進行悪性黒色腫の1次治療、アテゾリズマブ追加でPFS延長/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/06/29

 

 未治療のBRAFV600変異陽性進行悪性黒色腫患者の治療において、BRAF阻害薬ベムラフェニブ+MEK阻害薬cobimetinibによる標的治療に、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害薬アテゾリズマブを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、安全性と忍容性も許容範囲であることが、ドイツ・ハノーバー医科大学のRalf Gutzmer氏らが行った「IMspire150試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。免疫チェックポイント阻害薬、およびBRAF阻害薬+MEK阻害薬併用はいずれも、BRAFV600変異陽性転移悪性黒色腫のアウトカムを改善すると報告されている。BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用は高い奏効率を有するが奏効期間は短く、免疫チェックポイント阻害薬は持続的な奏効をもたらすものの奏効率は相対的に低い。このような相補的な臨床的特徴から、これらの併用療法に注目が集まっているという。

PFS期間を評価するプラセボ対照無作為化試験

 本研究は、20ヵ国112施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2017年1月~2018年4月の期間に患者登録が行われた(F Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、StageIVまたは切除不能なStageIIIcのBRAFV600変異陽性悪性黒色腫で、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。前治療を受けた患者は除外した。

 被験者は、アテゾリズマブ+ベムラフェニブ+cobimetinibまたはプラセボ+ベムラフェニブ+cobimetinibを投与する群に無作為に割り付けられた。28日を1サイクルとし、1サイクル目にはベムラフェニブ+cobimetinibのみが投与され、2サイクル目以降にアテゾリズマブまたはプラセボが追加された。

 主要アウトカムは、担当医判定によるPFSであった。

奏効率は同等、奏効期間は延長

 514例が登録され、アテゾリズマブ群に256例(年齢中央値54.0歳[範囲:44.8~64.0]、女性41%)、プラセボ群には258例(53.5歳[43.0~63.8]、42%)が割り付けられた。

 追跡期間中央値18.9ヵ月の時点におけるPFS中央値は、アテゾリズマブ群がプラセボ群に比べ有意に延長した(15.1ヵ月vs.10.6ヵ月、ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.63~0.97、p=0.025)。事前に規定されたサブグループのほとんどで、PFS中央値がアテゾリズマブ群で良好な傾向が認められた。

 アテゾリズマブ群は93例(36%)、プラセボ群は112例(43%)が死亡し、全生存期間(OS)に差はなかった(HR:0.85、95%CI:0.64~1.11、p=0.23)。2年時の無イベント生存率はそれぞれ60%および53%だった。

 担当医判定による客観的奏効率は、両群でほぼ同等であった(アテゾリズマブ群66.3% vs.プラセボ群65.0%)。一方、奏効期間中央値は、アテゾリズマブ群のほうが長かった(21.0ヵ月vs.12.6ヵ月)。

 両群で最も頻度の高い有害事象は、クレアチニン・ホスホキナーゼ上昇(51.3% vs.44.8%)、下痢(42.2% vs.46.6%)、皮疹(両群とも40.9%)、関節痛(39.1% vs.28.1%)、発熱(38.7% vs.26.0%)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ上昇(33.9% vs.22.8%)、リパーゼ上昇(32.2% vs.27.4%)であった。有害事象による治療中止は、アテゾリズマブ群が13%、プラセボ群は16%で発生した。

 著者は、「OSのデータはimmatureであったが、15ヵ月時の生存曲線はアテゾリズマブ群で良好な傾向がみられた。本研究の生存データは、この患者集団における至適な治療パラダイムに、有益な情報をもたらすであろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)