日本語でわかる最新の海外医学論文|page:409

移動式脳卒中ユニット、3ヵ月後の全般的障害を改善/JAMA

 急性期虚血性脳卒中患者の救急搬送では、移動式脳卒中ユニット(MSU)の出動は従来の救急車と比較して、修正Rankinスケール(mRS)で評価した3ヵ月後の全般的障害の状態が有意に良好であることが、ドイツ・シャリテ大学病院ベルリンのMartin Ebinger氏らが実施したB_PROUD試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年2月2日号に掲載された。急性期虚血性脳卒中における血栓溶解療法の効果は時間依存的であることが知られている。MSUは、CTスキャナーを装備し、病院到着前に血栓溶解療法が行えるよう設計された救急車であり、治療開始までの時間を短縮し、血栓溶解療法の施行率を増加させ、入院前のトリアージを改善すると報告されているが、脳卒中発症後の機能的アウトカムに及ぼすMSUの潜在的な効果は明らかではないという。

新型コロナウイルスワクチンを特例承認/厚生労働省・ファイザー

 厚生労働省は、2月14日にファイザー株式会社から製造販売承認が申請されていた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の第14 条の3に基づく特例承認を行った。  特例承認とは同法の規定に基づき、「(1)疾病のまん延防止等のために緊急の使用が必要、(2)当該医薬品の使用以外に適切な方法がない、(3)海外で販売等が認められている」という要件を満たす医薬品につき、承認申請資料のうち臨床試験以外のものを承認後の提出としても良いなどとして特例的な承認をする制度。

コロナ禍の花粉症対策にも有用、「鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版」

 今年の花粉症シーズンはコロナ禍ということもあり、耳鼻咽喉科医だけではなく、多くの非専門医にも花粉症について再認識してもらうことが重要ではないだろうか。そこで、2020年7月に改訂第9版として発刊された『鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2020年版』の作成委員長を務めた岡野 光博氏(国際医療福祉大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科学 教授)に本ガイドライン(GL)の改訂内容やコロナ禍で注意すべき点を伺った。

若年成人におけるノモフォビア(スマホ依存症)と不眠症や食物依存症との関連

 スマートフォンや携帯電話などの端末を使用することができないことに対して恐怖を抱く状態をノモフォビアという。バーレーン・Arabian Gulf UniversityのHaitham Jahrami氏らは、ノモフォビアと食物依存症および不眠症状との関連について調査を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2021年1月15日号の報告。  対象は、18~35歳のバーレーン若年成人654人(男性:304人、女性350人[女性の割合:54%])。基本的な人口統計学的および身体測定の特徴、ノモフォビア質問票(NMP-Q)、不眠症重症度質問票(ISI)、Yale食物依存症尺度(YFAS)を含む自己評価型の構造化されたオンライン質問票を用いて評価した。

妊娠および授乳中の女性に対する抗CGRPモノクローナル抗体の安全性プロファイル

 妊娠および授乳中の女性に対する抗CGRPモノクローナル抗体(erenumab、ガルカネズマブ、fremanezumab)の安全性プロファイルについて、スイス・Institute of Pharmacological Sciences of Southern SwitzerlandのRoberta Noseda氏らが、評価を行った。Cephalalgia誌オンライン版2021年1月12日号の報告。  個別症例の安全性報告を集積したWHOのグローバルデータベースであるVigiBaseより2019年12月31日時点のデータを収集した。  主な結果は以下のとおり。

ニボルマブ+カボザンチニブの進行腎がん1次治療、持続的な効果示す(CheckMate-9ER)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブとExelixisは、2021年2月8日、ピボタルな第III相CheckMate-9ER試験の新たな解析の結果を発表した。同解析では、進行腎細胞がん(RCC)の1次治療において、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とカボザンチニブ(商品名:カボメティクス)の併用療法が、スニチニブと比較して、臨床的に意義のある持続的な有効性ベネフィットおよび生活の質の改善を示した。これらのデータは米国臨床腫瘍学会(ASCO)2021年泌尿器がんシンポジウムにおいて発表された

中高年の心血管死亡率、景気動向との関連は?/JAMA

 米国の中高年層において、郡レベルの経済的繁栄の相対的増加と、心血管死亡率のわずかだが相対的減少とは有意に関連していることが示された。米国・ペンシルベニア大学のSameed Ahmed M. Khatana氏らが、2010~17年の死亡率に関する後ろ向き研究で明らかにした。米国における非高齢成人の心血管死亡率は、過去10年間でその低下が停滞しており、一部の集団では増加している。この背景には所得格差の拡大があると考えられているが、心血管死亡率と景気動向が関連するかどうかはこれまで不明であった。JAMA誌2021年2月2日号掲載の報告。

アジスロマイシン、COVID-19入院患者への効果は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、アジスロマイシンによる治療は生存期間および臨床転帰(侵襲的人工呼吸器装着または死亡)を改善しなかったことが、無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果、明らかとなった。英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループが報告した。アジスロマイシンは免疫調節作用を有していることから、COVID-19に対する治療として提案されてきたが、これまでの無作為化試験では、COVID-19の治療におけるマクロライド系抗菌薬の臨床的有益性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19入院患者に対するアジスロマイシンの使用は、明らかに抗菌薬の適応である患者に制限されるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年2月2日号掲載の報告。

新型コロナ予防、マスク二重着用の有効性は?/CDC

 不織布マスク(サージカルマスク)の上から布マスクを着用することで密着度が高まり、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の予防により効果的である可能性が実験で示された。米国疾病予防管理センター(CDC)が2021年2月10日に発表した。  不織布マスクや布マスクはN95マスクと比較すると密着性が低く、マスクの端、とくに左右両端から空気が漏れる可能性 がある。そこでCDCではシミュレーション実験により、不織布マスクの効果を改善するための2つの方法を評価した。1つは上から布マスクを重ねることで、もう1つはひもに結び目、タックを作る(余分な素材を顔の近くに折込んで平らにする)ことによる密着度の向上である。咳をした場合の状況をシミュレーションし、発生者と曝露者の各組合せが評価された。

日本人高齢者における新たな認知症診断予測因子~コホート研究

 高齢者の認知症を予防することは、公衆衛生上の重要な課題である。認知症の予測因子を早期に発見し、是正することは重要であるが、定期的に収集された医療データに基づく認知症の予測因子は、すべて明らかになっているわけではない。京都大学の中奥 由里子氏らは、定期的に収集したレセプトデータを用いて、認知症診断の潜在的な予測因子を調査した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2021年1月13日号の報告。

ニボルマブの尿路上皮がんアジュバント、DFS改善(CheckMate-274)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年2月8日、第III相CheckMate-274試験の結果を発表。本試験において、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、切除後の高リスク筋層浸潤性尿路上皮がんの全無作為化患者およびPD-L1 1%以上の患者のサブグループを対象に、術後補助療法として、有意に無病生存期間(DFS)を改善し、本試験の2つの主要評価項目の両方を達成した。  CheckMate-274試験は、筋層浸潤性尿路上皮がんの術後補助段階において免疫療法薬を評価した初めての肯定的な結果を示した第III相試験。

オシメルチニブの肺がんアジュバント、化学療法歴の有無にかかわらずDFS延長/アストラゼネカ

 アストラゼネカ社は、2021年2月8日、第III相ADAURA試験の探索的解析の良好な結果から、オシメルチニブ、(商品名:タグリッソ)が、EGFR遺伝子変異陽性(EGFRm)非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、術後補助化学療法歴の有無、また疾患のステージにかかわらず、無病生存期間(DFS)を延長することが示されたと発表した。これは、昨年発表された術後補助療法におけるオシメルチニブの主要評価項目であるDFSの顕著な延長という結果をさらに支持するものとしている。同試験の結果は、国際肺癌学会(IASLC)が主催する2020年世界肺癌学会(WCLC)(2021年1月開催)で発表された。

新型コロナワクチンで再注目、必須抗菌薬の国内生産体制をどう維持するか

 2019年、抗菌薬のセファゾリンが原薬の異物混入等の理由から一時製造中止となり、供給不足が医療現場に大きな混乱をもたらした。これにより、原薬供給が海外の特定国とメーカーに集中している現状では、いったん不測の事態が生じれば医療現場に必須の薬剤が供給不能になる、という問題点が明らかになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においても、流行初期のマスク不足やワクチン確保の局面において、医薬品の国内生産の重要性が改めて注目されている。  厚生労働省はセファゾリン供給不足の事態を受け、「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」を立ち上げ、1)供給不安の予防、2)供給不安への早期対応、3)実際に供給不安に陥ったときの対応という側面から、対応策を検討してきた。

スタチンの「不必要な」無作為化試験、中国で2千件超/BMJ

 中国で、冠動脈疾患に対するスタチン使用が臨床ガイドラインで強く推奨され始めた翌年以降に、スタチンの効果を検証するとして実施された不必要な(redundant)無作為化比較試験は2,000件超で、これら試験の被験者で対照群に割り付けられ、スタチンを服用しなかった被験者で発生した主要有害心イベント(MACE)は3,000例以上で、うち死亡が約600例だった。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のYuanxi Jia氏らが、2019年までに発表された冠動脈疾患に対するスタチンの無作為化比較試験を再調査し、明らかにした。不必要な臨床試験は資源を浪費し、とくにプラセボ対照試験の設定では、効果的な治療が受けられない患者に害を及ぼす可能性がある。科学出版物の最大の生産国となっている中国本土での臨床試験については、その必要性が深刻な課題になっていることが懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「患者を保護するため不必要な臨床試験を改める早急な改革が必要だ」とまとめている。BMJ誌2021年2月2日号掲載の報告。

医師の8割が新型コロナワクチンを希望、その本音は?/医師1,000人に聞きました

 新型コロナウイルスのワクチン接種が世界中で始まり、接種者は1億人を突破した。2月下旬より医療者を対象に接種が始まる日本でも、さまざまな新型コロナワクチンに関する情報が次々と飛び込んできており、そんななかで医師のワクチンに対する心境に変化はあるのだろうかー。  今回、医師の接種希望に関する心境の変化やその理由を探るため、昨年10月に会員医師へ行った新型コロナワクチン接種に関するアンケートの回答者1,027人に対し、2回目のアンケートを実施した[1月27日(木)~2月3日(水)]。980人から回答を得た結果より、医師のワクチン接種希望者は1回目のアンケートでは61.2%だったのが、2回目では82%に増加したことが明らかになった。

男性乳がんにおける内分泌療法の第II相無作為化試験/JAMA Oncol

 ホルモン受容体(HR)陽性の男性乳がん患者において、標準的内分泌療法によるエストラジオール値の変化は不明である。今回、ドイツ・Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏らが第II相無作為化試験で調べたところ、アロマターゼ阻害薬(AI)またはタモキシフェンにゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)を併用した群では、エストラジオール値が持続的に低下することが示された。JAMA Oncology誌オンライン版2021年2月4日号に掲載。

双極性障害とうつ病を鑑別するための感情調節神経回路の調査

 双極性障害(BD)患者の最大40%は、最初にうつ病と診断されており、情緒不安定は両疾患で共通して認められる。しかし、認知的再評価による感情調節の違いが、BDとうつ病を鑑別するのに役立つかは、よくわかっていない。オーストラリア・シドニー大学のSabina Rai氏らは、寛解期BD患者とうつ病患者の感情調節について、調査を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年12月25日号の報告。  年齢、性別、うつ病重症度をマッチさせた寛解期BD患者38例、寛解期うつ病患者33例、健康対照者37例を対象に、fMRIスキャン中の感情調節認知再評価タスクを調査した。対象者には、画像の再評価(Think条件)、ネガティブな画像を受動的に見る(Watch条件)、ニュートラルな画像を受動的に見る(Neutral条件)のいずれかを行い、その影響を評価した。感情調節に特有の神経回路における再評価(Think条件vs.Watch条件)および反応性評価(Watch条件vs.Neutral条件)についてグループ間での違いを調査するため、放射化分析、結合性解析を用いた。

中国製COVID-19ワクチン、アジュバント併用で免疫反応増大/Lancet

 中国のバイオテクノロジー企業Clover Biopharmaceuticalsが開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「SCB-2019」について、免疫増強剤(AS03またはCpG/Alum)の配合投与(アジュバントワクチン)により、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する強力な液性免疫および細胞性免疫が認められ、高い中和抗体価も得られたことが示された。西オーストラリア大学のPeter Richmond氏らによる第I相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で、著者は、「いずれのアジュバントワクチンとも忍容性は良好であり、さらなる臨床開発に適する」と述べている。SARS-CoV-2ワクチンの開発加速の一手段として、アジュバントワクチンの検討が進められている。著者らは、2つの異なるアジュバントを組み合わせたスパイクタンパク質安定化三量体(S-Trimer)を含有する、タンパク質サブユニットワクチン候補SCB-2019の用量設定とアジュバントの正当性を検証した。Lancet誌オンライン版2021年1月29日号掲載の報告。

新型コロナ感染症に対する回復期血漿療法は有効か?(解説:山口佳寿博氏)-1353

新型コロナに対する治療の一環として自然感染から回復した患者血漿を投与する療法が試みられている。これと同様の治療法はS蛋白の種々なる領域に対するMonoclonal抗体治療である。しかしながら、Monoclonal抗体製剤は高価であり世界のすべての地域で簡単に施行できる方法ではなく、費用対効果の面から安価な回復期血漿療法(一種のPolyclonal抗体療法)が多くの国で試みられている。患者の回復期に得られた血漿を新たな患者に輸血する方法はエボラ出血熱、SARS、MERS、鳥インフルエンザなど種々の感染症において施行されてきた。

冠動脈小血管に対するDCBとDESの長期成績(解説:上田恭敬氏)-1354

径が3mm以下の冠動脈小血管に対するDCBとDESの成績を比較した、all-comerの無作為化非劣性試験であるBASKET-SMALL 2において、3年の長期成績が報告された。本試験では、1年でのDCBのDESに対する非劣性がすでに報告されている。対象患者はDCB群382症例とDES群376症例であり、今回の解析では、3年間のMACE(心臓死、心筋梗塞、TVR)を主要評価項目としている。DAPT期間は、ACS症例では両群とも12ヵ月、非ACS症例ではDCB群で1ヵ月、DES群で6ヵ月が推奨された。DCB群の5%で、ベイルアウトのステント留置が必要であった。