日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1128

旧共産主義国における成人死亡率上昇の原因とは?

旧共産主義国では、急速な民営化の進展が労働年齢男性の死亡率上昇の主要原因であることが、イギリスCambridge大学社会政策学部のDavid Stuckler氏らの調査で明らかとなった。1990年代初頭~中期のヨーロッパや中央アジアにおける共産主義から資本主義への転換は国民の健康に破滅的な結果をもたらしたという。UNICEFはこの経済システムの転換によって300万人以上が早世したとし、国連開発計画(UNDP)の試算では失われた人口は1,000万人以上に達する。Lancet誌2009年1月31日号(オンライン版1月15日号)掲載の報告。

麻疹(はしか)は2010年までに撲滅できるか ?

2010年までに麻疹(はしか)ウイルスを撲滅するというヨーロッパの計画は、ワクチン接種率が不十分なため達成できない可能性が高いことが、デンマークStatens Serum研究所疫学部のMark Muscat氏らEUVAC.NETの研究グループの調査で明らかとなった。ヨーロッパでは、2006~07年にいくつかの国ではしかの大規模感染が起きたため、ウイルスの撲滅が計画されたという。Lancet誌2009年1月31日号(オンライン版2009年1月7日号)掲載の報告。

ADA欠損症患児への遺伝子治療の長期転帰

ADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症患児への遺伝子治療が、安全かつ有効であることが、San Raffaele Telethon遺伝子治療研究所のAlessandro Aiuti氏らによって報告された。ADA欠損は、致死的なプリン代謝異常と免疫不全を示す重症複合免疫不全症(SCID)の原因となり、治療法としてはHLA一致同胞ドナーからの幹細胞移植があるが、ドナーがいないなど治療が適応される患者は限られている。本報告は、長期転帰の検討で、NEJM誌2009年1月29日号にて掲載された。

小児がんからの女性生存者、40歳までのマンモグラフィ実施率低く留まる

小児がんで胸部放射線治療を受けたことのある女性生存者は、若年での乳がん発症リスクが高いため、25歳(または同治療後8年経過後のどちらか後に来る方)からのマンモグラフィ実施がガイドラインで勧告されている。ところが、40歳未満の6割強が、過去2年以内にマンモグラフィによる乳がんのスクリーニング検査を受けていないなど、実施率が低いことがわかった。これは、米国Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのKevin C. Oeffinger氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年1月28日号で発表した。

高齢心不全患者へのNt-BNPを指標にした集中治療のアウトカムは?

高齢の心不全患者に対し、N末端脳型ナトリウム利尿ペプチド(Nt-BNP)値を指標にした集中治療を行っても、症状による治療を行った場合と、アウトカムは同等であることがわかった。これまでに、Nt-BNP値による治療がアウトカムを改善することを示す研究結果があるものの、そうした研究は小規模で、若い患者を対象にしていた。これは、スイスBasel病院のMatthias Pfisterer氏らの研究で明らかになったもので、JAMA誌2009年1月28日号で発表した。

サンドスタチンLARが消化器腫瘍の増殖を抑制することを確認

ノバルティス ファーマ株式会社は5日、サンドスタチンLAR (一般名:酢酸オクトレオチド)が、中腸の転移性神経内分泌腫瘍(NET)患者に対し抗腫瘍効果を示したという試験の中間データを、1月13日に2009年米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(2009 Gastrointestinal Cancer Symposium of the American Society of Clinical Oncology)で発表した。

住宅ラドン対策の費用対効果:イギリス

肺がんの原因として最も多いのはタバコだが、次いで世界的に多いのがラドン曝露によるものである。患者の多くは家で曝露していることから、公費を投入してのラドン対策を施行している国は多い。WHOでも対策を勧告しているラドンは、大気中にごく普通に存在する天然ガスで、外気中では拡散しているため曝露リスクが低いが、屋内、特に一般住宅や小規模ビルなど気密性の高い空間ほど高濃度となる。そこで防床シートなどの対策実施の基準は測定濃度でという国が多く、イギリスも例外ではなく、全住宅に公費補助の対策が行われている。しかしオックスフォード大学保健経済学調査センターのAlastair Gray氏は、補助対象の基準の検証がきちんとなされいないと指摘、「濃度だけでなく喫煙リスクも含めた疫学的データから費用対効果を検証し対策を講じるべき」と調査を実施した。BMJ誌2009年1月24日号(オンライン版2009年1月6日号)掲載より。

創傷感染予防としての抗生剤塗布は局所でなければ意味がない

簡単な皮膚科手術後の創傷感染予防として行う抗生剤クロラムフェニコール軟膏(商品名:クロロマイセチン軟膏)単回塗布の有効性を証明することを目的に、ジェームズ・クック大学(オーストラリア・クイーンズランド)Mackay Base病院のClare F Heal氏らによって行われた、前向き無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果が、BMJ誌2009年1月24日号(オンライン版2009年1月15日号)に掲載されている。イギリス、オーストラリアでは塗布は一般的だが、アメリカではほとんど行われていないことを踏まえての試験。

FDA諮問委員会がプラスグレルの承認を勧告

第一三共株式会社と米イーライリリー・アンド・カンパニーは4日、米国食品医薬品庁(FDA)の心・腎疾患諮問委員会が、経皮的冠動脈形成術(PCI)として知られる動脈拡張術を受けている急性冠症候群(ACS)患者の治療薬として抗血小板剤プラスグレルの承認を勧告することを、3日(現地時間)投票により決定したと発表した。

壮年期心筋梗塞患者におけるクロピドグレル治療の予後決定因子が明らかに

心筋梗塞発症後にクロピドグレル(商品名:プラビックス)治療を受けている壮年患者のうち、CYP2C19*2遺伝子に変異が見られる場合は予後不良であることが、フランス・パリ第6大学Pitie-Salpetriere病院のJean-Philippe Collet氏らの検討で明らかとなった。クロピドグレルと低用量アスピリンの併用は、急性冠症候群(ACS)やステント留置術後の虚血性イベントの再発予防において、経口抗血小板療法の中心となっている。しかし、クロピドグレルが無効な症例も多く、その原因の究明が進められている。Lancet誌2009年1月24日号(オンライン版2008年12月23日号)掲載の報告。