日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1139

肺塞栓症の画像診断でCTPAは本当に有用なのか?

 肺塞栓症が疑われる患者に対して、肺換気・血流シンチグラフィ (V/Q)とCT肺アンギオグラフィ(CTPA)は広く行われている画像診断法だが、多くの医療施設でCTPAが主流となりつつある。Dalhousie University(カナダ)のDavid R. Anderson氏らは、CTPAがV/Qスキャンより有用であるかを検討した。JAMA誌2007年12月19日号にて掲載。

重症例に対するアンチトロンビンIII投与は無効なばかりか、むしろ有害

アンチトロンビンIII(AT III)の投与は高価な介入法であるが、重症例に対し広く使用されている。これまでに、無作為化および非無作為化試験に関する4つの小規模なメタ解析が報告されているが、死亡率に関して結論に至るエビデンスは得られていない。 Arash Afshari氏(デンマーク、コペンハーゲン大学Juliane Marieセンター麻酔科)らは、重症例におけるAT IIIの有効性および有害性を評価するために、無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を行った。BMJ誌12月15日号(オンライン版11月23日号)掲載の報告。

プライマリ・ケア看護師が行うセリアック病の新スクリーニング法は有用

セリアック病は麦類の摂取を契機に発症するグルテンに対する腸管アレルギーであるが、症状が非特異的あるいは無症状のためプライマリ・ケアでは診断が困難である。血中の疾患特異的な抗体を検出するアッセイが開発されているが、高価なためスクリーニングの実施が困難で、ベネフィットも不明確との批判がある。 Ilma R. Korponay-Szabo氏(ハンガリー、デブレツェン大学医療・健康科学センター小児科)らは、セリアック病のスクリーニング法としてプライマリ・ケア看護師が実施可能な組織トランスグルタミナーゼ(tTG)に対するIgA抗体の迅速検査法を開発、そのfeasibilityおよび診断精度を評価する試験を実施した。BMJ誌12月15日号(オンライン版12月6日号)掲載の報告。

新開発の着用可能な血液透析機の有用性を確認

 透析あるいは腎移植を要する慢性腎不全患者は世界で約130万人に上る。これらの患者は、より頻回の血液透析を行えば生存率およびQOLの双方が改善される可能性があるが、イギリスにはそれを可能にするcapacityがほとんどないという。そこで、Andrew Davenport氏(ロンドン大学、Royal Free and University College Hospital Medical School)らは、新たな透析手段として着用して使用する透析機を開発、その安全性および有効性を評価するパイロット試験を実施した。Lancet誌12月15日号掲載の報告。

初のヒト顔面部分移植18ヵ月後のアウトカム

フランス・リヨン大学のJean-Michel Dubernard氏らは2005年11月27日、初めてとなるヒト顔面の部分同種移植術を女性患者に対して行った。患者は、同年3月28日に飼い犬に顔面を食いちぎられ、鼻、上下の口唇、頬、顎を失った38歳女性。レシピエントは脳死女性。その事実は2006年初頭にドナーも同席しての記者会見で公表され、世界中のマスメディアで報じられたのでご記憶の方もいるかもしれない。その移植後18ヵ月時点までの予後に関する報告がNEJM誌12月13日号に掲載された。

細菌性髄膜炎患者へのデキサメタゾン効果

 細菌性髄膜炎に対するデキサメタゾンの補助的投与が、成人に対して有効であるかどうかは明らかとなっていない。ベトナム・ホーチミン市にある国立熱帯病研究所病院Nguyen Thi Hoang Mai氏らの研究グループは、細菌性髄膜炎が疑われる14歳以上の患者435例を対象に、デキサメタゾンの無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。NEJM誌12月13日号より。  研究はデキサメタゾンの投与によって、1ヵ月後の死亡リスク、6ヵ月後の死亡リスクまたは障害リスクが低下するかどうかを目的に行われた。

rosiglitazoneが心血管リスクの増加に関連

2型糖尿病の治療に用いられるインスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン系薬剤(TZDs)は、一方でうっ血性心不全、あるいは急性心筋梗塞のリスクとの関連が指摘される。本報告は、「コホートレベルで関連を調べた研究は少ない」としてTZDsとリスクの関連について後ろ向きコホート研究を行った、カナダ・オンタリオ州Institute for Clinical Evaluative Sciences のLorraine L. Lipscombe氏らによる研究報告。JAMA誌12月12日号掲載より。

低所得高齢者へのケアマネジメント・モデルの有効性

低所得高齢者は複数の慢性疾患を有していながらも、ほとんどが標準的な治療さえも受けていない。インディアナ大学老年学研究センターのSteven R. Counsell氏らのグループは、プライマリ・ケアの質を高めるため、低所得高齢者に対するケアマネジメント・モデルの有効性を検証した。JAMA誌2007年12月12日号より。

新開発のクラミジア迅速検査により即日診断・治療が可能に

クラミジアの核酸増幅検査は、現在使用されている迅速検査よりも感度および特異度が優れるが、高価なため財源が限られた診療所は導入が困難だ。また、核酸増幅検査は結果が出るまでに1~2週間を要するため、治療の勧告やパートナーへの告知に支障が生じる。イギリス・ケンブリッジ大学診断法開発部門の研究グループは、医療財源が限定された状況を想定して非侵襲的な自己採取の膣スワブ標本を用いた新たなクラミジア迅速検査を開発した。 Diagnostics for the Real World(Europe) 社のLourdes Mahilum-Tapay氏らは、クラミジアの診断およびスクリーニングのツールとしての本法の有用性を評価し、BMJ誌12月8日号(オンライン版11月30日号)で報告した。

バクロフェンはアルコール性肝硬変患者の断酒推進に有効だ

アルコール性肝硬変患者の最も効果的な治療は「断酒」である。ここ数十年の間に、断酒や飲酒再発予防への作用効果が期待される薬がいくつか登場しているが、薬剤性肝障害などを引き起こす可能性が高いことから、薬理学的試験でアルコール性肝硬変患者の飲酒に関しては決まって対象外とされている。ローマ・カトリック大学内科のGiovanni Addolorato氏らは、γアミノ酪酸(GABA:脳や脊髄に存在するアミノ酸の一種で主要な神経伝達物質)受容体作用薬で、日本では抗痙縮薬として保険収載されているバクロフェンの、アルコール性肝硬変患者の断酒効果と安全性について臨床試験を行った。LANCET誌12月8日号より。

新規CETP阻害薬は血圧を上昇させない?

コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬はHDLを増加させるため、冠動脈イベント抑制作用が期待されていたが、torcetrapibを用いた大規模試験ILLUMINATEでは総死亡と心血管イベントリスクをプラセボに比べ有意に増加させていた。このtorcetrapib群におけるイベント増加の一因として血圧の上昇を指摘する声があったが、新規CETP阻害薬anacetrapibには血圧に対する悪影響はないかもしれない。Merck Research Laboratories(アメリカ)のRajesh Krishna氏らがLancet誌12月8日号で報告した。

喘息患者がディーゼル車から受ける呼吸器への影響

車の排気ガスによる大気汚染は重篤な健康被害をもたらす。そのリスクは呼吸器疾患を有する人にとってはより高まる可能性があることから、英国立心臓肺研究所(NHLI)のJames McCreanor氏らは、喘息患者を対象に、都市沿道での短期曝露でディーゼル車からどれぐらいの影響を受けるのかを調査した。NEJM誌12月6日号掲載報告から。