日本語でわかる最新の海外医学論文|page:841

新規不眠症治療薬は安全に使用できるか

 不眠症治療薬として米国で認可されたオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(MK4305、2014年9月26日に国内でも承認、商品名:ベルソムラ)の有効性と安全性を評価するため、米国・ニューヨーク医科大学のL. Citrome氏が、システマティックレビューを行った。その結果、スボレキサントは、ポリソムノグラフィによる客観的評価および患者による主観的評価の両方で、プラセボに比べ入眠時ならびに睡眠維持において優れること、主な有害事象として傾眠に注意が必要であることを報告した。International Journal of Clinical Practice誌オンライン版2014年9月18日号の掲載報告。

VTEの8つの治療戦略を比較/JAMA

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略について、8つの抗凝固療法の有効性、安全性について検討した結果、低分子量ヘパリン(LMWH)+ビタミンK拮抗薬療法との比較で他の療法に統計的な有意差はなかったが、有効性が最も小さいのは非分画ヘパリン(UFH)+ビタミンK拮抗薬であり、安全性ではリバーロキサバン、アピキサバンの出血リスクが最も低かったことが明らかにされた。カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまで、いずれの治療戦略が最も有効および安全であるかについてのガイダンスは存在していなかった。JAMA誌2014年9月17日号掲載の報告より。

HPVスクリーニングに尿検査が有用/BMJ

 尿検査による子宮頸部ヒトパピローマウイルス(HPV)検出の精度は良好と思われ、初尿サンプルを用いるのがランダム尿や中間尿を用いるよりも正確であることが判明した。英国・ロンドン大学のNeha Pathak氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。細胞診検査による子宮頸部HPV検出は精度の高いスクリーニング法とされるが、侵襲的な検査のため現行スクリーニングプログラムの大きな障壁となっている。今回の結果を踏まえて著者は、「サブグループで子宮頸部細胞診検査が困難であるときは、受け入れ可能な選択肢として尿中HPV検出を検討すべきであろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年9月16日号掲載の報告より。

SIGNIFY試験:心拍数を越えて(解説:香坂 俊 氏)-256

-安静時心拍数は、心血管系イベントを予測する独立した因子である-  このことは昔から知られている。急性冠症候群患者1)、そして安定狭心症患者で2)、安静時心拍数の増加は心血管系のイベントと関連することが示されている。その背景には、生理学的に心拍数が高いと、心筋酸素消費量の増加と拡張期時相の短縮(冠動脈の血流は拡張期に流れる)により心筋虚血を起こしやすくなることがある。

LABA/ICS vs. LABAの長期有効性を観察/JAMA

 66歳以上慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象とした住民ベースの長期コホート試験の結果、とくに喘息を有しており長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の治療を受けていない患者で、長時間作用性β2刺激薬(LABA)+吸入ステロイド薬(ICS)組み合わせ投与はLABA単独投与と比べて、死亡またはCOPD入院の複合アウトカムの発生リスクが有意に低かったことが示された。カナダ・サニーブルックヘルスサイエンスセンターのAndrea S. Gershon氏らが報告した。JAMA誌2014年9月17日号掲載の報告より。

FAME2試験:PCIが本当に予後を改善するためにはどのような条件が必要か?(解説:上田 恭敬 氏)-255

臨床的に安定した3枝までの冠動脈疾患(冠動脈造影で確認)で、FFR≦0.80の1つ以上の狭窄を有し、PCIの適応と考えられる患者を対象とし、FFRガイド下PCI+薬物療法を施行する群または薬物療法のみを行う群に無作為に割り付け、2年以内の全死因死亡、非致死的心筋梗塞、緊急血行再建術による入院の複合エンドポイントを主要評価項目として比較した、FAME2試験の結果が報告された。

英プライマリケアの抗菌治療失敗が増加/BMJ

 英国では、1990年代後半にプライマリケアでの抗菌薬の処方が減少しプラトーに達した後、2000年以降再び増加し、耐性菌増加の懸念が出てきている。  英・カーディフ大学のCraig J Currie氏らは、1991~2012年における英国のプライマリケアでの主な4つの感染症における抗菌薬の治療失敗率について検討した。その結果、各感染症に対して初期治療で用いられる抗菌薬の上位10剤のうち、1剤以上が治療失敗と関連していた。また、この期間中に全体的な治療失敗率が12%増加し、その増加のほとんどは、プライマリケアでの抗菌薬処方が再び増加してきた2000年以降であることが報告された。BMJ誌2014年9月23日号に掲載。

統合失調症治療、ドパミンD3の可能性は

 ドパミンD3受容体は、統合失調症の治療ターゲットとして有望であり、同受容体と既存の抗精神病薬の結び付きについて知識を改めることは、新薬およびより選択的な治療薬の開発において重要となる。ブラジルのリオグランデ・ド・スル国立大学のGeancarlo Zanatta氏らは、抗精神病薬ハロペリドールと、ヒトのドパミンD3受容体との結合について、改良版量子力学/分子力学(QM/MM)計算法を用いた検討を行った。本報告は、新たな統合失調症の治療薬発見にインパクトをもたらすQM/MM法という、コンピュータ量子生化学的なデザイン手法を用いた第一段階の検討であった。ACS Chemical Neuroscience誌オンライン版2014年9月18日号の掲載報告。

がん疼痛緩和治療にステロイドがもたらすもの

 オピオイド治療中のがん患者で、その痛みに炎症が重要な役割を占めると考えられる場合、抗炎症効果を期待して、コルチコステロイドを用いることが多い。しかし、そのエビデンスは限られている。そこでノルウェー大学のOrnulf Paulsen氏らは、メチルプレドニゾロンの疼痛緩和効果の評価を行った。試験は、ステロイドの進行がん患者を対象とした疼痛緩和効果の評価としては初となる、多施設無作為二重盲検比較で行われた。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年7月7日号の掲載報告。

新たな生体吸収性ステントは金属ステントと同等/Lancet

 エベロリムス溶出ステントの新たなデバイスである生体吸収性スキャフォールドステントについて、エベロリムス溶出金属製ステントと比較検討した試験ABSORB IIの結果が報告された。英国・インペリアルカレッジのPatrick W Serruys氏らが虚血性心疾患患者501例を対象に行った単盲検多施設無作為化試験の1年時点の評価において、安全性、有効性は同等であった。また事後解析の有害事象報告において狭心症発生の低下が報告され、著者は、さらなる臨床的・生理学的調査の根拠を示す所見が得られたと述べている。エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールドステントは、冠動脈疾患治療において急速に使用が広がっているが、従来の金属製ステントと比較検討したデータはこれまで報告されていなかった。Lancet誌オンライン版2014年9月14日号掲載の報告。

コレステロール摂取は糖尿病発症と関連するか

 コレステロールや卵の摂取量と2型糖尿病リスクとの関連について、欧米諸国での報告は限定的で一貫性がない。国立国際医療研究センターの黒谷 佳代氏らは、日本人の多目的コホート研究(JPHC study)において、食事性コレステロールと卵摂取と2型糖尿病のリスクの関連をプロスペクティブに検討した。その結果、コレステロールや卵の摂取量と2型糖尿病のリスク増加との関連はみられなかった。ただし閉経後の女性では、コレステロールの摂取量が多いと2型糖尿病のリスクが低かった。The British journal of nutrition誌オンライン版2014年9月18日号に掲載。

長引くせん妄、その関連因子は

 これまで、せん妄回復例については研究されてきたが、持続するせん妄に関連する因子については十分な研究は行われていなかった。スイス・チューリッヒ大学病院のSoenke Boettger氏らは、せん妄持続例とせん妄回復例の社会人口学的特性および治療法を比較し、せん妄の持続に関連する因子について検討を行った。その結果、「高齢」「認知症の既往」「脳がん」「がん終末期」「感染症」などの存在がせん妄の持続に関連していることを報告した。Palliative and Supportive Care誌オンライン版2014年9月5日号の掲載報告。

ベンゾジアゼピン系薬とアルツハイマー病リスク/BMJ

アルツハイマー病リスクの増大に、ベンゾジアゼピン系薬の使用が関連していることが、フランス・ボルドー大学のSophie Billioti de Gage氏らによるケースコントロール試験の結果、示された。ベンゾジアゼピン系薬は先進諸国では使用の頻度が高く、勧告にもかかわらず高齢者では慢性的に投与されている。ベンゾジアゼピン系薬使用者での認知症リスクの増大は確認されているが、因果関係については明らかになっていない。著者は今回の結果を踏まえて、「保証のないベンゾジアゼピン系薬の長期使用については、公衆衛生問題として検討するべきである」と指摘し、「高齢者におけるベンゾジアゼピン系薬の処方は、診療ガイドラインに準じるべきである(半減期が短い薬を優先して短期的に用いる)」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年9月9日号掲載の報告より。