内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

SGLT2阻害薬の腎保護作用:eGFR低下例・低アルブミン尿例でも新たな可能性/JAMA(解説:栗山哲氏)

SGLT2阻害薬は、2型糖尿病、糖尿病関連腎臓病(DKD)、慢性腎臓病(CKD)、心不全患者などにおいて心・腎アウトカムを改善する明確なエビデンスがある。しかし、腎保護作用に関し、従来、ステージ4 CKD(G4)や尿アルブミン排泄量の少ない患者での有効性は不明瞭であり、推奨度は低かった。この点に注目し、SGLT2阻害薬が腎アウトカムに与える「クラス効果(class effect)」を高精度に評価することを目的とし、オーストラリアのBrendon L. Neuen氏らは、SGLT2阻害薬の大規模臨床研究(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験:RCT)を、SGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C:国際共同研究)として統合的にメタ解析した。

日本の精神科外来における頭痛患者の特徴とそのマネジメントの現状

 頭痛は、精神科診療において最も頻繁に訴えられる身体的愁訴の1つであり、しばしば根底にある精神疾患に起因するものと考えられている。1次性頭痛、とくに片頭痛と緊張型頭痛は、精神疾患と併存することが少なくない。しかし、精神科外来診療におけるこれらのエビデンスは依然として限られていた。兵庫県・加古川中央市民病院の大谷 恭平氏らは、日本の総合病院の精神科外来患者における頭痛の特徴とそのマネジメントの現状を明らかにするため、レトロスペクティブに解析を行った。PCN Reports誌2025年10月30日号の報告。  2023年4月〜2024年3月に、600床の地域総合病院を受診したすべての精神科外来患者を対象に、レトロスペクティブカルテレビューを実施した。全対象患者2,525例のうち、頭痛関連の保険診断を受けた360例(14.3%)を特定し、頭痛のラベル、治療科、処方薬に関するデータを抽出した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたモノクローナル抗体について、追加の処方を含む探索的症例集積を行うため、観察期間を2025年3月まで延長した。

認知症リスク低減効果が高い糖尿病治療薬は?~メタ解析

 糖尿病治療薬の中には、血糖値を下げるだけでなく認知機能の低下を抑える可能性が示唆されている薬剤がある一方、認知症の発症・進展は抑制しないという報告もある。今回、国立病院機構京都医療センターの加藤 さやか氏らは、システマティックレビュー・ネットワークメタアナリシスにより、9種類の糖尿病治療薬について2型糖尿病患者の認知症リスクの低減効果があるのかどうか、あるのであればどの薬剤がより効果が高いのかを解析した。その結果、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が認知症リスクの低減効果を示し、その効果はこの順に高い可能性が示唆された。Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2025年10月22日号に掲載(2026年1月号に掲載予定)。

日常生活のルーティンの乱れが片頭痛を誘発か

 片頭痛を回避したいなら、退屈な日常生活のルーティンを守る方が良いようだ。新たな研究で、日々のルーティンを大きく乱す予想外の出来事(サプライザル)は、その後12〜24時間以内の片頭痛の発生リスクの上昇に強く関連していることが明らかになった。食べ過ぎや飲み過ぎ、夜更かし、ストレスフルな出来事、予想外のニュース、急激な気分の変化などは、身体に予想外の負荷を与え、片頭痛を引き起こす可能性があるという。米ハーバード大学医学大学院麻酔・救急・疼痛医学分野のDana Turner氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。

ビタミンDの個別化投与で心筋梗塞リスクが半減

 成人の心臓病患者では、血中ビタミンD濃度が最適域に達するように患者ごとに用量を調整して投与すると、そうでない場合に比べて心筋梗塞の発症リスクが5割以上低下することが示された。米インターマウンテン・ヘルスの疫学者Heidi May氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)年次総会(Scientific Sessions 2025、11月7〜10日、米ニューオーリンズ)で発表された。  過去の研究では、血中ビタミンD濃度の低下は心臓の健康状態の悪化につながることが示されている。今回のランダム化比較試験(TARGET-D)では、急性冠症候群の成人患者630人(平均年齢63歳、男性78%)を対象に、血中ビタミンD濃度が最適(40ng/mL超〜80ng/mL以下)になるように、患者ごとに用量を調整してビタミンD投与することで、心筋梗塞の再発、脳卒中、心不全による入院、または死亡を予防できるかどうかを検証した。試験参加者の48%に心筋梗塞の既往歴があった。参加者は、3カ月ごとに血液検査で血中ビタミンD濃度を確認して投与量を調整する治療群か、ビタミンD濃度のモニタリングや用量調整を行わない標準治療群のいずれかにランダムに割り付けられた。

VTE後の抗凝固療法、90日以上継続で再発リスク大幅低下/BMJ

 米国・ハーバード大学医学大学院のKueiyu Joshua Lin氏らの研究チームは、誘因のない静脈血栓塞栓症(VTE)の患者では、90日以上の初期抗凝固療法終了後に経口抗凝固療法(OAC)を継続すると、抗凝固療法を中止した場合と比較して、VTE再発のリスクが低下し、大出血のリスクは上昇するが、OAC継続群で良好な純臨床的ベネフィット(net clinical benefit:VTE再発と大出血の複合アウトカム)を認め、これらはVTE発症から少なくとも3年にわたりOACを使用している患者でも持続的に観察されることを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年11月12日号で発表された。

成人の肺炎球菌感染症予防の新時代、21価肺炎球菌結合型ワクチン「キャップバックス」の臨床的意義/MSD

 MSDは11月21日、成人の肺炎球菌感染症予防をテーマとしたメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野(第二内科)教授の迎 寛氏が「成人の肺炎球菌感染症予防は新しい時代へ ―21価肺炎球菌結合型ワクチン『キャップバックス』への期待―」と題して講演した。高齢者肺炎球菌感染症のリスクや予防法、10月に発売されたキャップバックスが予防する血清型の特徴などについて解説した。  迎氏はまず、日本における肺炎死亡の97.8%が65歳以上の高齢者で占められている現状を提示した。抗菌薬治療が発達した現代においても、高齢者肺炎の予後は依然として楽観できない。とくに強調されたのが、一度肺炎に罹患した高齢者が陥る「負のスパイラル」だ。

日本におけるアルツハイマー病診断の時間短縮フロー〜東京大学

 アルツハイマー病の診断において、血液バイオマーカーによる検査が注目されており、日本でも保険適用が待ち望まれている。東京大学の五十嵐 中氏らは、日本でのレカネマブ治療について、異なるワークフローにおける現在の診断検査の状況を推定するため、本研究を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年10月7日号の報告。  ダイナミックシミュレーションを用いて、4つのシナリオ(現在の診断ワークフロー、トリアージツールとしての血液バイオマーカー[BBM]検査、確認診断のためのBBM検査およびこれらの併用)に関して、待ち時間と治療対象患者数を推定した。検査の需要を推定するため、オンライン調査により支払意思額(WTP)と無形費用を評価した。

飲酒が加齢性難聴リスクに影響~日本人1万4千人のデータ

 加齢性難聴における飲酒の影響については結論が出ていない。今回、東北大学の高橋 ひより氏らが東北メディカル・メガバンク計画のコホートデータを用いた横断研究を実施したところ、飲酒と加齢性難聴との間に関連がみられ、その関連は男女によって異なることが示唆された。男性では、過度の飲酒は潜在的な危険因子となるが、女性では、適度な飲酒は保護効果をもたらす可能性があるという。Scientific Reports誌オンライン版2025年12月2日号に掲載。

CKDへのSGLT2阻害薬、糖尿病・UACRを問わずアウトカム改善/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)患者におけるSGLT2阻害薬の効果については不確実性が存在し、欧米のガイドラインでは糖尿病の状態や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に基づき推奨の強さが異なる。英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists’ Consortium(SMART-C)は、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能や入院、死亡のアウトカムに関して明確な絶対的便益(absolute benefit)を有するとメタ解析の結果を報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年11月7日号で発表された。