内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

日本人男性、認知機能と関連する肥満指標は?

 地域在住の日本人中高年男性において、さまざまな肥満指標と認知機能との関連を調査した結果、腹部の内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比(VSR)が低いと認知機能が低いことが示された。滋賀医科大学の松野 悟之氏らがPLoS One誌2025年10月23日号で報告した。  これまでの研究では、内臓脂肪組織が大きい人は認知症リスクが高く、内臓脂肪組織が認知機能低下と関連していたという報告がある一方、内臓脂肪組織と認知機能の関係はなかったという報告もあり一貫していない。この横断研究では、滋賀県草津市在住の40~79歳の日本人男性を対象とした滋賀動脈硬化疫学研究(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis)に参加した853人のうち、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)に回答し、CTで腹部の内臓脂肪面積と皮下脂肪面積を測定した776人のデータを解析した。参加者をVSRの四分位群に分類し、共分散分析を用いて各四分位群のCASI合計スコアおよび各ドメインスコアの粗平均値および調整平均値を潜在的交絡因子を調整して算出した。

世界中で薬剤耐性が急速に拡大

 抗菌薬が効かない危険な感染症が世界中で急速に広がりつつあるとする報告書を、世界保健機関(WHO)が発表した。この報告書によると、2023年には、世界の感染症の6件に1件が、尿路感染症や淋菌感染症、大腸菌による感染症などの治療に使われている一般的な抗菌薬に耐性を示したという。  2018年から2023年の間に、監視対象となった病原体と抗菌薬の組み合わせの40%以上で薬剤耐性が増加し、年平均5~15%の増加が見られた。2021年には、このような薬剤耐性はおよそ114万人の死亡と関連付けられていた。WHO薬剤耐性部門ディレクターのYvan Hutin氏は、「薬剤耐性は広く蔓延し、現代医療の未来を脅かす存在となっている。端的に言えば、質の高い医療へのアクセスが乏しいほど、薬剤耐性菌感染症に苦しむ可能性が高くなる」と、New York Times紙に語っている。

高齢者への高用量インフルワクチン、入院予防効果は?/Lancet

 高用量不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV)は、標準用量不活化インフルエンザワクチン(SD-IIV)と比較して、高齢者におけるインフルエンザまたは肺炎による入院に対して優れた予防効果を示すとともに、心肺疾患による入院、検査で確定したインフルエンザによる入院、全原因による入院の発生率も減少させることが明らかにされた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Herlev and GentofteのNiklas Dyrby Johansen氏らDANFLU-2 Study Group and GALFLU Trial Teamが、2試験の統合解析である「FLUNITY-HD」の結果で報告した。Lancet誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。  FLUNITY-HDは、HD-IIVとSD-IIVを比較する方法論的に統一された2つの実践的なレジストリベースの実薬対照無作為化試験(DANFLU-2、GALFLU)の、事前に規定された個人レベルのデータの統合解析であり、一般化可能性の向上とともに、高齢者における重度の臨床アウトカムに対する2つのワクチンの相対的ワクチン有効率(relative vaccine effectiveness:rVE)の評価を目的とした。

がん治療の中断・中止を防ぐ血圧管理方法とは/日本腫瘍循環器学会

 第8回日本腫瘍循環器学会学術集会が2025年10月25、26日に開催された。本大会長を務めた向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター 副所長)が日本高血圧学会合同シンポジウム「Onco-Hypertensionと腫瘍循環器の新たな関係」において、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の第10章「他疾患やライフステージを考慮した対応」を抜粋し、がん治療の中断・中止を防ぐための高血圧治療実践法について解説した。  がんと高血圧はリスク因子も発症因子も共通している。たとえば、リスク因子には加齢、喫煙、運動不足、肥満、糖尿病が挙げられ、発症因子には血管内皮障害、酸化ストレス、炎症などが挙げられる。そして、高血圧はがん治療に関連した心血管毒性として、心不全や血栓症などに並んで高率に出現するため、血圧管理はがん治療の継続を判断するうえでも非常に重要な評価ポイントとなる。また、高血圧が起因するがんもあり、腎細胞がんや大腸がんが有名であるが、近年では利尿薬による皮膚がんリスクが報告されている。

脳に異なる影響を及ぼす5つの睡眠パターンを特定

 睡眠は、一晩にどれだけ長く眠るか以上の意味を持ち、睡眠パターンは、気分、脳の機能、さらには長期的な健康状態に影響を与える可能性が指摘されている。こうした中、睡眠の多面的な性質と人の健康・認知機能・生活習慣との関係を検討した新たな研究において5つの睡眠プロファイルが特定された。研究グループは、「これらのプロファイルは、ストレスや感情から寝室の快適さまで、睡眠の質に影響を与える生物学的、精神的、環境的要因の組み合わせを反映している」と述べている。コンコルディア大学(カナダ)のValeria Kebets氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS Biology」に10月7日掲載された。Kebets氏は、「人々は睡眠について真剣に考えるべきだ。睡眠は日常生活のあらゆる機能に影響する」とNBCニュースに語った。

アルコール依存症の再発率はどの程度?

 アルコール依存症は、早期死亡や障害の主要な要因である。インドでは、男性の約9%にアルコール依存症がみられるといわれている。アルコール依存症の短期アウトカムには、いくつかの臨床的要因が関与している可能性がある。インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのSushmitha T. Nachiyar氏らは、アルコール依存症患者の短期アウトカムについて調査を行った。Indian Journal of Psychological Medicine誌オンライン版2025年9月26日号の報告。  対象は、ICD-10 DCR基準に基づくアルコール依存症男性患者122例。アルコール依存症の重症度(SADQ)、断酒動機(SOCRATES)、全般認知能力(MoCA)、前頭葉認知能力(FAB)などの社会人口学的および臨床的パラメーターに基づき評価した。その後、過去30日間の飲酒について、タイムライン・フォローバック法を用いて1ヵ月および3ヵ月時点でフォローアップ調査を行った。

原因不明の慢性咳嗽の“原因”が明らかに?

 英国・マンチェスター大学のAlisa Gnaensky氏らが、原因不明の慢性咳嗽(unexplained chronic cough:UCC)と原因が明らかな慢性咳嗽(explained chronic cough:ECC)を区別するための臨床リスク因子として、後鼻漏の有無を特定した。Allergy and Asthma Proceedings誌2025年9月1日号掲載の報告。本研究者らは過去の研究において、喘息や慢性閉塞性肺疾患よりもUCCである可能性が高い患者像を報告していた。  本研究は、米国の7つの咳嗽センターで慢性咳嗽患者に配布された電子質問票を基に調査を行い、平均±標準誤差、連続変数の頻度(一元配置分析)、カテゴリ変数のクロス集計頻度(二元配置分析)を計算した。UCCとECCの単変量比較はt検定とノンパラメトリック一元配置分析を使用して行われた。

60歳以上における全原因心肺系・心血管系疾患入院予防に対する2価RSVワクチンの効果(解説:寺田教彦氏)

本論文は、デンマークにおける全国規模の無作為化比較試験(DAN-RSV試験)の事前規定サブ解析で、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン接種による「全原因心肺系入院のみならず、呼吸器疾患の下流に位置する全原因心血管系入院の予防効果」を評価したものである。同試験の主要エンドポイントはRSV関連呼吸器疾患による入院で、結果は別の論文で報告されている「60歳以上への2価RSVワクチン、RSV関連呼吸器疾患による入院を抑制/NEJM」。本論文の評価項目として、副次エンドポイントは全原因心肺系入院、探索的エンドポイントとして心血管疾患の各項目である、心不全、心筋梗塞、脳卒中、心房細動による入院が設定された。

認知症/MCI患者に対する抗コリン薬の使用率は?

 認知機能が低下している高齢者は、抗コリン作用を有する薬剤の累積使用による副作用の影響を受けやすいとされている。しかし、このような患者における入院リスクに関する研究は依然として限られており、入院の具体的な原因に焦点が当てられていない場合が多い。マレーシア・University MalayaのRenuka Rahoo氏らは、軽度認知障害(MCI)または認知症の高齢者における抗コリン薬の負担とその役割、さらに入院リスクおよび入院理由との関連を調査した。Clinical Interventions in Aging誌2025年9月25日号の報告。

機内における急病人の発生頻度は?~84の航空会社での大規模調査

 2025年には約50億人が民間航空機を利用すると予測されている。航空機内での急病(機内医療イベント)は、医療資源が限られ、専門的な治療へのアクセスが遅れるという制約の中で対応が必要となる。米国・デューク大学のAlexandre T. Rotta氏、MedAireのPaulo M. Alves氏らの研究グループは、84の航空会社が参加した大規模な国際データを分析し、機内医療イベントの発生頻度や、航空機の目的地変更につながる要因などを明らかにした。JAMA Network Open誌2025年9月29日号に掲載。