日本語でわかる最新の海外医学論文|page:405

慢性不眠症に対する処方デジタル治療「Somryst」について

 処方デジタル治療(PDT)は、米国食品医薬品局(FDA)に承認された新たなソフトウエアベースの医療機器であり、疾患の治療に用いられる。Somrystは、慢性不眠症治療に対しFDAにより承認された最初のPDTであり、不眠症の認知行動療法(CBT-I)を、モバイルアプリケーションを通じて提供するものである。CBT-Iは、慢性不眠症のガイドラインで推奨される第1選択治療であるが、CBT-Iのセラピストには限りがあり、より多くの患者へCBT-Iを提供するニーズにSomrystは合致する。カナダ・ラバル大学のCharles M. Morin氏は、Somrystについてのレビューを報告した。Expert Review of Medical Devices誌オンライン版2020年11月23日号の報告。

外科医が自分の誕生日に行った手術で、死亡率増/BMJ

 緊急手術を受けたメディケア受給患者の死亡率を分析した結果、外科医が手術を自身の誕生日に行った患者の死亡率が、誕生日以外の日に行った患者の死亡率と比べて高いことが判明した。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の加藤 弘陸氏らが行った全米規模の観察研究の結果で、著者は「本所見は、外科医が手術室で、手術とは直接関係のない出来事で注意散漫になりうることを示すものである」と述べている。手術室では、臨床的出来事や個人的出来事によって、注意をそらされることが日常的に起きているという。研究室での実験では、注意散漫が外科医のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があることは示されているが、患者の転帰にどれほど影響するのか、リアルワールドのデータを使用した経験的エビデンスは限定的であった。BMJ誌2020年12月10日号クリスマス特集号の「THE CITADEL」より。

新型コロナの医療従事者への感染:院内感染と非院内感染が混在(解説:山口佳寿博氏)-1336

新型コロナが中国・武漢で発生してから約1年が経過し、手探りで始まった本感染症における臨床所見の把握、診断法、治療法(抗ウイルス薬剤、抗炎症薬/サイトカイン・ストーム抑制薬、ECMOなどの呼吸管理法)、予防法(有効ワクチン)の確立に関し多くの知見が集積されつつある。感染症発生初期には、感染症の本体(感染性、播種性、重症化因子)が十分に把握できず、医療従事者の防御法(PPE:Personal Protective Equipment)も不完全で医療施設内での医療従事者を巻き込んだ感染クラスターの発生など、種々の社会的問題が発生した。これらの諸問題は時間経過と共に沈静化しつつあるが、現在施行されている医療従事者の一般的PPEが本当に正しいかどうかに関する検証はなされていない。もし、医療従事者のPPEが正しいならば、医療従事者の新型コロナ感染率は一般住民のそれと同等であるはずである。この問題に対する確実な答えを見つけておくことは、今後のコロナ感染症の診断/治療に当たるわれわれ医療従事者にとって重要な問題である。医療従事者はコロナ感染症患者に的確に対処すると同時に、1人の一般人として自らを取り巻く家族にも責任を持たなくてはならない。本論評では医療従事者における新型コロナ感染症の感染率、入院率について、現在までに報告された知見を基に考察する。

ニボルマブ、米国での小細胞肺がんの適応に関して声明/BMS

 米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)は、米国でのニボルマブ(商品名:オプジーボ)の小細胞肺がん(SCLC)の適応を撤回するとの声明を発表した。  ニボルマブは、プラチナベース化学療法と1ライン以上の他の治療後に疾患進行した小細胞肺がん(SCLC)の治療について、米国食品医薬品局(FDA)から、2018年に迅速承認を受けた。迅速承認は、進行または転移のある固形がん患者を対象とした第I/II相CheckMate-032試験におけるオプジーボの有効性に基づいたものであった。

STAMP阻害薬asciminib 、慢性骨髄性白血病で良好なMMR率/ノバルティス

 ノバルティスは、2020年12月8日、第III相ASCEMBL試験において、ABLミリストイルポケット(STAMP)を特異的に標的とする新規治験薬asciminib(ABL001)が、2剤以上のTKI治療歴のある慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML-CP)患者において、ボスチニブに比べほぼ2倍の投与24週時点のMMR率を達成したと発表(25.5% vs.13.2%、両側p=0.029)。これらのデータは第62回米国血液学会議(ASH)のLate Breakingセッションで発表された。  ASCEMBL試験では、233例の患者が無作為化され、asciminib40mg x 2/日(n=157)、またはボスチニブ500mg/日(n=76)のいずれかが投与された。

免疫チェックポイント阻害薬関連の乾癬、重症度や対処法は?

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に関連した乾癬について、ギリシャ・アテネ大学のVasiliki Nikolaou氏らが欧州9施設から報告された115例について、重症度等のデータを明らかにし、段階的な治療アルゴリズムの提案を検討した。ICIに関連した乾癬は、診断上および治療上の重大な課題をもたらすが、検討によりacitretin、アプレミラスト、メトトレキサートは安全で効果的な治療法であり、ほとんどの場合でICI投与を中断することなく完了できることを示した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年12月3日号掲載の報告。  研究グループは、前例のない最大コホートから報告されたICIに関連した乾癬に関するデータを報告し、段階的な治療アルゴリズムを提案するため、欧州の9施設で組織するEuropean Network for Cutaneous ADverse Event to Oncologic drugs(ENCADO)のデータを用いて検討した。  9施設からの、ICIに関連した乾癬を呈した全患者の医療記録をレトロスペクティブにレビューした。

循環器科医のためのCOVID-19解説サイト/ライフサイエンス出版

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界の日常を一変させ、12月現在、わが国でも感染者数・重症者数ともに増加し、深刻な状況となっている。  そのような状況のなか、ライフサイエンス出版は、特設サイト「循環器科医のためのCOVID-19超解説」を開設した。  COVID-19と循環器疾患との関連は非常に注目されるトピックである。本サイトでは、わが国を代表する循環器領域の専門家が、「川崎病」「血栓症」「心不全」「高血圧」をテーマに解説している。また、COVID-19は、ウイルス感染に起因する炎症反応が重要なキーワードとなっているため、免疫領域の専門家による解説も予定している。

COVID-19入院時、ビタミンD欠乏で死亡オッズ比3.9

 ビタミンD欠乏症と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連は、これまでもさまざまな報告があるが、依然として情報は不足している。今回、ベルギー・AZ Delta Medical LaboratoriesのDieter De Smet氏らが、入院時の血清ビタミンDレベルとCOVID-19の病期および肺炎の転帰との関連を調査した。その結果、COVID-19で入院した患者の59%がビタミンD欠乏症であり、COVID-19による死亡リスクが3.9倍に増加することが示された。American Journal of Clinical Pathology誌2020年11月25日号での報告。

日本人うつ病就労者における職場での主観的事例の性差

 日本におけるうつ病患者数は、増加を続けている。うつ病による経済的影響には、アブセンティズム(欠勤や遅刻、早退など)とプレゼンティズム(心身の問題によるパフォーマンスの低下)の両方を介した生産性の低下がある。また、うつ病の有病率、発症経緯、自覚症状には、男女間で差があるといわれている。大阪市立大学の仁木 晃大氏らは、日本人うつ病就労者が、職場における問題をどのように認識しているかを調査し、うつ病の初期段階における職場での主観的な機能レベルの性差について検討を行った。Occupational Medicine誌オンライン版2020年11月28日号の報告。

COVID-19ワクチン、2021年に世界人口の何割に接種可能か/BMJ

 主要メーカーの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの世界的な需給について、メーカーが最大生産量を可能としても、世界の人口のほぼ4分の1は少なくとも2022年までワクチン接種を受けることはできないとの研究結果を、米国・ジョンズ・ホプキンズ公衆衛生大学院のAnthony D. So氏らが報告した。COVID-19ワクチンについては、高所得国が市販前に購入契約を結んでいる一方、そのほかの国・地域については入手が不確実であるといわれ、世界保健機関(WHO)が主導するCOVAXファシリティを介して、グローバルアクセスを調整する取り組みが進められている。しかし、高所得国の購入契約に遅れをとっているうえ、資金は不十分で、米国やロシアの協力は得られていない。今回の検討では、高所得国がどのようにCOVID-19ワクチンの将来の供給を確保したかについて概要を示すとともに、残されたそのほかの国・地域は不確実であること、2021年末までに低中所得国が調達できるワクチンはメーカー生産量の40%であり、仮に高所得国が購入予定量を増やした場合、その割合はさらに少なくなるが、高所得国が調達したワクチンが供出されれば増える可能性があることなどが明らかにされた。研究グループは、「政府およびメーカーは、購入契約に関する透明性と説明責任を高めることで、COVID-19ワクチンの公平な配分への確約も果たすことができるだろう」と提言している。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。

早期TNBC、低用量カペシタビン維持療法で転帰が改善/JAMA

 標準的な術後補助療法を受けた早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)女性において、低用量カペシタビンによる1年間の維持療法は経過観察と比較して、5年無病生存率を有意に改善し、有害事象の多くは軽度~中等度であることが、中国・中山大学がんセンター(SYSUCC)のXi Wang氏らが行った「SYSUCC-001試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年12月10日号で報告された。乳がんのサブタイプの中でも、TNBCは相対的に再発率が高く、標準治療後の転帰は不良であり、再発および死亡のリスクを低減する効果的な維持療法が求められている。低用量カペシタビンによる化学療法は、2つの転移の機序(血管新生、免疫逃避)を標的とすることでTNBC女性の再発を抑制する可能性が示唆されているが、再発抑制に要する長期の治療の有効性と受容性については不確実性が残るという。

免疫も老化、その予防が新型コロナ対策に重要

 国内初の新型コロナウイルスのワクチン開発に期待が寄せられるアンジェス社。その創業者でありメディカルアドバイザーを務める森下 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学 寄附講座教授)が、12月15日に開催された第3回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナー「感染症と免疫」において、『免疫老化とミトコンドリア』について講演した。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策やワクチン開発を進めていく上で世界中が難局に直面している。その最大の問題点について森下氏は、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のモデルが作れないこと」だという。その理由として、「マウスはSARS-CoV-2に感染しない。ハムスターやネコは感染するものの肺炎症状が出ないため、治療薬に最適なモデルを作り出すことが難しい。つまり、従来の開発方法に当てはめられず、未知な領域が多い」と同氏は言及した。

統合失調症の新たな治療標的としてのPPARαの可能性

 統合失調症の病態生理は、いまだによくわかっていない。理化学研究所の和田 唯奈氏らは、統合失調症患者における核内受容体の一つであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)/レチノイドX受容体(RXR)の役割について分析を行った。EBioMedicine誌2020年11月19日号の報告。  日本人統合失調症患者1,200例のDNAサンプルを用いて、分子反転プローブ(MIP)ベースのターゲット次世代シークエンシング(NGS)により、PPAR/RXR遺伝子のスクリーニングを行った。その結果について、日本のコホートデータ(ToMMo)やgnomADの全ゲノムシークエンスデータベースとの比較を行った。PPAR/RXR遺伝子の機能低下と統合失調症との関係を明らかにするため、Ppara KOマウスとフェノフィブラートを投与したマウスを用いて、行動学的、組織学的およびRNA-seq解析により評価を行った。

COVID-19パンデミックによるメンタルヘルスへの影響~メタ解析

 COVID-19に関連したうつ病、不安神経症、不眠症、PTSD、精神的苦痛(PD)の有病率を推定するため、カナダ・オタワ大学のJude Mary Cenat氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2020年11月26日号の報告。  Medline、Embase、APA PsycInfo、CINAHL、Scopus、Web of Scienceより検索を行った。うつ病、不安神経症、不眠症、PTSD、PDの有病率について性別、医療従事者、調査対象地域におけるグループ間の違いを評価するため、ランダム効果メタ解析を実施した。  主な結果は以下のとおり。

MSI-H大腸がん1次治療、ペムブロリズマブによるPFS延長証明(KEYNOTE-177)/NEJM

 抗PD-1抗体ペムブロリズマブについて、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)/ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の進行大腸がんの1次治療における有効性が示された。化学療法と比較して無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、治療関連有害事象は少ないことを、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らが無作為化非盲検第III相試験「KEYNOTE-177試験」で明らかにした。これまでに、既治療のMSI-H/dMMR腫瘍に対するPD-1阻害の臨床的有効性は示されているが、MSI-H/dMMR陽性の進行・転移を有する大腸がんに対する1次治療として、化学療法と比較した有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌2020年12月3日号掲載の報告。

COVID-19の症状悪化をフルボキサミンが抑制する可能性/JAMA

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルボキサミンが、サイトカイン産生を調節するσ-1受容体を刺激することにより、軽度のCOVID-19患者の臨床的悪化を抑制する可能性が示唆された。米国セントルイス・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らは、症状を有するCOVID-19の成人外来患者を対象とした無作為化二重盲検比較試験において、フルボキサミンで治療された患者がプラセボより臨床的悪化が少なかったことを報告した。ただし、本研究はサンプルサイズが小さく観察期間が短いため、臨床効果を判断するために大規模無作為化試験が必要としている。JAMA誌2020年12月8日号に掲載。

すでに一度補助を受けた医療機関も対象、国による追加支援策/日医

 第3次補正予算案が12月15日に閣議決定され、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、医療機関に対する更なる支援策が講じられている。この中には、第2次補正予算による補助を受けた医療機関が、改めて対象となる支援策も含まれる。12月23日の日本医師会定例記者会見において、松本 吉郎常任理事が支援策の全体像を整理し、有効活用を呼び掛けた。

COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)を公開/日本感染症学会

 欧米では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種が2020年12月初旬に開始され、わが国でも接種開始が期待されている。日本感染症学会では、学会会員および国民に対し、現在海外で接種が開始されているCOVID-19ワクチンの有効性と安全性に関する科学的な情報を提供し、それぞれが接種の必要性を判断する際の参考にしてもらうべく、COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)を作成し、12月28日、学会サイトに公開した。今後、COVID-19ワクチンの国内外における状況の変化に伴い、内容を随時更新する予定という。

コロナ禍で増えた失業・自殺・労災請求、今後の見通しは?/日医

 日本医師会・松本 吉郎常任理事が、コロナ禍における今日の社会経済情報として、失業、自殺、労災認定などのデータを示しながら、日本医師会の見解を述べた。  まず、完全失業率(季節調整値)のデータを示し、本年10月は男3.4%、女2.7%(男女計3.1%)と、コロナ流行以前の1月(男2.4%、女2.2%、平均2.2%)と比較して高い状況にあることを説明。完全失業者のうち、「勤め先や事業の都合による離職」は45万人と、前年同月に比べ22万人増加している。割合としては男性より低い女性も、完全失業者数は「15~24歳」を除くすべての年齢階級で前年同月に比べ増加していることを示した。

国立がん研究センターの遺伝子パネル検査に基づく患者申出療養試験とは?/日本肺癌学会

 2019年6月に遺伝子パネル検査が保険適用になってから1年あまりが過ぎた。11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では、「遺伝子パネル検査によって肺がん診療はどう変わったか?」と題したシンポジウムが行われた。  この中で国立がん研究センター中央病院 臨床検査科の角南 久仁子氏は「がん遺伝子パネル検査に基づく新たな治療選択肢としての患者申出療養試験」と題し、同院が行う試験の概要を紹介した。  現在の遺伝子パネル検査を取り巻く問題点の1つに「パネル検査を受けても、治療への到達性が低い」ことがある。治療に結びつく遺伝子異常が検出されても、承認薬や治験といった薬剤の選択肢が限られているためだ。この問題に対応するため、保険診療もしくは先進医療で遺伝子パネル検査を実施した患者のうち、一定の基準を満たした場合に患者申出療養制度のもと既存承認薬を適応外使用して有効性を見る、というのが今回の試験(通称:受け皿試験)の概要。現状でも患者申出療養制度を用いて適応外薬剤を使用するという選択肢はあるが、申請に時間がかかる、データが蓄積されない、等の問題点があった。