日本語でわかる最新の海外医学論文|page:478

転移を有するHER2+乳がん、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinib追加でPFS改善/NEJM

 トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の治療を受けた、脳転移を含む転移のあるHER2陽性乳がん患者に対して、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinibを追加投与することはプラセボの追加投与と比較して、無増悪生存(PFS)および全生存(OS)アウトカムが良好であったことが示された。ただしtucatinib追加投与群では下痢とALT値上昇のリスクが高かった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのRashmi K. Murthy氏らによる国際共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号で発表された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。転移のあるHER2陽性乳がん患者で、複数のHER2標的薬で治療後に病勢進行が認められた場合の治療選択肢は限られる。tucatinibは開発中の高度に選択的な経口HER2阻害薬。第Ib相の用量漸増試験で、脳転移を含む転移のあるHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ+カペシタビンへの併用が抗腫瘍効果を示し有望視されていた。

肺血栓塞栓症の診断―人工知能本格利用の前に―(解説:後藤信哉氏)-1158

NEJMの論文にて、本文を読むだけでは理解できない論文は少なかった。本論文は内容を読むだけでは理解しきれない。肺血栓塞栓症の診断は容易でないことが多い。筆者は30年臨床医をしているので勘が利く。しかし、医療を標準化するためには経験を積んだ臨床医の「勘」を定量化する必要がある。本論文では肺塞栓症を疑う臨床症状を有する3,133例から出発した。明確な除外基準に該当しない2,017例を研究対象とした。これらの症例がWells scoreにより層別化された。静脈血栓症の少ない日本ではWells scoreの知名度も低い。Wells scoreを覚えるのは面倒くさい。臨床的に静脈血栓症らしければ3点、肺塞栓症以外の病気らしくなければ3点などかなりソフトな因子により分類する。本研究では、このソフトなWells scoreとd-dimerを組み合わせたことによる肺塞栓症診断精度を評価している。

「ワクチン忌避」への対応と医療者教育の重要性/日本ワクチン学会

 「ワクチンの有効性・安全性に疑いを持つ人が接種を控える動き(ワクチン忌避)」が世界的に広がりを見せている。世界保健機関(WHO)は2019年に発表した「世界の健康に対する10の脅威」の1つとして「ワクチン忌避」を挙げている。日本においてもHPVワクチンの接種推奨が停止され、再開を求める医療者の声にもかかわらずいまだ果たされていない、等の現状がある。  11月30日~12月1日に開催された「第23回日本ワクチン学会学術集会」では、このワクチン忌避への危機感と対応策が大きなテーマの一つとなった。

統合失調症における抗精神病薬減量の成功要因~メタ解析

 慶應義塾大学のHideaki Tani氏らは、統合失調症における抗精神病薬減量の成功を予測する因子を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年11月26日号の報告。  統合失調症における抗精神病薬減量について調査したプロスペクティブ臨床試験およびランダム化比較試験(RCT)を対象に、システマティックレビュー、メタ解析を実施した。

糖尿病妊婦の子供は早発性CVDリスクが高い/BMJ

 糖尿病の母親の子供は、小児期から成人期初期に、非糖尿病の母親の子供に比べ早発性の心血管疾患(CVD)の発生率が高く、とくに母親がCVDや糖尿病性合併症を併発している場合はCVDリスクがさらに増加することが、デンマーク・オーフス大学のYongfu Yu氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。最近の数10年間で、世界的に子供や若年成人のCVD有病率が高くなっている。妊娠前および妊娠中の母親の糖尿病は、子供のメタボリック症候群や先天性心疾患のリスク上昇と関連するとされるが、母親の糖尿病への出生前の曝露が、生命の初期段階にある子供の早発性CVDに影響を及ぼすか否かは知られていないという。

細菌性の市中肺炎に対する経口lefamulinとモキシフロキサシンの比較試験(解説:吉田敦氏)-1157

今回、成人の細菌性の市中肺炎を対象とした経口lefamulin 5日間投与とモキシフロキサシン7日間投与の第III相ランダム化比較試験(LEAP 2 study)の結果が発表された。lefamulinはプレウロムチリン(pleuromutilin)に近縁の抗微生物薬で、リボゾームの50Sサブユニットの23SリボゾーマルRNAに作用することで蛋白合成を阻害する。lefamulinはバイオアベイラビリティに優れ、経口、静注両方で利用可能であり、またin vitroでMSSA、MRSA、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、連鎖球菌に活性を持ち、さらにはS. pneumoniae、H. influenzae、L. pneumophila、C. pneumoniae、M. pneumoniaeといった肺炎の主な原因微生物まで非常に幅広いスペクトラムを有するという。これまで細菌性の市中肺炎を対象とし、静注で開始して経口にスイッチする方法が検討され(LEAP 1 study。モキシフロキサシン±リネゾリドを対照とするランダム化比較試験)1)、加えて、細菌性の皮膚軟部組織感染症においてバンコマイシンを対照として比較試験が行われた2)。LEAP 1 studyではPORTリスク*クラスIII相当の肺炎例が約70%含まれていたが、ITT解析による効果は両群でほぼ同等、また副作用については低カリウム血症、吐き気、不眠、注射部位の疼痛・血管炎がモキシフロキサシンに比してlefamulin群で多かった。一方、後者の皮膚軟部組織感染症の検討では、効果はバンコマイシンと同等であったものの、頭痛、吐き気、下痢といった副反応がみられ、注射部位の血管炎はバンコマイシンよりも多かった。

ペルツズマブ+トラスツズマブ+化学療法のHER2+乳がん術後療法、引き続き有用(APHINITY)/SABCS2019

 HER2陽性乳がんに対する術後療法としての、ペルツズマブとトラスツズマブと標準化学療法の併用を評価する第III相APHINITY試験の更新データが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・Institut Jules BordetのMartin Piccart氏より発表された。  APHINITY試験は、2011年11月~2013年8月に症例登録された国際共同無作為化比較試験。2017年に初回解析結果が発表され、今回は2回目の解析データの発表。2017年の発表では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)はハザード比(HR)が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.00、p=0.045)と、有意にペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法併用群(HP群)が良好な結果であった。

非扁平上皮NSCLC、KEYNOTE-189日本人延長試験の結果/日本肺癌学会

 未治療の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)に対してペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ(シスプラチンまたはカルボプラチン)療法とペメトレキセド+プラチナ療法と比較したKEYNOTE-189試験の日本人延長試験の結果が、第60回日本肺癌学会学術集会で発表された。当試験の全集団ではペムブロリズマブ上乗せ群が全生存期間(OS)を有意に改善した(HR:0.49、95%CI:0.38~0.64、p<0.001)が、今回の日本人試験の評価項目は安全性、忍容性である。

超悪玉脂肪酸はコントロールできるのか?/日本動脈硬化学会

 超悪玉脂肪酸の別名を持つトランス脂肪酸。この摂取に対し、動脈硬化学会が警鐘を鳴らして早1年が経過したが、農林水産省や消費者庁の脂肪酸の表示義務化への姿勢は、依然変わっていないー。2019年12月3日、日本動脈硬化学会が主催するプレスセミナー「飽和脂肪酸と動脈硬化」が開催され、石田 達郎氏(動脈硬化学会評議員/神戸大学大学院医科学研究科循環器内科学)が「食事由来(外因性)の脂質を考える」について講演。脂質過多な患者と過少な患者、それぞれの対応策について語った。

男性の顔の皮膚炎、原因は身だしなみ製品にあり

 男性も「顔」に投資する時代が到来しているが、美の追求には代償が伴うようだ。米国・ミネソタ大学のErin M. Warshaw氏らは、男性の顔の皮膚炎(male facial dermatitis:MFD)の特徴、アレルゲン、原因を調べるため、1994~2016年にパッチテストを受けた北米の男性患者5万507例を対象とした後ろ向き横断分析を行った。その結果、MFD患者は1994年の5.6%から2015~16年には10.6%に増大していたこと、MFDでは若い患者が有意に多く、アレルゲンは概して防腐剤、香料、染毛剤、界面活性剤などが含まれているパーソナルケア製品にあったことを報告した。著者は「今回の研究は、男性の皮膚科患者が使用する身だしなみ製品の増大によるリスクと曝露への洞察を提供するものとなった。これにより臨床医はパッチテストの恩恵を受ける患者をより適切に識別し、治療できるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年11月27日号掲載の報告。

要支援高齢者に対するリハビリテーション専門職主導の短期集中型自立支援プログラムの効果

 医療経済研究機構の服部 真治氏らは、介護保険サービスを利用する必要がなくなり、その利用を終了(介護保険サービスから卒業)するための短期集中型自立支援プログラムの有効性を評価した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2019年10月17日号の報告。  短期集中型自立支援プログラムの構成は、一般的な通所型サービスCと同様であるが、今回のプログラムは、リハビリテーション専門職が中心となり、随時、管理栄養士、歯科衛生士も加わり、毎回20分間(状況に応じて10~30分間)の動機付け面談を実施することにより、利用者が自身の可能性に気付き、元の生活を取り戻すための日々の暮らし方を知り、意欲的に自分自身を管理できるようにすることを目的に開発されている。

院内心停止の生存率を左右する予後因子とは/BMJ

 院内心停止患者では、心停止前に悪性腫瘍や慢性腎臓病がみられたり、心停止から自己心拍再開までの蘇生時間が15分以上を要した患者は生存の確率が低いが、目撃者が存在したり、モニタリングを行った患者は生存の確率が高いことが、カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。院内心停止は生存率が低く、臨床的知識の多くは院外心停止に関する豊富な文献からの推測だという。院内心停止と関連する心停止前および心停止中の予後因子の理解は、重要な研究分野とされる。

リンパ節転移陽性の早期TN乳がん、術前にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加すると病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告されている(KEYNOTE-522試験)。12月10~14日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)では、本試験のサブグループにおけるpCR率が報告され、リンパ節転移陽性例においてもpCR率が有意に上昇したことが示された。英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表。

医療者が共有できていない、重症低血糖とその背景

 2019年10月29日、日本イーライリリー主催のプレスセミナー「糖尿病患者さんと家族の意識調査から見る、重症低血糖の実態」が開催され、山内 敏正氏(東京大学大学院医学研究科糖尿病・代謝内科 教授)が「低血糖・重症低血糖について」、岩倉 敏夫氏(神戸市立医療センター中央市民病院)が「糖尿病患者さんと家族調査結果から見える課題」と題して重症低血糖について解説した。

ベンゾジアゼピン治療と自殺リスク

 不安症および睡眠障害のマネジメントのためのガイドラインでは、抗うつ薬治療と心理療法を第1および/または第2選択治療とし、ベンゾジアゼピン(BZD)は、第3選択治療としている。米国・コロラド大学のJennifer M. Boggs氏らは、自殺による死亡とBZDガイドラインコンコーダンスとの関連について評価を行った。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2019年11月17日号の報告。  Mental Health Research Networkより、米国8州のヘルスシステムから不安症および/または睡眠障害を有する患者を対象とした、レトロスペクティブ症例対照研究として実施した。自殺による死亡症例は、年およびヘルスシステムにおいて対照とマッチさせた。

デュルバルマブの進展型小細胞肺がん、FDAの優先審査指定に/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2019年11月29日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が治療歴のない進展型小細胞肺がん(SCLC)患者に対する治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から生物製剤承認一部変更申請(sBLA)に対する優先審査指定を受けたことを発表。  このsBLAは、The Lancet誌に掲載された第III相CASPIAN試験の良好な結果に基づいて行われた。CASPIAN試験は、進展型SCLC患者さんの1次治療を対象とした、無作為化非盲検国際多施設共同第III相試験。

米国中高生にフレーバー電子タバコが蔓延/JAMA

 2019年の米国の高等学校(high school)および中学校(middle school)の生徒における電子タバコ使用者の割合は高く(それぞれ27.5%、10.5%)、特定の銘柄の電子タバコ使用者の多くがフレーバー電子タバコを使用(72.2%、59.2%)している実態が、米国食品医薬品局(FDA)タバコ製品センターのKaren A. Cullen氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2019年11月5日号に掲載された。米国の青少年における電子タバコの使用率は、2011年から2018年に、実質的に増加しているという。青少年の電子タバコや他のタバコ製品の使用率の継続的な監視は、公衆衛生学上の施策や計画立案、規制の取り組みへの情報提供として重要とされる。

ddTC療法、上皮性卵巣がんの1次治療でPFS改善せず/Lancet

 上皮性卵巣がん患者の1次治療において、毎週投与を行うdose-dense化学療法は施行可能であるが、標準的な3週ごとの化学療法に比べ無増悪生存期間を改善しないことが、英国・マンチェスター大学のAndrew R. Clamp氏らが行った「ICON8試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月7日号に掲載された。上皮性卵巣がんの標準的1次治療は、従来、カルボプラチン+パクリタキセルの3週ごとの投与とされる。一方、日本のJGOG3016試験では、dose-dense weekly PTX+3-weekly CBDCAにより、PFSと全生存がいずれも有意に改善したと報告されている。

HR+乳がんへの術後化療、ゲノム解析結果に年齢も加味すべきか(MINDACT)/SABCS2019

 ホルモン受容体(HR)陽性乳がんにおいて、多重遺伝子解析を用いた術後化学療法の適応有無の判断に、年齢も考慮に入れる必要がある可能性が示唆された。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・ブリュッセル自由大学のMartine J. Piccart氏らによるMINDACT試験の計画外サブグループ解析の結果が発表された。  多重遺伝子解析結果と年齢、化学療法の適応の関係については、TAILORx試験の2次分析からの報告がある。MINDACT試験で定義された臨床リスクとの統合に基づく解析が行われ、21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による高再発スコア(高RS;26〜100点)は、40〜50歳の女性における高臨床リスクおよびRS16~20、または臨床リスクとは独立してRS21~25に相当する可能性が示唆され、9年時の遠隔再発リスクにおける化学療法追加の無視できないベネフィットが示された。

うつ病や統合失調症リスクに対する喫煙の影響

 統合失調症やうつ病の患者では、一般集団と比較し喫煙率が高い。英国・ブリストル大学のRobyn E. Wootton氏らは、ゲノムワイド関連研究(GWAS)で特定された遺伝子変異を使用して、この因果関係を調べることのできるメンデルランダム化(MR)法を用いて検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年11月6日号の報告。  統合失調症およびうつ病に対する喫煙の双方向の影響を調査するため、2つのサンプルにおけるMRを実施した。喫煙行動についてはGSCANコンソーシアムから喫煙開始のGWASを使用し、UK Biobankの46万2,690サンプルより生涯の喫煙行動に関する独自のGWASを実施した。