インフルエンザは1,000分の1、COVID-19余波でその他感染症が激減

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/25

 

 日本感染症学会と日本環境感染学会を中心に各医学会や企業・団体が連携し、感染症の予防に向けた啓発活動を行う共同プロジェクト「FUSEGU2020」は、2021年に開催が予定されるオリンピックを鑑み、注意すべき感染症と2020年の感染症流行の状況を解説するメディアセミナーを行った。

 セミナーにおいて、防衛医科大学校内科学(感染症・呼吸器)教授の川名 明彦氏が「国際的マスギャザリングに向け、注意すべき感染症」と題した発表を行った。川名氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行を受け、その他の感染症の流行状況に大きな変化が生じている状況を紹介した。

 オリンピックをはじめとした大規模イベント時にはインバウンド感染症(罹患した外国人の訪日を契機として持ち込まれた感染症)に警戒が必要となる。首都圏にとどまらず全国のホストタウンにおいても流行のリスクを踏まえ、事前の周知・対応が重要な感染症として結核・麻疹・デング熱・侵襲性髄膜炎菌感染症が挙げられた。

 しかし、COVID-19拡大につれて海外との往来は制限され、東京オリンピックは延期が決定。緊急事態宣言に伴い外出自粛となり、宣言解除後もリモートワーク推進や会合自粛の流れが続いている。4月以降は訪日外国人数が例年の1,000分の1以下という極めて低い水準で推移しており、日常生活においては手洗い、マスク、換気、ソーシャルディスタンスの確保などが習慣化している。

 こうした状況に伴い、今年はCOVID-19以外の主だった感染症の発症数が激減している。たとえば、インフルエンザの12月第1週の報告数は63(昨年同期:4万7,200)、流行の基準とされる定点当たりの新規患者数も0.01(同:9.52、流行開始の目安は1.0)と激減しており、冬の流行シーズンに入った現在も大規模な流行の報告はない。

 ほかにも、2013年の流行時には年間1万4,344人、昨年も2,306人の感染者を出した風疹は12月第1週までの累計報告数が99人、昨年744人だった麻疹は同13人といずれも激減。人との接触機会の減少とともに、麻疹の場合は患者に訪日外国人の割合が多く、訪日者の減少が大きな要因として考えられるという。

 川名氏は「患者の受診抑制による未診断、といった要因も考えられるため慎重な判断が必要だが、COVID-19感染防止対策が接触・飛沫感染を主な感染経路とするその他感染症の流行に抑制的に作用していることは間違いないだろう」と解説。一方で、淋菌感染症、性器クラミジア感染症、梅毒となった性感染症については例年と比較した発症数に大きな変化はなく、「こうした感染症には異なる予防対策が必要になるだろう」とした。

(ケアネット 杉崎 真名)

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