内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

ED治療薬がアルツハイマー病を予防?

 勃起障害(ED)治療薬が、アルツハイマー病(AD)のリスクを押し下げる可能性を示唆するデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のRuth Brauer氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に2月7日掲載された。ただし同氏らは、この研究は因果関係を証明可能なデザインで行われておらず、さらなる研究が必要な段階であることを強調している。  シルデナフィル(商品名はバイアグラ)、バルデナフィル(同レビトラ)、タダラフィル(同シアリス)というED治療薬は、作用機序から「ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)」と呼ばれる。これらのPDE5iには血管を拡張する作用があり、また血液脳関門(脳に異物が入り込まないようにするための仕組み)を通過することができ、動物実験では神経保護作用のあることが示されている。ただし、ヒトの認知機能との関連のエビデンスは少ない。Brauer氏らは、EDと診断された40歳以上の男性26万9,725人(平均年齢58.5±10.0歳)の医療記録を解析し、ヒトの認知機能に対するPDE5iの影響を検討した。なお、ベースライン時点で認知機能の低下が認められた患者は、この研究の対象から除外されている。

血糖値や体重のコントロールに最も有効なGLP-1受容体作動薬は? (解説:小川大輔氏)

GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病に対して血糖降下作用や体重減少効果のある優れた治療薬である。セマグルチドやチルゼパチドのほか、日本では発売されていないGLP-1受容体作動薬も含めて、数多くあるGLP-1受容体作動薬の中で血糖コントロールや体重減少効果に対して、最も有効な製剤は何か? その問いに答える論文がBMJ誌に発表された。著者らは成人2型糖尿病患者を対象とし、12週間以上プラセボあるいは他のGLP-1受容体作動薬と比較した無作為化対照試験を抽出した。そのうちクロスオーバー試験、非劣性試験、現在使用されていない薬剤との比較試験などは除外し、基準を満たした76試験のネットワークメタ解析を行った。

早期アルツハイマー病における攻撃的行動と関連する脳の変化

 認知症患者の精神神経症状は、介護者の負担につながり、患者の予後を悪化させる。これまで多くの神経画像研究が行われているものの、精神神経症状の病因学は依然として複雑である。東京慈恵会医科大学の亀山 洋氏らは、脳の構造的非対称性が精神神経症状の発現に影響している可能性があると仮説を立て、本研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2024年2月23日号の報告。  アルツハイマー病患者における精神神経症状と脳の非対称性との関連を調査した。対象は、軽度のアルツハイマー病患者121例。日本の多施設共同データベースより、人口統計学的データおよびMRIのデータを収集した。脳の非対称性は、左脳と右脳の灰白質体積を比較することで評価した。精神神経症状の評価には、Neuropsychiatric Inventory(NPI)を用いた。その後、脳の非対称性と精神神経症状との相関関係を包括的に評価した。

高齢者の身体活動量、推奨値を変更/厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」

 厚生労働省は健康・医療・介護分野における身体活動を支援する関係者を対象として、身体活動・運動に関する推奨事項や参考情報をまとめた「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」を2024年1月に公表した。「健康づくりのための身体活動基準 2013」から10年ぶりの改訂となる。同ガイドの改訂に関する検討会で座長を務めた中島 康晴氏(九州大学大学院医学研究院整形外科 教授)に主な改訂点とその背景について話を聞いた。  今回の改訂では、「健康日本21(第三次)」のビジョンの中で示されている「誰一人取り残さない健康づくり(inclusion)」ならびに「より実効性をもつ取組の推進(implementation)」の観点から、ライフステージごと(成人、こども、高齢者)に身体 活動・運動に関する推奨事項をまとめるとともに、「慢性疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症)を有する人の身体活動のポイント」「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」など個人差を踏まえた推奨事項を示している点が大きな特徴。それぞれ2~4ページごとにまとめられており、指導の際のツールとしての使いやすさを考慮して作成されている。

代替塩で高血圧予防

 食塩を代替塩に置き換えると、低血圧リスクを高めることなく高血圧リスクが約4割抑制されるとする研究結果が報告された。北京大学臨床研究所(中国)のYangfeng Wu氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に2月12日掲載された。  世界保健機関(WHO)によると、高血圧は心臓病発症と心血管死の主要な危険因子であり、世界中で14億人以上の成人が高血圧に罹患していて、毎年1080万人が高血圧に関連して死亡しているという。Wu氏は、「人々は手頃な価格で容易に入手できる加工食品を利用することを通して、塩分を過剰に摂取してしまうことが少なくない。食品の選択が心臓の健康に及ぼす影響を認識して、減塩に対する人々の意識を高めることが重要だ」と述べている。

微小プラスチック、心血管イベント・死亡リスク上昇と関連/NEJM

 頸動脈プラークからマイクロプラスチックまたはナノプラスチック(MNP)が検出された患者は、検出されなかった患者と比較して、追跡34ヵ月時点の心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合リスクが有意に高かった。イタリア・University of Campania Luigi VanvitelliのRaffaele Marfella氏らが多施設共同の前向き観察試験の結果を報告した。いくつかの研究で、摂取や吸入、皮膚への曝露を通じてMNPが体内に入り込み、細胞組織や臓器に作用することが示されており、MNPは母乳、尿、血液だけでなく、胎盤、肺、肝臓などでも見つかっている。最近行われた前臨床モデル研究では、MNPが心血管疾患の新たなリスク因子であることが示唆されていたが、このリスクがヒトに及ぶという直接的なエビデンスは示されていなかった。NEJM誌2024年3月7日号掲載の報告。

うつ病高齢者に対する日本で使用可能な抗うつ薬~系統的レビューとメタ解析

 日本うつ病学会のうつ病治療ガイドラインの改定を行うために、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、うつ病の高齢者を対象とした日本で使用可能な抗うつ薬の、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のシステマティックレビュー、およびペアワイズメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年2月6日号の報告。  主要アウトカムは、治療反応率とした。副次的アウトカムに、抑うつ症状評価尺度のスコア改善、寛解率、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、1つ以上の有害事象を含めた。ランダムエフェクトモデルを用いて、リスク比(RR)、標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(CI)を算出した。

ピロリ除菌で大腸がんリスクも低減/JCO

 Helicobacter pylori(H. pylori)陽性で除菌治療を受けた場合、治療を受けなかった陽性者と比較して、大腸がんの発症リスクと死亡リスクの両方が有意に低減したことを、米国・VA San Diego Healthcare SystemのShailja C. Shah氏らが明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年3月1日号掲載の報告。  近年、H. pylori感染と大腸がんのリスクとの間に正の関連があることが報告されている1)。Shah氏らの研究グループは、H. pylori感染と陽性者における除菌治療が、大腸がんの発症と死亡に及ぼす影響を調査するためにコホート研究を行った。  解析には、1999~2018年に退役軍人健康管理局でH. pylori検査を行った退役軍人のデータが用いられた。追跡調査は、大腸がんの発症、大腸がんまたは他の要因による死亡、2019年12月31日のいずれか早い日まで継続した。主要評価項目は大腸がんの発症率と死亡率であった。

認知症は現代病? 古代での症例はまれ

 認知症は時代を問わず人類を悩ませてきた病気だと思われがちだが、実際には現代に登場した病気であるようだ。米南カリフォルニア大学レオナード・デイビス校(老年学)のCaleb Finch氏と米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校歴史学分野のBurstein Stanley氏らが古代ギリシャとローマの医学書を分析した結果、アリストテレスや大プリニウスなどが活躍した今から2000〜2500年前には、認知症に罹患する人は極めてまれだったことが示唆されたのだ。研究グループは、「現代の環境やライフスタイルがアルツハイマー病などの認知症の発症を促しているとする考え方を補強する結果だ」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of Alzheimer’s Disease」に1月25日掲載された。

世界の低体重・肥満、約30年でどう変化した?/Lancet

 低体重と肥満は、生涯を通じて有害な健康アウトカムと関連している。国際共同疫学研究グループのNCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)が、200の国と地域の成人ならびに学童/若年者における、低体重または痩せと肥満の複合有病率の1990~2022年の変化について解析し報告した。ほとんどの国で低体重と肥満の二重負荷(double burden)が肥満の増加により増しているが、南アジアとアフリカの一部では依然として低体重または痩せが多いという。研究グループは、「肥満の増加を抑制し減少に転じさせる一方で、低体重の負荷への対処には、栄養価の高い食品へのアクセスを強化することによる健康的な食事への移行が必要である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。