新生児退院前のパルスオキシメトリー検査は臨床効果も費用効果もある

提供元:ケアネット

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公開日:2009/01/30

 



新生児退院前にパルスオキシメトリー検査を実施することは、動脈管依存性先天性心疾患の早期発見に有効であることが、スウェーデンQueen Silvia小児病院小児心臓病科のAnne de-Wahl Granelli氏らによる前向きスクリーニング研究の結果として報告された。費用対効果についても優れているとのエビデンスが報告されている。BMJ誌1月17日号2009年(オンライン版1月8日号)掲載より。

動脈管依存循環の早期発見に有用かを検証




Granelli氏らは、スウェーデンの西Gotaland地方で生まれた新生児3万9,821例(2004年7月1日~2007年3月31日)を対象に、パルスオキシメトリー検査の実施が動脈管依存循環の早期発見に有用であるか評価を行った。

同地域にある新生児託児所からの退所前に最新型パルスオキシメトリー検査を行う一方、パルスオキシメトリー検査を実施していない他地域とで動脈管依存循環の検出率を比較した。自宅死亡例についても調査に加えられている。

動脈管依存循環の新生児が見つかったのは西Gotaland地方では60例、他地域では100例だった。

検出率を92%まで改善、長期的費用効果も




パルスオキシメトリー検査を実施した西Gotalandの新生児託児所では、29例が退院時検査の前に発見された。そのうち13例は、パルスオキシメトリー検査で酸素飽和度が90%以上を示したため、プロトコルに従い臨床スタッフが報告したことによる。残り16例のうち10例(63%)は身体検査のみで見つかった。パルスオキシメトリー検査と身体検査を組み合わせると検出率の感受性は82.8%(95%信頼区間:64.2%~95.2%)で、管依存肺循環については100%だった。なお見逃しは5例で、いずれも大動脈弓閉塞例だった。

パルスオキシメトリー検査による偽陽性率は、身体検査単独と比べると69/39,821(0.17%)対729/38,413(1.90%)で、実質的には低く(P<0.0001)、偽陽性69例のうち31例には他の病状があった。また心エコー所見正常の偽陽性新生児(41例)は、パルスオキシメトリー検査で動脈管依存循環が発見された新生児(18例)の2.3倍いた。

一方、診断未確定で退院した場合のリスクについて、西Gotalandでは5/60(8%)だったが、対照群とした他地域は28/100(28%)で、3.36倍(95%信頼区間:1.37~8.24)の開きがあった。また診断未確定で退院し大血管転位症を発症した新生児は、西Gotalandでは0/18例、他地域では11/25例(44%)だった(P=0.0010)。なお診断時の重篤なアシドーシスは、共通して見られたが、西Gotalandでは7/60例(12%)、他地域では33/100例(33%)で(P=0.0025)、他地域のリスクは2.8倍(95%信頼区間:1.3~6.0)だった。

早産児とノーウッド手術を除いて、診断なしで退院する新生児の死亡率は4/27(18%)、診断されて退院した場合は1/110(0.9%)で、診断なし退院の死亡率のほうが高かった(P=0.0054)。診断未確定で退院後に死亡した例は、西Gotalandではゼロだったが、他地域では5例報告された。

Granelli氏は、「退院前のパルスオキシメトリー検査は動脈管依存循環の検出率を92%まで改善した。同検査は短期的にはコスト効果は中庸かもしれないが、神経学的病状の予防、NICU治療の減少をもたらす見込みがあり長期的には費用効果があることを示している」と結論している。