麻疹(はしか)は2010年までに撲滅できるか ?

提供元:ケアネット

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公開日:2009/02/12

 



2010年までに麻疹(はしか)ウイルスを撲滅するというヨーロッパの計画は、ワクチン接種率が不十分なため達成できない可能性が高いことが、デンマークStatens Serum研究所疫学部のMark Muscat氏らEUVAC.NETの研究グループの調査で明らかとなった。ヨーロッパでは、2006~07年にいくつかの国ではしかの大規模感染が起きたため、ウイルスの撲滅が計画されたという。Lancet誌2009年1月31日号(オンライン版2009年1月7日号)掲載の報告。

32ヵ国からデータを収集




ヨーロッパでは子どものルーチンなワクチンプログラムに、はしかワクチンが導入されて20年以上が経過したが、感染はいまだに存続している。そこで、研究グループは2010年までのウイルス撲滅を目的に、はしかの疫学的なレビューを行った。

ヨーロッパ32ヵ国の国立の調査機関から2006~2007年のデータが集められ、年齢層、確定診断、ワクチン接種状況、入院治療、疾患合併症としての急性脳炎の発現、死亡に関するデータが得られた。30ヵ国からは、疾患の他国からの流入に関するデータも寄せられた。

臨床症状が見られ、検査で確定のうえ疫学的な関連が確認された症例のうち、調査の要件を満たすものが解析の対象となった。これらの症例が1歳未満、1~4歳、5~9歳、10~14歳、15~19歳、20歳以上に分けられた。10万人当たりのはしかの年間発症数が0例の国を無発症国、0.1例未満の国を低発症国、0.1~1例の国を中発症国、1例以上の国を高発症国とした。

患者のほとんどがワクチン未接種か不完全




2年の試験期間中に記録されたはしか患者1万2,132例のうち85%(1万329例)を5ヵ国(ルーマニア、ドイツ、イギリス、スイス、イタリア)の症例が占めた。そのほとんどがワクチン未接種あるいは不完全な子どもであったが、20歳以上の症例は少なかった。

この2年間に記録されたはしか関連死は7例であった。高発症国ではワクチン接種率が十分ではなかった。他国から流入したはしかに感染した210例のうち、117例(56%)がヨーロッパ以外の国からのもので、43例(20%)はアジアからであった。

著者は、「ワクチン接種率が不十分であるため、2010年までのはしかウイルス撲滅という目標の達成には深刻な疑念が浮上した」と結論し、「ヨーロッパにおけるはしか撲滅計画には、十分なワクチン接種率の達成とその維持、そして調査法の改善が不可欠」としている。

(菅野守:医学ライター)