日本語でわかる最新の海外医学論文|page:500

不眠症とがんリスク~メタ解析

 近年、最も一般的な睡眠障害の1つである不眠症とがんとの関連について新たな研究が発表されているが、それらの結果は一貫していない。社会の発展や生活スピードの加速により、不眠症を経験する人は増加している。中国・Anhui Medical UniversityのTingting Shi氏らは、不眠症とがんとの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。Journal of Sleep Research誌オンライン版2019年7月28日号の報告。  関連文献は、7つのデータベースおよび補足検索により収集した。厳密なスクリーニング後、対象者57万8,809例とがんイベント7,451件を含む8つのコホート研究(プロスペクティブ研究:7件、レトロスペクティブ研究:1件)が抽出され、分析に組み込まれた。

2次予防のアスピリン、投与すべき患者は?~MAGIC試験

 心血管イベントの再発予防のための低用量アスピリンの使用は、リスク-ベネフィットのバランスに基づくべきである。今回、国際医療福祉大学臨床医学研究センター/山王病院・山王メディカルセンター脳血管センターの内山 真一郎氏らが、わが国の全国規模の多施設共同前向き研究であるMAGIC試験において、心血管疾患の既往のある患者のアスピリン長期使用による心血管イベントと出血イベントの発生率を調査した。その結果、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、複数の心血管疾患の既往のある患者ではベネフィットがリスクを上回っていたが、心房細動または静脈血栓塞栓症の既往のある患者ではリスクとベネフィットが同等であった。

selinexorが3クラス抵抗性多発性骨髄腫に有望/NEJM

 現在使用可能な治療に抵抗性の骨髄腫患者において、first-in-classのエクスポーチン1(XPO1)阻害薬selinexorと低用量デキサメタゾンの併用療法は、約4分の1の患者に客観的奏効をもたらすことが、米国・マウント・シナイ・アイカーン医科大学のAjai Chari氏らが行ったSTORM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月22日号に掲載された。selinexorは、核外輸送複合体の選択的阻害薬であり、骨髄腫で過剰発現しているXPO1を阻害して腫瘍抑制蛋白の核内蓄積と活性化を促進し、核内因子κBを阻害するとともに、腫瘍蛋白メッセンジャーRNA翻訳を抑制する。selinexorは、現在の治療選択肢に抵抗性の骨髄腫患者において、新規治療薬となる可能性が示唆されている。

serelaxin、急性心不全の予後改善せず/NEJM

 急性心不全で入院した患者の治療において、serelaxinの静注はプラセボに比べ、180日時の心血管系の原因による死亡および5日時の心不全の悪化の発生率を改善しないことが、イタリア・ブレシア大学のMarco Metra氏らが行ったRELAX-AHF-2試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年8月22日号に掲載された。リラキシンは、妊娠中に観察される心血管や腎臓の機能の変化に寄与するホルモンであり、末端器官では血管拡張、抗線維化、抗炎症作用を示す。serelaxinは、ヒトリラキシン-2の遺伝子組み換え製剤であり、血管拡張作用(うっ血を軽減)と直接的な臓器保護作用の双方により効果を発揮する。先行研究のRELAX-AHF試験では、プラセボに比べ入院中の心不全の悪化の発生率が低く、探索的解析により180日時の心血管死の発生率が低い可能性が示唆されていた。

TAVI周術期の脳卒中は減少していない(解説:上妻謙氏)-1109

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は高齢者心不全の原因の1つとなっている大動脈弁狭窄症(AS)に対する根本的介入を行うもので、手術ハイリスク、超高齢者に対する治療として早くから第1選択となっていたが、すでに無作為化試験のエビデンスがそろって、米国FDAは手術低リスクの症例にまで適応を拡大した。本論文は米国の胸部外科学会(STS)と米国心臓病学会(ACC)の合同で行われている経カテーテル弁膜症治療に関するTranscatheter Valve Therapy(STS/ACC TVT)Registryデータを用いた、大規模データベース研究の結果である。

全国の医療施設、災害対策の実情はいかに!?

 地震大国の日本において、異常気象の常態化によるスコール、それに伴う洪水・土砂災害などが後を絶たない。このような災害時には、DMAT(災害急性期に活動できる機動性を持った トレーニングを受けた医療チーム)と呼ばれる災害派遣医療チームにより医療支援が行われる場合がある。しかし、医療者一人ひとりが日頃から災害を意識し準備を行っていなければ、家族や患者、ましてや自らの命は救えないだろう。  そこで、ケアネットでは2019年7月に会員医師約200名を対象とし、「院内の災害対策」に関するアンケート調査を実施。医師たちの災害に対する意識や対策状況などの実態について、実情や意見を聞いた。

スクリーンタイムとうつ病との関連

 スクリーンを見ている時間(スクリーンタイム)の増加は、抑うつ症状増加と関連していることがわかっているが、縦断的研究が不足している。カナダ・モントリオール大学のElroy Boers氏らは、スクリーンタイムとうつ病との関連を繰り返し測定し、3つの説明仮説(超越性、上方社会比較、スパイラル強化)について検証を行った。JAMA Pediatrics誌オンライン版2019年7月15日号の報告。  パーソナリティーをターゲットとした薬物とアルコール予防介入の4年間の有効性を評価したランダム化臨床試験のデータを用いて、2次解析を行った。本研究では、グレーターモントリオール地区の31校に入学した7年生を対象に年次調査を行い、4年間のスクリーンタイムとうつ病を評価した。

赤肉と鶏肉、乳がんリスクはどちらが高い?/Int J Cancer

 肉を食べると乳がん発症リスクは上昇するのか。これまで因果関係が言われながらも、一貫性のあるエビデンスが示されていなかった肉と乳がんの関係について、米国・Columbia Mailman School of Public HealthのJamie J. Lo氏らが、4万2,000例超の女性を平均7.6年間追跡した調査結果を発表した。赤肉(red meat)の摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べて浸潤性乳がんのリスクが1.23倍高く、一方で鶏肉は最も多く食べる群が最も少ない群に比べて同リスクは0.85倍と低く、赤肉の代わりに鶏肉を食べることで乳がんリスクが低下する可能性があることが示唆されたという。なお調理法についての関連性は観察されなかったとしている。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年8月6日号掲載の報告。

がんサバイバーの多くが中長期のCVDリスク増加/Lancet

 がんサバイバーのほとんどで、がん部位別でかなり違いはあるものの、一般集団と比較して心血管疾患の中~長期リスクの増加が確認された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHelen Strongman氏らが、がんサバイバーにおける心血管リスクの定量化を目的とする電子医療記録データベースを用いたコホート研究の結果を報告した。過去数十年で、がんの生存率は顕著に改善してきたが、サバイバーの長期的な心血管リスクについては懸念が指摘されている。しかし、さまざまながんサバイバーにおける心血管疾患の予防や管理に関するエビデンスが不足していた。Lancet誌オンライン版2019年8月20日号掲載の報告。

2型糖尿病の予防・治療に不飽和脂肪酸は影響せず?/BMJ

 英国・イースト・アングリア大学のTracy J. Brown氏とJulii Brainard氏らは、新たに診断された糖尿病と糖代謝に対する多価不飽和脂肪酸(PUFA)の影響を評価する、未発表データを含むこれまでで最も広範囲なシステマティックレビューとメタ解析を実施し、オメガ3、オメガ6または総PUFAの増加は、2型糖尿病の予防および治療に対し影響が少ないかあるいは影響がないことを明らかにした。これまで、オメガ3は実験データでは糖尿病のコントロールを悪化させることや、観察研究のシステマティックレビューでは有益性と有害性の両方が示唆されていた。また、オメガ6の上昇は、糖代謝の改善および悪化の両方と関連することが観察研究で報告されており、オメガ3、オメガ6および総PUFAの、糖代謝および2型糖尿病への影響は結論が得られていなかった。BMJ誌2019年8月21日号掲載の報告。

QRISK2スコアを用いた心血管リスク管理(解説:石川讓治氏)-1108

英国においては、心血管リスク予測指標としてQRISK2スコアが使用されており、Framinghamリスクスコアよりも心血管イベントの予測率が高かったことが報告されている。本研究においては、Herrettらは、英国のプライマリーケアにおける122万2,670名の患者の医療情報の後ろ向きコホート研究において、QRISK2スコア、英国の高血圧治療ガイドライン、血圧閾値単独の4つの手法を用いて、10年後の心血管リスクを推定した。その結果、10年間における1心血管イベント抑制のためのNNTは、QRISK2スコア27名、NICE2011 28名、NICE2019 29名、血圧閾値38名であり、QRISK2を用いた心血管リスク評価および管理が最も効果的であると報告した。

アナフィラキシーには周囲の理解が必要

 2019年8月21日、マイランEPD合同会社は、9月1日の「防災の日」を前に「災害時の食物アレルギー対策とは」をテーマにしたアナフィラキシー啓発のメディアセミナーを開催した。セミナーでは、アナフィラキシー症状についての講演のほか、患児の親の声も紹介された。  セミナーでは、佐藤さくら氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部)を講師に迎え、「アナフィラキシーの基礎知識とガイドラインに基づく正しい治療法について」をテーマに講演を行った。

悪性黒色腫におけるBRAF阻害薬・MEK阻害薬併用の心血管リスク

 悪性黒色腫患者の治療におけるBRAF阻害薬・MEK阻害薬併用療法による心血管有害事象の特徴が明らかになった。ドイツ・エッセン大学病院のRaluca I. Mincu氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、BRAF阻害薬・MEK阻害薬併用療法はBRAF阻害薬単独療法と比較し心血管有害事象のリスクが高いことが示された。著者は「今回の結果は、悪性黒色腫治療の有益性と、心血管疾患の発症および死亡とのバランスをとるのに役立つと思われる」とまとめている。JAMA Network Open誌2019年8月2日号掲載の報告。

日本の医療現場におけるリスペリドンLAIとジェネリックの選択モデリング

 日本では、統合失調症で入院する患者に対し、早期退院と地域ケアの提供を国として推奨している。ヤンセンファーマの中村 祐輔氏らは、日本の精神科病院における異なる退院計画の臨床的および経済的アウトカムについて分析を行った。Neurology and Therapy誌オンライン版2019年8月10日号の報告。  さまざまな退院計画について、患者の再発と病院の収入を比較するためシミュレーションを行った。4つの異なる退院計画(1、2、3ヵ月または4ヵ月以上)と病院の収入をモデル化する、異なるマルコフ連鎖からなる決定木を構築した。退院計画の一環としての外来患者に対する治療レジメンの変動もシミュレーションに含めた。とくに、リスペリドン持効性注射剤(RLAI)とリスペリドンのジェネリック医薬品(RIS GE)について検討を行った。

周術期の潜在性脳卒中、認知機能低下リスクを増大/Lancet

 65歳以上の待機的非心臓手術時における周術期の潜在性脳卒中(covert stroke)の発生は、術後1年の認知機能低下リスクの増大と関連しており、発生率は14人に1人の割合(約7%)だったことが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のMarko Mrkobrada氏ら「NeuroVISION」研究グループの検討により明らかにされた。非手術時の潜在性脳卒中の発生頻度は高く、認知機能の低下と関連することが知られている。また、成人における非心臓手術後の顕在性脳卒中(overt stroke)の発生率は1%未満で重大な病状と関連するが、周術期潜在性脳卒中についてはほとんど知られていなかった。Lancet誌オンライン版2019年8月15日号掲載の報告。

心血管リスク、禁煙後何年で低下するのか/JAMA

 ヘビースモーカー(20パック年以上喫煙)の心血管疾患(CVD)リスクは、禁煙後5年未満で、現喫煙者と比較して約4割減少するが、非喫煙者との比較では禁煙から5年以上を経過しても有意に高いままであることが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのMeredith S. Duncan氏らが、フラミンガム心臓研究の被験者のデータを解析し明らかにしたもので、JAMA誌2019年8月20日号で発表した。禁煙後のCVDリスクの時間的経過は明らかになっていない。試算では元喫煙者のリスクは5年のみと考えられていた。

医療・介護・福祉のMIRAIをテーマに開催【ご案内】

 医療機関のパートナーとして医療の質を向上させる基礎を育み医療機関の健全経営を図る、認定登録医業経営コンサルタントの研究発表と養成を兼ねた第23回日本医業経営コンサルタント学会が名古屋で開催される(主催:公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会)。  「医療・介護・福祉のMIRAI-少子高齢化社会への挑戦-」をテーマに、少子高齢化に必須のロボットやAIなど新規技術の専門家ならびに医療機関による講演、産業振興のための国・愛知県の取組み紹介など、参加者にとっても有意義となるような内容を届ける。

低線量CT肺がんスクリーニング、毎年と隔年の比較/Eur J Cancer

 2011年、米国のNLST試験では、低線量CT(LDCT)スクリーニングによる前/現喫煙者における肺がん死亡率の低下が示された。また、イタリアのMulticentric Italian Lung Detection(MILD)試験では、長期のLDCTスクリーニングが、肺がん死亡率を39%減少させることを示している。イタリア・Istituto Nazionale Dei TumoriのPastorino氏らは、MILD試験をさらに毎年と隔年のスクリーニングに分け、スクリーニング強度が10年後の全死亡および肺がん特異的死亡にもたらす影響を評価した。European Journal of Cancer誌2019年9月号掲載の報告。

日本人てんかん患者に対するレベチラセタムの有効性と安全性

 レベチラセタムは、焦点性てんかんおよびてんかん重積状態の急性期治療に使用される忍容性の高い抗てんかん薬であり、随伴症状を伴う患者において第1選択薬として使用される。しかし、日本人てんかん患者におけるレベチラセタムの有効性および安全性に、血中レベチラセタム濃度がどのような影響を及ぼすかはよくわかっていない。神戸医療センターの関本 裕美氏らは、日本人てんかん患者におけるレベチラセタムの有効性と安全性に対する血中濃度の影響について分析を行った。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2019年8月10日号の報告。

日本糖尿病学会 「女性糖尿病医サポートの取り組み」Webサイトに「キラリ☆女性医師!特別版―イクボス・イクメンからのひとこと」を公開中

 日本糖尿病学会「女性糖尿病医サポートの取り組み」Webサイトでは、「キラリ☆女性医師!特別版―イクボス・イクメンからのひとこと」を公開している。  同Webサイトでは様々な女性医師を紹介するコーナーとして「キラリ☆女性医師!」を2015年4月に開設し、2018年4月までに27名の記事を掲載しているが、男性医師からの寄稿記事掲載コーナーも開設している。  第1回として 大倉 毅 氏(鳥取大学医学部附属病院)、第2回として 福井 道明 氏(京都府立医科大学大学院)の記事を掲載しており、以下関連リンクより閲覧可能。