日本語でわかる最新の海外医学論文|page:20

降圧薬服用は、朝でも夜でもお好きなほうに―再び(解説:桑島巖氏)

「降圧薬の服用は朝か夜か?」の問題については、2022年にLancet誌上で発表されたTIME studyのコメントで発表しているが、今回JAMA誌に発表されたGarrisonらのBedMed randomized clinical trial論文でもまったく同じコメントを出さざるを得ない。TIME studyと同様、本研究でも降圧薬の時間薬理学を理解していれば、服薬は朝(6~10時)でも夜(20~0時)でもどちらも同じ結果(心血管イベント、心血管死)をもたらすというのは当然の結論である。降圧薬の心血管予防効果は24時間にわたる降圧効果の持続と相関することはすでに知られており、現在処方されている降圧薬のほとんどは血中濃度に依存して降圧効果を発揮するが、24時間以上持続する降圧薬はアムロジピンとサイアザイド系、非サイアザイド系降圧利尿薬のみである。ACE阻害薬やARBはいずれも24時間持続性がない。

既治療進行胃がんに対するCLDN18.2特異的CAR-T細胞療法(satri-cel)と医師選択治療との比較:第II相試験(解説:上村直実氏)

切除不能な進行胃がんおよび食道胃接合部がん(以下、胃がん)に対する化学療法のレジメはHER2陽性(20%以下)とHER2陰性(約80%)に区別されている。HER2陰性の進行胃がんに対する標準的1次治療はフルオロピリミジンとプラチナベースの化学療法であるFOLFOXやCAPOXなどが推奨されてきたが、全生存期間(OS)の中央値が12ヵ月未満であり、無増悪生存期間(PFS)の中央値は約6ヵ月程度と満足できる成績ではなかった。最近になって、標準化学療法にドセタキセルを上乗せしたFLOT療法(3剤併用化学療法)さらに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)や抗claudin-18.2(CLDN18.2)抗体のゾルベツキシマブ(商品名:ビロイ)を組み合わせた新しい併用療法の有効性が報告されている。しかしながら、これらのレジメを用いた国際的共同試験におけるOSの中央値は12~18ヵ月程度にとどまっているのが現状である。

デスモプレシン、重大な副作用にアナフィラキシー追加/厚労省

 厚生労働省は2025年6月24日、男性の夜間頻尿や中枢性尿崩症治療薬として使用される脳下垂体ホルモン薬のデスモプレシン酢酸塩水和物(以下、デスモプレシン)と甲状腺・副甲状腺ホルモン薬のチアマゾールに対して、添付文書の改訂指示を発出した。副作用の項に重大な副作用を新設し、デスモプレシンの経口剤と点鼻剤の両剤形においてアナフィラキシーの追記が、チアマゾールには急性膵炎の追記がなされた。なお、デスモプレシンの点鼻剤には、合併症・既往歴等のある患者の項にもアナフィラキシーの発現について追記がなされた。  対象製品は以下のとおり。

フィネレノン、HFpEFの心血管死・心不全入院リスク減~プール解析(FINE-HEART)

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJohn W Ostrominski氏らが、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノン(商品名:ケレンディア)の3件の大規模試験(FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HF)をプール解析した「FINE-HEART」から、フィネレノンは左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)の心血管死または心不全による入院を13%減少させることを示唆した。JACC:Heart Failure誌2025年6月11日号掲載の報告。

片頭痛に有効な運動介入は?

 トルコ・Ege UniversityのYunus Emre Meydanal氏らは、さまざまな種類の運動およびその組み合わせが、片頭痛発作および併存疾患に及ぼす影響を検討するため、パイロット研究を実施した。これまで、有酸素運動とレジスタンス運動との組み合わせは、片頭痛患者においてより顕著な症状改善が得られる可能性が示唆されていた。Headache誌オンライン版2025年5月20日号の報告。  本研究は、Ege University Hospitalにおいて、2022年9月〜2024年3月にかけて片頭痛患者24例を対象に、並行群間ランダム化比較試験のパイロット研究として実施した。対象患者は、有酸素運動群、複合運動群(有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせ)、対照群にランダム化した。ベースライン期間に1ヵ月間の頭痛日誌による調査を行った後、両介入群とも同じ有酸素運動を週3日、12週間行った。複合運動群には、有酸素運動に加え、首、背中上部、肩の筋肉をターゲットとした5種類のレジスタンス運動を行った。測定は、ベースライン時、3ヵ月の介入期間後、2ヵ月のフォローアップ期間後に実施した。主要アウトカムは、1ヵ月当たりの片頭痛日数とした。副次的アウトカムには、不安および抑うつレベル、有酸素能力、身体活動レベル、片頭痛関連の生活の質(QOL)とした。

がん診断後の運動習慣が生存率と関連

 がんと診断された後の運動習慣が、生存率と関連しているとする研究結果が報告された。年齢やがんのステージなどの影響を考慮しても、運動量が多いほど生存率が高いという。米国がん協会(ACS)のErika Rees-Punia氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the National Cancer Institute」に5月21日掲載された。  運動が健康に良いことは古くから知られている。しかしがん診断後には、がん自体や治療の影響で体力が低下しやすく、運動が困難になることも少なくない。たとえそうであっても習慣的な運動が予後にとって重要なようだ。Rees-Punia氏は、「われわれの研究結果は、がん診断後に活動的に過ごすことが生存の確率を有意に高める可能性を示唆する、重要なエビデンスだ」と述べている。

社会との関わりが高齢者の寿命を延ばす?

 長生きしたいのなら、社会と関わりを持ち続けることが大切なようだ。新たな研究で、他者との交流、スポーツや趣味のグループへの参加、慈善活動などを通して社会的関わりを持っている高齢者では、孤独な高齢者に比べて死亡リスクの低いことが明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のAshraf Abugroun氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Geriatrics Society」に5月21日掲載された。  Abugroun氏は、「社会的関わりを持つことは単なるライフスタイルの選択ではなく、健康的な老化と長寿に密接に関連している」と同誌の発行元であるWiley社のニュースリリースの中で述べている。

スマホ画像からAIモデルがアトピー性皮膚炎の重症度を評価

 アトピー性皮膚炎患者は近い将来、スマートフォン(以下、スマホ)のアプリに自分の皮疹の画像を投稿することで、その重症度を知ることができるようになるかもしれない。慶應義塾大学医学部皮膚科学教室・同大学病院アレルギーセンターの足立剛也氏らが、患者が撮影した画像からアトピー性皮膚炎の重症度を評価するAIモデル「AI-TIS」を開発したことを発表した。この研究結果は、「Allergy」に5月19日掲載された。  足立氏は、「多くのアトピー性皮膚炎患者が、自分の皮疹の重症度を評価するのに苦労している。われわれが開発したAIモデルを使えば、スマホだけで疾患をリアルタイムで客観的に追跡することが可能になり、病状管理の改善につながる可能性がある」と慶應大学のニュースリリースで述べている。

術後大腸がん患者への運動療法、DFSとOSを改善/NEJM

 前臨床研究および観察研究では、運動が大腸がんを含むがんのアウトカムを改善する可能性が示唆されている。カナダ・アルバータ大学のKerry S. Courneya氏らCHALLENGE Investigatorsは「CHALLENGE試験」において、大腸がんに対する術後補助化学療法終了から6ヵ月以内に開始した3年間の構造化された運動プログラムは、これを行わない場合と比較して、無病生存期間(DFS)を有意に改善し、全生存期間(OS)の有意な延長をもたらすことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年6月1日号に掲載された。

RNAi治療薬ブトリシラン、ATTR-CMの適応追加/アルナイラム

 2025年6月24日、アルナイラムジャパンは核酸医薬(RNAi)のブトリシラン(商品名:アムヴトラ)について、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬として、国内における適応追加承認を取得した。  この適応追加は、多施設共同二重盲検無作為化試験の第III相HELIOS-B試験の結果に基づいたもの。本試験は、ATTR-CM(変異型および野生型)と診断された成人患者655例を対象に、主要評価項目を全死因死亡および心血管関連イベントの再発の複合とし、アムヴトラの有効性と安全性を評価。主要評価項目およびすべての副次評価項目を達成し、NEJM誌オンライン版2024年8月30日号でも報告されていた。

女性の低体重/低栄養症候群(FUS)は社会で治療する疾患/肥満学会

 日本肥満学会は、日本内分泌学会との合同特別企画として、6月6日(金)に「女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome:FUS)-背景、現況、その対応-」のシンポジウムを開催した。シンポジウムでは、なぜ肥満学会が「女性の痩せ」にフォーカスするのか、その背景やFUSの概念、対応などが講演された。  「なぜ、肥満学会が『痩せ』を問題とするのか」をテーマに同学会理事長の横手 幸太郎氏(千葉大学 学長)が講演を行った。

統合失調症に対する簡易心理的介入の有効性~メタ解析

 統合失調症患者に対する認知行動療法(CBT)は、国際的な臨床ガイドラインで推奨されているにもかかわらず実施率が低い。そのため、CBTで推奨される最低16セッションより短い、簡易な短期の個別心理的介入の開発が進められてきた。英国・Hampshire and Isle of Wight Healthcare NHS Foundation TrustのBlue Pike氏らは、統合失調症患者に対する既存の簡易介入(brief intervention)をシステマティックに特定し、その有効性を評価する初めてのメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌2025年5月13日号の報告。

ビタミンD3は生物学的な老化を抑制する?

 ビタミンD3サプリメント(以下、サプリ)は、本当に「若返りの泉」となって人間の生物学的な老化を遅らせることができる可能性のあることが、新たな臨床試験で示された。ビタミンD3を毎日摂取している人は、染色体の末端にありDNAを保護する役割を果たしているテロメアの摩耗が抑えられていたことが確認されたという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院予防医学部門長のJoAnn Manson氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Clinical Nutrition」に5月21日掲載された。  靴ひもの先端をカバーするプラスチック製の覆いに例えられるテロメアは、加齢とともに劣化する。そのため研究者は、出生から経過した年数に基づく暦年齢ではなく、実際に体がどれだけ老化したかを表す生物学的年齢の指標としてテロメアを用いている。

片頭痛などの疼痛スコアに口腔衛生が関連?

 女性において、口腔衛生スコアが低いことは、片頭痛などの疼痛スコアが高いことと関連するという研究結果が、「Frontiers in Pain Research」に4月9日掲載された。  シドニー大学(オーストラリア)のSharon Erdrich氏らは、女性において、自己申告による口腔衛生、口腔マイクロバイオーム、さまざまな疼痛症状の関連を検討した。口腔衛生は、世界保健機関(WHO)の口腔衛生質問票を用いて評価された。身体の疼痛、片頭痛、腹痛は、それぞれの検証済み評価尺度を用いて測定された。

新ガイドラインの導入で肺移植待機患者の死亡率が大きく改善

 米国では、2023年に肺移植の新たな臓器配分ガイドラインが導入されて以降、移植待機中に死亡する移植希望者の数が大幅に減少したことが最新の研究で明らかになった。米コロンビア大学アーヴィング医療センターのMary Raddawi氏らによるこの研究結果は、米国胸部学会国際会議(ATS 2025、5月16〜21日、米サンフランシスコ)で発表された。  米国ではかつて、ドナー肺の配分が地理的な近さに基づいて決定されており、ドナーの近くに住む人が優先的にドナー肺へのアクセス権を与えられていた。しかし2017年に、肺移植を必要としていた女性が、臓器配分のポリシーが医療的な緊急度よりも居住地を優先しているのは不公平だとして訴訟を起こした。

高齢者の夜間頻尿、改善のカギは就寝時間か

 夜間頻尿は特に高齢者を悩ませる症状の一つであり、睡眠の妨げとなるなど生活の質(QOL)に悪影響を及ぼすことがある。今回、適切な時刻に規則正しく就寝する生活を送ることで、高齢者の夜間頻尿が改善する可能性があるとする研究結果が報告された。研究は、福井大学医学部付属病院泌尿器科の奥村悦久氏らによるもので、詳細は「International Journal of Urology」に4月26日掲載された。  夜間頻尿は、夜間に排尿のために1回以上起きなければならない症状、と定義されている。主な原因としては、夜間多尿、膀胱容量の減少、睡眠障害が知られている。疫学研究により、夜間頻尿はあらゆる年齢層における主要な睡眠障害の一因であり、加齢とともにその有病率が上昇することが示されている。加齢に伴う睡眠障害の一つの特徴として、就寝時間が早まる傾向がある。その結果、高齢者では総睡眠時間は延長するものの眠りが浅くなり、軽い尿意で覚醒するようになる。しかし、睡眠障害の治療が夜間頻尿の改善につながることを示唆する前向き臨床試験の報告は限られている。このような背景を踏まえ著者らは、就寝時刻を調整することで高齢者の夜間頻尿が改善するという仮説を立てた。

中硬膜動脈塞栓術で、慢性硬膜下血腫の再発リスクは軽減するか/JAMA

 慢性硬膜下血腫(CSDH)に対する開頭術後の再発リスクが高い患者において、標準的な薬物療法単独と比較して標準治療に中硬膜動脈(MMA)塞栓術を追加しても、6ヵ月後の再発率を改善せず、同側CSDH再発に対する再手術やCSDH関連の累積入院期間にも差はないことが、フランス・Pitie-Salpetriere HospitalのEimad Shotar氏らが実施した「EMPROTECT試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年6月5日号で報告された。  EMPROTECT試験は、フランスの12施設で実施した非盲検(エンドポイント評価は盲検下)無作為化試験であり、2020年7月~2023年3月に参加者を募集した(Programme Hospitalier de Recherche Clinique[PHRC]などの助成を受けた)。

JN.1対応コロナワクチン、発症・入院予防の有効性は?(VERSUS)/長崎大

 2024年度秋冬シーズンの新型コロナワクチン定期接種では、JN.1系統に対応した1価ワクチンが採用された。長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究チームは、2024年10月1日~2025年3月31日の期間におけるJN.1系統対応ワクチンの有効性について、国内多施設共同研究(VERSUS study)の第12報となる結果を、2025年6月11日に報告した。本結果により、JN.1系統対応ワクチンの接種により、発症予防、入院予防において追加的な予防効果が得られる可能性が示された。

GLP-1受容体作動薬使用時にすべき生活習慣介入の優先事項とは

 肥満症の治療にGLP-1受容体作動薬が使用される際に、その効果を維持などするために患者の食事や運動など生活習慣に引き続き介入する必要がある。米国・タフツ大学フリードマン栄養科学政策学部のDariush Mozaffarian氏らの研究グループは、GLP-1受容体作動薬を使用する際に、食事内容や生活習慣介入での優先事項をアメリカ生活習慣病医学会、アメリカ栄養学会、肥満医学協会、および肥満学会の団体とともに共同指針として策定した。この指針はThe American Journal of Clinical Nutrition誌2025年5月29日号オンライン版に掲載された。

男女の認知症発症リスクに対する性ホルモンの影響

 認知症は、世界的な公衆衛生上の大きな問題であり、そのリスクは性別により異なることが知られている。女性のアルツハイマー病およびその他の認知症発症率は、男性の約2倍であるといわれている。テストステロン値は、高齢者の認知機能に影響を及ぼすと考えられているが、これまでの研究では一貫性のない結果が報告されており、性ホルモンと認知症との関係は、依然として明らかになっていない。中国・山東大学のYanqing Zhao氏らは、大規模データベースを用いて、男女の認知症発症リスクに対する性ホルモンの影響を検討した。Clinical Endocrinology誌オンライン版2025年5月11日号の報告。