内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

国が進める医療DX、診療や臨床研究の何を変える?~日本語医療特化型AI開発へ

 内閣府主導の国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では、分散したリアルワールドデータの統合とデータに基づく医療システムの制御を目指し、日本語医療LLM(大規模言語モデル)や臨床情報プラットフォームの構築、患者・医療機関支援ソリューションの開発などを行っており、一部はすでに社会実装が始まっている。2025年9月3日、メディア勉強会が開催され、同プログラム全体のディレクターを務める永井 良三氏(自治医科大学)のほか、疾患リスク予測サービスの開発および受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発を目指すグループの代表を務める鈴木 亨氏(東京大学医科学研究所)・佐藤 寿彦氏(株式会社プレシジョン)が講演した。

メトホルミンの使用が過体重・肥満成人の認知症・死亡リスク低下と関連

 メトホルミンが処方されているBMI25以上の過体重または肥満の成人では、BMIカテゴリーにかかわらず、認知症および全死亡のリスクが低いことを示すデータが報告された。台北医学大学(台湾)のYu-Liang Lin氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes, Obesity and Metabolism」に8月6日掲載された。  メトホルミンは多くの国で2型糖尿病の第一選択薬として古くから使用されており、血糖降下以外の副次的作用に関するエビデンスも豊富。同薬の副次的作用の一つとして、認知症のリスクを抑制する可能性が示唆されている。Lin氏らは、メトホルミンが処方されることの多い過体重または肥満を有する患者における、認知症罹患率および全死亡率に関する長期的なデータを解析し、同薬の使用がそれらのリスク低下と関連しているか否かを検討した。

トイレでのスマホ使用は痔のリスクを高める

 トイレにいる間にスマートフォン(以下、スマホ)でニュースや電子メール、ソーシャルメディアをチェックしている人は、注意した方が良いようだ。トイレでのそのような行動は、痔の発症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。トイレでスマホを使う人は使わない人に比べて、痔の発症リスクが46%高いことが示されたという。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのTrisha Pasricha氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に9月3日掲載された。  研究グループは、トイレでスマホを使用していると、無意識のうちに滞在時間が長くなって肛門への圧力が高まり、それが痔の原因になる可能性があると説明している。Pasricha氏は、「スマホと現代の生活様式が健康に及ぼすさまざまな影響については、まだ全てが判明しているわけではない。トイレの中での使用など、スマホの使い方や使う場所によっては予期せぬ結果をもたらす可能性がある」と話している。

平均寿命が100歳になることはない?

 100歳まで生きたいと願う人にとっては悪いニュースだが、近い将来、人々の平均寿命が100歳を超えることはないようだ。新たな研究で、20世紀前半に高所得国において達成された平均寿命の延長ペースが大幅に鈍化し、その結果、1939年以降に生まれた世代の平均寿命が100歳に達することはないと予想されたのだ。米ウィスコンシン大学マディソン校ラ・フォレット公共政策学部のHector Pifarre i Arolas氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に8月25日掲載された。

世界のがん発症や死亡、2050年に6~7割増/Lancet

 がんは世界の疾病負担の大きな要因であり、2050年まで症例数と死亡数の増加が続くことが予測され、とくに資源の乏しい国との負担格差が大きくなることが見込まれること、また、がんの年齢標準化死亡率は低下するものの、国連による2030年の持続可能な開発目標(SDG)の達成には不十分であることが、米国・ワシントン大学のLisa M. Force氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Cancer Collaboratorsの解析で示された。がんは世界的に主要な死因の1つで、政策立案には正確ながん負担情報が欠かせないが、多くの国では最新のがんサーベイランスデータがない。著者は、「世界的ながん負担に効果的かつ持続的に対処するには、予防、診断、治療の全過程にわたるがん対策戦略の策定と実施において、各国の医療システムや開発状況を考慮した包括的な国内外の取り組みが必要である」と提言している。Lancet誌オンライン版2025年9月24日号掲載の報告。

アスピリンでも安易な追加は良くない:抗凝固薬服用中の慢性冠動脈疾患の場合(解説:後藤信哉氏)

慢性冠動脈疾患一般は、アスピリンによる心血管イベントリスクの低減が期待できる患者集団である。しかし、慢性冠動脈疾患でもさまざまな理由により抗凝固療法を受ける症例がいる。抗凝固薬の使用により出血イベントリスクが増加したところにアスピリンを追加すると、出血イベントリスクがさらに増加すると想定される。本研究では、抗凝固薬を服用している慢性冠動脈疾患を対象としてアスピリンとプラセボのランダム化比較試験を施行した。慢性冠動脈疾患一般ではアスピリンによる心血管死亡リスクの低減が期待される。しかし、抗凝固薬を服用している慢性冠動脈疾患にアスピリンを追加すると、心血管死亡、心筋梗塞、脳梗塞、全身塞栓症、冠動脈再灌流療法、下肢虚血などは増加した。重篤な出血イベントリスクと出血死亡率も増加している。慢性冠動脈疾患でも抗凝固薬を服用している症例には安易にアスピリンを追加すべきでないことを示唆する結果であった。

肥満者の約半数は肥満の相談を医療機関にしたくないと回答/ノボ

 ノボノルディスクファーマは、2021年度より実施している日本人9,400人(20~75歳)を対象とした、「肥満」と「肥満症」に関する意識実態調査の2025年度版を発表した。その結果、肥満症の認知率は13.0%と大きく進展した一方で、自身の肥満について「(医療機関へ)相談したくない」と回答した人は50.5%と、医療機関への相談意向は高くないことが判明した。

歯肉炎の改善に亜鉛が影響?

 歯周病は心血管疾患や糖尿病、脳梗塞などの疾患リスクに影響を及ぼすことが示唆されている。今回、トルコ・Cukurova UniversityのBahar Alkaya氏らは、歯周病の初期段階とされる歯肉炎の管理において、歯科用の亜鉛含有ステント(マウスピース型器具)が機械的プラークコントロールの補助として有益であることを示唆し、歯肉炎が亜鉛によって改善したことを明らかにした。  本研究は、歯肉炎患者での歯肉の炎症、出血、歯垢の再増殖に対する亜鉛含有ステントの効果を調査したもの。Cukurova Universityにおいて、全身的に健康な18~30歳の歯肉炎患者42例を対象に、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。参加者は試験群(亜鉛含有ステント)または対照群(プラセボステント)に割り付けられ、歯石除去後4週間、毎日12時間以上にわたって器具を装着するよう指示された。評価項目は歯肉炎指数(GI、プラーク指数(PI)、プロービング時の出血(BOP)などで、ベースライン時、2週目、4週目、8週目に評価が行われた。統計解析にはIBM SPSSおよびRStudioの統計ソフトウェアが用いられた。

将来的には点眼薬で老眼を改善できるかも?

 1日に2~3回使用する点眼薬が、将来的には老眼鏡に取って代わる老眼対策の手段となる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。点眼薬を使用した人のほとんどが、視力検査で使用されるジャガーチャート(以下、視力検査表)を2、3行以上余分に読めるようになっただけでなく、このような視力の改善効果が2年間持続したことが確認されたという。老眼先端研究センター(アルゼンチン)センター長であるGiovanna Benozzi氏らによるこの研究結果は、欧州白内障屈折矯正手術学会(ESCRS 2025、9月12~16日、デンマーク・コペンハーゲン)で発表された。  この点眼薬には、瞳孔を収縮させ、近見の焦点を調節する筋肉を収縮させるピロカルピンと、ピロカルピン使用に伴う炎症や不快感を軽減するNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)のジクロフェナクという2種類の有効成分が含まれている。研究グループは、766人(平均年齢55歳、男性393人、女性373人)を対象に、異なるピロカルビン濃度(1%、2%、3%)の点眼薬を投与する3つのグループに分けて、その有効性を調べた。対象者は、最初に点眼薬を投与されてから1時間後に老眼鏡なしで視力検査表をどの程度読めるかをテストし、その後2年間にわたって追跡調査を受けた。

糖尿病患者の飲酒は肝がんリスク大幅増、茶によるリスク低下は限定的

 糖尿病の有無別にアルコールおよび茶の摂取と肝がん発症リスクとの関連を検討した前向きコホート研究の結果、アルコール摂取はとくに糖尿病患者で肝がんリスクを大きく高めることが確認された一方で、茶の摂取による肝がんリスク低下効果は非糖尿病患者に限られたことが、中国・清華大学のXiaoru Feng氏らによって明らかになった。Nutrients誌2025年9月4日号掲載の報告。  一部の研究では少量のアルコール摂取は肝がんリスクを下げる可能性が報告されているが、高頻度・大量のアルコール摂取は肝がんリスクを上昇させることが多くの研究で示されている。茶の摂取は肝がんリスク低下に関連する可能性があるとする研究がある一方で、有意な関連を認めない研究も多く、結論は一様ではない。また、糖尿病患者は代謝異常のためにアルコールや茶のの影響を受けやすく、それが肝がんのリスクに関与している可能性もある。そこで研究グループは、大規模かつ長期の追跡調査を行い、アルコールおよび茶の摂取と肝がん発症との関連を、糖尿病の有無別に評価した。