内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

抗うつ薬は体重を増やすか?(解説:岡村毅氏)

精神科の外来では、対話から患者さんの症状を探る。うつ病の診察で最も有効なのは「眠れてますか」「食べられてますか」であろう。頑張ったらよく眠れるとか、頑張ったら食欲が湧いてくるものではないので、かなり客観的に患者さんの状態を把握できる。意外かもしれないが、「どういったストレスがありますか」は、最重要ではない。意味がないとは言わないが、患者さんの理解や世界観に沿った長い物語が展開することが多く、まず知りたいことではない。さて、治療が進むと、患者さんたちは、よく眠り、よく食べるようになる。それは良いのだが、女性の患者さんからは「体重が増えて困ってます」と言われることがしばしばある。女性は体重をモニターしている人が多いからと思われる。そうなると、「抗うつ薬で体重は増えるのだろうか?」「どの抗うつ薬で増えるのだろうか?」と考えるのは自然だ。

日本における認知症診断、アイトラッキング式認知機能評価の有用性はどの程度か

 認知機能低下および認知症に対する効率的なスクリーニングツールは、多くの臨床医や患者に求められている。大阪大学の鷹見 洋一氏らはこれまで、アイトラッキング技術を用いた新規認知機能評価ツールの認知症スクリーニングにおける有用性について報告している。今回、アイトラッキング式認知機能評価(ETCA)アプリのタブレット版を開発し、プログラミング医療機器(SaMD)としての臨床的有用性を検証するための臨床試験を実施し、その結果を報告した。GeroScience誌オンライン版2025年10月20日号の報告。

脳梗塞既往患者のLDL-C目標値、より厳格にすべき?/Circulation

 虚血性脳卒中の既往歴を持つ患者は、脳卒中再発およびその他の主要心血管イベント(MACE)リスクが高い。米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のVictorien Monguillon氏らが、FOURIER試験のデータを用いて行った2次分析の結果、LDL-C値が40mg/dL未満まで低下すると、出血性脳卒中リスクを明らかに増加させることなく、脳卒中再発を含むMACEのリスクが低下することが示された。Circulation誌オンライン版2025年11月3日号掲載の報告より。

骨粗鬆症、予防には若年からの対策が重要/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、10月20日の世界骨粗鬆症デーに関連し、疾患啓発イベント「親子で話す骨のこと」を開催した。慶應義塾大学 整形外科 教授の中村 雅也氏、歌手の早見 優氏が登壇し、若年期からの骨粗鬆症予防の重要性を伝えた。  骨粗鬆症の患者数は毎年増加傾向にあり、2023年のデータで受診者数は138万人、うち9割以上を女性が占める1)。中村氏は「女性は閉経後から骨密度が急速に低下し、70代以降では骨折リスクが大幅に上昇する。患者数増加は高齢化に加え、疾患への意識向上による受診増加も要因だと考えられる」と解説した。さらに中村氏は、「骨粗鬆症は進行するまで自覚症状が乏しいため、注意を払われにくい。高齢になって転倒や骨折を経験してから骨の健康を考えるのでは遅い。閉経期を迎える40~50代から骨密度変化に関心を持ち、早期に介入することが重要」と強調した。

肝疾患患者の「フレイル」、独立した予後因子としての意義

 慢性肝疾患(CLD)は、肝炎ウイルス感染や脂肪肝、アルコール性肝障害などが原因で肝機能が徐々に低下する疾患で、進行すると肝硬変や肝不全に至るリスクがある。今回、こうした患者におけるフレイルの臨床的意義を検討した日本の多機関共同後ろ向き観察研究で、フレイルが独立した予後不良因子であることが示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は9月20日付けで「Hepatology Reseach」に掲載された。

糖尿病前症の生活改善、AI介入が人間に非劣性/JAMA

 糖尿病前症の過体重または肥満の成人に対する糖尿病予防プログラム(DPP)について、人工知能(AI)主導による介入は人間主導による介入に対して、体重減少、身体活動およびHbA1cに基づく複合アウトカムの達成に関して非劣性であることが示された。米国・Johns Hopkins University School of MedicineのNestoras Mathioudakis氏らAI-DPP Study Groupが、Johns Hopkins Hospital(メリーランド州ボルティモア)およびReading Hospital Tower Health(ペンシルベニア州レディング)の2施設で実施したプラグマティックな第III相無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。糖尿病前症を有する人は多数に上るが、現状エビデンスに基づくライフスタイル介入は十分に活用されていない。JAMA誌オンライン版2025年10月27日号掲載の報告。

ベルイシグアトはHFrEF治療のファンタスティック・フォーに入れるか?―VICTOR試験(解説:原田和昌氏)

可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるベルイシグアトは、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者で、かつ、直近の心不全増悪があった患者に対するVICTORIA試験で、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを10%有意に減少させた。しかし、心血管死単独、心不全入院単独では有意差を認めなかった。そのため、心不全のガイドラインでは、十分なガイドライン推奨治療にもかかわらず心不全増悪を来したNYHA心機能分類II~IVのHFrEF患者の心血管死または心不全入院の抑制を目的として、ベルイシグアトの使用が認められている(クラスIIa)。

中年期に食事を抜くと将来フレイルになる可能性/長寿研

 高齢者にとってフレイルによる運動機能の低下は、日常生活に重大な悪影響を及ぼす。こうしたフレイルに明確な原因はあるのであろうか。この課題に対し、国立長寿医療センターの西島 千陽氏らの研究グループは、認知症のない65歳以上の高齢者5,063例を対象に若年期(25~44歳)および中年期(45~64歳)の食事抜きの習慣と老年期のフレイルとの関連性を検討した。その結果、若年期、中年期の食事抜きは、高齢期のフレイルに関連することがわかった。この結果は、Journal of the American Medical Directors Association誌2025年10月9日号に掲載された。

慢性便秘の改善にキウイが有効

 キウイは健康的なおやつ以上のものかもしれない。英国栄養士会(BDA)が新たに作成した慢性便秘に関する包括的な食事ガイドラインによれば、キウイ、ライ麦パン、特定のサプリメントは、薬に頼らずに慢性便秘を管理するのに役立つ可能性があるという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)准教授で登録栄養士でもあるEirini Dimidi氏らが作成したこのガイドラインは、「Journal of Human Nutrition and Dietetics」に10月13日掲載された。  Dimidi氏は、「本ガイドラインは医薬品ではなく、食事療法による便秘治療に焦点を当てている」と説明する。同氏は、「便秘に悩む人が、科学的エビデンスに基づいた情報を得ることで、自分で症状をコントロールして、生活の質(QOL)に多大な影響を及ぼしている症状を改善することができると感じてくれることを願っている」と話している。

日本人男性、認知機能と関連する肥満指標は?

 地域在住の日本人中高年男性において、さまざまな肥満指標と認知機能との関連を調査した結果、腹部の内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比(VSR)が低いと認知機能が低いことが示された。滋賀医科大学の松野 悟之氏らがPLoS One誌2025年10月23日号で報告した。  これまでの研究では、内臓脂肪組織が大きい人は認知症リスクが高く、内臓脂肪組織が認知機能低下と関連していたという報告がある一方、内臓脂肪組織と認知機能の関係はなかったという報告もあり一貫していない。この横断研究では、滋賀県草津市在住の40~79歳の日本人男性を対象とした滋賀動脈硬化疫学研究(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis)に参加した853人のうち、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)に回答し、CTで腹部の内臓脂肪面積と皮下脂肪面積を測定した776人のデータを解析した。参加者をVSRの四分位群に分類し、共分散分析を用いて各四分位群のCASI合計スコアおよび各ドメインスコアの粗平均値および調整平均値を潜在的交絡因子を調整して算出した。