日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1136

心筋梗塞患者の初回経皮的冠動脈介入には血栓吸引の併用を

ST上昇型心筋梗塞患者に対する初回経皮的冠動脈介入(PCI)は、梗塞責任動脈の開通に効果的だが、介入で生じたアテローム血栓の破片が微小血管を閉塞し、心筋再潅流を減少させることがある。このため初回PCIで血栓吸引(Thrombus Aspiration)を併用することが、従来のPCI処置より優れているのではないか。オランダ・フローニンゲン大学病院のTone Svilaas氏らが検証した。NEJM誌2008年2月7日号より。

急性冠症候群後のクロピドグレル投与中止は短期リスクを増大

不安定狭心症のイベント再発防止に使われる抗血小板薬クロピドグレルの投与中止が患者の短期リスクを増大させるかどうかはわかっていない。アメリカ・デンバー退役軍人病院P. Michael Ho氏らのグループは、全米の急性冠症候群(ACS)患者を対象に、クロピドグレル投与中止後の有害事象発生率の評価を行った。JAMA誌2008年2月6日号より。

Caサプリメントで心血管系イベント増加傾向

 健康な閉経後女性がCaサプリメントを常用すると、5年間で心血管系イベントのリスクが50%近く増加する可能性がある。ニュージーランドで行われた無作為化試験を報告したUniversity of AucklandのMark J Bolland氏らによる論文が、BMJ誌オンライン版2008年1月15日号で早期公開、本誌では2008年2月2日号に収載された。

認知症発症後の生存期間は4.5年――イングランド/ウェールズの場合

Jing Xie氏(ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア科、イギリス)によれば、認知症は死亡リスクを増大させるが、イングランド/ウェールズ地方における認知症患者の生存期間は明らかにされていない。同氏らの研究グループは、認知症発症後の生存期間を推計し、さまざまな背景因子ごとに解析を行った。その結果、フォローアップ期間14年における認知症発症後の推計生存期間中央値は4.5年であり、性別、発症年齢、機能障害が生存期間に有意な影響を及ぼした。BMJ誌2008年2月2日号(オンライン版2008年1月10日号)掲載の報告。

新生児治療室における医原病の実態

入院患者では医原病が重要な問題との認識が高まっているが、高リスク新生児治療室における医原病の疫学データはほとんどないという。Isabelle Ligi氏(地中海大学La Conception病院新生児科、マルセイユ、フランス)らが実施したプロスペクティブなコホート研究の結果、新生児では医原病の発生頻度が高く、重症例も多いことが明らかとなった。Lancet誌2008年2月2日号掲載の報告。

救急外来受診例の約半数に深部静脈血栓リスク。予防は不十分

救急外来を受診後入院例で、外科的治療の適応となった患者の6割以上、内科的治療適応例の4割以上が、深部静脈血栓(DVT)のリスクを有しているが、それらのうち深部静脈塞栓(DVE)の予防措置を受けていたのは50.2%だった──とする国際的横断研究の結果がLancet誌2008年2月2日号に掲載された。研究の名称はENDORSE(Epidemiologic International Day for the Evaluation of Patients at Risk for Venous Thromboembolism in the Acute Hospital Care Setting)。King’s College Hospital(英国)のAlexander T Cohen氏らによる論文である。

ワールドカップ・サッカー期間中の心血管イベントは普段の2倍以上だった

自国チームが出場するサッカーの試合観戦に期待と不安を抱いて臨むのは皆同じ。2006年6月9日から7月9日にかけてドイツで開催された国際サッカー連盟(FIFA)主催のサッカー・ワールドカップは、情動ストレスと心血管イベント発生率との因果関係を調べる絶好の機会となった。ドイツ・ミュンヘンにあるMedizinische Klinik und Poliklinik IのUte Wilbert-Lampen氏らによる研究報告は、NEJM誌2008年1月31日号に掲載されている。

腹部大動脈瘤に対する血管内治療と開腹手術の長期比較は一長一短

腹部大動脈瘤の血管内治療は開腹手術より、周術期における死亡率と罹患率が低いことは、すでに無作為化試験で示されているが、より長期の生存率では両者に違いはない。これまで長期にわたる住民ベースの大規模な比較調査も行われていなかった。そこでベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのMarc L. Schermerhorn氏らが、腹部大動脈瘤の治療をメディケアで受給した患者集団を最長4年余にわたって追跡した。NEJM誌2008年1月31日号より。

薬剤溶出性ステント、パクリタキセル vs シロリムス、有意差なし:SORT OUT II

薬剤溶出性ステントの承認は比較的小規模の治験結果に基づいているが、実際の診療においては幅広い患者を対象に使われる。本研究は、Gentofte大学病院(デンマーク)Anders M. Galloe氏らによって、先頭を走るシロリムス(免疫抑制剤)溶出性ステントとパクリタキセル(抗癌剤)溶出性ステントの2つの入手可能な薬剤溶出性ステントを用いて行われたSORT OUT IIの結果報告。診療実態に沿って、主要な症状の予防効果に重点が置かれた。JAMA誌2008年1月30日号より。

嚢胞性線維症患者への悪影響は間接喫煙曝露と遺伝子変異が相互に連関

嚢胞性線維症(CF)は白人に高頻度でみられる単一遺伝子疾患だが、Johns Hopkins医科大学遺伝学部門のJ. Michael Collaco氏らは、本疾患をめぐる遺伝子-環境の相互連関を調べることで疾患変異の洞察を試みた。具体的に間接喫煙曝露とCF患者の肺機能やその他転帰との関連性、また間接喫煙曝露と肺疾患重症度との社会経済学的側面からみた関連性、肺機能に影響を与える間接喫煙曝露は特異的な遺伝子-環境なのかを検証。JAMA誌2008年1月30日号で結果が掲載された。

神経因性疼痛に対する弱オピオイドと合成カンナビノイドの鎮痛効果

カンナビノイドは何世紀にもわたり鎮痛薬として用いられてきたが、これを支持するエビデンスは少なく、向精神薬は副作用のため慢性疼痛患者では治療量を使用できないことが多い。それゆえ、神経因性疼痛は治療選択肢が少なく治療が困難である。ロイヤルビクトリア病院疼痛管理部(ニューカッスル、イギリス)のB. Frank氏らは、慢性神経因性疼痛患者においては弱オピオイドであるジヒドロコデインが、合成カンナビノイドであるナビロンよりも鎮痛効果が優れることを明らかにした。BMJ誌2008年1月26日号(オンライン版1月8日付)掲載の報告。