日本語でわかる最新の海外医学論文|page:501

ニボルマブ+低用量イピリムマブ、NSCLCのOS有意に改善(CheckMate-227)/ESMO2019

 イピリムマブとニボルマブの併用は、悪性黒色腫や腎細胞がんにおいて全生存期間(OS)の改善を示している。非小細胞肺がん(NSCLC)においても、イピリムマブの用法・用量の肺がんへの適正化(1mg/kg 6週ごと投与)により、有効性を示す試験結果が報告されている。CheckMate-227試験は、ニボルマブベースの治療と化学療法を比較したオープンラベル無作為化第III相試験。同試験は、Part1とPart2で構成されており、Part1の結果として、高腫瘍変異負荷(TMB≧10mut/Mb)患者におけるイピリムマブ・ニボルマブ併用の化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)の延長が報告されている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、Part1の最終結果、とくにPD-L1≧1%の患者における主要評価項目であるイピリムマブ+ニボルマブ対化学療法の全生存期間(OS)のデータについて、スイス・ローザンヌ大学のSlonge Peters氏が発表した。

局所進行胃がんに対するDOSによる術前化学療法の追加効果(PRODIGY)/ESMO2019

 局所進行胃がんに対する術後S-1治療への術前ドセタキセル+オキサリプラチン+S-1(DOS)の追加効果を検討したPRODIGY試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告された。韓国・蔚山大学校のYoon-Koo Kang氏による発表。  アジアにおいて、胃切除リンパ節郭清(D2)とそれに続く術後化学療法は、切除可能進行胃がんに対する標準治療となっている。PRODIGY試験は、標準治療へのDOSの術前化学療法追加による効果を検証した第III相試験である。

咽頭・扁桃炎へのペニシリンV、1日4回×5日間の効果/BMJ

 A群レンサ球菌に起因する咽頭・扁桃炎のペニシリンVによる治療について、現在推奨されている1日3回×10日間療法に対して、1日4回×5日間療法が臨床的アウトカムに関して非劣性であることが示された。再発と合併症の発生数は、両群間で差はみられなかったという。スウェーデン公衆衛生局のGunilla Skoog Stahlgren氏らが行った無作為化非盲検非劣性試験の結果で、著者は「ペニシリンVの1日4回×5日間療法は、現在の推奨療法に代わりうるものとなるかもしれない」とまとめている。抗菌薬への耐性増加と新しい抗菌薬の不足もあり、既存の抗菌薬の使用を最適化することの重要性が強調されている。

COPD入院患者へ3ヵ月間の支援介入、QOLを改善せず/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院した患者に対し、入院中から開始する在宅移行支援と長期自己管理支援を組み合わせた、COPD看護師による3ヵ月間の介入プログラムは、通常ケアと比較してCOPD関連の入院や緊急部門(ER)受診を有意に増大し、QOLの改善は認められなかったことが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のHanan Aboumatar氏らが、同大で開発した「BREATHE Program」を検証した単施設無作為化試験の結果で、「今回示された予想外の結果の理由を明らかにするために、さらなる試験を行う必要がある」と述べている。COPDの増悪による入院患者は、再入院率が高く、QOLの低下が認められる。これまでに、退院時介入(退院支援)が再入院を低減することは報告されているが、死亡やQOLへの影響は示されていない。在宅移行支援に関しては研究例が少なく、焦点も回復期ケアや退院後30日間に限られ、長期の慢性疾患自己管理のスキルに着目した研究例はなかった。そうした中で、これらの支援介入は、患者のアウトカム改善や急性期ケアの利用低減に不十分ではないかとする見方もあった。JAMA誌2019年10月8日号掲載の報告。

日本高血圧学会、台風19号被災者向けのQAと総会概要を発表

 10月15日、特定非営利活動法人日本高血圧学会(JSH)は、10月25-27日に開催される第42回日本高血圧学会総会に先立ち、プレスセミナーを開催した。  冒頭に、理事長の伊藤 裕氏が、台風19号による甚大な被害を踏まえ、学会としての対応を発表した。「甚大な被害が広範囲に広がり、避難生活が長引く被災者も多くなると考えられる。ストレスや血圧の管理が不十分となり、いわゆる『災害高血圧』が生じて、脳卒中や心疾患につながることを懸念している」と述べた。最初の対応としては、被災地の高血圧患者から多く寄せられる質問と回答をまとめ「台風19号により被害を受けられた皆さまへ」と題して学会サイトに発表した。

スボレキサントの睡眠改善効果と聴覚刺激による目覚め効果

 不眠症患者の夜間の反応性に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)スボレキサントの安全性プロファイルについて、米国・Thomas Roth Sleep Disorders and Research CenterのChristopher L. Drake氏らが、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験により検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2019年9月15日号の報告。  不眠症患者(DSM-5診断)12例を対象に、スボレキサント10mg群、スボレキサント20mg群、プラセボ群にランダムに割り付けた。薬物最大血中濃度に達した時点で、安定期N2睡眠中に聴覚刺激音を再生し、目覚めるまで5デシベル(db)ずつ増加した。覚醒時のdbを聴覚刺激覚醒閾値(AAT)とし、群間比較を行った。また、85db超の割合についても比較を行った。最終的に、閾値周辺(80db、90db)を用いて感度分析を実施した。

わが国の肺がんの静脈血栓塞栓症の発生率(Rising-VTE)/WCLC2019

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、悪性腫瘍でよくみられる合併症である。しかし、肺がんの診断時のVTEの発生率についてはほとんど知られていない。日本の40施設を対象とした多施設前向き観察研究Rising-VTE/NEJ037について、県立広島病院の濱井 宏介氏が世界肺癌学会(WCLC2019)で発表した。  Rising-VTE/NEJ037の対象は、切除または放射線治療不能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者。VTEは造影CTまたは下肢エコー検査に基づき診断された。試験の主要評価項目は、中央判定委員会が評価する登録後2年間の症候性および無症候性の再発または新たに診断されたVTEの発症率である。

男性乳がん死亡率、女性乳がんより高い?/JAMA Oncol

 乳がんは男性患者と女性患者で生存率に差があることが報告されているが、性差が関連する要因について、大規模なデータ解析に基づく知見が示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのFei Wang氏らは全米がん登録コホート研究にて、乳がん診断後の死亡率は、臨床的特徴、治療因子、治療を受ける機会を考慮しても、女性患者より男性患者で高いことを明らかにした。乳がん死の性差を理解することは、がん治療とサバイバーのケアに関する戦略を立てるうえで基本となる。結果を受けて著者は、「死亡率の性差をなくすためには、とくに生物学的属性、治療コンプライアンス、ライフスタイルなど他の要因を特定する必要があろう」と指摘している。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。

がん患者におけるVTEとAF、わが国の実際/腫瘍循環器学会

 固形がん患者の2~8%に悪性腫瘍関連静脈血栓塞栓症(CA-VTE)が合併すると欧米より報告されている。アジア人は白人と比較してCA-VTEの合併率が低いとの報告もあるが、日本人の固形腫場患者を対象としたCA-VTEの合併率の報告は少ない。神戸大学の能勢 拓氏らは、自施設における新規固形がん患者を対象として後方視的に情報を収集し、第2回日本腫瘍循環器学会で発表した。  対象は2,735例で、観察期間中央値は103日であった。CA-VTEが認められ、合併率は3.3%(2,735例中92例)で、欧米の報告と同等であった。CA-VTE合併例の年齢中央値は70歳で、52%が女性であった。症候ありは47%で、Dダイマー正常値(<1.0μg/mL)は5.4%であった。

NIRS-IVUS、不安定プラークと患者のイベントリスクを特定/Lancet

 心臓カテーテル検査を行い即時の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者に対する血管内超音波(IVUS)イメージングについて、近赤外線分光法(NIRS)によるイメージングの非閉塞領域に対する安全性が確認され、また、その後の非責任病変部の主要有害心血管イベント(NC-MACE)のリスクが高い患者、および発生の可能性がある部位の特定に役立つことが示された。米国・MedStar Washington Hospital CenterのRon Waksman氏らが、前向きコホート試験「Lipid-Rich Plaque:LRP試験」の結果を報告した。NIRS-IVUSイメージングは、急性冠症候群または心筋梗塞に関連し血行再建あるいは心臓死につながる脂質に富むプラーク(lipid-rich plaque:LRP)を検出できるが、将来的にイベントを呈する可能性がある冠動脈や患者を予測する検討は小規模で、プラークに立脚した仮説は検証されていなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「NIRS-IVUSは、臨床診療で不安定プラークを有する患者およびそのプラークを検出できる初回イメージングツールとして、考慮すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年9月27日号掲載の報告。

進行NSCLCの初回治療、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法による初回治療はPD-L1発現レベルを問わず、化学療法と比較して全生存(OS)期間を延長することが認められた。また、長期追跡において新たな安全性の懸念は生じなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMatthew D. Hellmann氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CheckMate-227試験」の結果を報告した。進行NSCLC患者を対象とした第I相試験において、とくにPD-L1陽性患者で、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法がニボルマブ単剤療法よりも奏効率が良好であることが示され、NSCLC患者におけるニボルマブ+イピリムマブの長期的な有効性を評価するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。

BRAF V600E変異大腸がんに対するビニメチニブ、エンコラフェニブ、セツキシマブの3剤併用(BEACON CRC)/ESMO2019

 スペインVall d’Hebron 大学病院のJosep Tabernero氏は、転移のあるBRAF V600E変異大腸がんに対する、BRAF阻害薬アンコラフェニブ、MEK阻害薬ビニメチブ、抗EGFR抗体セツキシマブの3剤併用療法を検証した無作為化非盲検の第III相試験BEACON CRCの結果を発表。この3剤併用療法あるいはアンコラフェニブとセツキシマブの併用療法は、従来のFOLFIRI療法あるいはイリノテカンにセツキシマブを加えた治療法に比べ、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)を有意に改善すると報告した。

局所進行NSCLCのCRT、10年でどこまでcure?(WJTOG0105)/ESMO2019

 WJTOG0105は、切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)における、胸部放射線治療(TRT)の併用化学療法として、第3世代レジメン(イリノテカン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチン)と第2世代レジメン(マイトマイシン+ビンデシン+シスプラチン)を比較した第III相試験である。この試験の結果、第3世代レジメンによるCRTは切除不能Stage III NSCLCの標準治療の1つとして確立された。しかし、CRTによる累積毒性と長期生存はまだ明らかになっていない。国立がん研究センター東病院の善家 義孝氏は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、わが国のStage III NSCLCにおけるCRTの生存と毒性の10年間追跡調査の結果を報告した。

アテゾリズマブ+T-DM1、HER2+/PD-L1+乳がんでのOSの結果(KATE2)/ESMO2019

 HER2陽性の進行・再発乳がん(mBC)に対する、PD-L1抗体のアテゾリズマブとT-DM1との併用療法の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・University of Pittsburgh Medical Center Hillman Cancer CenterのLeisha A. Emens氏より発表された。  KATE2試験は、国際共同の二重盲検比較の第II相試験である。2017年12月データカットオフ時点での1回目の無増悪生存期間(PFS)に関する解析は、2018年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で両群間には有意差がないという発表がなされている。今回は2018年12月のデータカットオフ時点の最終解析としての全生存期間(OS)や安全性の発表となる。

双極性障害における認知パフォーマンス~メタ解析

 神経認知障害は、寛解期の双極性障害患者において多く報告されており、機能障害に影響を及ぼしている。しかし、これらの障害に関する縦断的な軌跡は、よくわかっていない。これまでの研究で、中年期双極性障害患者では神経認知障害が安定化する傾向が示唆されていたが、この状態は初期または後期で悪化する可能性がある。米国・ハーバード大学T. H. Chan公衆衛生大学院のAlejandro Szmulewicz氏らは、発症初期または後期の双極性障害患者における神経認知パフォーマンスの縦断的分析を行うため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2019年9月21日号の報告。

進行肺がん患者への緩和ケアは生存ベネフィットあり/JAMA Oncol

 緩和ケアは進行肺がん患者の生存ベネフィットと関連していることが、米国・オレゴン健康科学大学のDonald R. Sullivan氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、示唆された。緩和ケアは患者中心のアプローチでQOL改善と関連するが、これまで生存ベネフィットとの関連については、さまざまな結果が示されていた。また、そのことが、緩和ケアが十分活用されない要因ともされている。今回の結果を踏まえて著者は、「緩和ケアは、進行肺がん患者において、疾患修飾治療を補完するアプローチとして考慮されるべきである」と述べている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。

人工股関節全置換 vs.半関節形成、2年後の有意差なし/NEJM

 50歳以上の転位型大腿骨頸部骨折において、人工股関節全置換術を受けた患者と半関節形成術を受けた患者とで、24ヵ月間の二次的な股関節手術の発生率に有意差はなく、人工股関節全置換術が半関節形成術と比べて、機能やQOLに関して臨床的に重要な改善を示さなかったことが報告された。カナダ・マックマスター大学のMohit Bhandari氏らの研究グループ「The HEALTH Investigators」が、約1,500例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。世界的に、大腿骨近位部骨折は、成人の障害要因のトップ10位内に含まれる。これまで転位型大腿骨頸部骨折について、股関節全置換術を半関節形成術と比べた効果については不確定なままであった。NEJM誌オンライン版2019年9月26日号掲載の報告。

カバジタキセル、転移のあるmCRPCのPFSを延長/NEJM

 転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)で、ドセタキセルおよび抗アンドロゲン薬(アビラテロン、エンザルタミド)既治療の患者に対し、カバジタキセルは抗アンドロゲン薬に比べ、画像評価による無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが示された。オランダ・エラスムス医療センターのRonald de Wit氏らが、255例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年9月30日号で発表した。ドセタキセル治療と抗アンドロゲン薬治療を受けるも12ヵ月以内に病勢進行が認められたmCRPC患者について、抗アンドロゲン薬と比較したカバジタキセルの有効性および安全性は不明であった。

重症域の妊娠高血圧症候群に対する経口降圧薬の効果比較(解説:三戸麻子氏)-1121

重症域の妊娠高血圧症候群に対する降圧加療として、ニフェジピン、ラベタロール、メチルドパという日常診療で頻用されている経口薬の降圧効果・副作用を直接比較している点が画期的である。また、緊急の降圧が必要な症例に対しては経静脈的な降圧加療が行われることも多いが、それがかなわない状況も考慮してすべて経口薬で行っている部分も斬新と思われる。Primary outcomeはニフェジピン群がメチルドパ群より有意に達成していたものの、ニフェジピンとラベタロールは同等であった。しかし、本研究では初回使用量がニフェジピン10mg、ラベタロール200mgのうえ、必要に応じて各々30mg、600mgまで増量しているということから、ラベタロールは本邦での使用よりも高用量で使用されていることに留意する必要がある。