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うつ病の既往歴がある患者に対する禁煙治療は難しい?!

 大うつ病の既往は、禁煙治療中あるいは治療後の禁煙継続に悪影響を及ぼすことが報告された。米国・ノースウェスタン大学ファインバーグ医学校のHitsman氏らによるメタ解析の結果で、以前(2003年)の解析のアップデート報告。当時の報告では、大うつ病既往は禁煙治療に影響しないことが示されていた。今回の解析結果を受けて著者は、大うつ病喫煙患者には、この点に注目した効果的な治療もしくは適切な治療を見極めることが必要だと提言している。Addiction誌オンライン版2012年10月16日号の報告。 以前のレビュー対象14試験と、2000~2009年に発表された論文で適格であった28試験を対象に組み込み、過去の大うつ病、最近(≦6ヵ月)の大うつ病エピソード、認知行動療法(対面法vs.自己療法)の継続期間と種類、その他の因子をコード化した。解析は、大うつ病喫煙患者に選択的ベネフィットを与える可能性がある実験的治療の影響を極力排除するため、プラセボ/最小強度対照試験のみとした。短期間(≦3ヵ月)および長期間(≧6ヵ月)の禁煙における過去の大うつ病の影響に関する試験特異的オッズ比(OR)を算出した(ランダム効果モデルを用いて統合)。試験方法論と治療因子を用いて、禁煙に関する評価を行った。主な結果は以下のとおり。・非大うつ病喫煙者よりも、大うつ病喫煙者では、短期禁煙のオッズ比が17%低く(評価対象35例、OR:0.83、95%CI:0.72~0.95、p=0.009)、長期禁煙は19%低かった(同38例、0.81、0.67~0.97、p=0.023)(この評価ではバレニクリン単独試験は抗うつ作用を有するので除外した)。・過去の大うつ病と禁煙との関連は、試験方法論(最近の大うつ病患者は除外、大うつ病評価の種類によるなど)や、治療(認知行動療法)によって異なることが認められた。関連医療ニュース ・統合失調症患者における「禁煙」は治療に影響を与えるか? ・喫煙+糖尿病はうつ病リスクを高めるのか?! ・認知症治療薬ガランタミン、ラット試験で喫煙欲求の軽減効果を確認

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CKD患者の血圧管理:ARBで降圧不十分な場合、増量か?併用か?

 CKD患者の血圧管理においてARB単剤で降圧目標130/80mmHg未満に到達することは難しい。今回、熊本大学の光山氏らは、日本人対象の無作為化比較試験のサブ解析の結果、ARB単剤で降圧不十分時にARBを増量するより、Ca拮抗薬を併用したほうが心血管系イベントや死亡といったリスクを回避しやすいことを示唆した(Kidney International誌オンライン版10月10日号掲載報告)。 ARBを低用量から開始し、通常用量まで増量しても降圧目標に達しないケースでは次にどのような一手を打つべきか? さらに増量する方法のほか、Ca拮抗薬など他の降圧薬の追加も選択肢となる(『CKD治療ガイド2012』では尿蛋白を伴わず、糖尿病を合併していない場合は「降圧薬の種類を問わない」とされている)。 サブ解析は、無作為化オープン試験OlmeSartan and Calcium Antagonists Randomized(OSCAR)試験について行われた。OSCAR試験では心血管疾患もしくは2型糖尿病を1つ以上有する日本人の高齢者(65~85歳)高血圧患者1,164例を対象とし、ARB増量群(オルメサルタン40mg/日)あるいはARB+Ca拮抗薬併用群(オルメサルタン20mg/日+Ca拮抗薬)に無作為化された。今回のサブグループ解析の対象は、事前に設定されていたCKD患者(eGFR 60 mL/min/1.73 m2 未満)である。 主要評価項目は「心血管系イベント」および「非心血管疾患死」。心血管系イベントは「脳血管障害」「冠動脈疾患」「心不全」「その他動脈硬化性疾患」「糖尿病性合併症」「腎機能の悪化」と定義された。なお、本試験については、すでに2009年に小川氏(熊本大学)らによって主要結果が発表されている(Hypertens Res. 2009;32:575-580.)。 主な結果は下記のとおり。・血圧は併用群で増量群に比べ、有意に低下。・主要評価項目の発生率は併用群(16例)で増量群(30例)より少なかった(ハザード比 2.25)。・脳血管障害および心不全イベントが増量群でより多く発生した。

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血中プロニューロテンシン値、生活習慣病発症・死亡リスクと関連

 血中プロニューロテンシンが、生活習慣病に関するバイオマーカーとして期待できるのか、スウェーデン・ランド大学のOlle Melander氏らが検討した結果、空腹時血中プロニューロテンシン値が、糖尿病、心血管疾患、乳がんの発症、および全死亡率、心血管死亡率と有意に関連することが示されたと報告した。主に中枢神経系や消化管で発現する13-アミノ酸ペプチドのニューロテンシンは、実験的試験で満腹感や乳がん細胞の増殖を制御することが知られるが、乳がんや心血管代謝疾患の発症における役割、有用性についてはほとんどわかっていなかった。JAMA誌2012年10月10日号掲載報告より。血中プロニューロテンシン値と初回イベント・死亡発生との関連を評価 ニューロテンシンはvitroおよびin vivoでは不安定であることから、Melander氏らは、安定性117アミノ酸フラグメント(プレプロニューロテンシン/ニューロメディン前駆体ホルモンN末端由来)の空腹時血中濃度と、糖尿病、心血管疾患、乳がんの発症および死亡との関連を調べた。 1991~1994年に行われたベースライン検査で空腹時プロニューロテンシン値を測定した、住民ベースの試験「Malmo Diet and Cancer Study」の参加者4,632例を対象とした。 多変量Cox比例ハザードモデルにて、2009年1月までの長期追跡期間中の、ベースラインのプロニューロテンシン値と初回イベントまたは死亡との関連を調べた。被験者の追跡期間は、疾患により異なり中央値は13.2~15.7年にわたった。糖尿病、心血管疾患、心血管系の死亡発生と関連、女性では乳がんも 全体として、プロニューロテンシン値は、糖尿病(142件)[ハザード比(HR):1.28、95%信頼区間(CI):1.09~1.50、p=0.003]、心血管疾患(519件)(同1.17、1.07~1.27、p<0.001)、心血管系の死亡(174件)(同1.29、1.12~1.49、p=0.001)の発生リスクと関連がみられた。また、心血管疾患リスクにおいてはプロニューロテンシンと性との交互作用が有意であった(p<0.001)。 女性だけでみると、プロニューロテンシン値は、糖尿病(74件)(同1.41、1.12~1.77、p=0.003)心血管疾患(224件)(同1.33、1.17~1.51、p<0.001)、乳がん(123件)(同1.44、1.21~1.71、p<0.001)、全死亡率(285件)(同1.13、1.01~1.27、p=0.03)、心血管系の死亡率(75件)(同1.50、1.20~1.87、p<0.001)の発生と関連していた。

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「認知症」診療に関するアンケート第3弾~身近な疾患としての認知症~

対象ケアネット会員の内科医師501名方法インターネット調査実施期間2012年10月11日~10月18日Q1.認知症の予防のため、先生ご自身が心がけていることや、患者さんに勧めていることはありますか?(複数回答可)Q2.もし、先生のご家族に認知症を疑った時、治療はどのようにしますか?(回答は1つ)先生がこれまでに診療に関わった認知症患者さんやそのご家族に関して、記憶に強く残っているエピソードがございましたらお教えください(自由記入、一部抜粋)<診断・治療に関して>55歳の若そうな、きれいで無口な女性が夫と共に来院。自宅での生活を聞くと、何も家事ができないという。外来の応対はあまり不自由がないが、長谷川式検査ではチェックできた。人は見かけではわからない。(勤務医・内科・70歳代)90歳を超えた男性。もともと認知症はあったが最近さらに増悪してきたと、長男が付き添い来院。当初、増悪進行と考えられたが、慢性硬膜下血腫の合併と診断した。 本人はもちろん、家族も転倒などには気付いておらず、脳神経外科で手術を受け、元来の病態ないし軽快となった。 認知症だからと決めつけてしまうのでは、本人はもとより、家族にまで不利益が生じてしまうことを留意して診療にあたらなくてはならないと思われた。(勤務医・内科・60歳代)ご主人が認知症だと毎回訴えてきた老夫婦が、実は2人とも認知症だった。(勤務医・内科・50歳代)やたら興奮するおばあさんだったが、精神科が処方していた薬剤を中止すると、つきものが落ちたようにおとなしくなった。(開業医・内科・40歳代)糖尿病による脳血管性認知症の患者さんが、糖尿病のコントロールが良好になったら、認知症の症状も軽減した。(開業医・内科・50歳代)2人暮らしの老夫婦が共に認知症で、診療をどうしようか悩むことが増えてきている。(勤務医・内科・50歳代)認知症じゃないかと疑っていた家族の方が認知症だった。(勤務医・内科・40歳代)夫が認知症のためアパシーの状態となっている。認知症の新薬を処方したところ効果があり、患者の方から妻に「ありがとう」と言葉かけがあり、「とてもうれしく感謝の念に堪えない」と妻から報告があった。臨床医として、患者の役に立てて非常に満足感を感じた。(勤務医・内科・60歳代)<介護に関して>介護の方々のスキルが上がって、不穏で困る方が減っているように感じる。(勤務医・内科・50歳代)「ショートステイにいくと調子が悪くなるのよね~」と、明るく介護していたお嫁さん。でも、肩肘張らずに上手にショートステイを使い、誤嚥性肺炎では時々入院も使い、 ご本人もニコニコとしているご家族がいた。 自分の家族が認知症になっても、絶対にできないなぁと思った。(勤務医・内科・50歳代)レビー小体病の女性と主介護者のご主人。 非常に熱心だったが、やはり男性高齢者に排泄の世話は難しく、結局うまくいかずに行き詰まり、救急車を要請して3次救急病院を受診してしまった。(勤務医・内科・40歳代)妻の認知症を受け入れているご主人(86歳)が、「妻は探し物のため家の中を動き回っている。しかし、これを止めると動かずに寝たきりになるかも知れない。外出するわけではないので、勝手にさせている」という言葉が印象的だった。(開業医・内科・50歳代)施設に入所した認知症患者に対し、毎日のように家族が訪問することで認知症の改善を認めたケースがあった。(開業医・内科・50歳代)睡眠障害があり、薬を山のように飲まされていたが、グループホームに入所し規則的な生活をされるようになって、薬もなく睡眠ができるようになった。(開業医・内科・60歳代)認知症患者との関わり方を患者家族に十分説明することにより、患者に対する家族の接し方が変わり、薬以上に認知症の進行を止めることが多い気がする。(勤務医・内科・50歳代)優しい態度、言葉遣いで接することによって不安が和らぎ、随伴症状が軽減することを日常診療で実感させられる。(勤務医・内科・60歳代)連れ合いが亡くなり1人暮らしとなって半年で認知症になったが、息子が引き取り、好きな趣味をさせるようになったら改善した。(勤務医・内科・70歳代)<その他>施設入所を嫌がる患者をどう納得させるか?にいつも苦労する。あるモダンなおばあちゃんの家族に対して、洒落たフランス料理店で話を切り出すことを勧めて成功した。(開業医・内科・60歳代)田舎の病院では、「よくこの状態で独居できていたなー」と感心するくらい認知症が進んだ人が入院することがある。(開業医・内科・50歳代)5年以上前、初めて当院で認知症と診断した患者さんは、当時、自ら認知症だと思うと受診された。読書が好きだったが、読書ができなくなってきたとのことであった。薬物治療を開始したが、デイケアなど介護サービスがあまり充実していなかったこともあり、少しずつ少しずつ認知機能が低下、昨年からグループホームに入られた。昨今話題の「できることをさせ、昔話をしてもらい、生き生きと暮らさせることで周辺症状なしに認知症のまま日常生活を送らせる」には、診療所の診療のみでは到底不可能であると思う。どのような連携が可能であるか、と外来の合間に思う。(開業医・内科・50歳代)認知症の夫を看ていた妻が急死し、成人後見制度を利用するに際し、後見人が得られず困ったことがある。(勤務医・内科・70歳代)「微笑をもう一度見られたら、と願うばかりです」と娘様が言ったことを忘れません。(開業医・内科・50歳代)徘徊が始まり、ある日突然消息不明となり探し回ったが見つからず、もちろん警察にも届けたが行方がわからず、1週間目にひょっこりと帰ってきた。外傷はなく、身なりも乱れていなかった。どなたか親切な方に世話になっていただろう、とのことであった。(開業医・内科・70歳代)

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「インスリン療法のジレンマ」へのアプローチ

 2012年10月18日(木)、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社開催のセミナーにて、東京大学大学院の門脇 孝氏(医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授)が、現状のインスリン治療における課題と、新規の持効型溶解インスリンアナログ製剤「トレシーバ」の臨床上の意義を語った。門脇氏は、「新薬の登場により、低血糖リスクを高めることなく、一歩踏み込んだ糖尿病治療が可能になるのではないか」と講演で述べた。以下、内容を記載する。セミナー前半では、東京都済生会中央病院の渥美 義仁氏(糖尿病臨床研究センター長)から「インスリン治療の臨床上のアンメットニーズ」が語られた。インスリン療法のジレンマ インスリン療法では、「血糖値を正常に近づけると、患者さんは低血糖を不安に思い、逆に血糖値を高めに保とうとする」というジレンマが生じている。実際、インスリン治療中の2型糖尿病患者を対象とした調査「GAPP2」で、日本人患者347例のうち、約70%が低血糖を経験しており、基礎インスリンのみで治療中の患者(81例)の約20%が、低血糖が起きた時「基礎インスリンを打たない」選択をしていると報告されている。夜間低血糖が生産性を低下させる 別のアンケート調査では、回答者の32%は夜間に非重症低血糖が起きたことで、会議を欠席したり、仕事の締め切りを守れなかった経験があると報告されており、夜間低血糖が生産性に影響を及ぼすことも示唆されている。新薬「トレシーバ」への期待 このように血糖を良好にコントロールでき、すべての低血糖・夜間低血糖のリスクの低い基礎インスリン製剤が必要とされる中、2012年9月、新規の持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリン デグルデク「トレシーバ」が承認となった。インスリン グラルギンとの差は? トレシーバは、BOT療法下でのインスリン グラルギンとの海外比較データで、同程度の血糖コントロールを達成し、夜間低血糖の発現率が36%と有意に少ないことが報告されている。また、有意差はないものの、すべての低血糖発現件数においてトレシーバで低下傾向が認められた。日本人を含むアジア試験でも、グラルギンと同程度の血糖コントロールおよび低血糖発現率が示された。夜間低血糖発現率については、トレシーバで38%低下が認められたものの有意差はなかった。アジア試験で夜間低血糖発現に有意差が認められなかった点について、門脇氏は「あくまで症例数の問題」とコメントした。また、今回の試験自体が、対照薬との血糖降下度の差をみるものではなく、同等のHbA1c値レベルを実現したうえで、低血糖の発現頻度や重症度を評価するというTreat-to-Target試験であることに触れたうえで、有意差は認められなかったものの両剤とも同程度のHbA1c値レベルという条件下において、トレシーバ群ですべての低血糖、夜間低血糖に低下傾向が認められたことは評価できる、とコメントし、講演を締めくくった。 まとめ 低血糖にとくに不安感の強い傾向を示す患者さんには、「インスリン治療について十分教育を受けていない人」「1人暮らしの人」「不安感を感じやすい人」が挙げられるという。新薬の登場により、このような患者さんの不安も軽減されていくのではないだろうか。

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概論:慢性疼痛治療(2)

痛みをとるのが難しい疾患確実な診断がついているにも関わらずなかなか治りにくい痛みは、神経障害性疼痛の要素を持っている慢性疼痛である。脊柱管狭窄症はいろいろな要素が混在しているので治りにくい。痛みがとれてもしびれが強いので患者はなかなか満足しない。手術後に、いつまでも痛みがとれない患者も多い。術創はすっかり治っているが傷跡が痛いという患者が結構いる。とくに肺野の手術では肋骨と肋骨の間を切り開くので、肋間神経が損傷され慢性疼痛となるケースが多い。手術は必要不可欠なものであるが、それ自体が慢性痛の発生源となってしまうこともあり、当然であるがその施行は慎重であるべきといえる。お年寄りに多いのは変形性膝関節症である。レントゲンをとれば確実に診断はつくが、なかなか痛みは治りにくい。程度によって薬物療法、装具療法、筋力増強、ヒアルロン酸関節内投与、人工関節置換術という治療体系となっている。さらによく遭遇する痛みで治りにくいのは、帯状疱疹後の神経痛である。確実に診断はつくのだがなかなか治らない。また、脳梗塞や脳出血を発症後に痛みが出現することがあるが、これも治りにくい。痛み経路の神経細胞が障害され、体中のどこにでもやっかいな痛みが出現する。これらの非常に治りにくい慢性疼痛の治療では、痛みを完全に取り除くことはなかなか困難なので、患者個々に治療ゴールを設定することが必要である。ゴールは痛みをゼロとすることではなく、QOLの向上にある。VASによる評価で20~30くらいが目安であることを患者に認識してもらうことで、満足度の向上を目指したい。解明されてきた神経障害性疼痛のメカニズム神経障害性疼痛の病態はこの10年間で研究が進み、痛みが発生するメカニズムがかなりわかってきた。それにより、ただ神経が障害されて痛みが生じるだけではなく、体内から神経障害を起こす物質が分泌されることが明らかになった。リン脂質から出るリゾホスファチジン酸や、ケガをすると必ず生じる神経成長因子が神経障害性疼痛の要因になる。神経障害性疼痛時に増えてくるTRP受容体の存在もわかってきた。TRP受容体は熱を痛みとして感じる受容体だが、神経障害があると通常なら反応しないような37℃のお湯でもTRP受容体が過敏になり痛みとして感じる。神経は神経線維がばらばらにならないようにグリアというバンドで束ねられている。グリアは神経を束ねる役目だけでなく、痛みの信号がくると活性化し、神経を刺激して痛みを起こす要因になることもわかってきた。また慢性の痛みは、脊髄より上位の視床、帯状回、前頭前野、扁桃体などを巻き込んでいることが判明してきた。このように痛みにはさまざまな要素がある。今後の疼痛治療は、これらの具体的な発生メカニズムに焦点を当てたものになっていくだろう。画像を拡大する進む医療者の疼痛教育疼痛治療の発展に寄与することを目的とした非営利団体JPAP®(Japan Partners Against Pain)は、2003年11月に設立され今年で活動10年になる。主な活動方針は次の2つである。(1)疼痛における最新知見や薬剤の適正使用等に関する情報を広く提供し、医療に貢献する。(2)疼痛に関する社会的理解と協力を得るための教育および啓発活動を実施する。現在会員数は約2500名で、緩和ケアに従事する医師、看護師、薬剤師、理学療法士などが会員である。現在の活動の中心は、がん患者の痛み治療である。講演会や症例検討会の実施、関連学会で展示ブースの出展などを行っている。緩和ケアチームの病院内外でのアピールやネットワークづくりのために、各地の優れた緩和ケアチームを表彰する活動も行っている。会員は現在募集中で、入会者には、がん性疼痛の適切な治療について解説したスライドキットを提供している。痛みの治療に関心のある医療者は、ぜひJPAPにご入会いただければと思う。JPAP®(Japan Partners Against Pain)

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(26)〕 集中治療室(ICU)における入院患者の厳格な血糖管理はいかにあるべきか

集中治療室に入室する重症患者においては、ストレスによる内因性のカテコラミンやコルチゾール、炎症性サイトカインの増加、さらには治療薬剤として用いられる外因性のステロイド薬やカテコラミンなどの影響により、糖尿病の有無にかかわらず、高血糖を示すことが多い。高血糖は、脱水、電解質失調、内皮機能の低下、好中球遊走能の低下をひきおこし、循環動態、創傷治癒機転、感染症の経過に悪影響を及ぼして、IUCにおける死亡率に影響を与える重要な因子の一つとして考えられている。 実際に、きめ細かなインスリン治療によって平均血糖値110mg/dL前後の厳格な血糖管理を行うことが、重症患者の生命予後を改善することを示すという報告が散見される(Van den Berghe G et al. N Engl J Med. 2001. 345; 1359-1367.、 Van den Berghe G et al. N Engl J Med. 2006; 354: 449-461.、 Hermanides J et al. Crit Care Med. 2010; 38: 1430-1434.)。 しかし、2009年に発表されたNICE-SUGAR (Normoglycemia in Intensive Care Evaluation-Survival Using Glucose Algorithm Regulation)研究では、6,104人の患者を対象に、30分から1時間ごとに血糖を測定して適宜インスリンの静脈内投与を行い、厳格な血糖管理をめざす群(血糖値81~108mg/dL)と、通常の管理(180mg/dL以下)の2群に分けて90日以内の生命予後について検討した結果、厳格な血糖管理群における死亡率は27.5%、通常管理群では24.9%、オッズ比1.14(95%信頼区間:1.02~1.28、p=0.02)であり、厳格な血糖管理の有用性に疑問を投げかける成績を示した。 今回の論文は、NICE-SUGAR研究の事後比較分析(post hoc analysis)データについての報告であり、治療経過において中等度の低血糖(41~70mg/dL)、重症低血糖(40mg/dL以下)をひきおこすことが死亡のリスクを高めることを示した成績である。厳格な血糖コントロール群では低血糖をひきおこす頻度は通常群の4.6倍であり、集中治療の現場における厳格な血糖管理をめざすことのリスクを示している。 確かに、厳格な血糖管理により炎症反応や血栓の形成を抑止することができるが、血糖を下げ過ぎることにより低血糖をひきおこすことの弊害が大きいことが、臨床の場での大きな問題となる。米国内科学会および米国糖尿病学会では、集中治療室における血糖管理の基準を140~180(200)mg/dLとしているが、このレベルは妥当なものではないかと考えられる。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(25)〕 糖尿病患者の降圧目標値:エビデンスの質を見極める

糖尿病患者における降圧目標値に関しての議論が盛んになっている。 わが国のガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は130/80mmHgと厳格な降圧を推奨している。その根拠となったトライアルはUKPDS試験とHOT試験であるが、前者では厳格治療群とはいっても144/82mmHgであり、後者のHOT試験ではサブ解析で拡張期血圧が80mmHgまでの降圧達成群が85mmHg群や90mmHg群よりも心血管イベントが少なかったというものである。ガイドラインで示すような130/80mmHgという低いレベルがイベントを抑制するというエビデンスはなく、上記の2つのトライアル結果を演繹したにすぎない。 一方、2年前に発表されたACCORD試験は、収縮期血圧<140mmHgの緩和降圧群と<120mmHgの厳格降圧群との間で心血管イベント発症に有意差は認めず、糖尿病患者に対する積極的降圧に疑義をなげかけた最初のトライアルとなった。 しかし、本試験では致死的および非致死的脳卒中に関しては、積極的降圧群の方が予防効果は有意に優れるという結果も示しており、むしろ脳卒中の多い日本人では、積極的降圧を推奨したガイドラインを支持する解釈も可能であった。 今回のretrospective cohort研究は2型糖尿病患者では、厳格な降圧、収縮期血圧<130/80mmHg群は収縮期血圧が130~139mmHgの群に比べて死亡率の減少を示さなかったというものである。さらに110mmHg以下の降圧群では死亡率は有意に上昇するという結果を示した。 本試験の問題点は多い。まずretrospective研究の常として試験開始時の症例の臨床的背景が一律ではない可能性があること。心血管死ではなく総死亡をアウトカムとしており、死因の分析までできていないこと。そして、これもcohort研究の常として因果の逆転の可能性があること。すなわち血圧が低いから死亡したのではなく、心機能が低下したような症例が早期に死亡した可能性があること。そして何よりも、収縮期血圧が160mmHg以上の群ですら死亡率の上昇が認められていないことである。つまり、糖尿病患者の死亡率は血圧がかなり高くても増加しないという読み方ができるのである。 このような結果が出た背景には、糖尿病患者の大部分がスタチン薬や抗血小板薬など心血管予防薬を服用しているために、本当の意味での心血管合併症発症あるいは心血管死と血圧レベルとの関連が評価しにくくなっていると考えられる。多くのlimitationを含有する本試験の結果は、わが国のガイドラインを変更する根拠とはならない。

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小児心臓手術後の血糖コントロール、厳格群vs.標準群のアウトカム

 小児心臓手術後の血糖コントロールについて厳格群と標準群とを比較した結果、厳格群のほうが低血糖の発生率は低くコントロール達成可能だった。しかし感染率、死亡率、心臓ICU入室期間、臓器不全については、有意な変化はみられないことが報告された。米国・ボストン小児病院のMichael S.D. Agus氏らが行った前向き無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年9月27日号(オンライン版2012年9月7日号)で発表した。これまでいくつかの成人を対象とした試験では、心臓手術後の厳格血糖コントロールがアウトカムを改善することが示されていたが、小児に関しては非常に重篤な高インスリン性の低血糖症のリスクがあり、ベネフィットは明らかではなかった。小児心臓手術後の厳格血糖コントロールは合併症発生を低下するのか検証研究グループは、小児心臓手術後の厳格な血糖コントロールは合併症発生率を低下すると仮定し、検証試験を行った。人工心肺を要する心臓手術を受けた小児980例(0~36ヵ月齢)を2施設から登録した。被験児は心臓ICUにて無作為に2群に割り付けられ、一方は厳格な血糖コントロール[血糖値目標80~110mg/dLとするインスリン投与アルゴリズムを使用、490例]、もう一方は標準コントロール(490例)を受けた。持続血糖モニタリングを用いて、血糖値測定頻度のガイドとし、発症間近の低血糖の検出に活用した。主要アウトカムは、心臓ICUにおける医療ケア関連感染症の割合だった。副次アウトカムは、死亡率、入院期間、臓器不全と低血糖などだった。厳格群、正常血糖の達成は有意に早いが、合併症発生について標準群との差は認められず厳格血糖コントロール群では91%(440/490例)がインスリン投与を受けた。標準血糖コントロール群では2%(9/490例)だった。正常血糖の達成は、厳格群のほうが標準群よりも有意に早かった(6時間vs.16時間、p<0.001)。また、重症期間中に達成した割合も厳格群のほうが有意に大きかった(50%vs.33%、p<0.001)が、厳格群の医療ケア関連感染症の有意な減少は認められなかった(1,000患者・日当たり8.6vs.9.9、p=0.67)。副次アウトカムについて両群間の差はみられず、高リスクのサブグループでも厳格群のベネフィットは認められなかった。一方、厳格群では重度低血糖(血糖値<40mg/dL)の発症は、3%にとどまった。

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2型糖尿病患者に対する厳格な降圧、全死因死亡のリスクを低下させない

 新規診断2型糖尿病患者に対する厳格な降圧(<130/80mmHg)は、心血管疾患合併の有無にかかわらず全死因死亡のリスクを低下させず、低血圧は不良な予後のリスクを増大させることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのEszter Panna Vamos氏らの検討で確認された。欧米のガイドラインでは、心血管疾患のリスクが高い患者の血圧は<130/85mmHgに維持することが推奨されている。一方、糖尿病患者における正常血圧の維持が、心血管リスクにベネフィットをもたらすことを示す信頼性の高いエビデンスはなく、積極的な降圧の有害性を示唆する知見もあるという。BMJ誌2012年9月22日号(オンライン版8月30日号)掲載の報告。全死因死亡に及ぼす血圧の影響を後ろ向きコホート試験で評価研究グループは、新規に診断された2型糖尿病患者において血圧が全死因死亡に及ぼす影響を評価するために、レトロスペクティブなコホート試験を行った。1990~2005年にUnited Kingdom General Practice Research Databaseに登録された治療期間1年以上の新規診断2型糖尿病患者(18歳以上)12万6,092例を対象とした。“the lower the better”の指針は適用されない可能性が2型糖尿病の診断時に、1万2,379例(9.8%)が心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中)を合併していた。フォローアップ期間中央値3.5年の時点における全体の死亡率は20.2%(2万5,495例)で、心血管疾患合併患者の死亡率は28.6%(3,535例)、非合併患者は19.3%(2万1,960例)だった。心血管疾患合併糖尿病患者に対する厳格な降圧(<130/80mmHg)は、ベースラインの背景因子(診断時年齢、性別、BMI、喫煙状況、HbA1c、コレステロール値、血圧など)で調整すると生存を改善しなかった。低血圧は全死因死亡のリスクを増大させた。すなわち、収縮期血圧を130~139mmHgでコントロールされた患者に比べ、110mmHgで維持された患者の全死因死亡のハザード比(HR)は2.79(95%信頼区間[CI]:1.74~4.48、p<0.001)であった。また、拡張期血圧を80~84mmHgでコントロールされた患者に比し、70~74mmHgに維持された患者のHRは1.32(95%CI:1.02~1.78、p=0.04)、70mmHg未満に維持された患者のHRは1.89(95%CI:1.40~2.56、p<0.001)と、やはり有意な差を認めた。同様の関連が、心血管疾患を合併していない2型糖尿病患者にもみられた。ベースライン時に高血圧と診断され、降圧治療を受けている患者においても同様の関連を認めた。著者は、「新規診断2型糖尿病患者に対する<130/80mmHgの降圧治療は、心血管疾患合併の有無にかかわらず、全死因死亡のリスクを低下させなかった。低血圧(とくに、<110/75mmHg)は不良な予後のリスクを増大させた」と結論し、「これらの知見により、高リスク患者の血圧コントロールでは“the lower the better”の指針は適用されない可能性が示唆される。現時点では、糖尿病患者における<130/80mmHgの降圧治療を支持する頑健なエビデンスが存在しないため、血圧を130~139/80~85mmHgにコントロールしつつ、他の治療法やライフスタイル介入を併用するアプローチが、糖尿病患者の心血管疾患アウトカムの改善につながると考えられる」と指摘する。

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糖尿病患者の冠動脈病変、どのステントが最も有効か?

 冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性も良好なことが、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らの検討で示された。糖尿病は経皮的冠動脈インターベンション施行後の転帰を増悪させることが知られている。長期的な有効性や安全性につき、現時点で使用可能な4つの薬剤溶出ステント同士あるいはベアメタルステントとの比較試験が数多く行われているが、どのステントが最も優れるかは明らかでないという。BMJ誌2012年9月22日号(オンライン版2012年8月10日号)掲載の報告。糖尿病患者に対する各種ステントの有効性をメタ解析で評価研究グループは、糖尿病患者の冠動脈病変の治療における現行の薬剤溶出ステントおよびベアメタルステントの有効性と安全性を評価するために、混合治療比較法によるメタ解析を行った。PubMed、Embase、CENTRALを検索し、新規冠動脈病変を対象に4つの恒久的な薬剤溶出ポリマーステント(シロリムス、パクリタキセル、エベロリムス、ゾタロリムスの各溶出ステント)およびベアメタルステントを比較した無作為化臨床試験(2012年4月までに発表、糖尿病患者50例以上を含む)の論文を抽出した。有効性の主要評価項目は標的血管に対する血行再建術の施行とし、安全性の主要評価項目は死亡、心筋梗塞、ステント血栓症の発生とした。エベロリムス溶出ステントが最も有効かつ安全な可能性42試験(2万2,844人・年のフォローアップ)が解析の対象となった。いずれの薬剤溶出ステントも、ベアメタルステントに比べ標的血管血行再建術の施行率を有意に低減したが、各薬剤溶出ステントの有効性には差が認められた。すなわち、ベアメタルステントよりも、シロリムス溶出ステントは血管再建術施行率を62%(率比:0.38、95%信頼区間[CI]:0.29~0.48)、パクリタキセル溶出ステントは53%(同:0.47、0.35~0.61)、エベロリムス溶出ステントは69%(同:0.31、0.19~0.47)、ゾタロリムス溶出ステントは37%(同:0.63、0.42~0.96)抑制した。エベロリムス溶出ステントの有効性が最も高い確率は87%であった。一方、糖尿病患者におけるResoluteゾタロリムス溶出ステントのデータは限定的だった。薬剤溶出ステントは、超遅発性血栓症を含む安全性についても、ベアメタルステントに比べリスクを増大させることはなく、良好だった。ステント血栓症に関する安全性がエベロリムス溶出ステントで最も高い確率は62%に達していた。著者は、「冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性が劣ることもなかった」と結論し、「エベロリムス溶出ステントが、有効性、安全性のいずれにおいても相対的に優れることが示唆された」としている。

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新規ワクチン導入後の安全性を適正に検討するには?

 デンマーク・Aarhus大学病院のRasmussen TA氏らは、ワクチン接種と時間的関連はあるが起因とはなっていない背景疾患の発生数を予想し、小児の大規模ワクチン接種後に発生する有害事象の因果関係評価を補足するため、全デンマーク集団ベースのコホート研究を行った。同種の検討はこれまで行われていなかったという。結果を踏まえて著者は、「年齢、性、季節分布に基づく正確な背景疾患の発生率を組み込むことは、ワクチンの安全性評価を強化することにつながる。また新規ワクチン導入後に増大するリスクを議論するうえで、エビデンスベースの論点を提供することにもなる」と述べている。BMJ誌オンライン版9月17日号の掲載報告。 1980年1月1日以降出生の全新生児を対象とし、出生日から開始して、アウトカム設定した疾患で入院した日まで、または死亡、移住、18歳時点あるいは2009年12月31日まで追跡した。ワクチン接種率は82~93%であった。 急性伝染性または感染後多発性神経炎(ギラン・バレー症候群)、急性横断性脊髄炎、多発性視神経炎、顔面神経麻痺、アナフィラキシーショック、けいれん発作、多発性硬化症、自己免疫性血小板減少症、1型糖尿病、若年性関節炎または関節リウマチ、ナルコレプシー、原因不明の死亡の各発生率をアウトカムとして設定した(性、年齢、季節性で階層化)。 主な結果は以下のとおり。・新生児230万227人を追跡した。フォローアップ総計3,726万2,404人・年、追跡期間中央値16.8人・年であった。・アウトカム設定疾患の発生率は、自己免疫性血小板減少症0.32/100万人・年から、けいれん発作189.82/100万人・年までと、かなりの差があった。・最も頻度の高かったけいれん発作の発生率は、100万人・年当たり、1歳未満児475.43、1~3歳が593.49とピークで、その後は低下した(4~9歳47.24、10~17歳30.83)。・季節的な変動が最も顕著であったのは、アナフィラキシーショック(第1四半期と比べて第3四半期がほぼ3倍)、けいれん発作および多発性硬化症(冬に高率に発生)であった。・発生が稀なアウトカムおよびワクチンとの因果関係がないアウトカムも、仮定的ワクチンコホートにおいて多くのイベントを予想した。・たとえば、ワクチン接種後42日以内に起こる可能性として、100万児につき、1型糖尿病20例、若年性関節炎または関節リウマチ19例、顔面神経麻痺8例、多発性硬化症5例を予測した。

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重症患者における低血糖、死亡リスクを1.4~2.1倍に増大

 重症患者において、低血糖は死亡リスクを1.4~2.1倍増大することが明らかにされた。死亡リスクは中等症低血糖よりも重症低血糖のほうがさらに増大し、血液分布異常性ショックによる死亡との関連が最も強かった。オーストラリア・シドニー大学のSimon Finfer氏らにより行われたNormoglycemia in Intensive Care Evaluation-Survival Using Glucose Algorithm Regulation(NICE-SUGAR)試験の結果で、これまで重症患者における低血糖が死亡に結びつくのかどうかは明らかではなかった。なお、同関連の因果関係については、この試験では明らかにはならなかった。NEJM誌2012年9月20日号掲載より。強化血糖コントロール群の8割が、中程度以上の低血糖研究グループは、集中治療室(ICU)で治療を受けていた6,026例を無作為に2群に分け、一方には強化血糖コントロールを、もう一方には標準血糖コントロールを行った。被験者のうち、中等症低血糖(41~70mg/dL)と重症低血糖(40mg/dL以下)を発症した人について、それぞれ死亡リスクを調べ、低血糖を発症しなかった人と比較した。その結果、中等症低血糖が認められたのは被験者の45%にあたる2,714例で、そのうち2,237例(82.4%)が強化血糖コントロール群(同群全体の74.2%)であり、477例が標準血糖コントロール群(同群全体の15.8%)だった。被験者のうち重症低血糖だったのは、3.7%にあたる223例で、そのうち208例(93.3%)が強化血糖コントロール群(同群全体の6.9%)、15例が標準血糖コントロール群(同群全体の0.5%)だった。死亡リスク、中等症低血糖で1.4倍、重症低血糖で2.1倍に低血糖が認められなかった3,089例のうち、死亡したのは726例(23.5%)だった。一方で、中等症低血糖を有した死亡は774例(28.5%)、重症低血糖を有した死亡は79例(35.4%)だった。中等症または重症低血糖の認められた人の低血糖が認められなかった人に対する死亡に関するハザード比は、それぞれ1.41(95%信頼区間:1.21~1.62、p<0.001)、2.10(同:1.59~2.77、p<0.001)だった。なかでも、中等症低血糖が1日超認められた人は、1日の人に比べ、死亡リスクは有意に高くなる関連がみられた(p=0.01)。また、インスリン非投与で重症低血糖の認められた人の死亡リスクも高く、低血糖の認められなかった人に対する死亡に関するハザード比は3.84(同:2.37~6.23、p

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(24)〕 安定狭心症に対する最適治療法の決定に冠血流予備量比(FFR)は有用な検査法である

経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)が、急性冠症候群の予後改善に有効な治療法であることについては異論のないところである。しかしながら、安定狭心症に対するPCIの適用に関しては未解決な問題が多い。歴史的には選択的冠動脈造影手技が確立されたことにより、冠動脈疾患の診断・治療が長足の進歩を遂げたことは周知の事実である。しかし、冠動脈造影では、X線シネ血管撮影装置と造影剤を使用してイメージインテンシファイアー上に冠動脈イメージを映し出し、狭窄の程度を判読している。それゆえ、狭窄の程度を正確に評価するうえで、冠動脈造影だけでは必ずしも十分でない症例も存在する。 FFR測定は、冠動脈狭窄病変が心筋虚血を引き起こすか否かを機能的に評価することを可能にした有用な検査である。心筋虚血を生じない程度の狭窄病変に対して、むやみやたらにPCIを実施することの有害性を十分に認識することは、治療方針を正しく決定するために必要である。本研究では、安定狭心症で冠動脈造影所見からPCI治療が適用であると判断された患者について、FFR値が少なくとも1つの狭窄病変において0.80以下であれば無作為に対象症例を2群[薬物治療群(最適薬物療法のみ)、PCI群(PCI+最適薬物療法)]に振り分けた。すべての狭窄を有する冠動脈病変のFFR値が0.80を超えている症例については、PCIを実施せず最適薬物療法のみを行い、試験に登録のうえ、その50%が無作為に抽出された2群と同様にフォローアップされた。 倫理的理由により追跡期間が短いのが気になるが、この期間での一次複合エンドポイント発生率(死亡率、非致死性心筋梗塞発症、2年以内に起こる予期せぬ緊急血行再建のための入院)は薬物治療群で12.7%、PCI群で4.3%であり、PCI群で有意に低かった。とりわけ、緊急血行再建術実施率がPCI群で有意に低率であった(薬物治療群 11.1% vs PCI群 1.6%)。FFR値が0.80を超えていた群での複合イベント発生率は3.0%と最も低値であったが、PCI群との間には有意差はなかった。 短期のフォローアップのみの成績であるために、長期的PCI治療の成績を保証するデータでないことを考慮することも重要である。また、FFR値が0.80超の狭窄病変に対して、最適薬物療法のみで治療した群で複合イベント発生率が低かった事実は大きな意味を持つ。つまり、心筋虚血を引き起こさない程度の狭窄病変に対して、むやみやたらにPCIを実施すべきではないことを肝に銘じるべきである。本研究は、少なくとも1ヵ所以上の主冠動脈狭窄病変でFFR値が0.80以下である場合について、PCI施行後とりわけ8日以降から追跡終了までの期間で一次複合エンドポイント(とくに緊急血行再建)に関して、PCI+最適薬物療法の併用が最適薬物療法単独よりも優れているとの結果であった。安定狭心症では無用なPCIを行わないよう心がけることを頭に叩き込んでおいてほしい。メモ1.PCIには第2世代の薬物溶出ステントが使用された。2.最適薬物療法は、アスピリン、β遮断薬(メトプロロールほか)、Ca拮抗薬/長時間作用型亜硝酸製剤、RA系阻害薬(リシノプリルほかACE阻害薬、副作用があればARB)、スタチン(アトルバスタチン)、エゼチミブの多剤併用投与を意味していると理解できる。3.クロピドグレルはステントを植え込み群でのみ使用された。4.本研究では最適薬物療法の中に看護ケア、生活習慣の改善は含まれていなかった。5.すべての群で喫煙者は至適禁煙指導を受け、糖尿病を有する患者は専門的至適治療が行われた。

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睡眠時無呼吸症候群に対して肥満外科手術は有効か?

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対する肥満外科手術は従来療法と比較して、大幅に体重は減少するものの、達成無呼吸低呼吸指数(AHI)については有意差を伴う減少は認められなかったことが、オーストラリア・モナッシュ大学のJohn B. Dixon氏らによる無作為化試験の結果、報告された。OSAは肥満と強く関連しており、肥満を有するOSA患者では体重減が治療計画において推奨されている。しかし、これまでその有効性を検討した無作為化対照試験は行われていなかった。JAMA誌2012年9月19日号の掲載報告。手術群と従来療法群とのベースラインから2年間のAHIの変化を比較試験は2006年9月~2009年3月に、メルボルンの大学・教育病院の研究グループによって行われた。肥満患者(BMI>35~<55)で直近(6ヵ月未満)にOSAと診断され、AHI>20回/時の60例を対象とし、被験者は、OSAに対しCPAP療法を受けており地域の睡眠専門クリニックを通じて登録された。肥満低換気症候群、肥満外科手術が既往または禁忌の患者、および心肺性・神経性・血管性・胃腸管系・腫瘍性の疾患を有する患者は除外された。被験者は、栄養士と医師による定期的な指導管理と適宜の超低カロリー食を含む減量プログラムを受けた従来療法群(30例)と、肥満外科手術(腹腔鏡検査で調整可能な胃バンディング手術)群(30例)に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは、ベースラインから2年間のAHIの変化だった。割り付け情報を知らされていなかったスタッフによる診断用睡眠ポリグラフのスコアで検討した。副次アウトカムは、体重変化、CPAPアドヒアランス、身体機能状態(SF-36で評価)だった。手術群、体重は有意に減少もAHI減少は有意差認められず体重減少は、従来療法群平均5.1kg(95%信頼区間:0.8~9.3)だったのに対し、手術群は平均27.8kg(同:20.9~34.7)と有意な減少がみられた(p<0.001)。AHIは、従来療法群14.0回/時(同:3.3~24.6)減少したのに対し、手術群は25.5回/時(同:14.2~36.7)減少した。両群間の差は-11.5(同:-28.3~5.3)で有意差は認められなかった(p=0.18)。CPAPアドヒアランスについて両群間の差はなかった。SF-36評価スコアは、手術群で有意に大きく改善した(平均9.3、95%信頼区間:0.5~18.0、p=0.04)。

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肥満外科手術患者の術後20年間の医療サービス利用コスト

 肥満外科手術を受けた患者の20年間の医療サービス利用について、従来療法を受けた対照群と比較した結果、手術群のほうが入院医療を多く利用しており、最初の6年間は外来利用も多かったが、それ以降の外来利用は両群で有意差はなかった。また、7~20年目の薬剤コストは手術群のほうが有意に低かったことが報告された。スウェーデン・ヨーテボリ大学のMartin Neovius氏らによるSwedish Obese Subjects試験の結果で、肥満外科手術は体重減を維持し、糖尿病、心血管イベント、がんの発生率を低下し生存を改善することが示されていたが、長期にわたる医療サービス利用への影響については不明であった。JAMA誌2012年9月19日号の掲載報告。入院、外来、薬剤コストを従来療法群と比較Swedish Obese Subjects試験は、スウェーデンヘルスケアシステムで現在進行中の前向き非無作為化対照介入試験であり、1987~2001年に肥満外科手術を受けた2,010例と適合させた対照群2,037例を対象とした。被験者は、37~60歳、BMIが男性34以上、女性38以上を適格とした。手術群は、13%が胃バイパス術を、19%は胃バンディング術を、68%が垂直遮断胃形成術を受けた。対照群は従来肥満療法を受けた。主要評価項目は、年当たりの入院日数(追跡期間:1~20年、データ収集:1987~2009年、追跡期間中央値15年)と、非プライマリ・ケア外来受診回数(同:2~20年、2001~2009年、9年)、National Patient RegisterとPrescribed Drug Registerから入手した薬品コスト(同:7~20年、2005~2011年、6年)。レジストリデータは、99%以上の患者で完全に結合できた(4,047のうち4,044例)。平均差は、ベースラインでの年齢、性、喫煙、糖尿病ステータス、BMI、算入期間(入院治療解析のために)、試験開始前年の入院日について調整した。追跡7~20年の平均年間薬剤コスト、手術群930ドル、対照群1,123ドル追跡20年間の平均累積入院日数は、手術群54日に対し対照群は40日だった(平均差:15、95%信頼区間:2~27、p=0.03)。追跡2~6年の平均累積年間入院日数は、手術群1.7日に対し対照群は1.2日だった(同:0.5、0.2~0.7、p<0.001)。追跡7~20年の同値は両群とも1.8日だった(同:0.0、-0.3~0.3、p=0.95)。追跡2~6年の年間平均外来受診日数は、手術群1.3日に対し対照群は1.1日だった(同:0.3、0.1~0.4、p=0.003)。しかし7年目からは両群間の差は認められなかった(1.8日vs. 1.9日、同:-0.2、-0.4~0.1、p=0.12)。追跡7~20年の平均年間薬剤コストは、手術群930ドルに対し対照群1,123ドルだった(同:-228、-335~-121、p<0.001)。

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激辛 ! 伊賀流心臓塾≪増補改訂版≫

第0回「循環器非専門医の到達目標」第1回「安定性の労作性狭心症」第2回「日本人に多い異型狭心症」 2005年の発売以来ロングセラーを続けている「激辛 ! 伊賀流心臓塾」が7年ぶりに増補改訂。循環器診療の進歩は目覚ましく、心臓CTによるスクリーニング検査が一般的になったり、インターベンションの安全性も向上しました。しかし、伊賀先生の「診断を考えて行く」プロセスは、全く色あせていません。むしろ、より重要になったと言えるのではないでしょうか。初版収録番組の各シーンに伊賀先生が更なる解説を加えた本DVDは、循環器非専門医や一般内科開業医に、循環器診療における基本的な考え方、到達目標を明確に具体的に伝えてくれます !具体的な症例から難解な心臓疾患を分かりやすく解説します。第0回「循環器非専門医の到達目標」卒後臨床研修が行われている大病院の医師は、細分化された狭い専門領域以外のことを研修する時間も動機も消失しがちです。また初期2年間のスーパーローテート研修時に、各領域の“超専門家”に育てられた研修医は、高い診療レベルを要求されて燃え尽きてしまうことが多いようです。しかも“超専門家”自身、「診察後どういう思考過程で診断に行き着くか」という臨床医にとって真に重要なことを研修医にきちんと指導できないというのが実状です。医師(循環器非専門医)として患者に向かい合う前に身に付けておくべき循環器領域の基本的考え方や到達目標を解説していきます。第1回「安定性の労作性狭心症」 高度の血管狭窄病変を有することが多い安定性の労作性狭心症。明らかにこの症状を有する患者に対して、循環器非専門医が行うべきことは一体なんでしょうか ? 「ニトログリセリンを持たせて経過観察する?」 「全例、専門医の検査にまわす?」 「本人がまったく困ってなかったら?」狭心症から心筋梗塞にいたるメカニズムと医師のなすべきこと、ニトロやβブロッカーの正しい使い方など、最新のデータをもとに、伊賀先生が悩める医師の疑問にズバリお答えします。【症例】64歳 男性15年来の糖尿病患者。食事療法のみでHbA1c 6.6%前後で推移。61歳時より坂道を歩くと胸が圧迫され、少し休むと楽になる状態。運動をあまりしないため、本人はそれほど困っておらず、過去3年間、程度・頻度は変わらない。今回、検診でマスター二重運動負荷心電図が陽性であったため受診した。血圧、安静時心電図、胸部X線のいずれも正常、コレステロール値は220mg/dL。第2回「日本人に多い異型狭心症」欧米人には少ないが日本人には頻度の高い「異型狭心症」がテーマです。軽度の動脈硬化に血管攣縮が加味されることが多く、朝方の軽労作で狭心症症状が出現。心電図検査では正常とされる可能性も高く、その場合、病歴聴取のみが判断の根拠となります。今回は異型狭心症の病歴の取り方のコツを具体的に伝授します。そして、異型狭心症が疑われた場合、プライマリ・ケア医としてどのようにアプローチすべきか。「ホルター心電図を取るのか」、「それとも緊急入院させるべき?」など、よくあるケースのよくある悩みに達人が“ズバリ”お答えします。 【症例】1日20本×20年の喫煙者2ヶ月前から週2回ぐらい朝方の軽労作で数分間持続する胸部圧迫感があるため外来を受診。午後はかなり運動をしても症状はないと言う。診察では異常所見は無く、血糖・コレステロール値ともに正常。受診日の心電図と胸部X線も正常であった。

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ランタスの最適用量を計算できる電卓の提供を開始

 サノフィ・アベンティス株式会社は26日、経口血糖降下薬で効果不十分な患者に基礎インスリン製剤「ランタス(一般名:インスリングラルギン)」を併用する際に使用する「ランタス用量設定サポート機能付電卓」を、本年9月に全国の医療従事者への提供を開始したことを発表した。 ランタス用量設定サポート機能付電卓は、日本人2型糖尿病患者5,223症例を対象とした大規模調査ALOHAスタディのサブ解析の結果に基づいて、ランタスの最適用量を計算するもの。体重、現在のHbA1c値、目標のHbA1c値、の3つの数値を入力すると、ランタス導入時の投与単位数、導入後に追加する投与単位数、そして24週後に必要となる投与単位数が表示される。また、本来の計算機としての機能に加え、BMI、Homa-IR、Homa-βの計算機能も有する。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=1E536FD3-BB6A-4062-B499-A6E714CCFDC8.pdf

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(21)〕 心臓MRI(CMR)で無症候のハイリスク患者を見分けることができる!

これまで高齢者、あるいは糖尿病患者で無症候性心筋梗塞の頻度は高く、かつ、その患者群の予後は不良であることが知られていた。しかし、無症候性心筋梗塞患者を検出するスクリーニング法として、最も広く用いられているのが心電図であった。一方、最近の技術の進歩に伴い、微小な心筋梗塞を顕出することが可能となった。1つはトロポニンなどに代表されるバイオマーカーである。しかし、これもある一定の時期しか有用性がない。時間の経過したものを含めて検出するのに最も感度が高いのが、ガドリニウムを用いて心臓MRI(CMR)で梗塞巣を描出する方法である。この方法では、心電図では明らかでない微小梗塞も検出可能である。そこで、本法を用いて高齢者および糖尿病患者で無症候性心筋梗塞の検出頻度とその予後について検討された。 アイスランドに居住する1907~1935年出生の人が参加する地域無作為抽出コホート「AGES Reykjavik Study」(被験者数5,764人)の中から、2004~2007年に登録された936人(67~93歳:平均年齢は76歳、うち52%が女性)を対象に、心筋梗塞発症率と死亡率について、症状があり入院記録や診療録が確認された患者群と、無症状でCMRまたはECGで検出された患者群について、それぞれ比較した。 その結果、(1)CMRを用いることで症状の有無に関係なく心電図より感度よく心筋梗塞を検出できる、(2)無症候性心筋梗塞は症候群より予後が不良である、ことが示された。今後、CMRを活用して検出した無症候性心筋梗塞患者に介入することで予後が改善されるかについて、検討することが必要であろう。

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エキスパートに聞く!「高血圧」Q&A

CareNet.comでは9月の高血圧特集企画を行う中で、会員の先生より「高血圧」に関する質問を募集しました。その中から、特に多くいただいた質問に対し、下澤達雄先生にご回答いただきます。家庭血圧を用いる際の留意点について教えてください。昨年8月に発表された英国の高血圧ガイドラインでは、24時間血圧あるいは家庭血圧を高血圧の確定診断ならびに降圧治療の効果判定に用いることが強く推奨されました。わが国でも家庭血圧測定の指針が高血圧学会より出されており、実臨床でも多くの先生がお使いになっていることが、今回たくさんのご質問をいただいたことからも推察されます。そこで、家庭血圧を用いる際の留意点をいくつか挙げたいと思います。1.信頼性機械そのものの信頼性は診察室で同時に用手法と比較することで確認することができますが、血圧手帳を用いた自己申告による血圧値は必ずしも信頼できません。高知県で行われた調査では実測値と自己申告値には開きがあり、患者は低めに申告することが報告されています。よって、家庭血圧が低い場合でも臓器障害がある場合にはとくに診察室血圧を参考にした降圧治療が必要となります。あるいはメモリー機能をもった家庭血圧計を用い、実測値を医療側が把握できるようにする工夫が必要です。2.家庭血圧の測定方法血圧は複数回測れば必ず異なった値を示します。一般的には数回測ると徐々に低い値となります。高血圧学会の家庭血圧の指針では1日1回でよいと書かれていますが、これはまず患者に家庭血圧を測定させるために簡便な最低限の方法が記載されていると理解しています。すでに家庭血圧を日常的に測定できる患者においては複数回測定し、一番高い値と一番低い値、あるいは平均値を記載してもらうのがいいかと思います。測定時間は服薬直前が望ましいですが、日常生活にあわせてほぼ同じタイミングで測定できる時間を指導しています。3.夜間血圧を反映するか?何がわかるのか?残念ながら夜間血圧は夜間に測定する必要があり、家庭血圧では知ることができません。正しく測定でき、正直に申告された家庭血圧で白衣性高血圧、仮面高血圧がわかることはもちろんですが、曜日による血圧変動(週末ストレスがない場合に血圧が下がる)や睡眠状態との関連を知ることもできます。4.診察室血圧との乖離前述のように白衣性高血圧、仮面高血圧と診断されますが、臓器障害がある場合は高いほうの血圧を目安に治療を行うべきです。血圧変動について教えてください。外来診察毎の血圧変動が大きいと脳血管イベントが多くなることが報告されました。以来、糖尿病の際の血糖の変動が臓器障害と関連づけられています。動物実験でも交感神経を切除して血圧変動を大きくすると、レニン・アンジオテンシン系が亢進して臓器障害が進行することが報告されています。ヒトにおいては長期にわたる一拍ごとの血圧変動をみることは困難であり確立したエビデンスはありませんが、血圧変動は少なくする方が望ましいでしょう。血圧変動が大きい原因として自律神経障害、褐色細胞腫のような器質的な異常のほかに服薬アドヒアランス不良、精神的ストレス、不眠(睡眠時無呼吸)といった要因もあり、医師のみならず看護師、薬剤師などからの患者の病歴、生活歴聴取が必要となります。服薬は管理されているにもかかわらず認知症患者ではとくに血圧変動が大きいことが問題になりますが、多くの場合は多発性脳梗塞を合併している例です。転倒のリスクがなければ認知症の進行、脳梗塞の再発予防を考えて血圧は低い値にコントロールしたいところです。実際には服薬数を増やせないなどの制限があり、合剤を積極的に使ってのコントロールとなります。食塩感受性について教えてください。塩分摂取により血圧が上昇する食塩感受性患者は、上昇しない非感受性患者にくらべ血圧値が同等でも心血管イベントが多いことから、食塩感受性の診断についての質問を多くいただきました。しかし、食塩感受性を診断するには現在のところ入院にて食塩負荷、減塩食を食べさせ、その間の血圧を測定することのほかには確実な方法はないのが現状です。実臨床においては早朝第二尿のナトリウムとクレアチニンを測定することで食塩摂取量を知ることができる(「日本高血圧学会減塩ワーキンググループ報告」日本高血圧学会より入手可能)ので塩分摂取量が多い患者について経時的に観察したり減塩指導の動機付けとして用いることもできます。あるいはサイアザイド系利尿薬に対する血圧反応性も食塩感受性を知る一つの方法です。効果的な減塩指導について教えてください。日本の食文化はみそ、塩、しょうゆの上に成り立っているので、減塩指導はともすれば日本の食文化を否定することにもなりかねません。しかし、現在の一般的食生活を見てみると加工食品がふんだんに使われており、この点を改善指導することで減塩は可能となります。たとえばソーセージ100gに塩は約2g、プロセスチーズでは約3g含まれており、こういった加工食品を減らすことを指導できるでしょう。また、加齢に伴い味覚は低下するため減塩が難しくなります。そこはワサビ、生姜、茗荷、唐辛子、胡椒といったスパイスをうまく使うように指導します。そして、食卓に出された食材に塩、しょうゆを追加でかけないよう、食卓には塩、しょうゆを置かないなどの細かな指導が必要となります。男性患者の場合、食事を実際に作る配偶者への指導も重要で、医師だけでなく看護師、栄養士、薬剤師、検査技師、保健婦など患者に関わるすべての医療従事者の協力体制が有効です。塩分過剰摂取は血圧上昇のみならず血圧が上昇しない場合でも酸化ストレスを増加させ耐糖能異常につながることが動物実験では示されており、摂取量を6g/日程度まで下げることは高血圧の有無にかかわらず有用であると思われます。降圧薬の減量、中止方法について教えてください。血圧のコントロールが良好で、臓器障害がないような場合、また尿中ナトリウムも低めの場合は降圧薬を中止できることもあります。その場合、4~5月位に中止し、夏の暑い間を経過観察し、10~11月から冬の寒い間に血圧が再上昇しないことを確認します。その後も家庭血圧で血圧を経過観察し、年に一回の臓器障害の進展のチェックを行います。多剤併用しており血圧が良好なコントロールの場合、薬剤の減量が可能です。長期にβ遮断薬を使っている場合は心筋虚血のリスクがあるのでβ遮断薬は漸減します。便秘、浮腫、歯肉腫脹、起立性低血圧がある場合はカルシウム拮抗薬の副作用の可能性もあるためカルシウム拮抗薬から減量します。昨今の酷暑ではとくに高齢者や腎機能低下例においては、レニン・アンジオテンシン系抑制剤や利尿薬の減量が必要となる例があります。早朝高血圧の対処方法について教えてください。家庭血圧を測定あるいは24時間血圧にて早朝高血圧が明らかになった場合、最近の研究では夜間高血圧ほどのリスクはないとの報告もありますが、降圧薬の服用時間を調整することでコントロール可能となることがあります。レニン・アンジオテンシン系阻害薬は夕方服用に適した薬剤といえます。ただし、夜間の過度の降圧に注意して少量より開始するのが好ましいでしょう。α遮断薬も有効とする報告もありますが、α遮断薬自体の臓器保護効果が疑問視されており、α遮断薬を追加投与するよりは現在服用しているレニン・アンジオテンシン系阻害薬の服用時間をずらすことが適切と考えます。難治性高血圧の対処方法について教えてください。異なる三系統の降圧薬を十分量を内服しても血圧のコントロールがつかない場合、難治性高血圧と呼ばれます。このような例では服薬アドヒアランス、二次性高血圧の再評価、睡眠時無呼吸の評価をまず行います。服薬アドヒアランスが不良の場合は合剤を用いること、服薬の必要性を再教育すること、服薬想起の道具(ピルボックスなど)が有効といわれており、医師だけでなく薬剤師、看護師、保健婦の協力が必要となります。すでに薬剤を服用している場合、ホルモン検査は薬剤の影響を受けるので評価が難しくなります。実臨床では副腎のCTを先行させてもいいと思います。あるいは十分量の抗アルドステロン薬(スピロノラクトンで75~100mg)を投与し治療的診断を行うことも有用です。腎血管性高血圧についてはMR angiographyが有用でしょう。以上のような精査で問題がない場合、中枢性の降圧薬(レセルピン)を少量朝1回追加することが有用である例を経験しています。あるいはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬をかんきつ類と一緒に服用させる、あるいはヘルベッサーと併用しジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の血中濃度を高めることも有用でしょう。白衣性高血圧の対処方法について教えてください。イギリスのガイドラインでは診察室血圧と24時間血圧、あるいは家庭血圧を用いて高血圧の診断を行い、臓器障害がない場合は白衣性高血圧は薬物介入をせずに年に1回の経過観察をするとしています。24時間血圧を用いて病院来院時のみ高血圧でその他の日常生活の中では全くの正常血圧であり、アルブミン尿も含め臓器障害が認められず、糖尿病などのリスク因子がない場合は薬物介入は必要ないと考えます。しかし、経過観察は必要で、患者には日常生活の中で突然の来客などストレスがかかると血圧が上がっている可能性を話し、徐々に臓器障害が出てくる可能性を説明する必要があるでしょう。白衣性高血圧で患者が薬物介入を希望する場合、抗不安薬も有効です。また、臓器障害がある場合はJSH2009に則って合併する臓器障害に応じて薬物を選択します。その際、心拍数が上昇するといった副作用のない薬物をまず選択します。拡張期血圧の対処方法について教えてください。収縮期血圧が大動脈のコンプライアンスと心拍出量で規定されるのに対し、拡張期血圧は全身の末梢血管抵抗と心拍出量で規定されます。よって高齢者で大血管の硬化が明らかになると収縮期血圧が上昇し脈圧が増大します。心臓の仕事量は収縮期血圧と心拍数の積に比例するため、収縮期血圧が高くなると心筋酸素消費量が増え、心虚血と心不全のリスクが増えます。一方冠動脈は拡張期に灌流されるので、拡張期血圧を下げすぎると、冠血流が低下する危険があります。実際、大規模臨床試験をみても拡張期血圧と心血管イベントにはJカーブに近い現象が認められます。拡張期のみ高い例は若年者に多く認められますが、治療の第一歩は減塩にあります。また個人的経験ですが、10年ほど前にARBが発売された当初、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬にくらべ拡張期血圧がよく下がる印象がありましたが、統計的処理はされていません。また当時は利尿薬の使用頻度が低かったというバイアスもあります。現状では拡張期血圧のみを下げるための有効な治療法は生活習慣の改善のほかには確立されていないといえます。合剤の有用性について教えてください。いかなる服薬介入治療もその効果は服薬アドヒアランスに依存することは明白です。それゆえ、われわれは服薬アドヒアランスをよくする努力は惜しむべきではありません。アドヒアランスに関わる因子は複数ありますが、処方する立場として最も簡便にできることは服薬数を減らすことであり、その点において合剤はきわめて有効といえます。現在降圧薬に限らずぜんそく薬、糖尿病薬、高脂血症薬の合剤が日本でも使用可能ですが、海外の現状をみるとまだまだ立ち遅れています。私は実臨床の中で合剤の併用も行いARBの最大容量を合剤として処方し、3種の薬剤を2錠ですませ、患者の経済的負担も軽減するよう努力しています。

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