日本語でわかる最新の海外医学論文|page:409

ロルラチニブ、進行ALK陽性NSCLCの1次治療で有効/NEJM

 未治療の進行未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の患者では、ロルラチニブの投与はクリゾチニブと比較して、無増悪生存(PFS)期間が有意に延長し頭蓋内奏効の割合が優れるが、Grade3または4の有害事象(主に脂質値の異常)の発生頻度は高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAlice T. Shaw氏らが行った「CROWN試験」の中間解析で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年11月19日号で報告された。ロルラチニブは第3世代のALK阻害薬で、血液脳関門を通過して中枢神経系に到達するようデザインされており、第Iおよび第II相試験では、第1・第2世代ALK阻害薬による治療が失敗した患者において強力な抗腫瘍活性が確認されている。第1世代ALK阻害薬クリゾチニブは、本試験開始時の標準的な1次治療薬であった。

認知機能の改善作用を示したビフィズス菌株とは?

 脳と腸が自律神経などを通じて強く関連し、その状態に影響を及ぼしあう脳腸相関がいわれるようになって久しく、腸内細菌が認知症に関連するとの報告も多いが、因果関係の証明にはいたっていない。今回、2本の二重盲検無作為化比較試験を経て、ビフィズス菌MCC1274摂取による認知機能の維持・改善作用が示唆された。2020年11月24日、「ビフィズス菌MCC1274の認知機能改善作用とその可能性」と題したメディアセミナー(主催:森永乳業)が開催され、佐治 直樹氏(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター)、清水 金忠氏(森永乳業株式会社研究本部 基礎研究所)、新井 平伊氏(アルツクリニック東京)が登壇し、試験の概要や関連研究、今後の展望について講演した。

再発スコアの低いリンパ節転移陽性閉経後早期乳がん、術後化学療法は回避可能か(RxPonder)/SABCS2020

 リンパ節転移1~3個でオンコタイプDX乳がん再発スコアが0~25の閉経後早期乳がん患者において、術後内分泌療法への化学療法追加のベネフィットが認められなかったことが、RxPonder試験(SWOG S1007)の中間解析で示された。米国・エモリー大学のKevin Kalinsky氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。RxPonder試験は、米国国立がん研究所(NCI)の支援でSWOG Cancer Research Networkが主導している前向き無作為化第III相試験。

統合失調症治療におけるパリペリドン戦略の展望

 2020年10月22日(木)にヤンセンファーマ主催による、持続性抗精神病剤パリペリドンパルミチン酸エステル(商品名:ゼプリオンTRI)の製造販売承認メディアセミナーが開催され、統合失調症治療薬の安全性情報や統合失調症治療におけるパリペリドン戦略の展望、持効性注射剤の適正使用推進について語られた。  同社の研究開発本部クリニカルサイエンス統括部統括部長を務める藤野 忠弘氏は、「ゼプリオンTRIは国内で承認された最長の投与間隔となる注射剤であり、服薬負担を軽減し、社会復帰のために確実に治療を行うメリットがある。一方で副作用発現時に急な中止ができないため、適切な患者さんを選択し適正使用を図ることが重要となる」と述べた。

「523遺伝子を搭載した国内完結型がん遺伝子パネル検査」先進医療に承認/岡山大学

 新たながん遺伝子パネル検査に関する厚生労働省・先進医療技術【先進医療B】研究として、「国内完結型個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」が厚生労働省より承認され、2020年12月1日より、岡山大学病院が全国で初めて実施することになった。523遺伝子を搭載した国内では最多となるがん遺伝子パネル検査となる。  わが国で保険適応されている遺伝子パネル検査は2種類で、それぞれ114、324個の遺伝子を対象にしていた。しかし、がん種によっては十分な遺伝子が調べられないこともあった。

治療抵抗性うつ病発症リスクに関連する臨床的特徴と併存疾患

 うつ病患者の治療抵抗性うつ病(TRD)リスクを評価するため、臨床的特徴、初期の処方パターン、初期および生涯の併存疾患との関連について、台湾・国立台湾大学のShiau-Shian Huang氏らが調査を行った。BMC Psychiatry誌2020年11月17日号の報告。  うつ病入院患者3万1,422例を対象に、診断開始から10年以上のフォローアップを行った。TRDの定義は、2回以上の抗うつ薬治療レジメン変更または異なる2種類以上の抗うつ薬治療後の入院とした。人口統計学的共変量で調整した後、身体的および精神医学的併存疾患、精神疾患、処方パターンとTRDリスクとの関連を評価するため、多重ロジスティック回帰モデルを用いた。重要なTRD関連の臨床変数について、生存分析を実施した。

finerenone、2型糖尿病合併CKD患者で心血管リスクを抑制/NEJM

 2型糖尿病を併発する慢性腎臓病(CKD)患者において、finerenoneの投与はプラセボに比べ、CKDの進行と心血管イベントのリスクを低減させることが、米国・シカゴ大学病院のGeorge L. Bakris氏らが行った「FIDELIO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年12月3日号に掲載された。2型糖尿病はCKDの主要な原因であり、2型糖尿病患者のCKD管理ガイドラインでは、高血圧や高血糖の管理とともにさまざまな薬物療法が推奨されているが、CKDの進行のリスクは解消されておらず、新たな治療が求められている。finerenoneは、非ステロイド性選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、CKDと2型糖尿病を併発する患者を対象とする短期試験でアルブミン尿を減少させると報告されている。

高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+パルボシクリブ、初回解析でiDFS改善みられず(PENELOPE-B)/SABCS2020

 術前化学療法後に浸潤性病変が残存している高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性早期乳がん患者に対する、術後内分泌療法へのパルボシクリブ併用療法は、内分泌療法単独と比較して無浸潤疾患生存期間(iDFS)の有意な改善を示さなかった。ドイツ・German Breast GroupのSibylle Loibl氏が、第III相PENELOPE-B試験の初回解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 ・対象:タキサンを含む術前化学療法後に病理学的完全奏効が得られず、再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん患者(術前補助療法後の残存浸潤性病変有、CPS-EGスコア≧3または 2、ypN+、術前化学療法≧16週、最終手術日から16週未満または放射線療法完了後10週未満) ・試験群:術後療法として、パルボシクリブ(125mg1日1回×3週投与1週休薬の28日を1サイクルとして、13サイクル)+標準的内分泌療法 ・対照群:術後療法として、プラセボ(13サイクル)+標準的内分泌療法 ・評価項目: [主要評価項目]iDFS [副次評価項目]二次性原発浸潤性非乳がんを除くiDFS、遠隔無再発生存期間、全生存期間(OS)、安全性など ・層別化因子:リンパ節転移の有無(ypN0-1 vs.ypN2-3)、年齢(50歳以下 vs.50歳超)、Ki-67値(15%超 vs.15%未満)、地域(アジア vs.非アジア)、CPS-EGスコア(3以上 vs.2かつypN+)

境界性パーソナリティ障害と自殺企図~10年間のフォローアップ調査

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、自殺企図などの自殺行動の強力なリスクである。自殺行動リスクに影響を及ぼす因子を明らかにすることは、適切な自殺予防介入を考えるうえで重要であろう。米国・ハーバード大学医学大学院のShirley Yen氏らは、BPD患者の自殺企図に関連する因子をプロスペクティブに調査するため、10年にわたるフォローアップによるCollaborative Longitudinal Study of Personality Disorders(CLPS)研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年11月18日号の報告。

ゴリムマブ、1型糖尿病若年患者のインスリン産生能を改善/NEJM

 新たに顕性1型糖尿病と診断された小児および若年成人において、ゴリムマブの投与はプラセボに比べ、内因性インスリン産生能が優れ、外因性インスリンの使用量は少ないことが、米国・ニューヨーク州立大学バッファロー校のTeresa Quattrin氏らが行った「T1GER試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年11月19日号に掲載された。1型糖尿病は、膵β細胞の進行性の低下で特徴付けられる自己免疫疾患である。ゴリムマブは、腫瘍壊死因子αに特異的なヒトIgG1-κモノクローナル抗体であり、欧米では成人の関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患、欧州などでは多関節型若年性特発性関節炎や小児の非X線的体軸性脊椎関節炎などの治療法として承認されている。

IL-1阻害薬、心膜炎の再発リスクを低減/NEJM

 再発性心膜炎患者において、インターロイキン-1(IL-1)阻害薬rilonaceptはプラセボと比較して迅速な症状改善をもたらし、さらなる再発のリスクを有意に低下することが示された。米国・クリーブランドクリニックのAllan L. Klein氏らRHAPSODY研究チームが、第III相の多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を報告した。IL-1は再発性心膜炎のメディエーターとして関与することが知られている。IL-1αおよびIL-1βサイトカインの働きを阻害するrilonaceptの有効性と安全性は、すでに再発性心膜炎患者を対象とした第II相試験で確認されていた。今回の第III相試験では、rilonaceptはプラセボよりも再発リスクを低下するとの仮説を検証する目的で実施された。NEJM誌オンライン版2020年11月16日号掲載の報告。

HFpEFに対するsGC刺激薬の効果―VITALITY-HFpEF試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1329

VITALITY-HFpEF試験では、6ヵ月以内に心不全増悪の既往を有する左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)を対象にして、可溶型グアニリル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬であるvericiguat 10mg/日あるいは15mg/日を24週間投与した際の生活の質(QOL)ならびに運動耐容能に対する効果が、多施設共同第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験として検証された。結論としてvericiguatの有効性は示されず、HFpEFに対する臨床試験としては、またしてもネガティブな結果に終わった。本研究に先立って行われたSOCRATES-PRESERVED試験では、HFpEFに対するvericiguatの12週間投与がN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値および左房容積に及ぼす効果について検証された。プライマリエンドポイントにvericiguat投与群とプラセボ群間で有意差を認めなかったが、探索項目として調査されたカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)によるQOL評価値が、vericiguat 10mg/日投与群においてプラセボ群に比べ有意に改善した。

「肺癌診療ガイドライン」改訂、会員アンケートから見えた改善点は?/日本肺癌学会

 2020年11月、「肺癌診療ガイドライン」改訂版が公開された。肺癌診療は新規薬剤が次々と承認され、ガイドラインが毎年改訂されるという特異な状況にある。11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では「肺癌診療ガイドライン(薬物):過去10年の軌跡とこれからの未来」と題し、ガイドライン作成・改訂のこれまでを振り返り、今後について議論するシンポジウムが行われた。  この中で国立がん研究センター東病院呼吸器内科の野崎 要氏は「ガイドラインは誰のものか?:アンケート結果報告」と題し、日本肺癌学会正会員(医師)の薬物療法従事者を対象に行ったアンケート結果を発表した。このアンケートは肺癌診療ガイドラインの使用実態を調査し、以後の改訂に活かすことを目的に、2020年6~10月にWeb上で行われたもの。有効回答数は540だった。

COVID-19の後遺症は女性のほうが多い/和歌山県

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、寛解後に後遺症が残ることが知られつつあり、わが国では国立国際医療研究センターなどから「Long-COVID:専門医が語る新型コロナ後遺症の実態」などの研究・発表が行われている。  地方レベルでは、和歌山県も11月に「新型コロナウイルス感染症の後遺症等のアンケート調査の結果について」の結果を公表している。 本稿では、アンケート内容の概要を記す。 目的:和歌山県における新型コロナウイルス感染者の退院後の症状や生活状況等を把握し、啓発や対策に繋げる 対象者:新型コロナウイルス感染者で9月14日時点で退院後2週間以上経過している者 方法:感染者の管轄保健所からの郵送もしくは聞き取り調査 対象者数:216人 回答者数:163人(性別 男性97:女性66) 回答率:75.5%

治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬増強療法

 治療抵抗性うつ病の臨床症状として、自殺念慮や重度の機能障害が認められることがしばしばある。治療抵抗性うつ病の治療に対し、使用可能な薬剤の中で、第2世代抗精神病薬が有用であることが報告されている。イタリア・ミラノ大学のFilippo Cantu氏らは、治療抵抗性うつ病に対する第2世代抗精神病薬増強療法の有効性を評価するため、臨床研究のレビューを行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年11月5日号の報告。  2000年1月~2020年3月に公表された、治療抵抗性うつ病に対する抗精神病薬増強療法を評価したすべてのランダム化比較試験を、PubMed、Medline、PsychINFOより包括的に検索した。選択基準を満たした研究は16件であった。

小児期の鉛曝露、中年期に脳の老化をもたらす/JAMA

 小児期の血中鉛濃度の上昇は、中年期における脳構造の完全性低下を示唆する脳構造の変化(MRI評価によるもの)と関連していたことが示された。米国・デューク大学のAaron Reuben氏らが、ニュージーランドで実施した追跡期間中央値34年にわたる縦断コホート研究「Dunedin研究」の結果を報告した。小児期の鉛曝露は脳発達の障害に関連しているとされてきたが、脳構造完全性への長期的な影響は不明であった。なお、得られた所見について著者は限定的な結果であるとしている。JAMA誌2020年11月17日号掲載の報告。

発作性AFの第1選択、クライオバルーンアブレーションvs.抗不整脈薬/NEJM

 第1選択としてのクライオ(冷凍)バルーンによるアブレーションは、発作性心房細動患者の心房性不整脈再発予防において抗不整脈薬より優れており、重篤な手技関連有害事象は少ないことが示された。米国・クリーブランドクリニックのOussama M. Wazni氏らが、米国の24施設で実施した多施設共同無作為化試験「STOP AF First試験(Cryoballoon Catheter Ablation in Antiarrhythmic Drug Naive Paroxysmal Atrial Fibrillation)」の結果を報告した。薬物療法の効果が得られない症候性の発作性心房細動患者では、洞調律維持のため抗不整脈薬よりカテーテルアブレーションが有効である。しかし、第1選択としてのクライオバルーンアブレーションの安全性と有効性は確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2020年11月16日号掲載の報告。

医療機器選定を巡って医師へのリベートは尽きない(解説:折笠秀樹氏)-1328

企業が医師へ渡すリベートが増えるにつれ、医療機関がその企業の医療機器を選定しがちだという報告です。人の心理としては、もしコスパに違いがなければ、印象のよい企業に決めるのは当たり前だと思います。しかし、キックバックが一番大きい企業に決めるというのは筋違いではないでしょうか。病院にとって支払う額は高くなるわけだし、医療費を上げることにもなるでしょう。そうすると、損をするのは患者になるわけです。どの世界でも営業でキックバックはあるかもしれませんが、それは消費者の損になることです。個人的にはやめてもらいたいと思います。

資金提供者との利益相反の開示だけでなく独立性も大切(解説:折笠秀樹氏)-1327

臨床試験方法論専門家20人に対する利益相反(COI)に関する電話調査の結果です。20人のうち医師は12人、統計家は4人でした。米国ではSalim YusufやCurt Furbergなど、医師で方法論専門家が多いのは知っていたのでうなずけました。真ん中半分は20~100の試験に関与していました。私自身もおよそ100試験に関与したので、親近感を持って読みました。ここでCOIと言っている対象は製薬企業などのスポンサー(つまり主宰者)ではなく、ファウンダー(つまり資金提供者)ではないかと思われます。いわゆる治験は対象ではないと思われます。財団や政府が資金提供して行われた臨床試験なのでしょう。企業主導の臨床試験(治験)だと、計画や解析に企業が関与しないわけがないからです。

高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+アベマシクリブ、iDFS改善が継続(monarchE)/SABCS2020

 再発リスクの高いリンパ節転移陽性ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の早期乳がんに対し、術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加の有効性を評価する第III相monarchE試験の追跡調査において、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の改善が引き続き示され、Ki-67値20%以上の患者での有意な改善が示された。米国・ピッツバーグ大学のPriya Rastog氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。  monarchE試験は中間解析(追跡期間中央値15.5ヵ月)でアベマシクリブ追加によるiDFSの有意な改善(p=0.0096、ハザード比[HR]:0.747、95%信頼区間[CI]:0.598~0.932)が報告されている。今回、iDFSの約390イベント発生後に計画されていた解析の結果が報告された。