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COVID-19対策のうがいは是か非か

 8月上旬、大阪府知事の吉村 洋文氏は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策にうがい薬ポビドンヨード液を推奨する緊急記者会見を開いた。この会見の報道を受け、うがいは新型コロナ感染症対策として優先順位は低いなどと発言する一部の専門家もいたが、やはり口腔ケアは感染症対策として重要なのではないだろうかー。2020年8月5日に開催された第2回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナーで、阪井 丘芳氏(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室教授)が「COVID-19と唾液腺~重症化予防のための新たな口腔ケア」について講演し、口腔の衛生管理の重要性について語った。COVID-19拡大予防にうがいは重要 COVID-19流行前から口腔ケアと感染症に関連した研究を実施している阪井氏は、1)高齢者の誤嚥性肺炎と窒息のリスクの緩和、2)口腔ケアを行う医療従事者の効率化と安全性の向上、3)口腔ケア製品の抗菌性を高め、ウイルス性・細菌性肺炎を予防、4)現場のニーズに合った優れた口腔ケア用品の開発と普及を目標に活動を行っている。 今回のポビドンヨード液の報道時には、うがいの根拠について議論が巻き起こったものの、口腔ケアにより要介護高齢者の発熱・肺炎発生率が低下することは約20年前の論文1)ですでに裏付けされていた。また、感染には体内の2大細菌叢である腸内細菌叢と口腔細菌叢が影響するが、「後者はう蝕や歯周病の原因になり、口腔細菌が肺へ移行し肺炎リスクに繋がる」と説明。また、インフルエンザなどウイルスによる肺炎は上気道から侵入するケースが多い点にも触れた。 COVID-19の場合、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が肺に存在する受容体であるACE2に結合するため、肺へ直接侵入する可能性が高いと言われている。しかし、ACE2の発現量は肺よりも唾液腺にやや多いことが報告されている。これを踏まえて、同氏は「健康な肺にはもともと防御機構があるので、ある程度口腔細菌の制御は可能だが、SARS-CoV-2によって上皮細胞が損傷すると、細菌感染が生じる可能性がさらに高まる。現在までの研究報告によると、SARS-CoV-2自体単独では強毒性ではないかもしれないが、重症化因子として口腔細菌が関与している可能性もある。2次性細菌性肺炎を防ぐためにも口腔衛生の徹底が必要」と強調した。また、COVID-19の高齢患者の死亡率が高い理由として、「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん:気付かないうちに生じる誤嚥)をきっかけとして、2次性細菌性肺炎が重症化したのが原因では」と推測し、今後の検証の必要性を述べた。 新型コロナ感染対策でうがいは唾液中のウイルスを一時的に減少 現在、唾液を用いたCOVID-19のPCR検査が実施可能である。鼻咽頭ぬぐい液による検査では患者の負担だけではなく、医療者への感染リスクが問題とされたが、唾液PCR検査はそれらの問題解決に繋がるばかりか、無症状者への対応も可能となった。他方で、同氏は口腔・咽頭粘膜はSARS-CoV-2の侵入経路だけではなく、付近の唾液腺がその貯蔵庫になる可能性が示唆2)されていることに着目し、「効果的な口腔ケアと生活様式での対応の両者が必要」とコメント。しかし、現時点で口腔内の消毒薬として認められているのは、10%ポビドンヨード液と0.01~0.025%塩化ベンザルコニウム液のみであることから「要時生成型亜塩素酸イオン水溶液(MA-T:Matching Transformation system)などを用いた新たな口腔用消毒薬の確立に努めたい」と話した。 最後に同氏は「学校や会社を休みたくないがゆえに、ヨード系うがい薬でうがいをしてから唾液PCR検査を受けて偽陰性の結果や診断を得るような、社会的に逆効果になる問題も予想される」としつつも、「誰が感染しているかわからない状況下において、うがいは唾液中のウイルスを一時的に減少させるため、会話や会食前・最中のうがいは人にうつす可能性を減らすかもしれない。効果の持続時間やうがい方法、吐き出した液による洗面台周囲のウイルス汚染など、検証すべき事項が多数あり、結論を導くには時間を要するが、感染対策として口腔衛生管理を行うことは大切である」と、口腔ケアの必要性について言及した。

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双極性障害の早期発症や治療開始遅延がその後の治療効果に及ぼす影響

 双極性障害の治療アウトカム不良のリスク因子として、早期発症と初回治療開始の遅延の両方がエビデンスで報告されている。米国および欧州の双極性障害患者における、これら2つのリスク因子の発生率とその影響について、米国・ジョージ・ワシントン大学のRobert M. Post氏らが調査を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2020年7月3日号の報告。 本研究の参加についてインフォームドコンセントを行い、詳細なアンケートに回答した双極性障害の外来患者967例を対象に、うつ症状または躁症状の発症年齢および初回治療時の年齢を評価した。発症年齢および初回治療開始の遅延について、米国の675例と、オランダおよびドイツ(欧州)の292例を比較し分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害の発症年齢は、欧州よりも米国で平均6~7年早く、うつ症状または躁症状の発症年齢についても同様な結果であった。・初回治療開始の遅延は、発症年齢と強い逆相関が認められ、米国は欧州の2倍遅延しており、とくに青年期の躁症状での違いが認められた。・米国での初回治療開始の遅延は、発症年齢の早さによるものだけではないと考えられる。 著者らは「治療開始の遅延は治療上のリスク因子であり、米国における双極性障害の早期発症率の高さを認識することにより、遅延期間の短縮は可能である。また、米国における早期発症率の高さは、欧州と比較し、遺伝的および環境的な脆弱性の要因に関連していると考えられる。小児双極性障害患者に対し、より良い長期的なアウトカムを提供するためにも、新たな治療や研究への取り組みが求められる」としている。

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ゲームが上手な人は腹腔鏡も上手い【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第169回

ゲームが上手な人は腹腔鏡も上手いpixabayより使用ゲームが得意な人って、腹腔鏡が上手いんじゃないだろうか。そういう説を見かけたことがありますが、わたしゃ外科医ではないので、そこらへんはよくわかりません。しかし、腹腔鏡のシミュレーターで訓練することは技術向上には当然よいわけで。IJgosse W, et al.Construct Validity of a Serious Game for Laparoscopic Skills Training: Validation Study.JMIR Serious Games . 2020 May 7;8(2):e17222.腹腔鏡シリアスゲーム「Underground」について検証した、ラドバウド大学医療センターからの論文です。それにしても、なぜゲーム名をアンダーグラウンドにしたのか……。シリアスゲームというのは深刻なゲームのことではなくて、教育や医療用途などの目的で開発されたゲームジャンルのことで、要はエンターテイメントではないということです。タスクをこなす時間とミスのパフォーマンスについて、共分散分析を用いて、初心者(65人、腹腔鏡下手術経験10回未満、平均年齢24±3歳)、中級者(26人、腹腔鏡下手術経験10~100回、平均年齢31±2歳)、エキスパート(20人、腹腔鏡下手術経験100回以上、平均年齢44±6歳)の間で比較しました。性別とビデオゲーム経験を補正しました。ゲームといっても、RPGをメインでやる人と、格ゲーをメインでやる人では、また違う気もするのですが、それはまぁおいといて。性別とビデオゲーム経験で補正すると、腹腔鏡の経験がタスク完了やミスのパフォーマンスに有意な影響を与えることがわかりました。やはりエキスパートは上手い。興味深いことに、この研究では、男性やビデオゲーム経験歴があるほうがシリアスゲームのパフォーマンスが良好だということもわかりました。とくに若手医師の場合、ゲーム経験が有利に働いたとされています。となると、小さいころからゲームをやってきた人のほうが、もしかすると腹腔鏡が上手になるかも!?ちなみに、任天堂のWii-Uを使った腹腔鏡トレーニングが有効であるという報告もあります1)。1)Overtoom EM, et al. Training in Basic Laparoscopic Surgical Skills: Residents Opinion of the New Nintendo Wii-U Laparoscopic Simulator. J Surg Educ . Mar-Apr 2017;74(2):352-359.

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健康問題を有する患者のメンタルヘルス改善のためのオンライン心理的介入~メタ解析

 Webベースの心理的介入は、ここ15年間で大幅に増加している。健康状態に慢性的な問題を有する患者における抑うつ、不安、苦痛症状に対するWebベースの心理的介入の有効性について、オーストラリア・ディーキン大学のV. White氏らが、検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2020年7月17日号の報告。 1990年~2019年5月1日に公表された研究をMedline、PsycINFO、CINAHL、EMBASE、Cochrane Databaseより検索した。健康状態に慢性的な問題を有する成人における不安、抑うつ、苦痛を軽減することを主要および副次的な目的として実施されたWebベースの心理的介入のランダム化比較試験の英語論文を分析対象とした。結果の評価には、ナラティブ分析および変量効果メタ分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・以下の主な疾患を含む17種類の健康状態における70件の適格研究が確認された。 ●がん:20件 ●慢性痛:9件 ●関節炎:6件 ●多発性硬化症:5件 ●糖尿病:4件 ●線維筋痛症:4件・CBT原理に基づいた研究は46件(66%)、ファシリテーターを含む研究は42件(60%)であった。・すべての健康状態に慢性的な問題を有する患者において、Webベースの介入は、メンタルヘルスの症状軽減により有効であった。 ●うつ症状:g=0.30(95%CI:0.22~0.39) ●不安症状:g=0.19(95%CI:0.12~0.27) ●苦痛:g=0.36(95%CI:0.23~0.49) 著者らは「患者自身によるオンライン心理的介入は、健康状態に慢性的な問題を有する患者にとって不安、抑うつ、苦痛の症状軽減に役立つと考えられるが、特定の健康状態に有効かどうかは不明であり、有効性に関するエビデンスは一貫していなかった。明確な結論を導き出すためには、より質の高いエビデンスが求められる」としている。

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ズレが2mm以下の舟状骨腰部骨折、ギブス固定vs.外科的固定/Lancet

 手の舟状骨腰部骨折でズレが2mm以下の成人患者では、最初にギプス固定を行い、偽関節が疑われる場合には確認してただちに手術で固定すべきであることが示された。英国・Leicester General HospitalのJoseph J. Dias氏らが、外科的固定とギプス固定の臨床効果を比較検証した実用的な多施設共同無作為化非盲検優越性試験「SWIFFT試験」の結果を報告した。舟状骨骨折は、手根骨骨折の90%を占め、主に若年男性に発生するが、非外科的治療に比べアウトカムを改善するという十分なエビデンスがないにもかかわらず、ただちに外科的固定術を行う治療が増えていた。著者は、「最初にギプス固定を行う治療戦略により、手術のリスクを回避でき、手術は骨癒合に失敗した骨折の修復に制限できる」とまとめている。Lancet誌2020年8月8日号掲載の報告。手関節機能評価(PRWE)により有効性を比較 SWIFFT試験は、イングランドとウェールズの31病院で実施された。対象は、レントゲンで明らかな舟状骨腰部骨折が確認された16歳以上の成人。 最初から外科的固定を行う手術群と、前腕ギプス固定後に偽関節が確認された場合はただちに外科的固定を行うギプス固定群のいずれかに、1~2mmのズレ(段差または離開)の有無で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無作為化後52週時の患者評価による手関節機能評価(patient-rated wrist evaluation:PRWE)スコアであった。PRWE質問票はベースライン、無作為化後6週、12週、26週および52週時に記入してもらい、ベースライン以外のデータは郵送、受診時持参もしくは電話で収集した。平均PRWEスコア、両群間で有意差なし 2013年7月23日~2016年7月26日までの期間に、適格性が評価された1,047例のうち439例(平均年齢33歳、男性83%)が無作為に割り付けられ(手術群219例、ギプス固定群220例)、試験脱落・同意撤回や追跡データが得られなかった症例を除く408例(93%)が主要解析に組み込まれた(手術群203例、ギプス固定群205例)。 52週時の平均PRWEスコア(補正平均値)は、手術群が11.9(95%信頼区間[CI]:9.2~14.5)、ギプス固定群が14.0(11.3~16.6)であり、両群間に有意差は認められなかった(補正後平均群間差:-2.1、95%CI:-5.8~1.6、p=0.27)。 手術に関連した重篤な合併症は、手術群(219例中31例、14%)のほうがギプス固定群(220例中3例、1%)より多い可能性があったが、ギプス関連合併症は手術群(5例、2%)がギプス固定群(40例、18%)より少なかった。内科的合併症の発現は、両群間で類似していた(手術群4例[2%]、ギプス固定群5例[2%])。

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未治療AML、アザシチジン+ベネトクラクス併用でOS延長/NEJM

 強力な化学療法が適応とならない未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者において、アザシチジン+ベネトクラクス併用療法はアザシチジン単独投与と比較して、発熱性好中球減少症の発現率は高かったものの、全生存期間および寛解率の有意な改善を達成したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのCourtney D. DiNardo氏らによる多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「VIALE-A試験」で明らかとなった。高齢のAML患者は、メチル化阻害剤による治療でも予後不良であり、第Ib相試験においてアザシチジン+ベネトクラクス併用療法の有効性が示唆されていた。NEJM誌2020年8月13日号掲載の報告。未治療の高齢AML患者約430例で有効性と安全性を単独投与と比較 研究グループは、併存疾患を有する、または75歳以上のため、標準的な寛解導入療法の適応とならない未治療のAML患者431例を、アザシチジン+ベネトクラクス併用療法(ベネトクラクス群)またはアザシチジン+プラセボ(プラセボ群)に2対1の割合で無作為に割り付けた。アザシチジンは標準的な用法・用量で投与し(28日を1サイクルとし1日目~7日目に75mg/m2を皮下投与または静脈内投与)、ベネトクラクス(目標用量400mg)またはプラセボは1サイクル28日で1日1回経口投与した。 主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は複合完全寛解(完全寛解+好中球数または血小板数の回復が不完全な完全寛解)、完全寛解などであった。ベネトクラクス併用療法はアザシチジン単独投与よりOSを約5ヵ月延長 2017年2月6日~2019年5月31日の間に、27ヵ国134施設において579例がスクリーニングされ、433例が無作為化された。intention-to-treat集団には、431例が組み込まれた(ベネトクラクス群286例、プラセボ群145例)。両群の年齢中央値は76歳であった(範囲:49~91歳)。 追跡期間中央値20.5ヵ月において、OS中央値はベネトクラクス群14.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.9~18.7)、プラセボ群9.6ヵ月(7.4~12.7)で、死亡のハザード比は0.66(95%CI:0.52~0.85、p<0.001)であった。 完全寛解率は、ベネトクラクス群がプラセボ群より高く(36.7% vs.17.9%、p<0.001)、複合完全寛解も同様の結果であった(66.4% vs.28.3%、p<0.001)。 主な有害事象は、全グレードの悪心(ベネトクラクス群44%、プラセボ群35%)、ならびにGrade3以上の血小板減少症(それぞれ45%、38%)、好中球減少症(42%、28%)、発熱性好中球減少症(42%、19%)であった。全グレードの感染症は、ベネトクラクス群で85%、プラセボ群で67%に認められた。 重篤な有害事象の発現率は、それぞれ83%および73%であった。

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重症の胆石性急性膵炎に対する緊急ERCPと保存的治療:多施設共同無作為化比較試験(解説:上村直実氏)-1277

 オランダ発の本論文は、発熱を伴う総胆管結石、総胆管の拡張、進行性の胆汁うっ滞により定義される明確な胆管炎を認めない重症の胆石性急性膵炎(以下、本症)を有する患者を対象として、6ヵ月以内の死亡または主要な合併症(多臓器不全、胆管炎、菌血症、肺炎、膵臓壊死、膵機能不全)の発症を検討し、24時間以内の括約筋切開を伴う緊急ERCPを施行するERCP/ES群と保存療法から開始する対照群を比較した結果、本症の改善に対する有用性および安全性に統計学的な差を認めなかったことから緊急ERCP/ESを施行しない保存療法を支持する結論となっている。 わが国の『急性膵炎診療ガイドライン2015』においても「胆石性急性膵炎のうち、胆管炎合併例、黄疸出現または胆道通過障害の遷延を疑う症例には早期のERCP/ESを施行すべきであるが、これに該当しない症例に対する早期のERCP/ES施行の有用性は否定的である」とされており、現時点では、胆管炎または持続的な胆汁うっ滞の患者のみ緊急ERCP/ESの適応とするのが妥当と思われる。一方、本研究では対照群の31%が経過観察中に胆管炎を認めてERCP/ESを行っており、臨床研究に当たっては胆管炎の定義と診断精度の重要性が示されている。 通常の画像診断による総胆管結石の描出感度は低い(腹部超音波:20%、CT:40%)ことが知られており、正確な診断にはMRCPないしは超音波内視鏡(EUS)が必要とされている。最も診断精度が高いEUSにより総胆管内の結石やスラッジを認めた場合にERCPを行うことが推奨されているが、このEUSについても一般診療現場では標準的診療となっていないため、実臨床の診療現場に有用なエビデンスを構築することが難しい。さらに、日本の胆膵を専門とする内視鏡医からみると、本研究における胆管挿管成功率が低い原因はERCPの技術力が十分でないことが指摘される可能性もある。内視鏡診療に関する臨床研究では常に問題となる技術格差によるバイアスを克服する研究デザインが必要である。卓越した消化器内視鏡の診療技術と大規模レジストリー(JED:Japan Endoscopy Database)を用いて精度の高い臨床研究が実践されることが待望される。

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マスク・手袋などのPPEによる皮膚疾患をどう防ぐか

 COVID-19感染流行の長期化に伴い、フェイスマスク・手袋をはじめとした個人用防護服(PPE)の長期着用を要因とした医療者の皮膚疾患が報告されている。こうした皮膚疾患への対応と予防策について、Seemal R. Desai氏らがJournal of the American Academy of Dermatology誌のリサーチレターで提言している。 サージカルマスク・N95マスク・ゴーグル・フェイスシールドなどのPPEは、マスク表面やストラップの摩擦によって耳の後ろや鼻梁、あるいは顔全体に接触皮膚炎を引き起こす、という報告がある。 さらに、マスクに使用されている接着剤、ストラップのゴム、不織布のポリプロピレン、クリップの金属などが接触皮膚炎や蕁麻疹を引き起こす、密着性の高いN95マスクが皮膚を痛める、さらにマスク装着時にこもる湿気が皮膚炎や感染症を引き起こす、といった可能性もある。 提唱されている予防策は、・サージカルマスクは、ストラップの触れる耳の後ろにアルコールフリーのドレッシング材を貼る。・N95マスクは、アルコールフリーのバリアフィルム(スプレータイプではないもの)をマスクが直接接触する部分に貼り、着用前に90秒間乾燥させる。顔のサイズに合ったマスクを使い、顔に過度の圧力をかけないようにする。 いずれの場合でも、朝と就業後に無香料で毛穴が詰まりにくい洗顔料で顔を洗う、2時間に1回、15分間はマスクを外す時間を設ける、装着1時間前には保湿剤で顔を保湿する、といったことが推奨されている。ワセリンベースの製品はマスクの密着性を妨げる可能性があるため推奨されていない。 米国疾病予防管理センター(CDC)によると、全医療者における職業病の10~15%を接触皮膚炎が占めており、中でも手袋に関連するアレルギー性皮膚炎が多い。保湿を行い、PPE使用前に手を清潔にしてよく乾かすことが、皮膚疾患に対しての共通した予防策になるという。

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統合失調症に対する第2世代抗精神病薬の副作用~Webベース横断研究

 統合失調症治療に用いられる抗精神病薬の副作用は、大きく異なることがよく知られている。しかし、患者目線でのこれらの副作用による機能への影響については、あまりわかっていない。米国・西ミシガン大学のRajiv Tandon氏らは、第2世代抗精神病薬の主要な副作用が、機能やQOLにどのような影響を及ぼすかを明らかにするため検討を行った。Annals of General Psychiatry誌2020年7月13日号の報告。 米国、カナダ、オーストラリア、スペイン、イタリア、ノルウェー、デンマークの成人統合失調症患者から報告された副作用に関する横断的なWebベース調査を実施した。本調査には、社会人口統計学的および臨床的な質問、QOLの評価尺度(Q-LES-Q-SF)、抗精神病薬の副作用評価尺度(GASS)を含めた。副作用を8つ(手や腕のふるえ、落ち着きのなさ、睡眠の困難さ、日中の眠気、意識がなくなる/無気力な感じ、めまい/失神、セックスを楽しめない、体重増加)に分類し、機能やQOLへ及ぼす影響に関する質問を追加した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は435例(平均年齢:38歳、女性の割合:53.8%)であった。・Q-LES-Q-SF合計スコアでは、患者のQOLに対する満足度は、中程度であった(スコア:44.3[14~70])。・最も一般的な副作用は、以下のとおりであった。 ●日中の眠気:83.2% ●睡眠の困難さ:74.7% ●口渇:63.9% ●セックスを楽しめない:53.4% ●体重増加:52.4%・女性は男性よりも、日中の眠気、セックスを楽しめない、体重増加の報告が多かった。・主要な副作用は、機能の身体的、社会的、職業的、心理的な側面に影響を及ぼしていた。・主要な副作用を有する患者は、その経験に不満を感じることが多かった。・Q-LES-Q-SF合計スコアは、8つに分類した副作用のスコアとの有意な逆相関が認められ、主要な副作用の重症度とQOL低下との関連が示唆された。 著者らは「第2世代抗精神病薬で治療中の安定した統合失調症患者は、賦活的および鎮静的な副作用、性的副作用、体重増加などの問題を抱えている。これらの副作用は、日常的なすべての機能に影響し、QOLおよび満足度の低下と関連している」としている。

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二ボルマブ+化学療法、胃がん食道がん1次治療法でOS、PFSを改善(CheckMate-649)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2020年8月11日、ファーストラインの転移性胃がん、胃食道接合部(GEJ)がんまたは食道腺がんを対象に二ボルマブと化学療法の併用療法を化学療法と比較評価したピボタルな第III相CheckMate-649試験において、二ボルマブと化学療法の併用療法が、PD-L1発現combined positive score(CPS)が5以上の患者において、主要評価項目である中間解析での全生存期間(OS)および最終解析での無増悪生存期間(PFS)の両方を達成したことを発表した。二ボルマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、ファーストラインの胃がんおよび食道がんの治療において二ボルマブと化学療法の併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 CheckMate-649試験は、未治療のHER2陽性以外の進行または転移のある胃がん、GEJがんまたは食道腺がんの患者を対象に、二ボルマブと化学療法の併用療法または二ボルマブとイピリムマブの併用療法を、化学療法と比較評価した多施設無作為化非盲検第III相臨床試験。二ボルマブと化学療法の併用療法群の患者は、二ボルマブ360mgとカペシタビンおよびオキサリプラチン(CapeOX)を3週間間隔で、または二ボルマブ240mgとFOLFOXを2週間間隔で投与を受けた。二ボルマブとイピリムマブの併用療法群の患者は、二ボルマブ1mg/kgおよびイピリムマブ3mg/kgを3週間間隔で計4回投与を受け、その後、二ボルマブ240mgを2週間間隔で投与を受けた。化学療法群の患者は、FOLFOXを2週間間隔で、またはCapeOXを3週間間隔で投与を受けた。試験の主要評価項目は、二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが5以上のPD-L1陽性患者におけるOS、および二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが5以上の患者における盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価によるPFS。主な副次評価項目は、二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが1以上および割り付けられた全ての患者におけるOS、および二ボルマブとヤーボイの併用療法を受けた患者におけるOSと症状悪化までの期間である。

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TN乳がんの術後補助療法、パクリタキセル+カルボプラチンでDFS改善/JAMA Oncol

 手術可能なトリプルネガティブ(TN)乳がんへの術後補助療法において、パクリタキセルとカルボプラチンの併用が標準レジメンより5年無病生存率が有意に高かったことが、無作為化第III相試験(PATTERN試験)で示された。中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのKe-Da Yu氏らが報告した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年8月13日号に掲載。 本試験は中国の9施設のがんセンターと病院で実施された。対象患者は2011年7月1日~2016年4月30日に登録し、データはITT集団で2019年12月1日~2020年1月31日に解析した。・対象: 18~70歳の手術可能なTN乳がんの女性(病理学的に確認された局所リンパ節転移のある患者もしくは原発腫瘍径10mm超のリンパ節転移のない患者)で、除外基準は、転移ありもしくは局所進行の患者、TNではない乳がん患者、術前治療(化学療法、放射線療法)を受けた患者・試験群: 1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2+カルボプラチン(AUC 2)、28日ごと6サイクル投与(PCb群)・対照群:シクロホスファミド500mg/m2+エピルビシン100mg/m2+フルオロウラシル500mg/m2を3週ごと3サイクル投与後、ドセタキセル100mg/m2を3週ごと3サイクル投与(CEF-T群)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間、遠隔DFS、無再発生存期間、BRCA1/2もしくは相同組換え修復(HRR)関連遺伝子の変異がある患者のDFS 、毒性  主な結果は以下のとおり。・手術可能なTN乳がん患者647例(平均年齢[SD]:51[44~57]歳)をCEF-T群(322例)またはPCb群(325例)に無作為に割り付けた。・中央値62ヵ月の追跡期間で、PCb群はCEF-T群よりDFSが長かった(5年DFS:86.5% vs.80.3%、ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.44~0.96、p=0.03)。遠隔DFSと無再発生存期間でも同様の結果が認められた。・全生存期間は統計学的な有意差がみられなかった(HR:0.71、95%CI:0.42~1.22、p=0.22)。・サブグループ解析では、BRCA1/2変異のある患者のDFSのHRは0.44(95%CI:0.15~1.31、p=0.14)、HRR関連遺伝子変異のある患者では0.39(95%CI:0.15~0.99、p=0.04)であった。・安全性データは既知の安全性プロファイルと一致していた。 著者らは、「これらの結果から、手術可能なTN乳がん患者においてパクリタキセルとカルボプラチンの併用が術後補助化学療法の代替の選択肢となりうることが示唆される。分子分類の時代においては、PCbが有効なTN乳がんのサブセットをさらに調べる必要がある」としている。

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白斑治療、JAK阻害薬のクリーム剤が有望

 白斑は慢性の自己免疫疾患で、皮膚の脱色とともに生活の質の低下をもたらす。白斑には承認された治療薬がなく、現行の適応外療法の効果は限定的である。改善された治療の開発が待たれる中、JAK阻害薬ルキソリチニブ(本邦では骨髄線維症、真性多血症の適応で承認)のクリーム製剤が、有望な治療選択肢となりうることが報告された。米国・タフツ・メディカルセンターのDavid Rosmarin氏らによる最長52週間にわたる第II相多施設共同二重盲検無作為化対照試験において、ルキソリチニブ・クリームの治療により、かなりの白斑病変で再色素沈着が認められ、忍容性は検討した全投与量で良好であったことが示された。結果を踏まえて著者は、「示されたデータは、ルキソリチニブ・クリームは、白斑患者にとって効果的な治療オプションとなりうることを示すものであった」と述べている。Lancet誌2020年7月11日号掲載の報告。 研究グループは、白斑患者におけるルキソリチニブ・クリームの治療効果を調べるとともに、最長52週の二重盲検治療の有効性と安全性を評価した。 試験は米国18州26の病院および医療センターで行われた。色素脱失が顔面の体表面積(BSA)の0.5%以上および顔面以外のBSAで3%以上の患者を、1対1対1対1対1の割合でインタラクティブなレスポンス技術を用いて無作為に、(1)ルキソリチニブ・クリーム1.5%を1日2回、(2)同1.5%を1日1回、(3)同0.5%を1日1回、(4)同0.15%を1日1回、(5)溶媒(対照群)を1日2回それぞれ投与する5群に割り付けた。各群とも総BSAの20%以下の病変部に24週間塗布した。 対照群と0.15%塗布群の被験者は、24週時点の評価でF-VASI(facial Vitiligo Area Scoring Index)によるベースラインからの25%以上の改善が示されなかった場合、再無作為化を行い、(1)(2)(3)の高用量の3群のいずれかに割り付けた。(1)(2)(3)各群の被験者は、52週まで元の用量のままだった。 被験者、研究者、試験スポンサー(中間解析および主要評価項目解析のデータモニタリングチームのメンバーは除く)は、試験期間中、治療の割付は知らされないままだった。 主要評価項目は、24週時点のF-VASIのベースラインからの50%以上改善(F-VASI50)を達成した患者割合で、intention-to-treat解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・2017年6月7日~2018年3月21日に、205例が適格性のスクリーニングを受け、48例が除外され、157例(平均年齢48.3[SD 12.9]歳、男性73例[46%])が無作為化を受けた。・157例は、33例(21%)が(1)群、30例(19%)が(2)群、31例(20%)が(3)群、31例(20%)が(4)群、32例(20%)が(5)の対照群に割り付けられた。・24週時点のF-VASI50達成患者割合は対照群との比較において、(1)群(15/33例[45%])と(2)群(15/30例[50%])で、有意に高率であった。・4例で治療に伴う重篤な有害事象がみられた。(1)群で1例が硬膜下血腫、(2)群で1例が痙攣発作、(3)群で冠動脈閉塞、食動アカラシア(各1例)がみられたが、いずれも試験治療とは無関係であった。・治療関連の有害事象は塗布部のかゆみが最も頻度が高く、(1)群1/33例(3%)、(2)群3/30例(10%)、(3)群3/31例(10%)、(4)群6/31例(19%)で、また対照群では3/32例(9%)報告された。・治療関連の有害事象としてのざ瘡は、ルキソリチニブ・クリーム投与群で13/125例(10%)、対照群で1/32例(3%)報告された。・すべての治療関連の有害事象の重症度は軽度~中等度で、治療群間で同等であった。

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第21回 アフリカはCOVID-19流行をうまく切り盛りしている~集団免疫が可能か?

アフリカ大陸での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者数は8月6日に100万人を超えましたが勢いは衰えており、以降13日までの一週間の増加率はその前の週の11%より低い8%でした1)。アフリカの国々は最初のSARS-CoV-2感染が同大陸で確認されてから8月14日までの6ヵ月間に多くの手を打ちました2)。速やかにロックダウンを実行し、診断や治療体制を整え、いまやすべての国で人口1万人あたり100の検査を提供しています。重篤な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に必要となる酸素もより供給できるようになっており、最初は69棟だった酸素プラントは倍近い119棟に増えています。酸素濃縮器も2倍を超える6,000台超を備えます。世界保健機関(WHO)がアフリカのデータを解析したところ2)、最初の感染発見からおよそ2~3週間後の感染急増は生じておらず、ほとんどの国での増加はゆっくりであり、増加の山場ははっきりしていません。どうやらアフリカはCOVID-19流行をいまのところうまく切り盛りしているようです3)。先月7月末のmedRxiv報告4)によると、ケニアの15~64歳の実に20人に1人、数にして160万人がSARS-CoV-2感染指標の抗体を有していると約3,000人の献血検査結果から推定されました。しかしケニアの病院でCOVID-19発症患者は溢れかえってはいません。モザンビークの2都市・ナンプラやペンバでおよそ1万人を調べた調査では、職業によって3~10%がSARS-CoV-2への抗体を有していましたが、診断数はずっと少なく、およそ75万人が住むナンプラでその時点で感染が確定していたのはわずか数百人ほどでした3)。マラウィでの試験でも同様に驚く結果が得られています5)。同国の大都市ブランタイアの無症状の医療従事者500人を調べたところ10人に1人を超える12.3%がSARS-CoV-2への抗体を有していると判断され、その結果や他のデータに基づくと、その時点でのブランタイアでのCOVID-19による死亡数17人は予想の1/8程でしかありませんでした。そのように、アフリカの多くの国の医療は不自由であるにもかかわらずCOVID-19死亡率は他の地域を下回ります。最近の世界のCOVID-19感染者の死亡率は3.7%ですが6)、アフリカでは2.3%(8月16日時点で死亡数は2万5,356人、感染例数は111万53人)7)です。より高齢の人ほどCOVID-19による死亡リスクは高まりますが、アフリカの人々の6割以上は25歳未満と若く、そのことがCOVID-19による死亡が少ないことに寄与しているかもしれないとWHOは言っています1)。それに、COVID-19の重症化と関連する肥満や2型糖尿病等の富裕国に多い持病がアフリカではより稀です。また、風邪を引き起こす他のコロナウイルスにより接していることや、マラリアやその他の感染症に繰り返し曝されていることでSARS-CoV-2を含む新たな病原体と戦える免疫が備わっているのかもしれません3)。ケニア人が重病化し難いことに生来の遺伝的特徴が寄与していると想定している研究者もいます。これからアフリカではギニア、セネガル、ベニン、カメルーン、コンゴ共和国の数千人のSARS-CoV-2抗体を調べる試験が始まります。WHOの指揮の下での国際的な抗体検査にはアフリカの11ヵ国の13の検査拠点が参加しています。抗体は感染しても備わらない場合もありますし、備わっても徐々に失われるとの報告もあるので抗体保有率は真の感染率を恐らく下回るでしょうが、得られたデータはアフリカでの感染の実態の把握を助けるでしょう。もしアフリカで数千万人がすでにSARS-CoV-2に感染しているとするなら、ワクチンに頼らず感染に身を任せて集団免疫を獲得して流行を終わらせることに取り組んでみたらどうかという考えが浮かぶと国境なき医師団の研究/指導部門Epicentre Africaで働く微生物/疫学者Yap Boum氏は言っています3)。経済を停滞させ、長い目で見るとむしろ人々の健康をより害しかねない制約方針よりも集団免疫を目指すほうが良い場合もあるかもしれません。感染数に比して死亡数が明らかに少ないアフリカなら集団免疫の取り組みが許されるかもしれず、真剣に検討してみる必要があるとBoum氏は話しています。参考1)Coronavirus: How fast is it spreading in Africa? /BBC2)Africa marks six months of COVID-19/WHO3)The pandemic appears to have spared Africa so far. Scientists are struggling to explain why/Science 4)Seroprevalence of anti-SARS-CoV-2 IgG antibodies in Kenyan blood donors. medRxiv. July 29, 20205)High SARS-CoV-2 seroprevalence in Health Care Workers but relatively low numbers of deaths in urban Malawi. medRxiv. August 05, 20206)Situation reports, WHO African Region/12 August 20207)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) / Africa Centres for Disease Control and Prevention

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二ボルマブの食道および胃食道接合部がん術後補助療法、DFS延長示す(CheckMate-577)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2020年8月11日、切除後の食道がんまたは胃食道接合部(GEJ)がん患者の術後補助療法としてニボルマブを評価した第III相CheckMate -577試験において、予め計画されていた中間解析で二ボルマブが主要評価項目である無病生存期間(DFS)を達成したことを発表した。 同試験において、二ボルマブは、プラセボと比較して、術前補助化学放射線療法(CRT)後に腫瘍切除を受けた、すべての患者集団において主要評価項目であるDFSで統計学的に有意な改善を示した。二ボルマブの安全性プロファイルは、これまでに報告された試験のものと一貫していた。 CheckMate -577試験は、術前補助CRTを受け、病理学的に完全奏効が得られなかった切除後の食道がんまたはGEJがん患者の術後補助療法として二ボルマブを評価した多施設無作為化二重盲検第III相臨床試験。主要評価項目はDFS、副次評価項目はOSである。術前CRTおよび外科的完全切除後に、患者は無作為に割り付けられ、プラセボまたは二ボルマブ240mgを2週間間隔で16週間点滴静注を受け、その後二ボルマブ480mgを4週間間隔で病勢進行もしくは忍容できない毒性が認められるまで投与を受けた。

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バレット食道検出の非内視鏡検査、がん診断に有用か/Lancet

 逆流性食道炎患者におけるバレット食道の検出手技として開発された非内視鏡検査手技「Cytosponge-TFF3」は、検出を改善し治療可能な異形成および早期がんの診断につながる可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のRebecca C. Fitzgerald氏らによる、多施設共同による実用的な無作為化試験の結果、示された。Cytosponge-TFF3は、スポンジを内包したひも付きカプセル(Cytosponge)を患者に飲んでもらい、胃に達してカプセルが溶解してスポンジが膨張したところで引き出し、食道全体を拭うようにしてスポンジで採取した細胞を使って、バレット食道マーカーTFF3の検出有無を調べるという検査法。採取は患者が座位のまま10分程度で済むことから、研究グループは、プライマリケアで逆流性食道炎治療を受けている患者にこの検査を行うことで、通常ケアと比較してバレット食道の検出が増加するかを調べる試験を行った。異形成を伴うバレット食道の治療は、腺がん進行を防ぐが、バレット食道の最適な診断戦略は明らかになっていない。Lancet誌2020年8月1日号掲載の報告。英国109のGP診療所で通常ケアvs.通常ケア+Cytosponge-TFF3の無作為化試験 試験は英国内109の社会人口統計的に多様な総合医(GP)の診療所で行われた。GP診療所単位(クラスター)および患者個人レベルで無作為化を行い、結果は統合する前に無作為化のタイプ別に解析した。 適格患者は、50歳以上で、逆流性食道炎の症状のために胃酸抑制薬を6ヵ月以上服用しており、過去5年間内視鏡検査を受けていない場合とした。GP診療所は、地域のクリニカル研究ネットワークから選択して試験参加を呼び掛けた。 クラスター無作為化試験では、試験統計学者がコンピュータ無作為化シークエンスを用いてGPを1対1の割合で割り付けた。患者の無作為化は、試験センターで用意したコンピュータ無作為化シークエンスを用いてGP診療所が行い、1対1の割合で割り付けた。 無作為化後、被験者は、逆流性食道炎の標準的な治療(通常ケア群)または通常ケア+Cytosponge-TFF3の提案を受けた(介入群)。通常ケア群は、GPが必要と判断した場合にのみ内視鏡検査を受けた。一方、介入群はCytosponge-TFF3で陽性が確認された場合は内視鏡を受けることとした。 主要アウトカムは、試験登録後12ヵ月時のバレット食道の診断で、1,000人年当たりの割合で算出し、全介入群(Cytosponge-TFF3の要請を受け入れたか否かにかかわらず)と全通常ケア群を比較し評価した。解析はintention-to-treat法にて行った。介入群でのバレット食道の検出が有意に増大 2017年3月20日~2019年3月21日に、113のGP診療所が登録したが、4診療所が無作為化直後に参加を取り下げた。残った109診療所の電子処方記録を自動検索し1万3,657例の適格患者を特定した。患者には、オプトアウトを14日間と設定した試験参加のレターが送られた。 患者のうち1万3,514例が無作為化を受けた(通常ケア群6,531例、介入群6,983例)。無作為化後のさらなる精査で、介入群の149/6,983例(2%)および通常ケア群の143/6,531例(2%)がすべての試験適格性を満たしておらず、あるいは試験から脱落した。 残った介入群6,834例のうち、Cytosponge-TFF3を受ける意思を示したのは2,679例(39%)。そのうち1,750例(65%)が、電話スクリーニングですべての適格性を満たし、かつCytosponge-TFF3を受けた。これら患者の大半(1,654例[95%]、年齢中央値69歳)が、Cytospongeの飲み込みに成功し、検体を採取した。 231/6,834例(3%)が、Cytosponge-TFF3の結果が陽性で、内視鏡検査の紹介受診となった。介入群でCytosponge-TFF3を拒否した患者と通常ケア群は、GPが必要とした場合にのみ内視鏡検査を受けたが、結果として平均12ヵ月のフォローアップ期間中にバレット食道と診断されたのは、介入群140/6,834例(2%)、通常ケア群13/6,388例(<1%)であった(絶対群間差:18.3例/1,000人年[95%信頼区間[CI]:14.8~21.8]、クラスター無作為化について補正後の率比:10.6[95%CI:6.0~18.8]、p<0.0001)。 介入群6,834例のうち9例(<1%)が、バレット食道(4例)もしくはStageIの食道-胃接合部がんと診断された。一方で、通常ケア群ではバレット食道もしくはStageIの食道-胃接合部がんと診断された例はなかった。 Cytospongeによる検体採取に成功した介入群1,654例において、Cytosponge-TFF3の結果が陽性で内視鏡検査となったのは221例(13%)で、131例(8%、内視鏡検査を受けた被験者の59%)がバレット食道またはがんと診断された。 なお、Cytospongeが糸から外れ内視鏡的除去を要した患者が1例報告されている。また、最も多く認められた有害事象は、63/1,654例(4%)で報告された喉の痛みであった。 これらの結果を踏まえて著者は、「追加の内視鏡検査を要する偽陽性の結果はわずかで、通常ケア+Cytosponge-TFF3戦略の有効性は経済的評価によって確立しうるだろう」と述べている。

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わが国の急性心不全患者の実態は?1万3千例の調査(JROADHF)/日本循環器学会

 急性心不全の入院患者における全国多施設共同後ろ向き観察研究のJROADHF(Japanese Registry Of Acute Decompensated Heart Failure)研究の結果が、第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で、井手 友美氏(九州大学医学研究院循環器病病態治療講座)より発表された。全体として、左室収縮能が保持された心不全(HFpEF)が多く、予後は依然として悪いことが示唆された。JROADHF研究で心不全の原因は虚血性疾患27%、弁膜疾患19% JROADHF研究の対象患者は、日本循環器学会が実施している循環器疾患診療実態調査(JROAD)からランダムに抽出した施設で、2013年1月1日~12月31日の1年間にJROAD-DPCに登録された16歳以上の急性心不全の入院患者で、1万3,238例が登録された。 JROADHF研究の主な結果は以下のとおり。・1万3,238例の平均年齢(±SD)は78.0(±12.5)歳、中央値は81.0歳で、男性の割合は52.8%であった。・入院時のBNP中央値は693pg/mLであった。・左室駆出分画(EF)による分類では、HFpEF(HF with preserved EF)が45%、HFmrEF(HF with mid-range EF)が18%、HFrEF(HF with reduced EF)が37%だった。男性(6,991例)ではHFrEF(46%)がHFpEF(35%)より多く、女性(6,247例)では逆にHFpEF(56%)がHFrEF(27%)より多かった。・心不全の原因別の割合は、虚血性疾患27%、弁膜疾患19%、不整脈17%、高血圧16%、心筋症12%であった。男性では虚血性疾患(34%)、心筋症(15%)が多く、女性では弁膜疾患(25%)、高血圧(18%)が多く、不整脈は男性(15%)、女性(19%)ともに多かった。・院内死亡は7.7%にみられ、死因は心血管死が77%、非心血管死が21%であった。心血管死では心不全が79%と多く、非心血管死では肺炎が43%と多かった。・退院後の観察患者1万1,120例における無イベント生存率の解析から、4年目の全死亡率が44.3%、1年時の心不全入院率は31.5%であった・長期的な死亡原因は、心血管死が48%、非心血管死が37%であった。心血管死では心不全(75%)、非心血管死では肺炎(31%)とがん(24%)が主な死因であった。 なお現在、心不全の発症や予後の正確な予測、治療の最適化のための前向き研究であるJROADHF-NEXT研究の登録が進んでいる。JROADHF-NEXT研究は、フレイルまたはサルコペニア、精神的および社会的因子を含んだ心不全データベースで、新たなバイオマーカー発見のためにバイオバンクを創設、またDPC情報と臨床情報を結び付けて検証するもので、2020年7月30日現在、101施設から2,678例が登録されているという。

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卵巣腫瘍の悪性度診断に最適な予測モデルは?/BMJ

 卵巣腫瘍で手術または保存療法を受けた患者における診断予測モデルを検証した結果、ADNEXモデルとSRRiskが、腫瘍が良性か悪性かを識別する最適なモデルであることが、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のBen Van Calster氏らによる検討で明らかにされた。卵巣腫瘍では最適な治療を選択するため、悪性度を予測するモデルが必要になる。既存の予測モデルは手術を受けた患者のデータのみに基づいており、モデルの検証も大半が手術を受けた患者のデータを使用したもので、キャリブレーションや臨床的有用性の評価はほとんど行われていないという。BMJ誌2020年7月30日号掲載の報告。手術または保存療法を受けた患者を対象に6つのモデルについて検証 研究グループは、卵巣腫瘍で手術または保存療法を受けた全患者において、悪性度に関する診断予測モデルのパフォーマンス評価を目的とする多施設コホート試験を行った。 検証したモデルは、1990年に開発され最もよく使用されている「RMI(risk of malignancy index)」と、その後に開発された「IOTA(International Ovarian Tumour Analysis)モデル」のLR2(logistic regression model 2)、simple rules、SRRisk(simple rules risk model)、ADNEX(assessment of different neoplasias in the adnexa)モデルで、ADNEXモデルについては腫瘍マーカーのCA125の測定有無を加味して評価した。ADNEXモデルでは、悪性腫瘍のリスクの細分化(StageIの原発性、StageII~IVの原発性、2次性の転移がん)が可能であった。 Calster氏らの検討は、IOTAモデルについて検証した試験「IOTAフェーズ5試験(IOTA5)」の中間解析データを用いて行われた。試験は、14ヵ国36ヵ所のがん紹介治療センター(特定の婦人科腫瘍ユニットがある3次医療センター)またはその他のタイプの医療センターにおいて、2012年1月~2015年3月に卵巣腫瘍で受診し、手術またはフォローアップを受けた連続成人患者を対象とした。 主要アウトカムは、上記6つのモデルについて、全体および施設別の識別度、キャリブレーションおよび臨床的有用性。アウトカムは、患者が手術を受けた場合は組織学的評価に基づくものとし、保存療法の場合は12ヵ月時点での臨床的および超音波評価のフォローアップの結果に基づくものとした。フォローアップに基づくアウトカムが不確かな場合は複数の評価が用いられた。ADNEXモデル、SRRiskが最も優れる 主要解析には、手術およびフォローアップデータについて厳格な質的基準を満たした17ヵ所の被験者データ(全患者8,519例のうち5,717例)が包含された。そのうち812例(14%)が、試験登録時にすでにフォローアップを受けており、解析には4,905例が包含された。 アウトカムが良性であった患者は3,441例(70%)、悪性は978例(20%)。残りはアウトカムが不確かで(486例、10%)、大半はフォローアップの情報が限定的だったことによる。 全体でROC曲線下面積が最も高値だったのはADNEX(CA125あり)モデル(0.94、95%信頼区間[CI]:0.92~0.96)、ADNEX(CA125なし)モデル(0.94、0.91~0.95)、SRRisk(0.94、0.91~0.95)で、最も低値だったのはRMIだった(0.89、0.85~0.92)。 キャリブレーションはすべてのモデルについて施設間のばらつきが大きかったが、その中でADNEXモデルとSRRiskのキャリブレーションは最も優れていた。腫瘍サブタイプの推定リスクのキャリブレーションは、CA125が予測因子として含まれていたか否かにかかわらずADNEXは優れていた。また、臨床的有用性(ネットベネフィット)もADNEXモデルとSRRiskが最も高く、RMIが最も低かった。 1回以上フォローアップの超音波評価を受けた患者(1,958例)において、全体のROC曲線下面積は、RMIの0.76(95%CI:0.66~0.84)からADNEX(CA125あり)の0.89(0.81~0.94)に、ばらつきの範囲がわたっていた。

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千葉大総診の神髄本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第33回

【第33回】千葉大総診の神髄本臨床推論の本はいくつかありますが、誰でも診断できるよう一般化してしまうと各論がボヤけてしまって、逆に細かい鑑別まで突き詰めようとすると誰にも体得できないという”トレードオフ”の現象が存在します。全を取れば個が取れず、個を取れば全が取れず。『外来診療の型』鈴木 慎吾/著. メディカル・サイエンス・インターナショナル. 2020年このたび千葉大総診の真骨頂とも言える新たな臨床推論の本が出ました。表紙やタイトルを見ると「もしかして難しい書籍かな……」と身構えてしまいそうになりますが、とんでもござーせん。緻密ながらフランクな内容。著者の鈴木先生のギャグセンスもなかなかのもの(なぜか上から目線)。浮腫や咳嗽など、一般的な症候から診断を絞り込んでいく点は、ほかの臨床推論の本と似ていますが、驚くべきは用意されている問診や、診察の”型”の圧倒的な質の高さ。指導医が10年20年と臨床をやってきて体得してきた“型”を惜しみなく吐き出したバケモノ本です。そして、誰もが研修医時代に学んだOPQRST、その有用性を改めて認識させてくれました(表)。OPQRST revisit!いろいろな症候に汎用できるゴロ合わせですよね。O:Onset(発症様式)P:Provocation/Palliative factor(増悪/寛解因子)Q:Quality(性状)R:Related symptoms(関連症状)S:Severity/Site (強さ・重症度/部位)T:Time course(経過・日内変動)この本は、実際に患者さんを診察している風景をイメージするというよりも、千葉大総診のカンファレンスで診断当てゲームをしているような(そこまで難解な診断ではない「ドクターG」のような)感じで取り組むとよいと思います。たとえば、胸痛の章では、ガチ臨床推論の医学書だとTietze症候群やMondor病のような聞いたこともない診断名が解答になっていることが多いのですが、この本ではベリーコモンな疾患が答えになっていました。こういうの好きです。めちゃくちゃ考えさせられて、実はコモンディジーズみたいな。「1+1=2を証明せよ」、「一般角θに対してsinθ、cosθの定義を述べよ」、「円周率が3.05よりも大きいことを証明せよ」みたいな、東大の数学入試問題を彷彿とさせる、良問的良書に仕上がっています。『外来診療の型』鈴木 慎吾 /著出版社名メディカル・サイエンス・インターナショナル定価本体4,500円+税サイズA5判刊行年2020年

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第19回 炎上したLINE健康相談の件、広報からのモヤモヤ回答を一挙公開!

新型コロナウイルス感染症パンデミックの結果、日本国内の医療の中でやや前進を見せていることがあるとするならば、オンライン診療の拡大傾向である。4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」では、感染拡大防止の観点から、「非常時対応」と断りながらも電話やオンラインによる診療・服薬指導の活用を促した。これに対応し、厚生労働省(以下、厚労省)の医政局医事課と医薬・生活衛生局総務課は連名で4月10日付の事務連絡を発出し、初診を含むオンライン診療・服薬指導を時限的・特例的に容認している。同事務連絡は感染拡大動向を踏まえて3ヵ月に1度の見直しを行っているが、今のところは継続されている。あくまで時限的・特例的措置だが、今後これをきっかけに診療報酬上のオンライン診療の条件緩和などが進められる可能性は否定できない。このオンライン診療は厚労省が作成した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づいて行われる。そして同指針ではオンライン診療と似て非なる「遠隔(オンライン)健康医療相談」を定義している。これは、医師がパソコンやスマホなどの通信機器を利用して医学的な助言を行うもの、医師以外が一般的な医学情報の提供や受診勧奨を行い、いずれも相談者個人の状況に応じた具体的な判断を行わないものを指す。ちなみに厚労省指針では「遠隔健康医療相談」について詳細な規定はしていない。ただ、今回のコロナ禍を反映し経済産業省の主導下で「遠隔健康相談事業」が開始され、メドピアの連結子会社Mediplat社、コミュニケーションアプリLINEで有名なLINE株式会社の連結子会社LINEヘルスケアが受託し、8月末まで無料の健康相談を提供している。ところが今月2日、LINEヘルスケアの遠隔健康相談を利用した人が相談対応医師から罵倒されたというチャット内容がTwitter上に投稿され炎上。この結果、同社はこの事例が規約違反の不適切事例に当たるとしてホームページ(HP)に謝罪文を公表した。この件、端的に言うならば、ごく1人のアウトサイダー医師がやったことで終わりになるはずだが、このLINEヘルスケアのHPでの規約、医師募集の要綱などを見ると、いくつかの疑問が浮かんできた。まず、このオンライン健康相談は、対応診療科が内科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科の6診療科である。ところがこの募集要項では「これらの科目における専門医資格等は必要ございません」「相談対応可能な診療科は自己申告いただきます」とのこと。たぶん多くの利用者は、対応診療科の専門家から回答が得られると期待しているはずだ。また、利用規約では相談でのやり取りを「コンテンツ」と規定し、再利用の可能性があることを表記している。今回の不適切事例でモニタリングを強化すると同社は謝罪文に記載しているが、それがどのような形で行われるのかが想像しにくい。ということで、4点の質問を送ったところ広報部門であるPR室からは次のような回答が返ってきた。▽今回の遠隔健康相談に関して、医師募集要項では対応診療科の専門医資格などは要らない旨を明記しておりますが、これはどういう理由からそのような規定としたのでしょうか?回答LINEヘルスケア社では、医師免許および本人確認を徹底し、当社所定の基準を満たした医師に参加いただいております。さらに、参加する医師には当社ガイドライン、各種法規制の遵守する事に同意いただいております。LINEヘルスケアの健康相談サービスには医行為は含まれませんが、対応科目については、医師自身が対応可能と判断したものを標榜いただいております。▽相談内容と回答内容を「コンテンツ」として、再頒布を可能としたのはなぜでしょうか?回答利用規約7.4及び7.5については、知的財産その他のプライバシー以外の観点から、弊社が、医師と相談者の間で交わされた健康相談の内容について、本人を識別しうる情報を削除した上で二次利用を行う上で必要な許諾等を得るためのものです。同規定に基づく許諾にかかわらず、医師と相談者間の健康相談の内容については、通信の秘密であり、かつ個人情報にあたることから、個別かつ明示的な同意を相談者から取得した上で利用させていただいており、無制限に弊社が相談内容を利用しうることを予定したものではありません。▽お詫びのページに追記した、「モニタリング」とは具体的にどのように行うのでしょうか?回答厚労省のオンライン診療ガイドラインを基にLINEヘルスケア社独自の医師向けガイドラインを作成しており、24時間365日モニタリングを実施しております。しかしながら、医師と相談者の間のコミュニケーションは、電気通信事業法上の通信の秘密に当たり、また医師法上も医師の守秘義務の対象として、弊社を含む第三者がみだりに内容を閲覧することは制限されております。そのため、弊社では、双方の事前同意の範囲内で、リアルタイムでの監視については自動モニタリングを実施しております。今後は、キーワードの見直しを含むモニタリング体制等の見直しを図り、再発防止策を検討、対応してまいります。▽(健康相談で)「おすすめ医師」として推奨表示される医師は、科目×回答数の多さのようですが、回答が多い医師は専門性が高いとはいえますか?回答おすすめ医師のレコメンドのロジックについては、公表していないため、お応え出来かねます。個人的な感想を言うと、どの回答もすっきりと腹落ちはしない。ちょうどこの件については私も発起メンバーの一人でもある「医薬品産業イノベーション研究会」で8月5日に緊急オンライン講演会を開催した。演者はこれまで複数の医療者向けあるいは患者向けの医療情報サイトに携わった編集者の田中 智貴氏(元QLife編集長)だ。今回の問題の根底について田中氏は「LINEヘルスケアではB to Cのサービスとして考えているのに対し、相談者側はD(Doctor) to P(Patient)と考え、双方の期待値に差異があった」と指摘する。いわゆる診断のような医学的判断を伴うオンライン診療、オンライン受診勧奨をメディカル領域、今回のLINEヘルスケアによる健康相談をヘルスケア領域と分類した場合、田中氏は「へルスケア領域はメディカルと同等の権威付けをしたがる」との見解示す。具体的に言うと、たとえば健康食品の宣伝で「○○学会で効果に関して発表」のようなもの。今回の件で言うと、オンラインの健康相談は医師でなくとも可能だが、それを医師がやることを強調する点だ。実際、LINEヘルスケアのHPでは今回のサービスについて「さまざまな不安に医師が直接お答えします」と銘打っている。ただ、そのHPをスクロールして最後になるとようやく注意事項として「本サービスは医師による健康相談のサービスです。症状の診断や治療といった判断を医師に求めることはできません」と表記してある。結果として、この辺はサービス利用者自身の不注意・誤解も含め、期待値の齟齬を起こしてしまう可能性があるということだ。また、田中氏は前述のような回答診療科医師をあくまで自己申告制で募集している背景には、昨年12月のサービススタート以降、LINEヘルスケア公式アカウントの友だち数や相談件数の急増により、回答医師を急募して今回のような利用者に暴言を吐くような医師まで参加する質の低下を招いているのではないかと分析。さらに今回の健康相談サービス全般を見た印象としてIT系のB to C企業によくみられる、ベーシックな機能を備えた段階でとりあえずサービスをスタートさせ、その後、要所要所でユーザーの反応などを見ながら改修していくアジャイル的手法が見受けられると指摘。「医療に関しては軽微でもトラブルがあってはならない」と述べて、そもそもIT系企業お得意の手法がこの領域では馴染まないとの認識を示した。こうした田中氏の指摘、LINEヘルスケアのアカウントを友だち追加後に中を見て発見した疑問点、第一弾の問い合わせの回答に対する疑問点などを含め、再度LINEのPR室に質問を送付し、回答を受け取った。▽前回の回答で登場する厚労省のオンライン診療ガイドラインを参考にした医師向けの自社のガイドラインは、厚労省ガイドラインとどのような違いがあるのでしょうか?回答医師向けのガイドラインは一般向けに公表しておりませんので、お応えしかねます。▽健康相談の回答医師の「資格」の欄には学会しか明記されておらず、単に学会員としての登録なのか、専門医・指導医なのか、会員資格などが更新されているかどうかのチェックは御社では行われているのでしょうか?回答一部ユーザーの方に誤解を招く可能性も勘案し、ご指摘の箇所についての対応の見直しを検討いたします。▽相談可能な診療科が自己申告であり、かつ一般的な医師の専門診療科数が1~2科である中で、御社サービスのおすすめ医師として表示された32人中20人が6診療科対応となっており、御社がコンテンツと定義する医師側の相談対応内容のクオリティコントロールが適正とは言えないかと思います。回答本サービスにて健康相談を実施するのは医師であり、医師自らの責任で相談がなされるサービスです。他方、クオリティコントロールをプラットフォーム提供事業者としてどのようにしていくのかという点については検討のうえ、対応していければと思います。▽サービス利用者は各診療科の専門医に相談ができるとの期待値を持って相談しているケースは少なくないと思われます。結果として「錯覚商法」のようになっていますが、この点について御社ではどのようにお考えでしょうか?回答遠隔健康相談は、個別具体的な症状に対する診断を下すものでなく、医学的知見を用いて医師が一般的な助言をするにとどまるものであり、LINEヘルスケアとしては特段専門医とつながるサービスを標榜してはおりません。専門分野の標榜の箇所もあるので、診療科の標榜が必ずしもユーザーの誤解を招くものではないと認識しております。▽登録医師の中には医療法上広告が認められていない診療科を標榜したり、自由診療を行っている旨の記載など自院誘導ともとられかねないプロフィール表記も認められます。また、登録を禁止している海外勤務医も存在します。法令や規約に基づくチェック体制が不十分と思われますが、この点についてのご見解をお聞かせください。また、現状このチェック体制がどのようになっているかも合わせてご回答お願い致します。回答LINEヘルスケアにおける医師の表記については、医療広告ガイドラインの適用は受けないと判断しております。しかしながら、ご指摘の「自院誘導ととらえられかねないプロフィール表記」については、場合によっては同ガイドラインの適用を受けることはあるものと存じます。もっとも、このような表記は、利用規約において禁止される行為となっています。現在のプロフィールチェック体制につきましては、回答を控えさせていただきます。ただし、今後は、ユーザーの皆さまに誤解を招く可能性があることを勘案し、ご指摘いただいている内容の見直しは検討してまいります。▽今回の不適切事例は相談内容が対応診療科ではない精神科のものでしたが、これまでのモニタリングではこのようなものの検出は不可能だったのでしょうか? また、キーワードによるモニタリングを行っているようですが、モニタリングキーワードは何件くらい設定しているのでしょうか? 今後の強化でこの件数はどのくらい増加する見込みでしょうか?回答モニタリング体制については、先日ご回答をさせていただきました内容以上の開示をしておりません。今後の見直しにつきましても、詳細が確定しましたらご案内とさせていただきます。▽他の医療相談サービスでは規約に含まれていない「コンテンツ」を定義した目的を教えてください。また、コンテンツの再頒布はどのような事例を念頭に置いてのことかを具体例をお教えください。回答おそらく指摘いただいているものと思われる規定は、いわゆるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の取扱いに係るものであり、一般的な規定と考えます。現に、他社の同種サービスの規約にもUGCの取扱に係る規定があることはご指摘を受けて確認しておりますので、貴社にて改めてご確認ください。なお、繰り返しになりますが、コンテンツの利用に係る規定は、ご指摘の規定以外にもプライバシーポリシー等に従う必要があり、弊社がコンテンツを自由に扱うことを目的としたものとはならないため、ご留意ください。*注:LINEのPR室によるとUGCのユーザーに医師は該当していないとのこと▽「令和2年度補正遠隔健康相談体制強化事業」として税金補助を受けており、「オンライン遠隔健康相談サービス」において、主導的な役割を果たす立場でありながら、「回答は一般的なアドバイスであること」や「診断・治療行為ではないこと」を発見性が低い、ページ下部に表記することなど、消費者の有利誤認を誘うようなサービスデザインを行っていることについて、企業姿勢としてどのようにお考えでしょうか?回答本件につきましては、利用いただく際に誤認が生じないよう、利用開始時冒頭に注意事項の情報が必ず表示されるようになっております。残念ながら個人的なもやもや感はこの2回目の回答を受けても解消されてはいない。結局、最終的には遠隔(オンライン)健康相談そのものについても厚労省による指針作成が必要になるということだろうか?

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統合失調症と双極性障害の認知機能障害の比較~メタ解析

 認知機能障害は、統合失調症と双極性障害に共通して認められる。中国・マカオ大学のWen Li氏らは、統合失調症と双極性障害の認知機能障害を比較した研究のメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2020年9月1日号の報告。 国際および中国のデータベースを利用して、システマティックに検索した。統合失調症と双極性障害の認知機能をMATRICSコンセンサス認知機能評価バッテリー(MCCB)で比較した研究を、変量効果モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・12件の研究より対象患者9,518例(統合失調症:4,411例、双極性障害:5,107例)を分析に含めた。・統合失調症患者は、双極性障害患者と比較し、MCCB合計スコアおよびサブスケールスコアの有意な悪化が認められた。【エフェクトサイズ大】 ●合計スコア:SMD=-0.80(95%CI:-1.21~-0.39) ●注意スコア:SMD=-2.56(95%CI:-3.55~-1.57) ●社会的認知機能スコア:SMD=-0.86(95%CI:-1.13~-0.58)【エフェクトサイズ中】 ●処理速度スコア:SMD=-0.75(95%CI:-1.00~-0.49) ●ワーキングメモリスコア:SMD=-0.68(95%CI:-0.91~-0.45) ●言語学習スコア:SMD=-0.78(95%CI:-0.95~-0.61) ●視覚学習スコア:SMD=-0.65(95%CI:-0.83~-0.48) ●推論と問題解決スコア:SMD=-0.61(95%CI:-0.93~-0.29) 著者らは「統合失調症患者は、双極性障害患者と比較し、より重度の認知機能障害(とくに注意、社会的認知)を呈していた。認知機能障害のタイムリーな評価と治療は、両疾患の標準的なマネジメントプロトコールに盛り込まなければならない」としている。

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