配偶者のがん診断に起因する死亡率が診断後早期に有意に高いことが示され、がん治療の集学的チームが配偶者の死を防ぐために重要である可能性が示された。Acta Oncologica(Stockholm)誌オンライン版2019年1月21日号に掲載。

出生児の有害アウトカム、不妊治療が原因か?/Lancet

 自然妊娠の子供に比べmedically assisted reproduction(MAR)で妊娠した子供は、有害な出生アウトカムのリスクが高いが、そのほとんどはMAR以外の要因によることが、英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のAlice Goisis氏らの検討で示された。すでにMARで出生した子供は500万人以上に上り、これらの子供のウェルビーイング(wellbeing)に及ぼすMARの影響の検討が活発化しているという。MARとは、生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)に加え、排卵誘発、調節卵巣刺激、配偶者/パートナーまたはドナーの精液を用いた子宮内・子宮頸管内・膣内受精などによる生殖を含めた概念である。ARTは、妊娠を促す目的で、卵母細胞と精子の双方あるいは胚を体外で操作する処置または治療であり、体外受精や胚移植のほか、配偶子卵管内移植、接合子卵管内移植、配偶子・胚の凍結保存、卵母細胞・胚の提供、代理母出産などが含まれる。Lancet誌オンライン版2019年1月14日号掲載の報告。

ヘモクロマトーシスの遺伝子変異、一般的な疾患とも関連/BMJ

 HFE遺伝子p.C282Y変異のホモ接合体は、性別を問わず、臨床的に診断された一般的な疾患(肝疾患、糖尿病、関節リウマチ、変形性関節症など)の有病率や発生率と関連があり、鉄過剰に関連するp.C282Y変異は、早期に介入を開始すれば予防および治療の可能性があることが、英国・エクセター大学のLuke C. Pilling氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年1月16日号に掲載された。欧州人家系では、HFE遺伝子p.C282Y変異ホモ接合体は、鉄過剰症である遺伝性ヘモクロマトーシス(1型)の主因とされる。鉄過剰症は瀉血療法により予防可能であり、治療が可能な場合もあるが、見逃しや診断の遅延が多いという。

素材か道具か人間か-ベスト・プラクティスは何処に?(解説:今中和人氏)-1001

本論文は16の退役軍人病院における冠動脈バイパス1,150例をランダム化し、大伏在静脈(SVG)を576例は内視鏡的に、574例は切開して採取し、中央値2.78年までの臨床成績を検討している(造影検査は検討対象外)。特徴的な制約として、内視鏡的採取100例以上(切開へのコンバート5%以下)、臨床経験2年以上の熟練者のみがSVG採取を行った。結論は、死亡、非致死性心筋梗塞、再血行再建などの主要転帰はまったく同等で14~15%、SVG採取時間も1時間前後で有意差はなかったが、下肢合併症(感染、疼痛、滲出、抗菌薬投与)は、いずれも有意に内視鏡群で低率であった。過去には内視鏡的採取は成績が著しく劣るとする論文も多く、それを支持するメタ解析もあって、この論文はそれらに異を唱える形である。そんな本論文の著者が強調しているのはSVG採取を熟練者に限定したことで、結論が食い違った理由は、過去の論文には不慣れな採取者による質の良くないSVGが含まれているためではないかと推論している。

統合失調症でみられる強迫症状に関するレビュー

 統合失調症における強迫症状(OCS)や強迫症(OCD)に関する文献について、インド・Postgraduate Institute of Medical Education and ResearchのSandeep Grover氏らがレビューを行った。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2018年12月18日号の報告。  電子検索により、統合失調症患者におけるOCSやOCDに関するさまざまな研究を検索した。

肺がんのニボルマブ治療、スタチン使用者で効果高い

 既治療進行非小細胞肺がん(NSCLC)におけるニボルマブの臨床的な効果予測因子の報告は多いが、ニボルマブの有効性を予測できる単一の因子を決定する十分なエビデンスはない。今回、がん・感染症センター都立駒込病院/日本医科大学の大森 美和子氏らによる前向き調査の結果、既治療進行NSCLCに対してニボルマブを受けた患者において、スタチン使用群で奏効割合が高く、治療成功期間(TTF)の延長も示された。なお、全生存期間(OS)の有意な延長は示されなかった。Molecular and Clinical Oncology誌2019年1月号に掲載。

食物繊維は健康関連アウトカムを改善、低GI食の効果は?/Lancet

 ニュージーランド・オタゴ大学のAndrew Reynolds氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、食物繊維の摂取量増加および全粒穀物摂取を推奨することは、人々の健康に有益と考えられることが示された。炭水化物の質と健康との関連性を検証したこれまでのシステマティックレビューとメタ解析では、1つのマーカーを検証したものが多く、臨床アウトカムの数は限定的であった。Lancet誌オンライン版2019年1月10日号掲載の報告。

多発性硬化症進行、疾患修飾薬による違いは?/JAMA

 再発寛解型多発性硬化症(MS)患者において、フィンゴリモド、アレムツズマブ、ナタリズマブによる初回治療は、グラチラマー酢酸塩またはインターフェロンβ(IFNβ)による初回治療と比較し、二次性進行型MSへの移行リスクが低い。英国・ケンブリッジ大学のJ. William L. Brown氏らが、疾患修飾薬(DMT)の使用と二次性進行型MSへの移行リスクとの関連性を検証した前向きコホート研究の結果を報告した。未治療の再発寛解型MS患者の80%は20年以内に二次性進行型MSに移行するが、DMTと二次性進行型MSへの移行との関連性について妥当性が確認された定義を用いた研究はほとんどなかった。著者は今回の結果について、「DMTを選択する際に役立つ可能性がある」とまとめている。JAMA誌2019年1月15日号掲載の報告。

日本人の脳卒中生涯リスク:4人に1人が脳卒中になる(解説:有馬久富氏)-1000

Global Burden of Disease(GBD)研究2016より、全世界における脳卒中の生涯リスクがNEJM誌に報告された。その結果、25歳以降に脳卒中を発症するリスクは25%であった。日本における脳卒中の生涯リスクは全世界よりも少し低い23%であり、約4人に1人が脳卒中に罹患する計算になる。また、日本では1990~2016年までの間に生涯リスクが3%減少していた。  一方、東アジアで脳卒中の生涯リスクが最も高いのは中国(39%)であり、約2.5人に1人が罹患する計算になる。さらに中国では、1990~2016年までの間に生涯リスクが9%も増加していた。中国において高血圧の未治療者や、降圧目標を達成できていない者が多いことが、高い脳卒中生涯リスクの一因かもしれない。

治療の見直しに有効か、スタチン不耐治療指針公表

 2018年12月27日、日本動脈硬化学会は『スタチン不耐に関する診療指針2018』を同学会ホームページ上に公表した。これまで、スタチン不耐の定義が不統一であったことが症例集積の大きなハードルであったが、診療指針が作成されたことで、その頻度と臨床像を明らかにし、各個人に適切なLDL-C低下療法の実践が期待できるとのこと。なお、本指針を作成したスタチン不耐調査ワーキンググループには、日本動脈硬化学会をはじめ、日本肝臓学会、日本神経学会、日本薬物動態学会の専門家も含まれている。

治療抵抗性強迫症に対する増強治療に関するメタ解析

 治療抵抗性強迫症(OCD)の治療では、セロトニン再取り込み阻害薬の増強療法のためにさまざまな薬剤について研究が行われてきた。中国・重慶医科大学のDong-Dong Zhou氏らは、治療抵抗性OCD成人患者における異なる増強療法の包括的な比較を行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2019年3月2日号の報告。

三日熱マラリアの再発予防にtafenoquine単回投与は有効か?/NEJM

 三日熱マラリア原虫(P.vivax)マラリアの患者に対し、tafenoquineの単回投与は、再発予防に関して、プリマキン14日間投与に対する非劣性は示されなかった。グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)活性が正常値の患者において、ヘモグロビン値低下の有意差は認められなかった。ペルー・Peruana Cayetano Heredia大学のA. Llanos-Cuentas氏らが行った、第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験の結果で、著者は「tafenoquineはP.vivaxマラリアの根治治療(radical cure)に有効ではあるが、プリマキンに対する非劣性は示されなかった」とまとめている。tafenoquineの単回投与は、“根治治療”と称されるP.vivax血症と休眠体の消失により、再発予防と関連することが示されていた。NEJM誌2019年1月17日号掲載の報告

太れば太るほど、GFR低下・死亡リスク増/BMJ

 肥満は、慢性腎臓病(CKD)の有無にかかわらず、糸球体濾過量(GFR)の低下および死亡のリスク増大と関連することが明らかにされた。米国・Geisinger Health SystemのAlex R. Chang氏らが、40ヵ国のコホートを基に分析した結果で、BMJ誌2019年1月10日号で発表した。これまで肥満と末期腎疾患(ESKD)との関連は示されているが、関連の程度は試験間でばらつきがみられていた。また、CKDのコホート試験で、肥満はリスク増大とは関連せず、死亡リスクは低いことが示されていた。BMI値とCKDの関連を検討したメタ解析では、被験者データが不足しており、ウエスト囲など体幹部肥満の計測値が含まれておらず結果が限定的だった。研究グループは、肥満計測値(BMI値、ウエスト囲、ウエスト身長比)とGFR低下および全死因死亡との関連を調べた。

NSCLC1次治療におけるペムブロリズマブ単独治療の追跡結果(KEYNOTE-024)/JCO

 未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)の転移を有するNSCLC患者を対象にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)単独投与群と標準治療のプラチナベース化学療法群を比較したKEYNOTE-024試験の追跡結果が、Journal of Clinical Oncology誌に2019年1月8日付けで発表された。全生存期間(OS)結果の更新と共にクロスオーバーバイアス調整分析を含む忍容性解析も報告された。  KEYNOTE-024は、国際無作為化オープンラベル第III相試験 ・対象:転移を有する未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)NSCLC患者(305例) ・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと(154例) ・対照群:治験担当医が選択したプラチナベース化学療法 4~6サイクル(151例) ・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、[副次評価項目]OSなど

メマンチンと抑肝散との薬物相互作用に関する基礎研究

 アルツハイマー病の治療においては、コリンエステラーゼ阻害薬やメマンチン(MEM)、または抑肝散(YKS)などの認知症患者の行動と心理症(BPSD)治療に用いられる伝統的な漢方薬が使用される。株式会社ツムラのTakashi Matsumoto氏らは、MEMとYKSとの薬物相互作用(DDI)を明らかにするための研究の一環として、いくつかの基礎的な薬物動態学的および薬理学的研究を実施した。Molecules誌2018年12月29日号の報告。