内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:8

高齢者への高用量インフルワクチン、肺炎などの入院減少せず/NEJM

 インフルエンザの不活化ワクチンでは、標準用量と比較して高用量で優れた感染予防効果が示されているが、重症のアウトカムに対する高用量ワクチンの有効性に関する無作為化試験のデータは十分でないという。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のNiklas Dyrby Johansen氏らの研究チームは、高齢者におけるインフルエンザ感染の重症アウトカム(入院)に対する高用量ワクチンの有効性の評価を目的に、実践的なレジストリに基づく非盲検無作為化対照比較試験「DANFLU-2試験」を実施。高齢者への高用量インフルエンザ不活化ワクチン投与は、標準用量と比較してインフルエンザまたは肺炎による入院率を低下させなかったことを報告した。なお、「副次エンドポイントについては決定的な結論は導き出せないものの、高用量ワクチンは、インフルエンザによる入院および心肺系疾患による入院の予防において有益性を示す可能性がある」としている。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年8月30日号で発表された。

心室性不整脈予防のための最適なカリウム戦略は?/NEJM

 心血管疾患患者では、低カリウム血症により心室性不整脈のリスクが増加するが、血漿カリウム値が正常下限域であっても同様のリスクの増加が知られている。デンマーク・コペンハーゲン大学のChristian Jons氏らPOTCAST Study Groupは、血漿カリウム値が正常下限域で、心室性不整脈のリスクが高い心血管疾患患者において、カリウム値を正常上限域まで積極的に上昇させる戦略の有効性の評価を目的に、非盲検イベント主導型無作為化優越性試験「POTCAST試験」を実施。植込み型除細動器(ICD)を装着した心室性不整脈のリスクが高い心血管疾患患者において、標準治療単独に薬物療法と食事指導を加えたことによって血漿カリウム値が上昇したことにより、標準治療単独と比べてICD適切作動、不整脈または心不全による予定外の入院、全死因死亡の複合のリスクが有意に低下したことを報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年8月29日号で発表された。

低用量ピルを使用している日本人女性、孤独感や鎮痛薬使用過多と関連

 孤独感は月経困難症や薬剤の使用と関連している。また、孤独感と疼痛は関連しており、鎮痛薬の使用に影響を及ぼす可能性がある。慶應義塾大学の藤本 卓磨氏らは、低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEP)製剤を使用している日本人女性における鎮痛薬の併用および使用過多の状況を調査し、孤独感や鎮痛薬の使用過多に関連する因子を明らかにするため本研究を実施した。BMC Women's Health誌2025年9月2日号の報告。  調査会社(マクロミル)のWebパネルより20〜30代の日本人女性をランダムに抽出し、LEP製剤使用者をスクリーニングした。本調査には、1ヵ月当たりの鎮痛薬併用日数と3項目の孤独感尺度(TIL)を含めた。TILの高スコア(6点以上)および1ヵ月当たり10日以上の鎮痛薬使用を目的変数として、ロジスティック回帰分析を行った。

植物性食品中心の食事は慢性疾患の併発を予防する

 植物性食品中心の食生活が、がん、心血管疾患、2型糖尿病のいずれか二つ以上を併発する状態の予防につながることを示唆するデータが報告された。ウィーン大学(オーストリア)のReynalda Córdova氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Healthy Longevity」8月号に掲載された。  この研究では、欧州6カ国で行われている「欧州がん・栄養前向き調査(EPIC)」と英国で行われている「UKバイオバンク」という二つの大規模疫学研究のデータが解析に用いられた。年齢35~70歳で、がん、心血管疾患、2型糖尿病の既往のない40万7,618人を解析対象とした。食事スタイルの評価には、全粒穀物や果物、野菜、ナッツ、豆類などの健康に良い植物性食品の摂取量が多いことを表す「hPDI」と、精製穀物やジャガイモ(フライドポテトなど)といった健康にあまり良くない植物性食品の摂取量が多いことを表す「uPDI」という、二つの指標を用いた。

朝食抜きがうつ病リスクに及ぼす影響〜メタ解析

 うつ病は世界的に重要な公衆衛生上の問題であり、うつ病の発症には朝食習慣が関連している可能性がある。中国・成都中医薬大学のJunwen Tan氏らは、朝食とうつ病の相関関係を分析するため、先行研究のメタアナリシスを実施し、朝食抜きとうつ病リスクとの関連性を包括的に評価し、異質性の潜在的な因子を調査した。Frontiers in Psychiatry誌2025年8月5日号の報告。  2024年9月1日までに英語で公表された観察研究を、PubMed、Embase、Web of Scienceのデータベースより検索した。選択された研究のデータ解析は、ニューカッスル・オタワ尺度(NOS)を用いて評価した。PRISMA、Prospero Registration Agreementのガイドラインに従い実施した。混合効果モデルは、最大調整推定値を組み合わせ、I2統計量を用いて異質性を評価した。感度分析により分析の堅牢性を検証し、出版バイアスを評価した。

音楽は血圧の調節に役立つ?

 英語では「Music hath charms to soothe the savage breast(音楽には怒りを鎮める力がある)」というフレーズがあるが、音楽は心臓の健康状態にも同様の効果をもたらし得るようだ。新たな小規模研究で、血圧が音楽のパターンに「同期」する可能性のあることが明らかになった。この研究を実施した、英キングス・カレッジ・ロンドン工学教授でピアニストでもあるElaine Chew氏らは、「このことは、身体の血圧を調節する能力である圧受容体反射感受性を高める助けになるかもしれない」との見方を示している。この研究結果は欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。

脂肪分の多い食事が好中球性喘息の一因か

 脂肪分の多い食べ物は、子どもの喘息の一因となる可能性があるようだ。特定の食品に含まれる脂肪が、微生物や細菌のタンパク質によって引き起こされる非アレルギー性の喘息である好中球性喘息に関連していることが、新たな研究で示された。米フィラデルフィア小児病院のDavid Hill氏らによるこの研究結果は、「Science Translational Medicine」に8月27日掲載された。Hill氏らによると、好中球性喘息はアレルギー性喘息よりも治療が難しく、入院が必要になるほど重篤な症状が引き起こされる可能性がアレルギー性喘息よりも高いという。

赤肉の摂取は腹部大動脈瘤の発症につながる?

 赤肉を大量に摂取すると、致死的となることもある腹部大動脈瘤(AAA)の発症リスクが高まる可能性があるようだ。赤肉や他の動物性食品に含まれる成分は、腸内細菌によって分解されたのち、肝臓で酸化されてTMAO(トリメチルアミンN-オキシド)となり、血液中に蓄積する。新たな研究で、血中のTMAOレベルが高い人ほどAAAの発症リスクが高いことが示された。米クリーブランド・クリニック血管医学部門長のScott Cameron氏らによるこの研究結果は、「JAMA Cardiology」に8月20日掲載された。  AAAは腹部の最も太い動脈(腹部大動脈)に瘤のような膨らみが生じる病態である。通常、大動脈の壁は、心臓から送り出される血液の圧力に耐えられる程度に強固である。しかし、動脈硬化などにより部分的に血管壁が弱くなると、そこに膨らみが生じる。このような大動脈瘤は、大きくなるにつれて破裂のリスクが高まり、破裂が病院外で発生した場合には、80%のケースで致死的になるという。

座席位置で変わる生存率、運転席は重症外傷リスクが最大に

 自動車の座席位置によって生存率、外傷リスクはどう変わるのか?日本の地域中核病院で20年にわたり収集された交通事故患者のデータを解析した研究により、座席位置が死亡率や外傷の重症度と関連することが示された。特に運転席の乗員は後部座席の乗員に比べて院内死亡や重症外傷のリスクが高かったという。研究は神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野の鵜澤佑氏、大野雄康氏らによるもので、詳細は「BMC Emergency Medicine」に7月30日掲載された。  交通事故は社会に大きな経済的負担を及ぼす公衆衛生上の課題である。世界保健機構(WHO)によると、2023年には約119万人が交通事故で死亡したと報告されている。自動車事故に巻き込まれた負傷者の生存率や転帰を改善するためには、死亡率や解剖学的重症度に影響を与える因子を明らかにすることが極めて重要である。中でも、運転席、助手席、後部座席に分類される座席位置は交通事故による死亡の重要な要因と考えられている。しかしながら、この座席位置と死亡率の関連を検証した先行研究では矛盾する結果も報告されており、依然としてその関係は明確ではない。そのような背景から、著者らは後部座席の位置が死亡率および解剖学的重症度の低下と関連しているという仮説を立て、国内の地域中核病院のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。