末期がん患者では、疼痛やせん妄の発生が少なくない。しかし、疼痛管理のために投与されるオピオイドは、患者のせん妄を悪化させる可能性がある。名古屋市立大学病院の長谷川 貴昭氏らは、がん性疼痛とせん妄を有する末期がん患者において、実際の症状経過とオピオイドおよび抗精神病薬を含む薬理学的介入との関連を調査するため、多施設共同プロスペクティブ観察研究の2次解析を実施した。Palliative Medicine Reports誌2025年10月24日号の報告。
対象は、日本のホスピスまたは緩和ケア病棟に入院している成人患者のうち、Palliative Performance Scale(PPS)が20点以下に低下した時点(1日目、死亡直前)で、がん性疼痛(Integrated Palliative care Outcome Scale[IPOS]の疼痛スコア2以上)およびせん妄を有していた患者。薬理学的治療戦略、疼痛レベル(IPOSに基づく)、せん妄症状(Memorial Delirium Assessment Scale[MDAS]の9項目に基づく)を測定した。
主な結果は以下のとおり。
・1,896例のうち、PPSが20点以下に低下した1日目に適格性の評価を受けた患者は1,396例で、そのうちの137例が解析対象の包含基準を満たした。
・興奮性せん妄(多動性または混合性)が認められた患者は86例(63%)で、生存期間中央値は3日であった。
・薬理学的治療戦略については、オピオイドの開始/用量漸増が32例(23%)に、抗精神病薬の定期投与が94例(69%)に行われていた。
・オピオイドの開始/用量漸増と抗精神病薬投与の両方が行われていた患者は25例(18%)であった。
・患者全体の約55%は、2日目に持続性がん性疼痛(IPOSの疼痛スコア2以上)が認められた。
・興奮性せん妄が認められた患者のうち、2日目にも興奮症状が継続した患者の割合は79%であった。
著者らは「専門的な緩和ケアにもかかわらず、人生最後の数日間に生じるがん性疼痛とせん妄の複合的な苦痛は、依然として複雑かつ難治性であることが明らかとなった」とまとめている。
(鷹野 敦夫)