日本語でわかる最新の海外医学論文|page:406

片頭痛の予防治療、rimegepantに発症抑制効果/Lancet

 片頭痛の予防治療において、rimegepantの12週間、隔日投与は、プラセボと比較して片頭痛発症の抑制効果が高く、忍容性は両群で同程度であることが、米国・Biohaven PharmaceuticalsのRobert Croop氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年12月15日号に掲載された。片頭痛の薬物療法は、一般的に、発作の発生時にこれを緩和するための急性期治療と、発作の頻度や重症度を軽減するための予防治療の2つに分類される。経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬rimegepantは、すでに急性期治療における有効性と安全性が確認されている。

新型コロナに対するRNA遺伝子ワクチンは人類の救世主になりうるか?【臨床編】(解説:山口佳寿博氏)-1335

本論評(臨床編)では3種類の遺伝子ワクチン(RNA、DNA)の特徴について考察する。RNAワクチンにあってPfizer/BioNTech社のBNT162b2に関しては初期試験が終了し、第III相試験の中間解析の結果が正式論文として発表された。それを受け、12月2日に英国、12月11日に米国においてBNT162b2の緊急使用が承認され、医療従事者、高齢者、施設入居者などを対象としてワクチン接種が開始されている。カナダ、バーレーン、サウジアラビアでは完全使用が認可された。12月18日、Pfizer社は本邦へのワクチン導入を目指し厚労省に製造承認を申請した。

新型コロナワクチン、国産希望が約7割/アイスタット

 世界的に収まる気配のない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、英国、米国、ロシア、中国などではCOVID-19ワクチンの投与が開始された。わが国でも国産ワクチンの開発・研究が進んでいるが、その道のりは険しい。  こうした社会の動きを踏まえ、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、12月20日に「新型コロナウイルス感染症のワクチンに関するアンケート調査」を行った。  アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”に登録している会員で20歳~79歳の全員に調査を実施したもの。同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。

五十肩は関節内ステロイド注射が短期的に最も有効な治療

 五十肩(肩関節周囲炎)に対するさまざまな治療の有効性について、英国・グラスゴー大学のDimitris Challoumas氏らが65研究のメタ解析を行った結果、関節内ステロイド注射が他の治療(外科的治療を除く)と比べて短期での有用性が高く、その優位性は6ヵ月継続することがわかった。この結果から著者らは、五十肩には最初に関節内ステロイド注射が行われるべきとしている。JAMA Network Open誌2020年12月16日号に掲載。  本研究では、五十肩の治療について他の治療法やプラセボ/無治療と比較した無作為化試験を2020年2月にMedline、EMBASE、Scopus、CINHALで検索し、2名が独立して抽出した。主要評価項目は疼痛と機能、副次評価項目は外旋可動域であった。ペアワイズメタ解析の結果は、疼痛と外旋可動域の平均差および機能の標準化平均差として提示した。追跡期間について、短期(12週以下)、中期(12週超12ヵ月以下)、長期(12ヵ月超)に分けた。

COVID-19の希少疾病患者・家族への影響/特定非営利活動法人ASrid

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、不要不急の外出制限がされたことで、全国的に通常診療の診療控えがみられる事態となった。 こうした社会情勢下でCOVID-19は希少・難治性疾患を持つ患者、その家族にどのような影響を与えたか、希少・難治性疾患分野における全ステイクホルダーに向けたサービスの提供を目的に活動する特定非営利活動法人ASrid(アスリッド)は、全国の患者とその家族、患者団体向けに調査を行い、「COVID-19 が希少・難治性疾患の患者・家族および患者団体に与える影響に関する調査報告書(一次報告)」としてまとめ、結果を発表した(なお、分析は欠損値を除外して実施している)。

軽度から中等度のアルツハイマー病に対する抗Aβ標的薬の有用性~メタ解析

 軽度から中等度のアルツハイマー病に対するAβ標的薬の有効性および安全性を評価するため、中国・広州中医薬大学のLiming Lu氏らが、メタ解析を実施した。Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry誌2020年12月号の報告。  2020年4月までの研究を各電子データベースより検査した。プールされた推定値の算出には、ランダム効果メタ解析を用いた。  主な結果は以下のとおり。

新型コロナとインフル、死亡率・症状の違いは?/BMJ

 季節性インフルエンザ入院患者と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者は肺外臓器障害・死亡リスクの上昇(死亡リスクは約5倍)、および医療資源使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間など)の増加と関連していることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。研究グループは、先行研究での季節性インフルエンザとCOVID-19の臨床症状や死亡率の比較は、それぞれ異なるデータおよび統計的手法を用いて行われ、「リンゴとリンゴ」での比較ではなかったとして、米国退役軍人省の入院データを用いて評価を行ったという。結果を踏まえて著者は、「本調査結果は、COVID-19と季節性インフルエンザの比較リスクに関する世界的な議論への情報提供になるとともに、COVID-19パンデミックへの継続的な対策に役立つ可能性があるだろう」と述べている。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。

新型コロナに対するRNA遺伝子ワクチンは人類の救世主になりうるか?【基礎編】(解説:山口佳寿博氏)-1334

2020年12月18日現在、新型コロナPCR確定感染者は世界全体で7,285万人、死者数は164万人(粗死亡率:2.3%)に達する。不顕性感染者を含む総感染者数はPCR陽性者数の約10倍と考えられるので(Bajema KL, et al. JAMA Intern Med. 2020 Nov 24. [Epub ahead of print]PMID: 33231628)、現時点での世界総感染者数は約7.3憶人(世界総人口の約10%)と推察される。このままでは新型コロナによって人類は危機的状況に陥る可能性があり、それを阻止するためにはワクチンによる感染予防/制御が絶対的に必要である。現在、18種類のワクチンに関し第III相試験が進行中、あるいは終了している。しかしながら、12月10日、オーストラリアのQueensland大学で開発中の遺伝子ワクチンの臨床治験が中止されたことが報道された。以上の18種類のワクチンのうち、3種類の遺伝子ワクチンに関する第III相試験の中間結果が報告された(米国/ドイツ・Pfizer/BioNTech社のBNT162b2、米国・Moderna社のmRNA-1273、英国・AstraZeneca社のChAdOx1)。これらの3種類の遺伝子ワクチンは来年度上半期には本邦にも導入される予定であり、それらの基礎的/臨床的特徴を把握しておくことは、2021年の新型コロナ感染症に対する本邦での抜本的対策を構築するうえで最重要課題である。本論評(基礎編)では、遺伝子ワクチンを含めたワクチン全体の本質を理解するうえで必要な基礎的事項を整理する。次の論評(臨床編)では、来年度、本邦に導入されるであろう3種類の遺伝子ワクチンに関する臨床的意義について考察する。

有害事象にも目をやり、もう一歩進めたPCI適応に関する考察(解説:野間重孝氏)-1332

評者自身がそうであったのだが、察するに多くの方々が果たしてこの論文のどこが新しくてJAMA誌に掲載されるに至ったのだろうかと、当初いぶかしく思われたのではないだろうか。FFRによって患者を選別することにより、虚血が証明された虚血例と虚血が証明されない非虚血例では血管インターベンション(PCI)の成績が異なり、虚血例では予後改善効果が期待できるのに対して、非虚血例ではそのような結果が期待できない。だから医学的側面からも、対費用効果の側面からもFFRを用いた患者の選別は有効であるということは、すでに結論の出た問題として扱われるべきだと考えられているからだ。この論文の新しい点は、こういう観点から一歩進んで、非虚血例に対してPCIを行うことは効果がないばかりではなく、有害であることを示唆したことにある。

研修医が希望する研修病院の特徴とは?

 わが国では、2004年から2年間のスーパーローテートによる初期臨床研修プログラムが導入された。同時に最も適した研修プログラムを決定するため、全国的にマッチングシステムが確立された。毎年、研修医と研修施設とのマッチングの結果が公表され、双方で一喜一憂する姿が散見されている。マッチングで人気の高い研修施設とは、どのような施設なのだろうか。順天堂大学医学部 医学教育研究室 西崎 祐史氏らはマッチングで人気の高い研修施設の特徴を検討した。   この研究では、2019年度の医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)中間発表データから、各研修プログラムの応募枠数あたりの第1希望の応募者数(マッチング比)を比較した。比較に用いた変数は臨床研修プログラム検索サイト(REIS)などから抽出した、給料、ボーナスの有無、年間の受け入れ救急車件数、都道府県あたりの人口、シニアレジデント(卒後3~5年)受入数、新幹線の駅の有無などの情報であった。同一施設内の研修プログラム間の相関は一般化推定方程式で考慮された。

維持期双極性障害に対する薬物療法~ネットワークメタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、維持期の双極性障害患者に対する薬物療法において、どの抗精神病薬および/または気分安定薬が優れているかを調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2020年11月11日号の報告。  2020年5月22日までに公表された研究を、Embase、PubMed、CENTRALより検索した。2つのカテゴリーにおけるネットワークメタ解析を実施した。カテゴリー1には、単剤療法の研究および2種類の使用薬剤が特定された研究を含めた。カテゴリー2には、リチウム(LIT)またはバルプロ酸(VAL)と第2世代抗精神病薬(SGA:アリピプラゾール、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone)を併用し、プラセボ+LIT/VALと比較した研究を含めた。主要アウトカムは、いずれかの気分エピソードの再発再燃率とした。その他のアウトカムは、うつ病エピソードおよび躁病/軽躁病/混合エピソードの再発再燃率、中止率、死亡率、各有害事象とした。リスク比と95%信頼区間(CI)を算出した。

慢性硬膜下血腫にデキサメタゾンは有益か/NEJM

 症候性慢性硬膜下血腫の成人患者において、デキサメタゾンによる治療はプラセボと比較して、6ヵ月後の良好なアウトカムには結び付かず有害事象も多かった。ただし、被験者のほとんどが入院中に血腫除去術を受けており、再手術に関する評価についてはデキサメタゾン群で少ないことが示された。英国・ケンブリッジ大学のPeter J. Hutchinson氏らが、英国の23施設で実施した無作為化試験「Dexamethasone for Adult Patients with a Symptomatic Chronic Subdural Haematoma trial:Dex-CSDH試験」の結果を報告した。慢性硬膜下血腫は、とくに高齢者に多い神経疾患・障害である。慢性硬膜下血腫患者のアウトカムに対するデキサメタゾンの有効性は、これまで十分な検討がなされていなかった。NEJM誌オンライン版2020年12月16日号掲載の報告。

COVID-19ワクチンの対象集団、国や地域による違いは?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種の対象集団の規模は、国や地域によって著しく異なっていることを、中国・復旦大学のWei Wang氏らが記述的研究で明らかにした。著者は、「国や地域レベルでの対象集団の分布は、ワクチンの優先順位や配分を公平かつ効率的に計画することの重要性を強調している」と述べたうえで、「各国は、地域の疫学、基礎となる公衆衛生、利用可能なワクチン量の予測、直接的または間接的な有益性をもたらすワクチン接種戦略の選択などに基づいて、さまざまな戦略と配分計画を評価すべきである」とまとめている。先行研究において、COVID-19ワクチンの公正な配分を保証する倫理的な枠組みについては説明がされている。そのうちの1つは、最適化アルゴリズムを用いて異なる目的に対する最適なワクチン配分戦略をモデル化しており、人口統計、職業または高リスク集団(エッセンシャルワーカーや既往歴のある人など)を対象としたワクチン接種プログラムに関する集団規模が必要と示されていた。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。

機械学習による疾病予測モデルはあまり当たらない(解説:折笠秀樹氏)-1333

フラミンガムスタディデータを使って、心臓病の10年予測モデルが出たのが1998年のことです。私も脳梗塞の再発予測モデルの開発に携わったことがありますが、2012年のことでした。今や予測モデルの研究は枚挙にいとまがないほどです。TRIPOD声明というガイドラインまで出ています。モデル開発にはCoxモデルを用いるのが一般的でしたが、最近では機械学習モデルを使うことも多くなりました。ニューラルネットワークやランダムフォレストなどという手法です。

COVID-19へのシクレソニド、肺炎増悪抑制せず/国立国際医療研究センター

 COVID-19の治療薬候補として期待されているシクレソニドについて、肺炎のない軽症COVID-19患者90例を対象に肺炎の増悪抑制効果および安全性を検討した、全国21施設における多施設共同非盲検ランダム化第II相試験の結果、有効性が示されなかった。2020年12月23日、国立国際医療研究センターが発表した。米国含む海外にて実施されている検証的な臨床試験の結果も踏まえて判断する必要があるが、今回の研究結果からは無症状・軽症のCOVID-19患者に対するシクレソニド吸入剤の投与は推奨できないとしている。

日本人EGFR変異肺がん1次治療、エルロチニブ+ベバシズマブのOS(JO25567)/Lung Cancer

 EGFRとVEGF阻害薬の併用療法は有益なのか。日本人を対象とした無作為化第II相JO25567試験において、化学療法未治療EGFR遺伝子変異陽性非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、エルロチニブ+ベバシズマブ併用療法はエルロチニブ単剤に比べ全生存(OS)期間の有意差は認められなかった。和歌山県立医科大学の山本信之氏らが、追跡期間中央値34.7ヵ月における最終解析の結果で、患者個々の特性による違いもみられなかったという。同試験では無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが示されており、今回のアップデート解析でもPFSについては有意な延長が認められた。著者は今回の結果を踏まえて、「EGFRとVEGF阻害薬の併用療法を評価する進行中の試験の結果が待ち望まれる」と述べている。Lung Cancer誌2020年11月20日号掲載の報告。

インフルエンザは1,000分の1、COVID-19余波でその他感染症が激減

 日本感染症学会と日本環境感染学会を中心に各医学会や企業・団体が連携し、感染症の予防に向けた啓発活動を行う共同プロジェクト「FUSEGU2020」は、2021年に開催が予定されるオリンピックを鑑み、注意すべき感染症と2020年の感染症流行の状況を解説するメディアセミナーを行った。  セミナーにおいて、防衛医科大学校内科学(感染症・呼吸器)教授の川名 明彦氏が「国際的マスギャザリングに向け、注意すべき感染症」と題した発表を行った。川名氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行を受け、その他の感染症の流行状況に大きな変化が生じている状況を紹介した。

大腸がんの術後補助化学療法、CAPOX療法3ヵ月投与の意義(IDEA)/Lancet Oncol

 StageIII大腸がん患者を対象とした術後補助化学療法について、無作為化第III相試験6件を前向きに統合解析した結果が報告された。フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らInternational Duration Evaluation of Adjuvant Therapy(IDEA)collaborationによる検討で、全生存(OS)期間に関して、3ヵ月投与の6ヵ月投与に対する非劣性は示されなかったが、最終解析の結果、5年OSの絶対差は0.4%であった。結果を踏まえて著者は、「StageIII大腸がんに対する術後補助化学療法では、臨床的にほとんどの患者において3ヵ月間のCAPOX療法が支持される」と述べたうえで、「この結論は、投与期間の短縮による毒性や医療費の軽減によってさらに強固なものとなる」とまとめている。Lancet Oncology誌2020年12月号掲載の報告。

統合失調症の心臓突然死リスク、抗精神病薬と年齢との関係

 抗精神病薬を服用している統合失調症患者の心臓突然死リスクに対する年齢の影響について、台湾・台北医科大学のPao-Huan Chen氏らが調査を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌2020年11月号の報告。  対象は、台湾全民健康保険研究データベースおよび死亡診断書システムより抽出した、2000~16年に心臓突然死で死亡した統合失調症患者1,836例。14日間のウインドウ期間を設定したクロスオーバー研究を実施した。サブグループ解析では、患者の年齢で3群(45歳未満、45~65歳、66歳以上)に層別化し、抗精神病薬を服用している患者の心臓突然死リスクに対する年齢の影響を評価した。

ペットが糖尿病なら、飼い主も危ない?/BMJ

 飼い犬が糖尿病の飼い主は、飼い犬が糖尿病ではない飼い主と比べて、2型糖尿病の発症リスクが有意に高い(約1.3倍)ことがデータで明らかにされた。逆に飼い主が2型糖尿病の際の飼い犬の糖尿病発症リスクの増大については、有意な関連性は認められず、また、飼い猫と飼い主には、そのような関連性は認められなかったという。スウェーデン・ウプサラ大学のRachel Ann Delicano氏らが、飼い犬と飼い主のペア約21万組、飼い猫と飼い主のペア約12万組について行った縦断研究の結果を報告した。飼い犬と飼い主は、身体活動量など特定の健康行動を共有する場合がある。以前に行われた横断研究で、飼い犬と飼い主における肥満について関連性があることが示されていたが、飼い犬と飼い主および飼い猫と飼い主で糖尿病リスクを共有するのか調べた研究はこれまでなかった。BMJ誌2020年12月10日号クリスマス特集号の「THE CITADEL」より。