COVID-19の希少疾病患者・家族への影響/特定非営利活動法人ASrid

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/29

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、不要不急の外出制限がされたことで、全国的に通常診療の診療控えがみられる事態となった。

 こうした社会情勢下でCOVID-19は希少・難治性疾患を持つ患者、その家族にどのような影響を与えたか、希少・難治性疾患分野における全ステイクホルダーに向けたサービスの提供を目的に活動する特定非営利活動法人ASrid(アスリッド)は、全国の患者とその家族、患者団体向けに調査を行い、「COVID-19 が希少・難治性疾患の患者・家族および患者団体に与える影響に関する調査報告書(一次報告)」としてまとめ、結果を発表した(なお、分析は欠損値を除外して実施している)。

患者の9割がCOVID-19を「高い脅威」と感じている

1)患者・患者家族について
期間:2020年10月~11月
回答数と属性:有効回答数363人(患者本人:251人、家族など112人)
(1)回答者の関連する疾患(上位3つ)
 神経・筋(30%)、免疫(18%)、代謝・内分泌(10%)
(2)回答者の関連する障害(上位3つ)
 肢体不自由(40.8%)、内部障害(20.4%)、言語・聴覚障害(7.2%)
2)質問と回答
(質問1)COVID-19への脅威の感じ方
・COVID-19に対して患者が感じる脅威(n=251):
「非常に高い脅威」(52%)、「高い脅威」(38%)、「低い脅威」(7%)「非常に低い脅威」(3%)
 ・COVID-19に対して家族からみた患者への脅威(n=103):
「非常に高い脅威」(72%)、「高い脅威」(24%)、「低い脅威」(3.6%)
(質問2)COVID-19による主治医との面談のキャンセル(中断)/延期
「延期」(33%)、「経験なし」(42%)、「関係なし」(21%)、「キャンセル」(4%)
(質問3)COVID-19による検査のキャンセル(中断)/延期
「延期」(33%)、「経験なし」(42%)、「関係なし」(21%)、「キャンセル」(4%)
(質問4)COVID-19以降の通院頻度の変化
「長くなった」(26%)、「短くなった」(5%)、「変わらない」(69%)
(質問5)治療の中断/延期は患者自身・家族にとって、どの程度、生命の脅威・健康に悪影響を与えたと認識しているか
・患者自身の認識:
「治療中断は生命の脅威」(58.3%)、「治療中断は健康に悪影響」(74.2%)
・家族の認識:
「治療中断は生命の脅威」(55.8%)、「治療中断は健康に悪影響」(75%)
(質問6)オンライン診療の経験の有無とその評価
・オンライン診療経験の有無:
「経験した」(29%)、「経験していない」(71%)
・オンライン診療の評価(「経験した」と回答した95人):
「非常に役に立った」(56%)、「役に立った」(42%)、「あまり役に立っていない」(2%)
(質問7)患者・家族のメンタルヘルスの課題および家族関係
「よく感じた/しばしば感じた」で多かった項目は、「不満や憂鬱」、「家族との絆」、「問題への無力感」、「家族への不満」、「孤立感」の順番だった。
 
 患者・患者家族への調査の結果、COVID-19への脅威は強く感じているものの、診療の中断や通院機会の減少などの影響は大きくなかった。また、オンライン診療は、3割程度にしか浸透していないが、受診者の満足度は高いことがわかった。

患者団体はコロナ禍の下でも工夫して情報発信

1)患者団体について
期間:2020年10月~11月
回答数と属性:有効回答団体69団体
(1)回答団体の関連する疾患(上位3つ)
 神経・筋(29%)、代謝・内分泌(10%)と染色体・遺伝子変化(10%)は同数
(2)回答団体の会員数(上位3つ)
 1~99名(35%)、100~499名(33%)、500~999名(12%)
2)質問と回答
(質問1)団体収入の規模(上位3つ)
50万円未満(36%)、500万円未満(29%)、1,000万円未満(17%)
(質問2)団体諸活動への影響
「とてもネガティブに影響/少しネガティブに影響」した事項として「総会」「交流会・講演会・相談会」、「講演・講師活動」が多く挙げられた。
(質問3)COVID-19に関連した新規活動の種類(n=65)
「関連情報の展開・啓発」(23団体)、「アンケートの実施」(12団体)、「webinarの実施」(4団体)、「マスク・消毒液などの配布」(4団体)、「行政への要望活動」(5団体)
(質問4)COVID-19に関連した団体の活動手法(上位3つ)
「講演・交流会のオンライン化」(38団体)、「会議のオンライン化」(24団体)、「総会のオンライン化」(10団体)
(質問5)団体活動・運営についての懸念事項(上位3つ)
「イベント開催困難」(45団体)、「会員減少」(14団体)、「オンラインツール活用困難」(10団体)
(質問6)Withコロナ時代の患者団体への支援ニーズ(ニーズを満たす上位3つ)
「信頼できる情報源と専門知識の提供」(64%)、「web会議システム利活用トレーニング」(60%)、「患者のメンタルサポート」(42%)

 各患者団体は、COVID-19禍の中で、密を避ける工夫をし、オンラインによるイベント開催を行っていた。また、各団体は、収入などが減少する中でも、関連情報の展開や啓発などポジティブな活動をしていることが判明した。
 同団体では、最終報告に向けて、さらに分析を行うとしている。

(ケアネット 稲川 進)