日本語でわかる最新の海外医学論文|page:503

収縮期血圧、拡張期血圧ともその上昇は心血管系発症リスクであることを確認(解説:桑島巖氏)-1099

本論文は130万例という膨大な症例数の観察研究から、収縮期/拡張期血圧の心血管合併症発症リスクを高血圧の定義を130/80mmHg、140/90mmHgに分けて検討したものである。結果としていずれの定義であっても収縮期血圧、拡張期血圧は、各々独立した発症リスクの予測因子であることが示され、収縮期血圧のリスクは拡張期血圧よりも予測リスクが高いことを証明した。観察研究において収縮期血圧と拡張期血圧とを各々分け、心血管リスク評価にあたってはその解釈に十分に注意する必要がある。なぜなら加齢変化により収縮期血圧は上昇傾向となり、拡張期血圧は下降傾向をたどるからである。すなわち高齢者により脈圧が大きくなることは多くの臨床家が経験していることである。

病院ランキングと患者アウトカムは関連する?/JAMA Surgery

 出版不況と言われる中、相変わらず病院ランキング本だけは堅調と言われている。米国の病院ランキング本をめぐる興味深いエビデンスが報告された。米国・カリフォルニア大学アーバイン医療センターのSahil Gambhir氏らが、US News & World Report(USNWR)掲載の年間ランキングが最高位の病院について、ランキング外の病院と比較した結果、高度な腹腔鏡下消化器外科手術に関する病院ランキングデータと、良好な患者アウトカムは関連していないことが示された。

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、うつ薬治療に奏効しなかったうつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法(0.5~3mg/日)の二重盲検ランダム化比較試験を含むシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年7月27日号の報告。  アウトカムは、奏効率(主要)、寛解率(副次)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS、副次)、シーハン障害尺度(SDS、副次)、臨床全般印象/重症度(CGI-I/CGI-S)、中止率、有害事象とした。6週目のデータにおけるサブグループメタ解析において、2mg/日超または2mg/日以下の投与量でアウトカムの比較を行った(2mg/日が推奨投与量)。

認知症リスクに50歳での心血管健康度が関連/BMJ

 中年期に推奨される心血管健康スコア「ライフ シンプル7」の順守が、晩年における認知症リスク低下と関連していることが明らかにされた。「ライフ シンプル7」では、生活習慣や血糖値、血圧など7つの項目をスコア化し心血管リスクの指標としている。フランス・パリ大学のSeverine Sabia氏らが、約8,000例を約25年間追跡した、前向きコホート試験により明らかにし、BMJ誌2019年8月7日号で発表した。  研究グループは、ロンドンの公務員を対象に行われたWhitehall II試験(1985~88年に登録)の参加者で、50歳時点における心血管健康スコアのデータがあった7,899例を対象に前向き試験を行った。

重症妊娠高血圧、経口薬ではニフェジピンがより効果大か/Lancet

 医療資源が乏しい環境下の重症高血圧症の妊婦について、基準値への降圧を図る経口薬治療の効果を検証した結果、ニフェジピン、メチルドパ、ラベタロールのいずれもが現実的な初回選択肢であることが示された。3薬間の比較では、ニフェジピンの降圧達成率がより高かったという。米国・ワシントン大学のThomas Easterling氏らが、これまで検討されていなかった3種の経口降圧薬の有効性と安全性を直接比較する多施設共同非盲検無作為化比較試験を行い、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号で発表した。高血圧症は妊婦における最も頻度の高い内科的疾患であり、重症例では広く母体のリスク低下のための治療が推奨される。急性期治療としては一般に静脈投与や胎児モニタリングが有効だが、医療従事者が多忙であったり医療資源が限られている環境下では、それらの治療は困難であることから研究グループは本検討を行った。

食道アカラシアに対する内視鏡的筋層切開術(POEM)はバルーン拡張術より優れている(解説:上村直実氏)-1100

下部食道の良性狭窄により食物の通過障害、嘔吐、胸痛、誤嚥性肺炎などを生じる疾患である食道アカラシアの原因は下部食道のアウエルバッハ神経叢の変性消失と考えられている。治療法として薬物療法、内視鏡的バルーン拡張術、ボツリヌス菌毒素局注療法、外科的治療として腹腔鏡下Heller手術などが行われていたが、2008年に経口内視鏡を用いて食道の筋層切開を行い、食道アカラシアの狭窄を改善する内視鏡的筋層切開術が現日本消化器内視鏡学会理事長である井上晴洋氏により開発された。その後、2012年から先進医療として施行された後、2016年に保険収載され、手術例数はわが国で2,000例以上、世界中では3,000例に達している。

HIV感染症の治療も、過ぎたるは猶及ばざるが如し(解説:岡慎一氏)-1098

HIV感染症治療で、4剤併用療法と3剤併用療法のどちらが効果があるかを比較したRCTに関するsystematic review and meta-analysisである。1987年初めて開発された抗HIV薬がAZTであった。当然単剤治療であり、その治療効果は半年しか持たなかった。1990年代に入り、AZT+ddIやAZT+3TCなどの核酸系逆転写酵素阻害薬2剤による併用療法が可能になった。しかし、やはりその効果は長く続かなかった。薬剤耐性ウイルスが原因であった。ところが、1996年後半からプロテアーゼ阻害薬もしくは非核酸系逆転写酵素阻害薬が追加され3剤併用療法になった途端、HIV感染者の予後は劇的に改善した。耐性ウイルスが出にくくなったからである。

日本と米国における認知症ケア選択~横断的観察研究

 日本では、認知症者ができるだけ長く社会に関わっていけるようにするため、国策として「dementia-friendly initiative」を導入した。しかし、家族の介護負担を軽減するために特別養護老人ホームへの入所を選択する人もいる。政策を決定するうえで、介護する場所に対する中年の好みを理解し、それに影響を及ぼす要因を特定することは、「dementia-friendly initiative」の促進に役立つ。東京都医学総合研究所の中西 三春氏らは、認知症を発症した際の、日本と米国の中年におけるケアの好みについて調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年7月7日号の報告。

T790M陽性肺がんのオシメルチニブ治療、日本の実臨床データ/日本臨床腫瘍学会

 EGFR T790M変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブの市販後調査の一環として行われた全例調査の最終結果を、神奈川県立がんセンター加藤晃史氏らが第17回日本臨床腫瘍学会学術集会で発表。3,000例を超えるわが国のT790M変異NSCLCに対するオシメルチニブ治療の実臨床データが示された。  対象は2次治療以降にオシメルチニブの治療を受けた切除不能・再発EGFR T790M変異NSCLC患者。予定のサンプルサイズは3,000例、追跡期間は12ヵ月であった。

70歳以下のCLLの1次治療、イブルチニブ+リツキシマブ併用が有効/NEJM

 70歳以下の未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療において、イブルチニブ+リツキシマブ併用レジメンは標準的な化学免疫療法レジメンと比較して、無増悪生存(PFS)と全生存(OS)がいずれも有意に優れることが、米国・スタンフォード大学のTait D. Shanafelt氏らが行ったE1912試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月1日号に掲載された。70歳以下の未治療CLL患者の標準的な1次治療は、フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブによる化学免疫療法とされ、とくに免疫グロブリン重鎖可変領域(IGHV)の変異を有する患者で高い効果が確認されているが、重度の骨髄抑制や、わずかながら骨髄異形成のリスクがあるほか、T細胞免疫抑制による日和見感染などの感染性合併症を含む毒性の問題がある。ブルトン型チロシンキナーゼの不可逆的阻害薬であるイブルチニブは、第III相試験において、フレイルが進行したため積極的な治療を行えない未治療CLL患者でPFSとOSの改善が報告されているが、70歳以下の患者の1次治療のデータは少ないという。

急性期PE、年間症例数が多い病院で死亡率低下/BMJ

 急性症候性肺塞栓症患者では、本症の年間症例数が多い病院(high volume hospitals)へ入院することで、症例数が少ない病院に比べ、30日時の本症に関連する死亡率が低下することが、スペイン・Ramon y Cajal Institute for Health Research(IRYCIS)のDavid Jimenez氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年7月29日号に掲載された。hospital volumeは、内科的/外科的疾患のアウトカムの決定要因として確立されている。一方、急性肺塞栓症発症後の生存に、hospital volumeが関連するかは知られていないという。

治療で血漿中HIVさえ抑えればコンドームだって不要(解説:岡慎一氏)-1097

U=Uを科学的に証明した論文である。ずっと昔は、HIV感染者は、性行為をしてはいけない雰囲気があった。治療が良くなり感染リスクが下がっても、万が一のため、コンドームはしよう、というsafer sexキャンペーンが長らく行われていた。HIV感染者からすると、いつまで経っても、性行為に関する制限から逃れられることができず、抑うつ気分が長年にわたり続いてきた。近医に行っても、告知しないといけないという思いはあるが、告知すると診療拒否に遭ったりしていた。やむなく、無告知での治療を受けざるを得なかったが罪悪感にさいなまれていた。この差別感は、非常に大きく、しかも生涯続くのである。このため、うつ状態からメンタルヘルスの異常を来し、自殺するようなケースも増えつつある。

皮膚がん、PD-1阻害薬治療後の予後予測因子が判明

 PD-1阻害における制御性T細胞(Tregs)の役割とその免疫抑制のメカニズムは完全には解明されていないが、皮膚がんに対する免疫チェックポイント阻害薬治療と、臨床的アウトカムの関連についての研究が進んでいる。今回、予備的エビデンスとして、PD-1阻害薬による治療導入後の血中PD-1+ Tregsの急速な低減は、メラノーマの進行およびメラノーマ特異的死亡(MSD)のリスク低下と関連していることが示された。ドイツ・ルール大学ボーフムのT. Gambichler氏らによる検討の結果で、「末梢血でこうしたPD-1+ Tregsの低減がみられない患者は、免疫チェックポイント阻害薬に対する反応が認められず、アウトカムは不良という特徴が認められた」とまとめている。The British Journal of Dermatology誌オンライン版2019年7月30日号掲載の報告。

夜間頻尿が転倒や骨折に及ぼす影響

 夜間頻尿はさまざまな併存疾患と関連しているが、転倒や骨折への影響はわかっていない。今回、フィンランド・Paijat-Hame Central HospitalのJori S. Pesonen氏らが系統的レビューおよびメタ解析を行った結果、夜間頻尿により転倒リスクが約1.2倍、骨折リスクが約1.3倍になることが示唆された。The Journal of Urology誌オンライン版2019年7月26日号に掲載。  本研究では、PubMed、Scopus、CINAHL、主要な泌尿器関連学会の抄録を2018年12月31日まで検索し、転倒および骨折の調整相対リスクについてランダム効果メタ解析を実施した。転倒および骨折の予後因子と原因となる因子としての夜間頻尿のエビデンスの質をGRADEアプローチにより評価した。

クエチアピン徐放製剤とオランザピンの日本人双極性うつ病に対する有効性の違い

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、日本人双極性うつ病患者におけるクエチアピン徐放製剤300mg/日(QUEXR300)とオランザピン5~20mg/日(OLZ)との有効性および安全性の違いについて、比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年7月8日号の報告。  日本におけるQUEXR300とOLZの第III相臨床試験のデータを用いて、ベイズ分析を行った。アウトカムは、寛解率(主要)、奏効率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度および17項目のハミルトンうつ病評価尺度スコアの改善、中止率、有害事象発生率とした。連続データと二値データについて、標準化平均差(SMD)、リスク比(RR)、95%信頼区間(CI)をそれぞれ算出した。

米国の必須医薬品年間支出額、2011~15年で2倍以上に/BMJ

 米国のWHO必須医薬品関連の支出額は、2011年の119億ドルから2015年には258億ドルへと増加し、その多くを2つの高価なC型肝炎ウイルスの新規治療薬(ソホスブビル、レジパスビル/ソホスブビル配合剤)が占め、この期間に増加した支出総額の約22%は既存薬の単位当たりの費用の増加による可能性があることが、米国・ハーバード大学医学大学院のDavid G. Li氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年7月17日号に掲載された。WHO必須医薬品モデルリストは、基本的な保健医療システムに必要最小限の医薬品を構成する重要な医薬品類と定義される。米国の後発医薬品市場は競争が激しいが、2008~15年に競争が不十分な状況となり、約400種の後発薬の価格が100倍以上に値上がりした。そのため、治療のアドヒアランスが低下し、患者アウトカムへの悪影響や、保健医療費の長期的な高騰を招く恐れがあるという。

2型糖尿病リスク、遺伝的負荷と食事脂肪の交互作用なし/BMJ

 遺伝的負荷と食事脂肪の質は、それぞれ2型糖尿病の新規発生と関連しており、2型糖尿病の発生に関して遺伝的負荷と食事脂肪の質に交互作用はないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJordi Merino氏らCHARGE Consortium Nutrition Working Groupの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年7月25日号に掲載された。2型糖尿病は、遺伝因子や生活習慣因子の影響を強く受ける複雑な疾患であり、食事の質の改善を目指す推奨は、2型糖尿病の予防と治療における重要な要因とされる。

大手製薬企業のデータ共有方針の水準はきわめて高かった(解説:折笠秀樹氏)-1096

臨床研究の事前登録はかなり浸透してきた。WHOがまず20項目を示し、WHO-ICTRP version 1.3.1で4項目が追加された。それは、倫理審査状況、研究完了時期、結果の要旨、個別データの共有方針の4項目である。メタアナリシスが数多く実施されるようになり、個別データを入手し、統合解析をするようになってきた。そこで、研究者間でのデータの共有が広まってきたと思われる。データ共有の方針は世の流れもあり、原則共有を可能とする臨床研究が多数になってきたようだ。本論文では、データ共有方針の温度差を明確にするため得点化を試みた。それをデータ共有得点と名付け、次の5項目で定義した。事前登録の徹底度、解析可能なデータセットおよびプロトコル・統計解析計画書・コード化の書類・研究結果要旨の提供度、データ提供依頼方法の明瞭度、毎年の依頼受理件数・提供/拒絶件数の提示、データ提供期限(FDA承認から6ヵ月以内/研究終了から18ヵ月以内)の明示、この5項目を0~100点に得点化した。

日本のプライマリケア医における認知症診断の開示に関する調査

 日本の認知症患者は、2025年には700万人に達すると予測されている。現代の倫理学者たちの結論では、認知症診断を完全に開示することが患者にとって最善の利益につながるとされているが、この関連性は、日本ではまだ研究されていない分野である。浜松医科大学のMichiko Abe氏らは、認知症診断の開示の実践に対するプライマリケア医の見解について調査を行った。BMC Family Practice誌2019年5月23日号の報告。  このqualitatively driven mixed methods projectでは、農村部と都市部別のサンプルを用いて、プライマリケア医24人を対象に、半構造化面接を行った。すべてのインタビューは、言葉どおりに記録し、テーマ別に分析を行った。研究チームは、テーマが飽和に達するまで、コンセプトを繰り返し議論した。サマリーは参加者に配布し、フィードバックを最終分析に組み込んだ。