皮膚病理所見のオンライン提示、臨床病理医はその影響をどう見るか

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/19

 

 米国ではすでに多くの患者が、オンライン(patient portal)を介して、病理検査の結果報告にアクセスしている状況にあるという。米国・ワシントン大学のHannah Shucard氏らは、そうした状況について、病理医の観点での検証がほとんど行われていないとして臨床皮膚科病理医を対象とするサーベイ調査を行った。その結果、大半が「病理検査の結果をオンラインで利用できるようにすることはよい考えである」と評価しつつも、患者の心配と混乱が増大していることへの懸念を抱く病理医も多いことが明らかになった。著者は、「患者のオンラインアクセスが増えていく中で、患者の理解の改善や潜在的ネガティブコンセンサスを減少するために、どのような報告が最適かを考えることが重要だ」と指摘し、「患者と臨床医双方にとって、最善の行為および効果となるように留意して、さらなる研究を行う必要がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年1月29日号掲載の報告。

 研究グループは、患者が病理検査結果をオンラインアクセスで得ていることに関して、皮膚科病理医の経験および認識の状況を明らかにするサーベイ調査を行った。

 対象者は、米国で臨床に従事する、皮膚病理の教育を受けた認定専門医および/または研究医160例で、2018年7月15日~2019年9月23日に集められた。対象者は、前年までに色素細胞生病変の皮膚生検を解釈した報告を行っており、その後2年間、それらの解釈を行い続けると考えている者であった。

 主要評価項目は、対象者の人口統計学的および臨床的特性、病理検査結果報告への患者オンラインアクセスの経験の有無、患者オンラインアクセスに対する潜在的行動および反応、オンライン報告を読んだ患者への効果であった。

 主な結果は以下のとおり。
・調査は、226例の適格参加者のうち160例から回答を得た(回答率71%)。
・160例のうち男性107例(67%)、平均(SD)年齢は49(9.7)歳(範囲:34~77)であった。
・91例(57%)が、自身が書いた病理検査報告について、患者からオンラインアクセスを受けた経験があった。
・一部の回答者は、略語および/または専門用語の使用が減った(57例[36%])、がんが疑われる病変の記述方法が変わった(29例[18%])ことを認識しており、また患者が報告書を読む場合には、患者とのコミュニケーションの専門的な訓練を受ける必要がある(39例[24%])と認識していた。
・大部分の回答者はオンラインの利用によって、患者の理解が増すこと(97例[61%])、患者-医師間のコミュニケーションの質が向上すること(98例[61%])が期待できると認識していた。
・同時に、患者の心配が増す(114例[71%])、混乱が増す(116例[73%])と考えている病理医も少なからず存在していた。
・しかし、結局のところは大部分の回答者は、患者がオンラインで病理検査の結果報告を入手できることはよい考えであると同意を示した(114例[71%])。

(ケアネット)