胃がん周術期、FLOT+デュルバルマブはPD-L1発現にかかわらず最終OSを改善(MATTERHORN)/ESMO2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/22

 

 MATTERHORN試験は、2025年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、切除可能な胃がん患者を対象に、術前術後療法のFLOTにPD-L1阻害薬デュルバルマブを上乗せすることの有用性を報告し注目を集めた。10月17~21日に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、Josep Tabernero氏(バルデブロン大学・スペイン)が本試験の全生存期間(OS)の最終解析結果を含む、最新データを発表した。

・国際共同二重盲検ランダム化第III相試験
・対象:切除可能なStageII~IVA期局所進行胃がん/食道胃接合部腺がん 948例
・試験群:術前術後にFLOT+デュルバルマブ1,500mgを4週ごと2サイクル、術後にデュルバルマブ1,500mg 4週ごと10サイクル(デュルバルマブ群)474例
・対照群:術前術後にFLOT+プラセボを4週ごと2サイクル、術後にプラセボを10サイクル(プラセボ群)474例
・評価項目:
[主要評価項目]無イベント生存期間(EFS)
[副次評価項目]全生存期間(OS)、病理学的完全奏効(pCR)率、安全性など
・データカットオフ:2024年12月20日

 EFS、pCR、病理学的奏効(MPR)率の改善は報告、論文化済み。今回の発表では、最終OS、PD-L1発現レベルなどサブグループ別のOS、pCR・MPR・リンパ節転移とEFSとの関連について報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・OS中央値は両群とも未到達(NR)だったものの、デュルバルマブ群はプラセボ群と比較して統計学的に有意なOSの改善を示した(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]: 0.63~0.96、p=0.021)。
・デュルバルマブ群の統計学的に有意なOSの改善傾向は、人種、腫瘍部位、ECOG-PSなど、主なサブグループ間において一致していた。PD-L1<1%、PD-L1≧1%のHRはともに0.79で、PD-L1発現にも依存せずOSを延長することが確認された。
・デュルバルマブ群はプラセボ群よりもリンパ節転移が陰性である率が高かった(58.2%対44.8%、オッズ比:1.72、95%CI:1.30~2.27)。
・pCR/MPR達成例においては、デュルバルマブ群のEFS改善効果が顕著だった(pCR例のHR:0.29、MPR例のHR:0.32)。

 これらの結果より、Tabernero氏は「デュルバルマブ群はプラセボ群に比べ、OSを統計的に有意に延長した。この効果はPD-L1陰性/陽性を問わず一貫していた。病理学的奏効(pCR/MPR)およびリンパ節陰性化は、EFS改善と強く相関していた。術前術後療法としてのデュルバルマブ+FLOTは、切除可能胃がんの新たな標準候補と考えられる」とまとめた。

(ケアネット 杉崎 真名)

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