軽度でも注意!糖尿病性網膜症はCHD発症リスクと関連

提供元:ケアネット

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公開日:2012/12/05

 

 2型糖尿病患者の糖尿病性網膜症はたとえ軽度(点状出血など)であっても、冠動脈疾患(CHD)や脳卒中のリスクと関連することが、山形大学 川崎 良氏らの研究で明らかになった。著者らによると、2型糖尿病患者における糖尿病性網膜症は、従来の心血管リスク因子とは独立したCHDおよび脳卒中リスク因子であるという。Ophthalmology誌オンライン版2012年11月19日付の報告。

 糖尿病性網膜症は、心血管疾患リスクと関連があるといわれている。
今回、前向きコホート研究であるThe Japan Diabetes Complications Study (JDCS)において、2型糖尿病患者における軽度の糖尿病性網膜症とCHDおよび脳卒中リスクとの関連について検討された。

 対象は、ベースライン時に心血管疾患既往のない日本人の2型糖尿病患者2,033例。
糖尿病性網膜症は、糖尿病性網膜症および黄斑症の国際重症度分類に基づき、臨床所見や撮影検査から診断された。CHDと脳卒中の発症を8年間にわたり追跡調査し、糖尿病性網膜症発症群と未発症群におけるCHDと脳卒中発生率を主要アウトカムとし、それぞれを比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・従来の心血管リスク因子による調整後、軽度から中等度の非増殖性糖尿病性網膜症患者はCHD(ハザード比[HR]:1.69、95%CI:1.17~2.97)と脳卒中(HR: 2.69、95%CI:1.03~4.86)の発症リスクが高かった。
・網膜出血や毛細血管瘤の存在はCHD発症リスク(HR:1.63、95%CI:1.04~2.56)と関連していたが、脳卒中発症リスク(p = 0.06)とは関連していなかった。
・綿花様白斑の存在は脳卒中発症リスク(HR:2.39、95%CI:1.35~4.24)と関連していたが、CHD発症リスク(p =0.66)とは関連していなかった。
・従来の心血管リスク因子による調整後も、糖尿病性網膜症をCHD予測モデル因子に追加することで、ROC曲線下面積(AUC)は0.682から0.692に上昇した。また、脳卒中予測モデル因子に追加した場合、AUCは0.640から0.677に上昇した。
・糖尿病性網膜症を予測モデル因子に追加したことにより、対象者のうち9%にCKD発症リスク、13%に脳卒中発症リスクがあると再判定された。

(ケアネット 武田 真貴子)