内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:47

心不全のない心筋梗塞後の患者にβ遮断薬の処方は不要?

 β遮断薬は、心筋梗塞を経験した多くの人にとって頼りになる薬である。しかし、スウェーデンの新たな研究により、心筋梗塞から回復し、心機能が正常に保たれている患者には、この薬による治療は必要ない可能性のあることが明らかになった。この研究では、心筋梗塞後に左室駆出率が保たれている患者に対するβ遮断薬による治療は、患者の抑うつ症状の軽度な増加と関連することが示された。詳細は、「European Heart Journal」に10月3日掲載された。論文の筆頭著者であるウプサラ大学(スウェーデン)心臓心理学分野のPhilip Leissner氏は、「それだけでなく、この患者群にβ遮断薬を投与しても、生命維持には役立たない」と同大学のニュースリリースの中で述べている。

飽和脂肪酸摂取量がアルツハイマー病リスクと関連

 食事中の脂肪摂取とアルツハイマー病との関連は、観察研究において議論の余地のある関係が示されており、その因果関係も不明である。中国・北京大学のYunqing Zhu氏らは、総脂肪、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取がアルツハイマー病リスクに及ぼす影響を評価し、その因果関係を調査した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年10月11日号の報告。  UKバイオバンクとFinnGenコンソーシアムから得られたゲノムワイド関連研究(GWAS)の要約統計を用いて、2サンプルメンデルランダム化分析を実施した。UKバイオバンクの各種脂肪摂取の研究には、5万1,413例が含まれた。FinnGenコンソーシアムの遅発性アルツハイマー病(4,282例、対照群:30万7,112例)、すべてのアルツハイマー病(6,281例、対照群:30万9,154例)のデータを分析に含めた。さらに、炭水化物とタンパク質の摂取量とは無関係の影響を推定するため、多変量メンデルランダム化(MVMR)分析を行った。

自覚症状に乏しい糖尿病性腎症に早く気付いて/バイエル

 バイエルは、11月14日に「糖尿病の日」に合わせ、糖尿病と合併症に関する啓発イベントを開催した。イベントでは、糖尿病専門医による糖尿病に関するプレスセミナーとお笑いコンビ「ガンバレルーヤ」をゲストに迎えての市民向けの疾患啓発が行われた。  「糖尿病と合併症ってどんな病気? 患者さん中心の医療について考える」をテーマに坊内 良太郎氏(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター/糖尿病内分泌代謝科)が、糖尿病の病態、診療、合併症を抑えるポイントを解説した。

ワクチン同時接種、RSV+インフルエンザ/新型コロナの有効性は?

 高齢者における呼吸器疾患、とくにRSウイルス(RSV)、インフルエンザ、新型コロナ感染症は重症化リスクが高く、予防の重要性が増している。mRNA技術を用いたRSVワクチンとインフルエンザワクチン(4価)または新型コロナワクチンの同時接種の安全性と免疫原性を評価した研究結果が、The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年11月25日号に掲載された。  本研究は、50歳以上の健康な成人を対象とし、2部構成でそれぞれ下記の3群に分けて接種した。主要評価項目は同時接種群の単独接種群に対するRSVの免疫反応(Geometric Mean Ratio:GMRの95%信頼区間[CI]>0.667、血清反応率の差の95%CI>-10%)と安全性の非劣性だった。

前立腺肥大症治療薬のタダラフィルが2型糖尿病リスクを抑制

 前立腺肥大症(BPH)の治療に用いられているタダラフィルが、2型糖尿病(T2DM)発症リスクを低下させる可能性が報告された。京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野の髙山厚氏らによる研究の結果であり、論文が「Journal of Internal Medicine」に9月17日掲載された。  タダラフィルはホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)と呼ばれるタイプの薬で、血管内皮細胞からの一酸化窒素の放出を増やして血管を拡張する作用があり、BPHのほかに勃起障害(ED)や肺高血圧症の治療に用いられている。近年、T2DMの発症に血管内皮機能の低下が関与していることが明らかになり、理論的にはPDE5iがT2DMリスクを抑制する可能性が想定される。ただし、そのエビデンスはまだ少ない。これを背景として髙山氏らは、リアルワールドデータを用いて実際の臨床試験をエミュレート(模倣)し、観察研究でありながら介入効果を予測し得る、ターゲットトライアルエミュレーションによる検証を行った。

酒で赤くなる人は睡眠満足度が低い?

 飲酒後に顔や首が赤くなる症状はアジアンフラッシュとして知られ、東アジア人の約36%がアジアンフラッシュの特徴を持っている。アジアンフラッシュに関連する遺伝的因子は睡眠時間と逆相関することが報告されているが、アジアンフラッシュと睡眠満足度との関連を報告した研究はない。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らがインターネット調査による横断研究で検討したところ、アルコール曝露に対する身体的反応の遺伝的特徴が睡眠の質にも影響を及ぼす可能性が示唆された。Medical Science誌2024年11月8日号に掲載。

日中の眠気と熱意の低下は認知症の前段階と関連

 日中に眠気があり、活動への熱意を奮い起こすことが困難な高齢者は、そうした症状のない高齢者に比べて、認知症の前段階の一形態である運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome;MCR)になるリスクが3倍以上高いことが、新たな研究で明らかになった。MCRは主観的認知機能の低下と歩行速度の低下が併存した状態を指す。米アルバート・アインシュタイン医科大学のVictoire Leroy氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に11月6日掲載された。

大戦中の砂糖配給制の影響を胎児期に受けた人は糖尿病や高血圧が少ない

 第二次世界大戦中と終戦後しばらく、砂糖が配給制だった時期に生まれた人には、2型糖尿病や高血圧が少ないとする、米南カリフォルニア大学(USC)ドーンサイフ経済社会研究センターのTadeja Gracner氏らの研究結果が「Science」に10月31日掲載された。2型糖尿病リスクは約35%、高血圧リスクは約20%低いという。この結果は、現代の人々が砂糖のあふれた環境によって、いかに大きな健康被害を受けているかを示しているとも言えそうだ。  この研究では、第二次世界大戦中に英国で行われた砂糖配給制に焦点が当てられた。英国では1942年に砂糖が配給制となり、国民の砂糖摂取量は1日当たり平均40g(ティースプーンで約8杯分)となった。ちなみに、現在流通している一般的な加糖飲料の中には50gほどの砂糖が使われているものもある。英国の砂糖配給制は戦後もしばらく継続され、1953年9月になって終了した。それとともに砂糖の摂取量は平均80gへと倍増した。

高齢者が健康長寿でいられるBMIは22.5~23.5/早大ほか

 高齢者が健康で長生きできる理想的な体型はあるのだろうか。このテーマに対して渡邉 大輝氏(早稲田大学スポーツ科学学術院)らの研究グループは、わが国の高齢者約1万人を対象に調査研究を行った。その結果、フレイルでもフレイルでもない高齢者のどちらでも、体格の指標であるBMIが22.5~23.5で最も介護認定を受けるリスクが低いことが示された。また、BMIが18.5未満の痩せている人は介護認定を受ける前に死亡する可能性が高く、その一方でBMIが27.5以上の肥満の人は障害を伴う生存期間が長いことが示された。International Journal of Obesity誌オンライン版2024年11月15日からの報告。

セマグルチド2.4mg、MASHで有意な改善示す(ESSENCE)/ノボ ノルディスク

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に有益であることが実証されているが、主要評価項目を「肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失」「MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」とする第III相ESSENCE試験1)のPart Iで得られた結果がAASLD 2024 The Liver Meeting(米国肝臓学会議)において発表された。