日本語でわかる最新の海外医学論文|page:498

ニボルマブ・イピリムマブ併用、非小細胞肺がんに対する国内承認申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2019年12月25日、PD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とCTLA-4モノクローナル抗体イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)について、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する両剤の併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表。

spin(印象操作)研究のspin率は14%/BMJ

 試験の結果が有利に見えるように、曲解する、読者に誤解を与えるといった「spin」(印象操作)について、そのspinを研究した論文ではspinが認められるかを、オーストラリア・シドニー大学のLisa Bero氏らが調べた。結果は14%で認められたという。これまでに、spin研究者(PhDを持つ研究者やバイオメディカル研究者)が行ったspin研究では、さまざまな科学論文や試験デザインで幅広くspinが認められ、システマティックレビューによってspinのprevalence(有病率)中央値は、システマティックレビュー論文26%に対して試験論文では56%であることが示されていた。BMJ誌2019年12月18日号クリスマス特集号の「Sweet Little Lies」より。

アナストロゾール5年投与の乳がん予防効果、11年後も(IBIS-II)/Lancet

 乳がん発症リスクが高い閉経後女性において、アナストロゾールの予防効果は投与終了後も長期にわたり維持されており、新たな遅発性の副作用は報告されなかったことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のJack Cuzick氏らによる長期追跡試験「IBIS-II試験」で示された。「MAP.3」および「IBIS-II」の2件の大規模臨床試験において、アロマターゼ阻害薬投与後最初の5年間で高リスク女性の乳がん発症率が低下することが報告されていたが、アナストロゾール投与終了後の長期的な乳がん発症率についてはこれまで不明であった。Lancet誌オンライン版2019年12月12日号掲載の報告。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。

TAVRのデバイス性能は製品によって差がある(解説:上妻謙氏)-1160

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、重症大動脈弁狭窄症に対する治療として数々の外科手術との無作為化比較臨床試験が行われてきて、すでに手術リスクの程度にかかわらず外科手術よりも安全であることが証明され、世界中で適応が拡大されてきている。しかし今までTAVRのデバイス同士の比較が行われた大規模研究は少なく、デバイスごとの成績の差違は明らかではなかった。本SCOPE I試験は、現在のスタンダードデバイスであるSAPIEN 3と自己拡張型デバイスであるACURATE neoを1対1にランダマイズして比較したもので、75歳以上のSTSスコアの平均が3.5と中等度から低リスク患者を中心に739例がエントリーされた。プライマリーエンドポイントはVARC-2という弁膜症治療における有効性と安全性の30日成績で、具体的には全死亡、脳卒中、生命を脅かす出血、重大な血管合併症、PCIを要する冠動脈閉塞、急性腎障害、弁膜症症状または心不全による再入院、再治療を要する人工弁不全、中等度以上の弁逆流、あるいは狭窄の複合エンドポイントである。

大幅なスピード違反、高級車が多い診療科は?/BMJ

 医師の運転時のスピードや高級車の所有率は、診療科によって異なるのだろうか。米国・ハーバード大学メディカルスクールのAndré Zimerman氏らがスピード違反の切符を切られた医師を対象とした観察研究で、大幅なスピード超過で切符を切られる可能性が高い診療科や、高級車の所有率が高い診療科を調査した。BMJ誌2019年12月18日号(クリスマス特集号)に掲載。  本観察研究の対象は、2004~17年に米国フロリダ州でスピード違反のチケットを切られた医師5,372人と医師以外の1万9,639人。年齢および性別を調整後、速度制限を20mile/時(32.19km/時)を超える大幅なスピード違反、高級車の所有、警察官による違反切符の減免割合を診療科ごとに調査した。

乳がん病期分類と微量栄養素の関係

 乳がん治療は、治療法の種類によって酸化ストレスレベル増加や抗酸化物質の枯渇を招く可能性がある。乳がんの病期分類が進行するにつれて、血清の微量栄養素濃度の有意な低下がみられることが、ブラジル・リオデジャネイロ連邦大学のCintia Rosa氏らの調査で明らかとなった。「微量栄養素間の相乗効果は、利益を最大化し、正常細胞への照射の悪影響を最小化するために考慮されなければならない」と報告している。Nutrients誌オンライン版2019年12月4日号掲載の報告。

VMP療法+ダラツムマブ、多発性骨髄腫のOS延長/Lancet

 幹細胞移植の適応がない新規診断の多発性骨髄腫の患者では、標準治療であるボルテゾミブ+メルファラン+prednisone(VMP)療法にダラツムマブを追加(D-VMP療法)すると、標準治療単独に比べ全生存(OS)期間が有意に延長することが、スペイン・サラマンカ大学病院のMaria-Victoria Mateos氏らが行った「ALCYONE試験」の中間解析で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月9日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体製剤であり、直接的な腫瘍縮小作用とともに免疫調節作用を有するという。本試験の主解析では、D-VMP療法により無増悪生存(PFS)期間が有意に延長することが、すでに報告されている。

てんかん重積状態が止まらないときの薬剤選択(解説:岡村毅氏)-1162

精神科医をしていると、世界はいまも謎に満ちていると感じる。ほかの科ではどうであろうか? 教科書だけ見ていると、多くのことが既知になり、予測可能になったように思われる。でも臨床現場はいまだにわからないことだらけだ。医師になって17年が過ぎたが、闇の中で意思決定をし続けなければならない臨床医学に、私はいまだに戦慄することがある。精神医学の例を挙げだすと深みにはまるので、神経学の例を挙げよう。たとえば、てんかん重積状態である。ベンゾジアゼピンが効かない場合どうすればよいのだろうか? 日本神経学会のガイドラインでは、ホスフェニトインあるいはフェノバルビタールあるいはミダゾラムあるいはレベチラセタムとある。要するに、どれが優れているかわからないのだ。

長期認知症リスクを予測するためのLIBRAスコア

 現在のところ認知症の根治的治療は解明されておらず、認知症研究の焦点は予防戦略にシフトしつつある。オランダ・マーストリヒト大学のKay Deckers氏らは、修正可能なリスク(冠動脈疾患、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、うつ病、肥満、喫煙、運動不足、腎疾患)および保護因子(低~中程度のアルコール摂取、認知活動、健康的な食事)の12種をスコア化したLIfestyle for BRAin Health(LIBRA)スコアを用いて、アポリポ蛋白E(APOE)の対立遺伝子ε4を基にした遺伝リスクが高いまたは低い人における、中年期および後期の認知症および軽度認知障害(MCI)の予測精度について調査を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年11月17日号の報告。

週7パック以上の納豆で骨粗鬆症性骨折リスクが半減?

 納豆摂取と骨密度との間の直接の関連は知られているが、骨粗鬆症性骨折との関連については報告されていない。今回、大阪医科大学/京都栄養医療専門学校の兒島 茜氏らの研究で、閉経後の日本人女性において習慣的な納豆摂取が骨密度とは関係なく骨粗鬆症性骨折のリスク低下と関連していることが示唆された。The Journal of Nutrition誌オンライン版2019年12月11日号に掲載。

HR+乳がん、術後ホルモン療法に1年のS-1併用が有効(POTENT)/SABCS2019

 ホルモン受容体陽性乳がん(HRBC)に対する術後療法として、5年間のホルモン療法に1年間のS-1の併用が有効であるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、京都大学の戸井 雅和氏より発表された。  本試験(POTENT試験)は、2012年2月~2016年2月に症例登録がなされた、国内多施設共同(139施設)のオープンラベル無作為化比較の第III相試験である。中間解析時に主要評価項目の閾値を達成したため早期に試験が中止され、今回の発表となった。

乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

 乳房温存手術では、腫瘍摘出術後の加速乳房部分照射(APBI)は全乳房照射と比較して、同側乳房腫瘍再発(IBTR)のコントロールにおいて同等性の判定基準を満たさないことが、米国・NRG OncologyのFrank A. Vicini氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月14日号に掲載された。早期乳がんに対する乳房温存手術後の全乳房照射はIBTRを抑制し、乳房全切除術と同等の結果をもたらす。一方、腫瘍のある四分円にのみ照射するAPBIは治療期間の短縮をもたらすが、その効果が乳房全切除術と同等かは知られていない。

医師数32万7,210人、増えた科や多い都道府県は?―厚労省調査

 厚生労働省は19日、「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果を取りまとめ、公表した。それによると、全国の医師数は、32万7,210人で、前回調査(16年)に比べ2.4%増となり、一貫して増加傾向が続いている。このうち、女性医師は7万1,758人で、前回よりも6.3%増と大きく数字を伸ばし、過去最多を更新した。一方、医療施設に従事する医師の平均年齢は上がり続けており、診療所に従事する医師の平均年齢は初めて60歳代となり、高い年齢層が支えていることがわかる。

電子処方ツール導入によるベンゾジアゼピン処方への影響

 電子処方ツール(e処方)は、処方プロセスの妥当性および医療の質に関して、いくつかのベネフィットが認められている。しかし、デジタル化の好ましくない影響である、対面式の直接的な会話を省く簡便かつ迅速な処方プロセスにより、ベンゾジアゼピン(BZD)などの乱用リスクが高い薬剤の処方を促進してしまう可能性がある。スイス・Regional Hospital of Bellinzona and ValliのRosaria Del Giorno氏らは、5つの指導病院ネットワークにおいて、入院患者に対する新規BZD処方に対するe処方の影響を調査するため、パネルデータ調査を行った。Diagnostics誌2019年11月15日号の報告。

早期TN乳がんの術前化療後のctDNA検出が再発と関連/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で術前化学療法(NAC)後に手術を受けた女性において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検出が遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)に関連することが示された。米国・Indiana University Simon Cancer CenterのMilan Radovich氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で発表した。  本試験では、第II相BRE12-158試験(NAC後に残存病変を有する早期TNBC患者を、遺伝子に基づく治療と主治医選択の治療に無作為に割り付け)に登録された患者から採取した血漿サンプルを分析した。本試験には196例が参加し、FoundationOne Liquidにより142例のctDNA配列が解析された。ctDNA検出とDDFSおよびOSとの関連について、log-rank検定による単変量解析およびCox比例ハザードモデルを使用した多変量解析で評価した。

イキセキズマブ、X線陰性体軸性脊椎関節炎に有効/Lancet

 X線画像で明確な所見のない体軸性脊椎関節炎患者の治療において、イキセキズマブはプラセボに比べ、疾患の徴候と症状(ASAS40)を有意に改善することが、米国・オレゴン健康科学大学のAtul Deodhar氏らが行った「COAST-X試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月5日号に掲載された。イキセキズマブはインターロイキン17A(IL-17A)に高い親和性を有するモノクローナル抗体であり、すでにX線所見を伴う体軸性脊椎関節炎(別名:強直性脊椎炎)における有効性が報告されている。

新規ADC薬のDS-8201、既治療HER2+乳がんで腫瘍縮小効果/NEJM

 多くの前治療歴(レジメン数中央値6)のある転移を有するHER2陽性乳がんの治療において、trastuzumab deruxtecan(DS-8201)は持続的な腫瘍縮小効果(奏効率60.9%、奏効期間中央値14.8ヵ月)をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏らが行った「DESTINY-Breast01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号に掲載された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。trastuzumab deruxtecanは、トラスツズマブと同じアミノ酸配列を持ち、HER2を特異的な標的とするヒト化モノクローナル抗体と、細胞傷害性薬剤(ペイロード)である強力なトポイソメラーゼI阻害薬を、開裂可能なテトラペプチドベースのリンカーを介して結合した抗体薬物複合体(ADC)。既治療のHER2陽性進行乳がんの第I相用量設定試験(DS8201-A-J101試験)では、奏効率59.5%、奏効期間中央値20.7ヵ月と報告されている。

カテーテル治療の波はついに三尖弁にも来た(解説:上妻謙氏)-1159

経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip)は、手術ハイリスクの重症僧帽弁閉鎖不全に対する治療としてわが国でも普及してきている。弁膜症を伴う心不全のカテーテル治療は超高齢社会におけるニーズが高い。その中で三尖弁に対するカテーテル治療についてはデバイスの開発が遅れていた。このTRILUMINATE試験は、MitraClipの技術を三尖弁用に改良したTriClipという製品を使用し、十分な薬物治療を受けてもNYHA II度以上の心不全症状のある中等度以上の三尖弁閉鎖不全症(TR)患者をエンロールしたシングルアームスタディである。