睡眠時間は、認知機能に重要な役割を果たしており、認知機能の低下と密接に関連している。しかし、中国人を対象に睡眠時間と認知機能の関係について検討した研究は、これまで十分ではなかった。中国・北京中医薬大学のGuolin Guo氏らは、中国の中高年における睡眠時間と認知機能の関連性を評価するため、横断的研究を実施した。JMIR Human Factors誌2025年9月8日号の報告。
China Health and Retirement Longitudinal Study 2020に参加した1万5,526例のデータを用いて、エピソード記憶、思考力、総合的認知機能を含む3つの複合指標を用いて認知機能の評価を行った。また、対面インタビューにより、自己申告による夜間の睡眠時間のデータも取得した。人口統計学的、ライフスタイル、健康関連の共変量を考慮し、多重一般化線形回帰モデルを用いて調整した。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象1万5,526例のうち、女性は53.02%(8,232例)、男性は46.98%(7,294例)、平均年齢は61.5±9.27歳であった。
・1晩の睡眠時間が4時間以下(β=-1.85、95%信頼区間[CI]:-2.07~-1.62)、5時間(β=-0.55、95%CI:-0.78~-0.33、p<0.001)、9時間(β=-1.78、95%CI:-2.17~-1.39)、10時間以上(β=-3.01、95%CI:-3.39~-2.63)と回答した人は、認知機能と有意な負の相関関係が認められた。
・調整モデルでは、10時間以上の長時間睡眠が全般的な認知機能に対する悪影響がより顕著であり(β=-3.01、95%CI:-3.39~-2.63、p<0.001)、次いで4時間以下の極端に短い睡眠(β=-1.85、95%CI:-2.07~-1.62、p<0.001)が顕著であった。
著者らは「睡眠時間と全般的な認知機能低下の間に逆U字型の関係があることが明らかとなった。これは、睡眠時間が短い場合でも長い場合でも、認知機能を注意深くモニタリングする必要があることを示唆している。したがって、公衆衛生戦略においては、とくに文化的に特有の状況において、加齢に伴う認知リスクを軽減するために、適度な睡眠の促進を優先すべきである」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)