日本語でわかる最新の海外医学論文|page:459

COVID-19重症化リスクのガイドラインを更新/CDC

 6月25日、米国疾病予防管理センター(CDC)はCOVID-19感染時の重症化リスクに関するガイドラインを更新し、サイトで公開した。  CDCは、重症化リスクの高い属性として「高齢者」「基礎疾患を持つ人」の2つを挙げ、それぞれのリスクに関する詳細や感染予防対策を提示している。また、今回からリスクを高める可能性がある要因として、妊娠が追加された。  米国で報告されたCOVID-19に関連する死亡者の8割は65歳以上となっている。 ・他人との接触を避け、やむを得ない場合は手洗い、消毒、マスク着用などの感染予防策をとる。 ・疑い症状が出た場合は、2週間自宅に待機する。 ・イベントは屋外開催を推奨、参加者同士で物品を共有しない。 ・他疾患が進行することを防ぎ、COVID-19を理由に緊急を要する受診を遅らせない。 ・インフルエンザ、肺炎球菌ワクチンを接種する。 ・健康状態、服薬状況、終末期ケアの希望などをまとめた「ケアプラン」を作成する。

薬理学的精神科治療の必要性に対する患者と医師のギャップ~横断的研究

 統合失調症患者には精神薬理学的治療が不可欠であるが、患者の薬物療法についてのニーズ、好み、不満に関するデータは限られている。さらに、これらの問題に対する精神科医の意識の程度(ニーズのギャップ)を評価する研究はこれまでなかった。東京都済生会中央病院の高橋 希衣氏らは、薬理学的精神科治療の必要性に対する患者と精神科医とのギャップについて調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年6月3日号の報告。  日本人統合失調症患者97例を対象に、精神薬理学的治療に関する必要性や不満、剤形、投与頻度、投与タイミングの好みに関連する多肢選択式の質問から構成された質問票による回答を求めた。さらに、担当の精神科医には、上記質問に対する患者の反応を予測するよう依頼した。

フレイルの健診に有用なテキスト公開/国立長寿医療研究センター

 2020年6月、健康長寿教室テキスト第2版が国立長寿医療研究センターの老年学・社会科学研究センターのホームページ上に公開された。これは同施設のフレイル予防医学研究室(室長:佐竹 昭介氏)が手がけたもので、2014年に初版が発刊、6年ぶりの改訂となる。  健康長寿教室テキストは介護予防に役立てるためのパンフレットで、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)に関する基本的概念に加え、実践編として「お口の体操」「運動」「フレイルや低栄養を予防するための食事の工夫やレシピ」などが掲載されている。このほかにも、最新の話題として、新型コロナなどによる外出制限時の対策にも応用できる内容が紹介されている。なお、健康長寿教室テキストは無料でダウンロードして使えるため、後期高齢者健康診査(いわゆるフレイルの健診)、スタッフ研修、敬老会の資料としても有用である。

週1回のインスリンの有効性・安全性/ノボ ノルディスク ファーマ

 ノボ ノルディスク ファーマは、週1回投与のinsulin icodec*の第II相試験で1日1回投与のインスリン グラルギンU100と同程度の有効性および安全性を示したことを6月19日にリリースするとともに、第80回米国糖尿病学会で発表した。  本試験は、DPP-4阻害薬の併用または非併用下でメトホルミンによって十分にコントロールされていないインスリン治療歴のない成人2型糖尿病患者247名を対象とした、26週間、無作為割り付け、二重盲検、ダブルダミー、treat-to-target、第II相臨床試験。

イサツキシマブ、再発・難治の骨髄腫に国内承認/サノフィ

 サノフィは、2020年6月29日、イサツキシマブ(商品名:サークリサ)が「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の効能又は効果で製造販売承認を取得したと発表。  CD38は多発性骨髄腫細胞に幅広くかつ高発現しており、イサツキシマブは、多発性骨髄腫細胞のCD38受容体にある特異的なエピトープを標的とする新規のモノクローナル抗体製剤である。  今回の承認は、イサツキシマブをポマリドミド・デキサメタゾン併用療法に追加する無作為化第III相試験(ICARIA-MM試験)のデータに基づいており、この試験では、イサツキシマブ併用群において無増悪生存期間の統計学的に有意な改善が認められた。本国際共同治験には、日本も参加している。

リンチ症候群の大腸がん予防にアスピリンが有効/Lancet

 リンチ症候群は、大腸がんのリスクを増大させ、他の広範ながん、とくに子宮内膜がんと関連する。英国・ニューカッスル大学のJohn Burn氏ら「CAPP2試験」の研究グループは、リンチ症候群における大腸がんの予防において、アスピリンの2年投与はプラセボに比べ、その発症を有意に抑制することを確認した。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。本試験では、2011年(平均フォローアップ期間55.7ヵ月[SD 31.4])の時点におけるアスピリンによる遺伝性大腸がんの予防効果を報告している。今回、予定されていた10年間のフォローアップを終了したことから、この高リスク集団における定期的なアスピリン服用の長期的な有効性のデータが報告された。

エイズ患者の結核治療:始めに検査?始めから治療?(解説:岡慎一氏)-1248

エイズ患者に対する結核治療というのは、いまだに根が深い問題が残っている。とくに、結核が蔓延しているアジアやアフリカでは、結核はエイズ患者の死亡原因のトップにくる。免疫不全の進行したエイズ患者の場合、大きく2つの問題がある。1つは、結核の症状が非典型的となり診断が難しいこと。もう1つは、HIVの治療で免疫が回復すると、免疫再構築症候群(IRIS)と呼ばれる激しい炎症反応が起こり、IRISで死亡することもあるのである。少し前までは、エイズ患者の結核治療は、IRIS予防のために一定期間結核治療を先行させるか、HIV治療とほぼ同時に結核治療を開始するかということが議論になっていた。現在、多くのRandomized Controlled Trial(RCT)の結果から結核治療を先行させるのではなく、HIV治療とほぼ同時に結核治療を開始することが推奨されている。

日医会長に中川俊男氏が初当選、新執行部体制へ

 任期満了に伴う日本医師会の会長選挙が6月27日行われ、副会長の中川 俊男氏(69歳)が、現職で5期目を目指す横倉 義武氏(75歳)を接戦の末おさえ、初めての当選を果たした。中川氏は、これまで日本医師会の常任理事2期、副会長を5期に渡って務めたほか、社保審や中医協の委員などを歴任。会長選には、初めての立候補だったが、14大都市医師会をはじめ多くの都道府県医師会会長の推薦を手堅く集め、17票の僅差ながら現職候補を破る結果となった。  日本医師会会長選挙は371人の代議員による投票で行われた。開票結果は以下の通り。 ・中川 俊男氏:191票(当選) ・横倉 義武氏:174票 その他、無効票:2票、白票:4票

超速効型インスリン ルムジェブを発売/日本イーライリリー

 6月17日、日本イーライリリーは、超速効型インスリンアナログ製剤(遺伝子組換え)インスリンリスプロ(商品名:ルムジェブ注)の「同ミリオペン」、「同ミリオペンHD」、「同カート」「同100単位/mL」を「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能・効果として新発売した。  本剤は、より良い血糖コントロールの実現のために、健康な人のインスリン分泌により近いインスリン動態の再現を目指し開発された薬剤。  既存の超速効型インスリンアナログ製剤の有効成分に添加剤を加えることで、皮下からの吸収を速め、日本人1型糖尿病患者において従来の製剤と比べて最高濃度の50%に達する時間を13分、曝露持続時間を88分短縮し、速やかなインスリン作用発現および消失を実現した。

COVID-19に関連する医師のメンタルヘルスやストレス

 COVID-19のアウトブレイクによる医師の不安やストレス、抑うつレベルへの影響について、トルコ・Istanbul Medeniyet UniversitesiのRumeysa Yeni Elbay氏らが調査を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2020年5月27日号の報告。  COVID-19アウトブレイクにおける医療従事者の心理的反応と関連要因を評価するため、オンライン調査を実施した。調査内容は、社会人口統計学的データ、個別の労働条件に関する情報、Depression Anxiety and Stress Scale-21(DAS-21)のセクションで構成した。  主な結果は以下のとおり。

マスクの再利用、消毒後のウイルス遮断効果は?

 これまでの研究では、N95マスクを再利用するさまざまな滅菌方法の評価試験やN95マスクとサージカルマスクの比較試験などが行われてきた。しかし、現時点でKN95やサージカルマスクの滅菌後のろ過効率の影響を調べた研究は乏しい。米国・オクラホマ大学のChangjie Cai氏らはKN95とサージカルマスクが再利用可能かどうかを明らかにするための研究を実施。 その結果、滅菌プロセスが各マスクのろ過効率に影響を与えることが示唆された。ただし、研究者らは試験時の制限(マスクメーカーの種類が少ない、各マスクと条件のサンプルサイズが小さい、評価した滅菌技術が2つしかないなど)や1回より多く滅菌した場合にマスク劣化の可能性もあるため、これらを踏まえたさらなる調査が必要としている。2020年6月15日JAMA Network Open誌のリサーチレターに報告した。

全身療法が計画されている高齢者での高齢者機能評価の有用性(INTEGERATE試験)/ASCO2020

 オーストラリア・モナシュ大学Eastern Health Clinical SchoolのWee-Kheng Soo氏は、全身療法が計画されている高齢者での包括的な高齢者機能評価や老年医学専門家の介入の有無を比較する無作為化非盲検試験・INTEGERATE試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。老年医学的介入群ではQOLが有意に改善し、予期せぬ入院や有害事象による早期治療中止が減少すると報告した。 ・対象:固形がんあるいはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、で3カ月以内に化学療法、分子標的薬治療、免疫チェックポイント阻害薬療法が予定されている70歳以上の高齢者154例。 ・試験群:本人申告による質問票での回答と高齢者機能評価(CGA)を実施。栄養、身体機能などの改善に向けた標準的介入に加え、併存疾患のケアなどアセスメントに基づく個別介入を実施(76例) ・対照群:通常ケア(78例) ・評価項目:[主要評価項目] ELFI(Elderly Functional Index)スコアによるQOL評価 [副次評価項目] ヘルスケアサービスの利用状況、治療提供状況、機能、施設入所状況、気分、栄養状態、健康上の効用、生存状況

PD-L1陽性胃がんの2次治療でのペムブロリズマブの追跡結果(KEYNOTE-061試験)/ASCO2020

 米イエールがんセンターのCharles S. Fuchs氏は、PD-L1陽性進行胃がん・胃食道接合部がんの2次治療でのペムブロリズマブとパクリタキセルを比較する無作為化非盲検化第III相試験KEYNOTE-061の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。追加の2年の追跡期間を加えてもペムブロリズマブはパクリタキセルに比べ無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の有意な改善効果を示せなかったと報告した。

BTK阻害薬acalabrutinib、CLL2つの試験で有用性/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年6月12日、第II相ACE-CL-001試験および第III相ASCEND試験の詳細データから、慢性リンパ性白血病(CLL)に対して、acalabrutinibが長期にわたる有効性および忍容性が示されたことを発表した。  これらの試験データは、2020年6月11日から14日にバーチャル形式で開催された第25回欧州血液学会(EHA)年次総会にて発表された。  単一群を対象としたACE-CL-001試験では、1次治療における単剤療法としてアカラブルチニブによる治療を受けたCLL患者の86%が、中央値4年以上の追跡期間において治療を継続していた。この試験の全奏効率は97%(完全奏効:7%、部分奏効:90%)で、遺伝子変異(17p欠失およびTP53突然変異)、免疫グロブリンH鎖遺伝子(IGHV)非変異、および複雑核型を含む高リスク患者のサブグループにおいては100%の全奏効率を示した。なお、安全性所見では新たな長期的問題は認められなかった。

若年1型DM、CGMが血糖コントロールを改善/JAMA

 1型糖尿病の青少年および若年成人患者において、持続血糖測定(CGM)は標準的血糖測定に比べ、血糖コントロールをわずかではあるが統計学的に有意に改善し、患者満足度も良好であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のLori M. Laffel氏らが行った「T1D(CITY)研究」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。1型糖尿病患者では、青少年および若年成人期が生涯で最も血糖コントロールが不良とされる。CGMは、成人患者で血糖コントロールの改善が示されているが、青少年および若年成人の患者における有益性は明確ではないという。

進行悪性黒色腫の1次治療、アテゾリズマブ追加でPFS延長/Lancet

 未治療のBRAFV600変異陽性進行悪性黒色腫患者の治療において、BRAF阻害薬ベムラフェニブ+MEK阻害薬cobimetinibによる標的治療に、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害薬アテゾリズマブを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、安全性と忍容性も許容範囲であることが、ドイツ・ハノーバー医科大学のRalf Gutzmer氏らが行った「IMspire150試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。免疫チェックポイント阻害薬、およびBRAF阻害薬+MEK阻害薬併用はいずれも、BRAFV600変異陽性転移悪性黒色腫のアウトカムを改善すると報告されている。BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用は高い奏効率を有するが奏効期間は短く、免疫チェックポイント阻害薬は持続的な奏効をもたらすものの奏効率は相対的に低い。このような相補的な臨床的特徴から、これらの併用療法に注目が集まっているという。

新型コロナウイルス感染症の重症化リスク解析について(解説:小林英夫氏)-1249

新型コロナウイルス感染症はWHOによるICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂)ではCOVID-19とコードされ、その和訳は「コロナウイルス感染症2019」とする案、つまり「新型」が付記されない方向で厚労省にて現在審議中とのことである。さて、日本と欧米や東アジア間ではCOVID-19への対応状況が異なるが、死亡者数・感染者数に明らかな差異が報告されている。その差異の理由はいかなるものかを解明していくことは今後の必須テーマで、京都大学の山中 伸弥教授はこの因子にファクターXと名付けている。現状では実態不明のファクターXであるが誰にでも予想できる要素として、人種別の遺伝的要素、ウイルス遺伝子変異、などは当然の候補となろう。そこで本論文では重症化、呼吸不全化のリスクについてゲノムワイド関連解析を行っている。その方向性は適正であろう。本論文の和訳は別途本サイトで掲載されるが、血液型によるリスク差に関する結果の一部だけを切り取ってマスメディアが過剰に喧伝しそうで気掛かりである。本論文はあくまでイタリアとスペインというラテン系民族が対象であり、日本人に該当するかどうかは未定である。もちろん、感染症に対して遺伝的素因・体質的素因が関与することは予想される事項であり、本邦でも罹患リスクや重症化リスクへのゲノム解析への取り組みに期待したい。

初診料が前年比5割減、健診・検診は9割減も/日医・医業経営実態調査

 2020年3~5月、月を追うごとに病院の医業収入が大きく落ち込み、健診・検診の実施件数は半減から9割減となった実態が明らかになった。6月24日の日本医師会定例記者会見において、松本 吉郎常任理事が全国の医師会病院および健診・検査センターの医業経営実態調査結果を発表した。  調査は73の医師会病院、164の健診・検査センターが対象。回答率はそれぞれ71.2%(52病院)、51.2%(84施設)だった。回答病院のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者「あり」は25.0%(13病院)、COVID-19患者のための病床「あり」は50.0%(26病院)。COVID-19入院患者「あり」の病院における月平均入院患者数は7.6人だった(最大は4月に76人の入院患者[東京都])。

静脈栄養製剤の「使用上の注意」改訂で透析・血液ろ過患者は慎重投与に/厚労省

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)は2020年6月25日付の課長通知で、一般用静脈栄養製剤及び肝不全用アミノ酸製剤の添付文書の改訂指示を発出した。改訂対象には一般用静脈栄養製剤計25品目(アミノ酸製剤10品目[アミパレン:大塚製薬工場 ほか]、末梢静脈栄養用製剤5品目[ビーフリード:大塚製薬工場 ほか]、中心静脈栄養用基本液4品目[ハイカリック:テルモ ほか]、中心静脈栄養用キット製剤6品目[フルカリック:テルモ ほか])と肝不全用アミノ酸製剤4品目(アミノレバン:大塚製薬工場 ほか)が該当する。

COVID-19の肺がん患者、死亡率高く:国際的コホート研究/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行期における、肺がん等胸部がん患者の転帰について、初となる国際的コホート研究の結果が公表された。COVID-19に罹患した胸部がん患者は死亡率が高く、集中治療室(ICU)に入室できた患者が少なかったことが明らかになったという。イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのMarina Chiara Garassino氏らが、胸部がん患者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の影響を調査する目的で行ったコホート研究「Thoracic Cancers International COVID-19 Collaboration(TERAVOLT)レジストリ」から、200例の予備解析結果を報告した。これまでの報告で、COVID-19が確認されたがん患者は死亡率が高いことが示唆されている。胸部がん患者は、がん治療に加え、高齢、喫煙習慣および心臓や肺の併存疾患を考慮すると、COVID-19への感受性が高いと考えられていた。結果を踏まえて著者は、「ICUでの治療が死亡率を低下させることができるかはわからないが、がん治療の選択肢を改善し集中治療を行うことについて、がん特異的死亡および患者の選好に基づく集学的状況において議論する必要がある」と述べている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年6月12日号掲載の報告。