バレット食道検出の非内視鏡検査、がん診断に有用か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/18

 

 逆流性食道炎患者におけるバレット食道の検出手技として開発された非内視鏡検査手技「Cytosponge-TFF3」は、検出を改善し治療可能な異形成および早期がんの診断につながる可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のRebecca C. Fitzgerald氏らによる、多施設共同による実用的な無作為化試験の結果、示された。Cytosponge-TFF3は、スポンジを内包したひも付きカプセル(Cytosponge)を患者に飲んでもらい、胃に達してカプセルが溶解してスポンジが膨張したところで引き出し、食道全体を拭うようにしてスポンジで採取した細胞を使って、バレット食道マーカーTFF3の検出有無を調べるという検査法。採取は患者が座位のまま10分程度で済むことから、研究グループは、プライマリケアで逆流性食道炎治療を受けている患者にこの検査を行うことで、通常ケアと比較してバレット食道の検出が増加するかを調べる試験を行った。異形成を伴うバレット食道の治療は、腺がん進行を防ぐが、バレット食道の最適な診断戦略は明らかになっていない。Lancet誌2020年8月1日号掲載の報告。

英国109のGP診療所で通常ケアvs.通常ケア+Cytosponge-TFF3の無作為化試験

 試験は英国内109の社会人口統計的に多様な総合医(GP)の診療所で行われた。GP診療所単位(クラスター)および患者個人レベルで無作為化を行い、結果は統合する前に無作為化のタイプ別に解析した。

 適格患者は、50歳以上で、逆流性食道炎の症状のために胃酸抑制薬を6ヵ月以上服用しており、過去5年間内視鏡検査を受けていない場合とした。GP診療所は、地域のクリニカル研究ネットワークから選択して試験参加を呼び掛けた。

 クラスター無作為化試験では、試験統計学者がコンピュータ無作為化シークエンスを用いてGPを1対1の割合で割り付けた。患者の無作為化は、試験センターで用意したコンピュータ無作為化シークエンスを用いてGP診療所が行い、1対1の割合で割り付けた。

 無作為化後、被験者は、逆流性食道炎の標準的な治療(通常ケア群)または通常ケア+Cytosponge-TFF3の提案を受けた(介入群)。通常ケア群は、GPが必要と判断した場合にのみ内視鏡検査を受けた。一方、介入群はCytosponge-TFF3で陽性が確認された場合は内視鏡を受けることとした。

 主要アウトカムは、試験登録後12ヵ月時のバレット食道の診断で、1,000人年当たりの割合で算出し、全介入群(Cytosponge-TFF3の要請を受け入れたか否かにかかわらず)と全通常ケア群を比較し評価した。解析はintention-to-treat法にて行った。

介入群でのバレット食道の検出が有意に増大

 2017年3月20日~2019年3月21日に、113のGP診療所が登録したが、4診療所が無作為化直後に参加を取り下げた。残った109診療所の電子処方記録を自動検索し1万3,657例の適格患者を特定した。患者には、オプトアウトを14日間と設定した試験参加のレターが送られた。

 患者のうち1万3,514例が無作為化を受けた(通常ケア群6,531例、介入群6,983例)。無作為化後のさらなる精査で、介入群の149/6,983例(2%)および通常ケア群の143/6,531例(2%)がすべての試験適格性を満たしておらず、あるいは試験から脱落した。

 残った介入群6,834例のうち、Cytosponge-TFF3を受ける意思を示したのは2,679例(39%)。そのうち1,750例(65%)が、電話スクリーニングですべての適格性を満たし、かつCytosponge-TFF3を受けた。これら患者の大半(1,654例[95%]、年齢中央値69歳)が、Cytospongeの飲み込みに成功し、検体を採取した。

 231/6,834例(3%)が、Cytosponge-TFF3の結果が陽性で、内視鏡検査の紹介受診となった。介入群でCytosponge-TFF3を拒否した患者と通常ケア群は、GPが必要とした場合にのみ内視鏡検査を受けたが、結果として平均12ヵ月のフォローアップ期間中にバレット食道と診断されたのは、介入群140/6,834例(2%)、通常ケア群13/6,388例(<1%)であった(絶対群間差:18.3例/1,000人年[95%信頼区間[CI]:14.8~21.8]、クラスター無作為化について補正後の率比:10.6[95%CI:6.0~18.8]、p<0.0001)。

 介入群6,834例のうち9例(<1%)が、バレット食道(4例)もしくはStageIの食道-胃接合部がんと診断された。一方で、通常ケア群ではバレット食道もしくはStageIの食道-胃接合部がんと診断された例はなかった。

 Cytospongeによる検体採取に成功した介入群1,654例において、Cytosponge-TFF3の結果が陽性で内視鏡検査となったのは221例(13%)で、131例(8%、内視鏡検査を受けた被験者の59%)がバレット食道またはがんと診断された。

 なお、Cytospongeが糸から外れ内視鏡的除去を要した患者が1例報告されている。また、最も多く認められた有害事象は、63/1,654例(4%)で報告された喉の痛みであった。

 これらの結果を踏まえて著者は、「追加の内視鏡検査を要する偽陽性の結果はわずかで、通常ケア+Cytosponge-TFF3戦略の有効性は経済的評価によって確立しうるだろう」と述べている。

(ケアネット)

専門家はこう見る

コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員

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