日本語でわかる最新の海外医学論文|page:499

NSCLCのALK検査、リキッド・バイオプシーも有用(BFAST)/ESMO2019

 非小細胞肺がん(NSCLC)の遺伝子変異検査で、血液を検体とするリキッド・バイオプシーの有用性を評価した前向き臨床試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Rogel Cancer Center/University of MichiganのShirish M. Gadgeel氏より発表された。  BFAST試験は、血液検体のみを用いた6つのコホートからなる国際共同の前向き第II/III相試験である。今回はその中からALK陽性コホートのみ発表された。その他のコホートはRET陽性、ROS1陽性、TMB陽性、Real World Dataなどであり、血液検査(cfDNA)はFMI社によって実施された。

CABG後のグラフト不全の予防に、抗血小板薬2剤併用が有効/BMJ

 冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者では、アスピリンへのチカグレロルまたはクロピドグレルの追加により、アスピリン単独に比べ術後の大伏在静脈グラフト不全の予防効果が大きく改善されることが、カナダ・ウェスタン大学のKarla Solo氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月10日号に掲載された。アスピリンは、CABG後の大伏在静脈グラフト不全の予防に推奨される抗血小板薬である。一方、アスピリンへのP2Y12阻害薬または直接経口抗凝固薬の追加の利点については不確実性が残るという。

至適INRは?(解説:後藤信哉氏)-1128

手術時に抗凝固療法を継続するのは勇気がいる。手術による出血を最小限としつつ、静脈血栓を予防するためにはどうすればよいか?一般に血栓イベントリスクの低い日本人の感覚と欧米人の感覚の大きく異なる領域である。欧米のデータは心房細動の脳卒中予防であっても、本論文の静脈血栓症の予防でもINRの標的を下げることの危険性を示している。私の日常診療ではINR 1.8は、標的としては高いほうである。30年も経験を蓄積しても、日本人を診ているわれわれが血栓イベントを経験することは少ない。しかし、欧米人では標的を2.6とした場合と比較して、静脈血栓症・死亡率が標的INR 1.6では著しく高くなることを本論文は示している。本論文に示された所見はおそらく事実であろう。しかし、本論文の記載が日本人に当てはまるか否かは不明である。地域差の大きな血栓性疾患では、欧米の情報を日本に直接取り込むことは難しい。日本の実態も継続的に英文論文として発表するようなシステムの構築が重要である。

sacubitril-バルサルタンでも崩せなかったHFpEFの堅い牙城(解説:絹川弘一郎氏)-1126

sacubitril-バルサルタンのHFpEFに対する大規模臨床試験PARAGON-HFがESC2019のlate breakingで発表されると聞いて、5月のESC HFのミーティングで米国の友人と食事していた時、結果の予想をした記憶がある。私はESCで出てくるんだから有意だったんじゃないの、と言い、別の人はHFpEFには非心臓死が多いからmortalityの差は出ないよね、と言ったりしたものであった。相変わらず私の予想は外れ、ただ外れ方としてp=0.059という悩ましいprimary endpointの差であった。7つイベントが入れ替わったら有意だったそうである。ただ、入れ替わりってどういうこと?とも言え、読み方としてはやはりこれだけ大規模にやって有意でないものは有意でないとしか言えない。

日本の胃がん患者における悪液質の実態/日本癌治療学会

 がん悪液質は体重減少と食欲不振を主体とした複雑な病態の疾患概念である。日本の胃がんにおいて悪液質を発症した場合の予後や経過についての報告は少ない。  久留米大学病院の深堀 理氏らは、久留米大学病院および静岡がんセンター病院で化学療法を受けた進行胃がん患者を対象に、体重減少に焦点を当て、悪液質との相関を調べる後ろ向き観察試験を実施。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。主要評価項目は、化学療法導入から悪液質発症までの期間、副次評価項目は悪液質と血液検査結果、全生存期間(OS)、副作用との関連。悪液質の定義は、5%を超える体重減少、BMI 20kg/m2未満の場合は2%以上の体重減少とした。

薬物中毒搬送者、カフェイン致死量摂取が原因/日本救急医学会

 昭和時代には農薬による中毒事故が多発していたが、近年では、手軽に入手できる一般用医薬品(OTC)の過量服用や違法薬物の蔓延などが問題視されている。2019年10月2~4日、第47回日本救急医学会総会・学術集会が開催され、シンポジウム8「不断前進、中毒診療」において、廣瀬 正幸氏(藤田医科大学病院薬剤部 災害・外傷センター)が「急性薬物中毒患者に対する救急常駐薬剤師の活動と役割」について講演。薬物中毒で搬送される患者像や病院薬剤師の病院外での活動について報告した。

PTSDに対するVR療法の有効性~メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する仮想現実を用いた治療(virtual reality exposure therapy:VRET)は、注目すべき新たな治療法であるが、その有効性および安全性は明らかになっていない。中国・安徽医科大学のWenrui Deng氏らは、PTSD患者に対するVRETの有効性を調査し、関連する潜在的な調整因子を特定するため、システマティック・レビュー、メタ解析を行った。Journal of Affective Disorders誌2019年10月1日号の報告。

卵巣がん、オラパリブ+ベバシズマブ維持療法の第III相試験(PAOLA-1/ENGOT-ov2)/ESMO2019

 フランス・レオンベラールセンターのIsabelle Ray-Coquard氏は、進行卵巣がんでプラチナ製剤+タキサン系抗がん剤+ベバシズマブでの1次治療が奏効した患者に対するPARP阻害薬オラパリブとベバシズマブの併用とベバシズマブ単剤での維持療法を比較した第III相PAOLA-1(ENGOT-ov2)試験の結果を発表。オラパリブ・ベバシズマブ併用はベバシズマブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長すると報告した。PAOLA-1(ENGOT-ov2)は無作為化二重盲検比較。

大腸がん術後補助化学療法、ctDNAによる評価(A GERCOR-PRODIGE)/ESMO2019

 フランス・European Georges Pompidou HospitalのJulien Taieb氏は、StageIIIの結腸がんでの術後補助化学療法では血液循環腫瘍DNA(ctDNA)が独立した予後予測因子であり、ctDNAが陽性か否かにかかわらず、術後補助化学療法は6ヵ月のほうが無病生存期間(DFS)が良好な傾向が認められたと欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告した。  今回の結果はIDEA FRANCE試験に参加した患者の血液検体を用いたA GERCOR-PRODIGE試験に基づくもの。IDEA FRANCE試験は、大腸がんの術後補助化学療法としてのFOLFOX療法またはCapeOX療法の投与期間について、3ヵ月間と6ヵ月間を比較した6つの前向き第III相無作為化試験を統合解析したIDEA collaborationに含まれる試験の1つ。

家族性高コレステロール血症患児へのスタチン、成人期の心血管リスク低減/NEJM

 小児期にスタチン治療を開始した家族性高コレステロール血症患者は、成人期の頸動脈内膜中膜肥厚の進行が抑制され、心血管疾患のリスクが低減することが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのIlse K. Luirink氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年10月17日号に掲載された。家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロール値の著しい増加と心血管疾患の早期発症を特徴とする。小児へのスタチン治療の短期的効果は確立されているが、心血管疾患リスクの変動を評価した長期的な追跡研究は少ないという。

成人期の体重変動が死亡リスクと関連/BMJ

 成人期を通じた肥満持続、成人初期から中期の体重増加、および成人中期から後期の体重減少は、いずれも死亡リスクの増加と関連することが、中国・華中科技大学のChen Chen氏らが米国のデータを用いて行った検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月16日号に掲載された。高BMIの成人は早期死亡のリスクが高いが、成人初期から後期あるいは成人中期から後期の体重の変化と死亡リスクとの関連の科学的エビデンスは、必ずしも一貫していない。また、成人の中でも、とくに初期から中期までの体重変動と、全死因および原因別の死亡率との関連はほとんど知られていないという。

SGLT2阻害薬は糖尿病薬から心不全治療薬に進化した(解説:絹川弘一郎氏)-1125

ESC2019にはPARAGON-HF目当てで参加を決めていたが、直前になってDAPA-HFの結果が同じ日に発表され、パリまでの旅費もむしろ安いくらいの気持ちになった。もう少し時間がかかると思っていたのでESCでの発表は若干驚きであったが、プレスリリースで聞こえてきたprimary endpoint達成ということ自体は想定内であったので、焦点は非糖尿病患者での振る舞い一点といってもよかった。なぜ、HFrEFに有効であることに驚きがなかったか、それはDECLAREのACC.19で発表された2つのサブ解析による。1つが陳旧性心筋梗塞の有無による層別化、もう1つがHFrEF/HF w/o known EF/no history of HFの3群間の比較である。ともに心血管死亡と心不全再入院というDECLAREのco-primary endpointに対する解析である。陳旧性心筋梗塞を有する群で明らかに早期からイベント抑制効果が認められ、EMPA-REG OUTCOMEやCANVASで心血管疾患の既往を有する患者で知られてきたSGLT2阻害薬の心不全予防効果が投与早期から現れるということは、言い換えると大半が虚血性心疾患であり、そしてそれは陳旧性心筋梗塞の患者であるということである。

またも敗北した急性心不全治療薬―血管拡張薬に未来はないのか(解説:絹川弘一郎氏)-1124

急性心不全に対する血管拡張薬は、クリニカルシナリオ1に対しては利尿薬も不要とまで一時いわれたくらい固い支持があるクラス1の治療である。シナリオ2でもほどほど血圧があればafterloadを下げることは古くから収縮不全に悪かろうはずがないと考えられてきて、そもそもV-HeFT IやV-HeFT IIはvasodilatorがHFrEFの長期予後を改善するのではないかという(今では顧みられない)コンセプトで始まり、レニンアンジオテンシン系にたどり着いた歴史的経緯がある。

せん妄経験と退院後の認知症発症との関連

 高齢者の急性疾患におけるせん妄発症は、退院後の認知症発症と関連があるかについて、ブラジル・サンパウロ大学のFlavia Barreto Garcez氏らが調査を行った。Age and Ageing誌オンライン版2019年9月30日号の報告。  2010~16年に3次医療の大学病院老年病棟に連続的に入院した60歳以上の急性疾患高齢者を対象に調査を行った。包括基準は、入院時のベースライン認知機能に低下が認められず、退院後12ヵ月間の臨床的フォローアップを実施した患者とした。すべての患者について標準化された包括的な高齢者評価結果を含む入院データは、ローカルデータベースより収集した。事前の認知機能低下は、病歴、CDR、IQCODE-16に基づき特定した。せん妄の評価には、簡易版CAMを用い、退院後12ヵ月後の認知症発症は、医療記録のレビューに基づいて特定した。せん妄と退院後の認知症発症との関連は、競合リスク比例ハザードモデルを用いて評価した。

レンバチニブ、胸腺がん2次治療以降に有望(REMORA)/ESMO2019

 胸腺がんは10万人年に0.02という希少悪性疾患である。プラチナベース化学療法が1次治療であるが、プラチナベース化学療法後の標準治療は確立していない。いくつかの試験では、スニチニブなど血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を主な標的とするマルチキナーゼ阻害薬の有効性が報告されている。マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)においては、前臨床試験でスニチニブと同等かそれ以上の阻害活性を示している。兵庫県立がんセンターの伊藤 彰一氏らは、進行または転移のある胸腺がん患者におけるレンバチニブの有効性と安全性を検討する多施設オープンラベル単群第II相REMORA試験を実施。その中間解析の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。

1型DMにはクローズドループシステムが有用/NEJM

 1型糖尿病患者において、クローズドループ型インスリン注入システム(人工膵島)の利用は、リアルタイム持続血糖モニター(CGM)機能付きインスリンポンプ(CSII)の利用と比較して、血糖値が目標範囲内であった時間の割合を増加させることを、米国・バージニア大学のSue A. Brown氏らが、6ヵ月間の多施設共同無作為化試験「International Diabetes Closed Loop trial:iDCL試験」で明らかにした。クローズドループ型インスリン注入システムは、1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する可能性があり、これまでのメタ解析ではその有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2019年10月16日号掲載の報告。

左冠動脈主幹部病変の5年転帰、PCI vs.CABG/NEJM

 解剖学的複雑度が低度~中等度の左冠動脈主幹部病変患者において、5年時点の全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイントは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)で有意差は確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のGregg W. Stone氏らが、左冠動脈主幹部病変の患者を対象に、エベロリムス溶出ステントによるPCIのCABGに対する追跡期間3年での非劣性を検証した国際多施設共同非盲検無作為化試験「EXCEL試験」の、最終5年アウトカムを報告した。左冠動脈主幹部病変患者において、現代の薬剤溶出ステントを用いたPCI後の、CABGと比較した長期アウトカムは明らかにされてはいなかった。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。

日本の進行胃がんに対するニボルマブのリアルワールドでの成績(JACCRO GC-08: DELIVER)/ESMO2019

 第III相ATRRACTION-2試験において、ニボルマブは3次治療以降の胃がんに対する有効性を示しているが、PS不良例、腹膜播種例などが含まれるリアルワールドでのデータはない。聖マリアンナ医科大学の砂川 優氏らは、リアルワールドでの進行胃がんに対するニボルマブの効果と安全性、そして腸内マイクロバイオームを含む宿主免疫バイオマーカーを検証した前向き観察研究JACCRO GC-08(DELIVER)の中間成績を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告した。

ペムブロリズマブのMSI-High固形がんに対する第II相試験(KEYNOTE-164、158統合解析)/ESMO2019

 米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター固形がん腫瘍学部門のLuis Diaz氏は、局所進行・転移のあるミスマッチ修復(MMR)欠損または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんに対するペムブロリズマブの第II相試験KEYNOTE-164とKEYNOTE-158の統合解析結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表。MMR欠損またはMSI-Highを有する固形がんでは、がん種にかかわらずペムブロリズマブが安定した効果を示し、安全性も管理可能なものであると述べた。

家族歴が発症リスクに関連するがん種~日本人10万人の前向き研究

 がんの家族歴は、いくつかのがん種におけるリスク増加の重要な因子である。がんの家族歴と、遺伝的に一致するがんリスクとの関連は多くの疫学研究で報告されているが、生活習慣を調整した包括的な前向き研究はない。今回、わが国のJPHC研究において、国立がん研究センターの日高 章寿氏らによる研究から、膀胱がん、膵がん、食道がんなどのいくつかのがん種で、がんの家族歴ががんリスク増加と関連することが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年10月8日号に掲載。