日本語でわかる最新の海外医学論文|page:499

PPIで認知症リスクが1.3倍~メタ解析

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用と認知症リスクについて、中国・Anhui Medical UniversityのYun Zhang氏らが、調査を行った。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2019年11月21日号の報告。  英語と中国語のデータベースより、2018年12月までの文献を包括的に検索した。プールされたハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、変量効果モデルを用いて算出した。サブグループ解析と感度分析も実施した。不均一性の評価には、Cochran's Q検定およびI2検定を用いた。出版バイアス評価には、Begg検定およびEgger検定を用いた。

LOXO-292のRET肺がんに対する有効性(LIBRETTO-001)/日本肺癌学会

 RET融合遺伝子陽性がんは全身のさまざまな臓器で見られる。非小細胞肺がん(NSCLC)においても2%を占めるといわれる。RET融合遺伝子陽性がんでは、半数に脳転移があるとの報告もある。従来のマルチキナーゼ阻害薬によるRET融合遺伝子陽性がん治療では、有効性に限度がみられた。selpercatinib(LOXO-292)は、選択性の高いRET阻害薬であり、幅広いがん種への有効性を示すとともに、CNSへの移行性も良好な薬剤である。  LOXO-292の国際第I/II相試験LIBRETTO-001の結果は本年の世界肺癌学会(WCLC2019)で発表された。第60回日本肺癌学会学術集会では、国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏がそのアンコール発表を行った。

マルファン症候群における大動脈拡張の進行をイルベサルタンが抑制/Lancet

 長時間作用型選択的ARBのイルベサルタンは、マルファン症候群の小児および若年成人患者において大動脈拡張率を減少し、大動脈合併症の発症を減少させる可能性があることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のMichael Mullen氏らにより英国22施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Aortic Irbesartan Marfan Study:AIMS試験」の結果、示された。ARBであるロサルタンとβ遮断薬との併用療法について検証した無作為化試験では、マルファン症候群の大動脈拡張に対する明らかな有効性は確認されなかったが、イルベサルタンはロサルタンと比較して降圧作用が強く生物学的利用率が良好で半減期も長いことから、マルファン症候群患者の大動脈解離や破裂に関連する大動脈拡張を抑制することが期待されていた。Lancet誌オンライン版2019年12月10日号掲載の報告。

ribociclib+フルベストラント、進行乳がんのOS延長/NEJM

 ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がん患者において、CDK4/6阻害薬ribociclib+フルベストラント併用療法はプラセボ+フルベストラントと比較し、全生存(OS)を有意に改善することが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校David Geffen医学校のDennis J. Slamon氏らが、国際多施設共同無作為化第III相試験「MONALEESA-3試験」のOSに関する第2回中間解析結果を報告した。同試験の初期解析結果では、ribociclib+フルベストラント併用療法によりフルベストラント単独療法と比較し、主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間が延長することが報告されていた。NEJM誌オンライン版2019年12月11日号掲載の報告。

増える梅毒妊娠症例、現代ならではの背景も

 国立感染症研究所が、今年1月から半年の間に医療機関を通じて報告された女性梅毒患者のデータを分析したところ、約1割が妊娠症例であることがわかった。わが国では、2014年ごろから男女間における梅毒感染報告が増え、それと並行して母子感染による先天梅毒の報告数も増加傾向にある。こうした状況を背景に、梅毒妊娠症例に着目し、国として初めて実態把握を行ったもの。分析を行った感染研感染症疫学センター・主任研究官の山岸 拓也氏は、「かなり憂慮する状況。治療可能疾患であることを患者に伝え、子供への感染リスクをできる限り排除していかなければならない」と話す。

HIV患者のがん治療、免疫モニタリングが有益/JAMA Oncol

 抗ウイルス療法を受ける成人HIV患者のがん治療について、免疫モニタリングの有益性が、がん治療後の死亡率に関する定量化研究により明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のKeri L. Calkins氏らによる検討で、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療を受けた場合と比べて、施術後早期のCD4細胞数を有意に減少させること、その数値の低さと死亡率増大は関連することが示されたという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年12月5日号掲載の報告。

青年期双極性障害患者の気分症状~ネットワーク解析

 精神病理学のネットワーク解析では、精神疾患エピソードを引き起こす可能性のある症状間の因果的相互作用を明らかにするため、個々の症状間の関連性が調査されている。米国・カリフォルニア大学のMarc J. Weintraub氏らは、双極性スペクトラム障害またはそのリスクを有する青年の気分症状に関して、ネットワーク解析を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2019年11月15日号の報告。  対象は、治療が必要な亜症候期のうつ症状または躁症状を呈する青年期双極性障害患者および、そのリスクを有する青年272例。

オベチコール酸、NASHによる肝線維化を有意に改善/Lancet

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者に対するオベチコール酸25mgの1日1回投与は、肝線維症およびNASH疾患活動性の主要要素を有意に改善することが示された。米国・Inova Health SystemのZobair M. Younossi氏らが、1,968例を対象に行っている多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「REGENERATE試験」の中間解析の結果を報告し、「今回の計画されていた中間解析の結果は、相当な臨床的ベネフィットを予測させる臨床的に有意な改善を示すものであった」とまとめている。NASHは一般的にみられる慢性肝疾患の1つで、肝硬変に結び付く可能性がある。farnesoid X receptor(FXR)作動薬であるオベチコール酸は、NASHの組織学的特色を改善することが示唆されていた。Lancet誌2019年12月14日号掲載の報告。

転移を有するHER2+乳がん、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinib追加でPFS改善/NEJM

 トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の治療を受けた、脳転移を含む転移のあるHER2陽性乳がん患者に対して、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinibを追加投与することはプラセボの追加投与と比較して、無増悪生存(PFS)および全生存(OS)アウトカムが良好であったことが示された。ただしtucatinib追加投与群では下痢とALT値上昇のリスクが高かった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのRashmi K. Murthy氏らによる国際共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号で発表された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。転移のあるHER2陽性乳がん患者で、複数のHER2標的薬で治療後に病勢進行が認められた場合の治療選択肢は限られる。tucatinibは開発中の高度に選択的な経口HER2阻害薬。第Ib相の用量漸増試験で、脳転移を含む転移のあるHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ+カペシタビンへの併用が抗腫瘍効果を示し有望視されていた。

肺血栓塞栓症の診断―人工知能本格利用の前に―(解説:後藤信哉氏)-1158

NEJMの論文にて、本文を読むだけでは理解できない論文は少なかった。本論文は内容を読むだけでは理解しきれない。肺血栓塞栓症の診断は容易でないことが多い。筆者は30年臨床医をしているので勘が利く。しかし、医療を標準化するためには経験を積んだ臨床医の「勘」を定量化する必要がある。本論文では肺塞栓症を疑う臨床症状を有する3,133例から出発した。明確な除外基準に該当しない2,017例を研究対象とした。これらの症例がWells scoreにより層別化された。静脈血栓症の少ない日本ではWells scoreの知名度も低い。Wells scoreを覚えるのは面倒くさい。臨床的に静脈血栓症らしければ3点、肺塞栓症以外の病気らしくなければ3点などかなりソフトな因子により分類する。本研究では、このソフトなWells scoreとd-dimerを組み合わせたことによる肺塞栓症診断精度を評価している。

「ワクチン忌避」への対応と医療者教育の重要性/日本ワクチン学会

 「ワクチンの有効性・安全性に疑いを持つ人が接種を控える動き(ワクチン忌避)」が世界的に広がりを見せている。世界保健機関(WHO)は2019年に発表した「世界の健康に対する10の脅威」の1つとして「ワクチン忌避」を挙げている。日本においてもHPVワクチンの接種推奨が停止され、再開を求める医療者の声にもかかわらずいまだ果たされていない、等の現状がある。  11月30日~12月1日に開催された「第23回日本ワクチン学会学術集会」では、このワクチン忌避への危機感と対応策が大きなテーマの一つとなった。

統合失調症における抗精神病薬減量の成功要因~メタ解析

 慶應義塾大学のHideaki Tani氏らは、統合失調症における抗精神病薬減量の成功を予測する因子を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年11月26日号の報告。  統合失調症における抗精神病薬減量について調査したプロスペクティブ臨床試験およびランダム化比較試験(RCT)を対象に、システマティックレビュー、メタ解析を実施した。

糖尿病妊婦の子供は早発性CVDリスクが高い/BMJ

 糖尿病の母親の子供は、小児期から成人期初期に、非糖尿病の母親の子供に比べ早発性の心血管疾患(CVD)の発生率が高く、とくに母親がCVDや糖尿病性合併症を併発している場合はCVDリスクがさらに増加することが、デンマーク・オーフス大学のYongfu Yu氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。最近の数10年間で、世界的に子供や若年成人のCVD有病率が高くなっている。妊娠前および妊娠中の母親の糖尿病は、子供のメタボリック症候群や先天性心疾患のリスク上昇と関連するとされるが、母親の糖尿病への出生前の曝露が、生命の初期段階にある子供の早発性CVDに影響を及ぼすか否かは知られていないという。

細菌性の市中肺炎に対する経口lefamulinとモキシフロキサシンの比較試験(解説:吉田敦氏)-1157

今回、成人の細菌性の市中肺炎を対象とした経口lefamulin 5日間投与とモキシフロキサシン7日間投与の第III相ランダム化比較試験(LEAP 2 study)の結果が発表された。lefamulinはプレウロムチリン(pleuromutilin)に近縁の抗微生物薬で、リボゾームの50Sサブユニットの23SリボゾーマルRNAに作用することで蛋白合成を阻害する。lefamulinはバイオアベイラビリティに優れ、経口、静注両方で利用可能であり、またin vitroでMSSA、MRSA、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、連鎖球菌に活性を持ち、さらにはS. pneumoniae、H. influenzae、L. pneumophila、C. pneumoniae、M. pneumoniaeといった肺炎の主な原因微生物まで非常に幅広いスペクトラムを有するという。これまで細菌性の市中肺炎を対象とし、静注で開始して経口にスイッチする方法が検討され(LEAP 1 study。モキシフロキサシン±リネゾリドを対照とするランダム化比較試験)1)、加えて、細菌性の皮膚軟部組織感染症においてバンコマイシンを対照として比較試験が行われた2)。LEAP 1 studyではPORTリスク*クラスIII相当の肺炎例が約70%含まれていたが、ITT解析による効果は両群でほぼ同等、また副作用については低カリウム血症、吐き気、不眠、注射部位の疼痛・血管炎がモキシフロキサシンに比してlefamulin群で多かった。一方、後者の皮膚軟部組織感染症の検討では、効果はバンコマイシンと同等であったものの、頭痛、吐き気、下痢といった副反応がみられ、注射部位の血管炎はバンコマイシンよりも多かった。

ペルツズマブ+トラスツズマブ+化学療法のHER2+乳がん術後療法、引き続き有用(APHINITY)/SABCS2019

 HER2陽性乳がんに対する術後療法としての、ペルツズマブとトラスツズマブと標準化学療法の併用を評価する第III相APHINITY試験の更新データが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・Institut Jules BordetのMartin Piccart氏より発表された。  APHINITY試験は、2011年11月~2013年8月に症例登録された国際共同無作為化比較試験。2017年に初回解析結果が発表され、今回は2回目の解析データの発表。2017年の発表では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)はハザード比(HR)が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.00、p=0.045)と、有意にペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法併用群(HP群)が良好な結果であった。

非扁平上皮NSCLC、KEYNOTE-189日本人延長試験の結果/日本肺癌学会

 未治療の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)に対してペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ(シスプラチンまたはカルボプラチン)療法とペメトレキセド+プラチナ療法と比較したKEYNOTE-189試験の日本人延長試験の結果が、第60回日本肺癌学会学術集会で発表された。当試験の全集団ではペムブロリズマブ上乗せ群が全生存期間(OS)を有意に改善した(HR:0.49、95%CI:0.38~0.64、p<0.001)が、今回の日本人試験の評価項目は安全性、忍容性である。

超悪玉脂肪酸はコントロールできるのか?/日本動脈硬化学会

 超悪玉脂肪酸の別名を持つトランス脂肪酸。この摂取に対し、動脈硬化学会が警鐘を鳴らして早1年が経過したが、農林水産省や消費者庁の脂肪酸の表示義務化への姿勢は、依然変わっていないー。2019年12月3日、日本動脈硬化学会が主催するプレスセミナー「飽和脂肪酸と動脈硬化」が開催され、石田 達郎氏(動脈硬化学会評議員/神戸大学大学院医科学研究科循環器内科学)が「食事由来(外因性)の脂質を考える」について講演。脂質過多な患者と過少な患者、それぞれの対応策について語った。

男性の顔の皮膚炎、原因は身だしなみ製品にあり

 男性も「顔」に投資する時代が到来しているが、美の追求には代償が伴うようだ。米国・ミネソタ大学のErin M. Warshaw氏らは、男性の顔の皮膚炎(male facial dermatitis:MFD)の特徴、アレルゲン、原因を調べるため、1994~2016年にパッチテストを受けた北米の男性患者5万507例を対象とした後ろ向き横断分析を行った。その結果、MFD患者は1994年の5.6%から2015~16年には10.6%に増大していたこと、MFDでは若い患者が有意に多く、アレルゲンは概して防腐剤、香料、染毛剤、界面活性剤などが含まれているパーソナルケア製品にあったことを報告した。著者は「今回の研究は、男性の皮膚科患者が使用する身だしなみ製品の増大によるリスクと曝露への洞察を提供するものとなった。これにより臨床医はパッチテストの恩恵を受ける患者をより適切に識別し、治療できるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年11月27日号掲載の報告。

要支援高齢者に対するリハビリテーション専門職主導の短期集中型自立支援プログラムの効果

 医療経済研究機構の服部 真治氏らは、介護保険サービスを利用する必要がなくなり、その利用を終了(介護保険サービスから卒業)するための短期集中型自立支援プログラムの有効性を評価した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2019年10月17日号の報告。  短期集中型自立支援プログラムの構成は、一般的な通所型サービスCと同様であるが、今回のプログラムは、リハビリテーション専門職が中心となり、随時、管理栄養士、歯科衛生士も加わり、毎回20分間(状況に応じて10~30分間)の動機付け面談を実施することにより、利用者が自身の可能性に気付き、元の生活を取り戻すための日々の暮らし方を知り、意欲的に自分自身を管理できるようにすることを目的に開発されている。

院内心停止の生存率を左右する予後因子とは/BMJ

 院内心停止患者では、心停止前に悪性腫瘍や慢性腎臓病がみられたり、心停止から自己心拍再開までの蘇生時間が15分以上を要した患者は生存の確率が低いが、目撃者が存在したり、モニタリングを行った患者は生存の確率が高いことが、カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。院内心停止は生存率が低く、臨床的知識の多くは院外心停止に関する豊富な文献からの推測だという。院内心停止と関連する心停止前および心停止中の予後因子の理解は、重要な研究分野とされる。