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脳卒中の診断、年齢の左桁バイアスはあるか

 人間には、年齢などの連続変数の左端の桁の数字に基づいて判断する傾向(left-digit bias:左桁バイアス)がある。このバイアスが医師の意思決定にも影響するのだろうか。最近の研究1)では、80歳の誕生日直前の患者より、直後の患者に冠動脈バイパス術を行う可能性が低かったことが示されている。今回、京都大学の福間 真悟氏らは、脳卒中に対する画像検査のオーダーに年齢の左桁バイアスが影響するかを検討した。その結果、男性患者に対してのみ、40歳前後でオーダーの不連続的な増加がみられ、医師の脳卒中リスクの推定に認知バイアスが存在することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年8月26日号に掲載。 本研究は、回帰不連続デザイン(RDD)によるコホート研究で、日本における全国的な労働年齢の健康保険の請求データベースから、2014年1月~2019年12月に時間外受診をした患者を解析対象とした。初診時、医師が脳卒中診断のために画像検査(CTまたはMRI)をオーダーしたかどうかを、患者年齢別に調査した。 主な結果は以下のとおり。・総受診数29万3,390件のうち、40歳からデータに基づいた最適バンド幅である6.0歳以内の4万8,598件を解析対象とした(平均年齢40.8歳[標準偏差3.4]、女性50.5%)。・脳卒中に対する画像検査を受ける基準の確率は0.9%であった。・40歳未満の患者より40歳以上の患者で、医師が画像検査をオーダーする可能性が高かった(調整後の差:+0.51パーセンテージポイント[pp]、95%信頼区間[CI]:+0.13~+1.07pp、p=0.01)。・脳卒中に対する画像検査のオーダーにおいて、男性患者では40歳で有意な非連続的変化がみられた(+0.84pp、95%CI:+0.24~+1.69pp、p=0.009)が、女性患者ではみられなかった。

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日本人高齢者の歩行速度と軽度認知障害リスクとの関係

 これまでの研究では、歩行速度の低下と認知機能低下との関連が示唆されている。しかし、この関連が高齢者集団の年齢および性別の影響を受けるかは、よくわかっていない。慶應義塾大学の文 鐘玉氏らは、年齢、性別の影響を考慮し、軽度認知障害(MCI)と歩行速度との関連について調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2023年8月2日号の報告。 本横断研究には、2016~18年に65歳以上の日本人高齢者8,233人が登録された。性別、年齢により層別化した後、対象者の歩行速度を5分位に分類し、それぞれのMCI有病率の差を算出した。歩行速度別のMCI有病率、年齢および性別の影響を評価するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・多変数調整モデル2ロジスティック回帰分析では、歩行速度が最も遅い群と最も早い群との比較におけるMCIのオッズ比は、女性で2.02(95%信頼区間[CI]:1.47~2.76)、男性で1.75(同:1.29~2.38)であった。・層別分析では、歩行速度とMCIの関連性において、男性では年齢依存的な増加が認められたが、女性ではいずれの年齢層でも同様であった。 著者らは、その結果を踏まえて「歩行速度の低下とMCI有病率の増加との関連が確認され、この関連は性別や年齢により異なる可能性がある。したがって、年齢および性別を考慮した歩行速度の評価は、MCIのスクリーニングツールとして機能する可能性が示唆された」と述べている。

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記憶力に不安がある高齢者の運転はいかに危険か/長寿研ほか

 日本の高齢ドライバーを対象とした横断研究の結果、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高かったことを、国立長寿医療研究センターの栗田 智史氏らの研究グループが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 先行研究によって、MCRは処理速度や実行機能の低下などとの関連が報告されているが、MCRと自動車衝突事故との関連性に関する検討は十分ではない。簡便に実施できるMCR評価を行うことで衝突事故リスクに早期に気付くことができる可能性があるため、研究グループはMCR評価と衝突事故やヒヤリハットとの関連を検討した。 研究グループは、2015~18年に実施された同センターの大規模コホート研究(NCGG-SGS)のデータを用い、愛知県在住の65歳以上の高齢者の衝突事故やヒヤリハットの経験を調査した。運転しない人、認知障害がある人(ミニメンタルステート検査21点未満)、認知症の病歴のある人などは除外した。SMCは、老年期うつ病評価尺度(GDS)などを数種類の方法を用いて評価し、歩行速度低下は年齢や性別の平均値より-1.0SD以下とした。 参加者は、過去2年間の衝突事故と前年のヒヤリハットを対面で聴取され、(1)SMCも歩行速度低下も有さない群(対照群)、(2)SMCのみを有する群(SMC群)、(3)歩行速度低下のみを有する群(歩行速度低下群)、(4)MCRを有する群(MCR群)の4群に分けられた。ロジスティック回帰モデルを用いて、衝突事故またはヒヤリハットのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求めた。データは2023年2~3月に解析された。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万2,475人の平均年齢は72.6(SD 5.2)歳で、56.9%が男性であった。・対照群は3,856人(30.9%)、SMC群は6,889人(55.2%)、歩行速度低下群は557人(4.5%)、MCR群は1,173人(9.4%)であった。・SMC群とMCR群では、衝突事故およびヒヤリハットの割合が他の群よりも多かった(調整標準化残差>1.96、p<0.001)。・ロジスティック回帰分析の結果、対照群と比べて、SMC群とMCR群では衝突事故が有意に多かった(【SMC群】補正後OR:1.48、95%CI:1.27~1.72、p<0.001、【MCR群】補正後OR:1.73、95%CI:1.39~2.16、p<0.001)。・同様に、SMC群とMCR群ではヒヤリハットも有意に多かった(【SMC群】補正後OR:2.07、95%CI:1.91~2.25、p<0.001、【MCR群】補正後OR:2.13、95%CI:1.85~2.45、p<0.001)。・MCR評価を客観的認知障害で層別化した結果、客観的認知障害の有無に関係なくSMC群とMCR群で有意に衝突事故とヒヤリハットが増加していた。・これらの結果は、高齢ドライバーの過失割合が半分以下の衝突事故を除外しても同様であった。 これらの結果より、研究グループは「これらの知見の一般化可能性を高め、外的妥当性を検証するためには、異なる環境におけるさらなる研究が必要である。これらの関連性のメカニズムも今後の研究の課題となる」とまとめた。

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第179回 血液凝固タンパク質2つがコロナ感染後の脳の不調と関連

血液凝固タンパク質2つがコロナ感染後の脳の不調と関連疲労に加えて認知機能障害、いわゆる脳のもやもや(brain fog)が数ある新型コロナウイルス感染(COVID-19)罹患後症状(long COVID)の1つとしてよく知られています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染して認知機能障害に見舞われる人とそうでない人を隔てる仕組みへの血液凝固タンパク質2つの寄与を示唆する大規模観察試験結果が報告されました1)。試験ではCOVID-19で入院した患者約2千例(1,837例)が追跡され、入院時のそれらタンパク質2つと感染から半年と1年時点での認知機能障害の関連が認められました。その1つはフィブリノゲンです。C反応性タンパク質(CRP)に比してフィブリノゲンが入院時に多かった患者は少なかった患者に比べて記憶や注意などの認知機能の客観的検査成績や主観評価が劣りました。もう1つはDダイマーで、CRPに比してDダイマーが多かった患者は認知機能の主観評価が劣りました。たとえばDダイマーが多かった患者の6ヵ月時点の認知機能主観評価C-PSQ(0~7点)の点数は約1.5点劣りました。また、Dダイマーが多かった患者は疲労や呼吸困難の訴えや仕事への差し障りをより多く報告しました。フィブリノゲンやDダイマーとCOVID-19の関連を示した報告は今回が初めてではありません。先立つ複数の試験でCOVID-19入院患者にそれらタンパク質の増加が血栓過剰とともに認められています2)。フィブリノゲンが多いことと認知機能障害や認知症の関連を示したCOVID-19流行前の報告もあり、フィブリノゲンは認知機能欠損と何はさておき関連するのかもしれません。一方、DダイマーはCOVID-19以外で認知機能障害との関連は示されておらず、SARS-CoV-2感染に特有の指標かもしれません。フィブリノゲンやDダイマーが認知機能障害を引き起こすとしてその仕組みがいくつか想定されています。フィブリノゲンは脳の血液循環を妨げる血栓を形成するのかもしれません。あるいは神経系の受容体と直接相互作用することも想定されます。Dダイマーは肺での血栓形成をより反映していると思われ、それが呼吸困難に寄与し、酸欠による脳の不具合をもたらすのかもしれません。今回の試験結果を解釈するうえでいくつか注意点があります。1つは変異株がぼこぼこ出現する前のコロナ流行初期に募った被験者を対象にしていることであり、変異株が優勢の現在の感染患者に今回の結果が当てはまるかどうかは不明です。また、ワクチン非接種の重症の入院患者を対象としていることも注意が必要です。感染症状が軽度だったlong COVID患者は多く、そういう患者は今回の試験の対象ではありません。フィブリノゲンやDダイマー、あるいはより大まかに血栓を標的とする治療のlong COVID予防の裏付けはほとんどありません。抗凝固薬が治療手段の1つとしてみなされていますが、決定的な試験結果はまだありません2)。それに抗凝固薬は出血などの副作用と隣り合わせでもあります。抗凝固薬の検討のために必要な前段階として、認知機能障害をSARS-CoV-2感染後に被った患者の脳を画像診断して脳虚血の兆候があるかどうかを調べることを著者は提案しています1)。もし脳虚血が見つかるようなら先行きが心配な患者の感染初期のころの抗凝固薬使用の試験を実施する価値はありそうです。参考1)Taquet M, et al. Nat Med. 2023 Aug 31. [Epub ahead of print] 2)Clotting proteins linked to Long Covid’s brain fog / Science

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日本人のBMIと認知症リスク、男女間で異なる

 BMIと認知症リスクとの関連は、年齢によりばらつきがあり、性別の影響を受ける可能性がある。新潟大学のAlena Zakharova氏らは、地域在住の日本人を対象に、BMIと認知症リスクとの関連に対する性別の影響を明らかにするため、コホート研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年8月1日号の報告。 ベースライン時(2011~13年)に40~74歳であった地域在住の日本人1万3,802人を対象に8年間のフォローアップ期間を伴うコホート研究を実施した。直接測定により収集された身長、体重、腹囲を含む社会人口統計学的およびライフスタイル、病歴に関する情報を自己記入式アンケートで収集した。BMIに基づき参加者を次の6群に分類した。低体重群(<18.5kg/mm2)、低普通体重群(18.5~20.6kg/m2)、普通体重群(20.7~22.6kg/m2)、高普通体重群(22.7~24.9kg/m2)、過体重群(25.0~29.9kg/m2)、肥満群(≧30.0kg/m2)。認知症発症に関する情報は、介護保険データベースより収集した。多変量調整ハザード比(HR)の算出には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は、59.0歳であった。・男性では、BMIが高いほど認知症リスクが低かった(完全調整p for trend=0.0086)。・女性では、BMIと認知症リスクとの間にU字型の関連が認められ、低体重群(完全調整HR:2.12)、低普通体重群(同:2.08)、過体重群(同:1.78)は、対照群(高普通体重群)と比較し、認知症リスクが有意に高かった。・これらの所見は、フォローアップ期間の最初の4年間で認知症を発症した参加者を除外した場合でも、同様であった。 著者らは、これらの結果から、「過体重や肥満は、女性のみで認知症リスクを上昇させる可能性があり、肥満の性差が認知症リスクと関連していることが示唆された」と述べている。

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薬物+EC-ICバイパス術、ICA・MCA閉塞患者の脳卒中を抑制するか/JAMA

 内頸動脈(ICA)または中大脳動脈(MCA)にアテローム性動脈硬化症による閉塞を有し、患部に血行動態不全を認める症候性の患者においては、薬物療法(内科的治療)に頭蓋外-頭蓋内(EC-IC)バイパス術を併用しても、内科的治療単独と比較して脳卒中または死亡の発生を抑制しないことが、中国・National Center for Neurological DisordersのYan Ma氏らが実施した「CMOSS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号に掲載された。中国の13施設で行われた無作為化試験 CMOSS試験は、中国の13施設が参加した非盲検(アウトカム評価者盲検)無作為化試験であり、2013年6月~2018年3月に患者を登録した(中国国家衛生健康委員会の助成を受けた)。 対象は、年齢18~65歳、CT灌流画像上の血行動態不全に起因する一過性脳虚血発作または後遺障害のない虚血性脳卒中を認め、デジタルサブトラクション血管造影検査で片側性のICAまたはMCAの閉塞がみられ、修正Rankin尺度(mRS)スコアが0~2点の患者であった。 被験者を、EC-ICバイパス術+内科的治療を行う群(手術群)、または内科的治療のみを行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。内科的治療は、ガイドラインに基づき、抗血小板療法と脳卒中のリスク因子を管理するための薬物療法(必要に応じて高LDLコレステロールや高血圧の治療薬を使用)が行われ、禁煙(カウンセリング、経口禁煙補助薬)および減量(行動変容、薬物療法)が推奨された。 主要アウトカムは、無作為化から30日以内の脳卒中または死亡と、31日~2年までの同側の虚血性脳卒中の複合であった。9項目の副次アウトカムにも有意差なし 324例(年齢中央値52.7歳、男性79.3%)を登録し、手術群に161例、内科的治療群に163例を割り付けた。309例(95.4%)が試験を完遂した。 主要複合アウトカムは、手術群8.6%(13/151例)、内科的治療群12.3%(19/155例)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(発生率の群間差:-3.6%[95%信頼区間[CI]:-10.1~2.9]、ハザード比[HR]:0.71[95%CI:0.33~1.54]、p=0.39)。 30日以内の脳卒中または死亡は、手術群6.2%(10/161例)、内科的治療群1.8%(3/163例)で、31日~2年までの同側の虚血性脳卒中は、それぞれ2.0%(3/151例)、10.3%(16/155例)で発生した。 事前に規定された9項目の副次アウトカムはいずれも有意差を示さなかった。たとえば、2年以内のあらゆる脳卒中または死亡は、手術群9.9%(15/152例)、内科的治療群15.3%(24/157例)で発生し(発生率の群間差:-5.4%[95%CI:-12.5~1.7]、HR:0.69[95%CI:0.34~1.39]、p=0.30)、2年以内の致死的脳卒中は、それぞれ2.0%(3/150例)、0%(0/153例)で発生した(発生率の群間差:1.9%、95%CI:-0.2~4.0、p=0.08)。 著者は、「今後の試験でバイパス術を検討する際は、より大きなサンプルサイズ、バイパス術が最も有効な患者を同定するためのより精緻な患者選択基準の確立、バイパス術の至適なタイミングの解明、より長期の追跡期間が必要となるだろう」としている。

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ソリリス、小児の全身型重症筋無力症患者に対する追加承認を取得/アレクシオン

 アレクシオンファーマは、ソリリス点滴静注300mg(一般名:エクリズマブ[遺伝子組換え]、以下「ソリリス」)が日本において、免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)または血液浄化療法(PLEX)による症状の管理が困難な抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の全身型重症筋無力症(gMG)の小児患者の治療に対する用法および用量の追加承認を、8月23日付で取得したと発表した。ソリリスが小児の難治性gMG患者に臨床的有効性を示した gMGは、筋機能および重度の筋力の低下を特徴とする希少な自己免疫疾患である。gMG患者の80%は抗AChR抗体陽性であり、神経細胞と筋肉の接着部である神経筋接合部(NMJ)のシグナル受容体に特異的に結合する自己抗体(抗AChR抗体)を産生する。この結合は、感染に対する身体の防御に不可欠な補体系を活性化し、免疫システムによるNMJの破壊が引き起こされる。これにより炎症が起こり、脳と筋肉との情報伝達の遮断につながる。gMGはどの年齢でも起こりえるが、最も一般的には40歳以下の女性および60歳以上の男性にみられる。初期症状には、構音障害、複視、眼瞼下垂、バランスの喪失などがあり、病気が進行すると、嚥下障害、息苦しさ、極度の疲労、呼吸不全など、より重篤な症状につながる可能性がある。 ソリリスは、小児および青年患者のgMGの治療薬として、日本で初めて承認された唯一の分子標的治療薬である。今回のソリリスの追加承認は、難治性gMGの小児患者を対象とした、ソリリスの第III相臨床試験の結果に基づいている。本試験では、免疫抑制療法が無効で重大な疾患症状が消失せず持続している難治性gMGの小児患者において、ソリリスの臨床的有効性が示された。ソリリスは、主要評価項目である定量的重症筋無力症(QMG)総スコア(疾患の重症度と運動機能を医師が評価する尺度)のベースラインから26週目までの変化に有意な改善を示した(-5.8[95%CI:-8.4~-3.13]、p=0.0004)。 東京女子医科大学小児科の石垣 景子氏は、「gMGの小児患者の治療において、利用できる免疫抑制薬などの現行の治療法では、疾患の進行に伴い、十分に症状をコントロールできない場合もあるなど課題があった。このたびの日本におけるソリリスの小児の適応拡大は、gMGの治療におけるC5補体阻害剤の効果を示すものであり、小児患者が運動機能を維持し、重篤な症状を軽減する可能性のある新たな治療選択肢を提供する」と述べている。また、Alexion(米国)のマーク・デュノワイエ最高経営責任者(CEO)は、「gMGと共に生きる小児患者は、標準治療に反応しなくなり、運動機能、会話、呼吸に影響を及ぼす症状が継続することがある。当社のファースト・イン・クラスのC5補体阻害剤であるソリリスは、小児患者の症状や家族の生活の質を改善する可能性がある。日本においてgMGの小児患者のコミュニティーに、最初で唯一の分子標的治療薬を届けることを誇りに思っている」と語っている。

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第178回 老化に伴う難聴を脳のコレステロール補強で防ぎうる

老化に伴う難聴を脳のコレステロール補強で防ぎうる老化と関連する難聴は大問題であり、65歳を超える高齢者の約3人に1人が多かれ少なかれそうなります。難聴は聞こえにくくなるという不便さを強いることに加えて認知機能低下が早まることや認知症リスクの上昇とも密接に関連します。そういう大きな問題をはらむ老化関連難聴を脳のコレステロール補強といういとも手軽な方法で防げるかもしれないことがアルゼンチンのチームによるマウス実験で示されました1)。ちまたではコレステロールといえば悪者と相場が決まっていますが、神経細胞膜の要員の1つであり、神経細胞や膜連携タンパク質の機能に不可欠です。コレステロールはシナプス膜に豊富で、タンパク質複合体の数々に結合したり影響を及ぼしたりしてそれらの構造や振る舞い、活性を調節することが最近の研究で示されています。シナプス形成、細胞間相互作用、細胞内伝達に与するコレステロールを中枢神経系(CNS)は手ずから生成します。というのも末梢のコレステロールは血液脳関門(BBB)を通過できず、CNSは他所から調達することができないからです。ゆえに脳のコレステロール濃度は厳密に調節されており、その調節の乱れは認知機能障害や種々の神経変性疾患と関連することが知られています。脳のコレステロールは老化の影響も受けます。たとえば老化に伴って海馬のコレステロールが減ります。また、老人や神経変性疾患患者の脳のコレステロールは乏しいという検体解析結果も報告されています。老化と関連するコレステロール減少の原因の1つは海馬でのコレステロール水酸化酵素CYP46A1の増加です。マウス海馬シナプスの老化に伴うコレステロール減少が主にCYP46A1亢進に起因し、シナプス受容体の行き来や陥入を立ち行かなくし、記憶障害をもたらすことが確認されています。注目すべきことに、脳のコレステロールを底上げすることで老化マウスのシナプスや認知機能の不備を減らしうることが示されています。また、神経変性疾患の治療効果もあるらしく、ハンチントン病マウスのシナプスや認知機能が脳へのコレステロール運搬粒子で改善しました。老化関連難聴は内耳の蝸牛の外有毛細胞(OHC)の損失を発端の1つとします。音信号の増幅に携わるOHCの側壁は厳密な管理下のコレステロールを含み、OHC側壁のコレステロール含量の変化はOHC側壁内のモータータンパク質プレスチンの機能や配置に影響を及ぼすようです。しかし内耳の病変にコレステロール変動がどう寄与しているかはこれまで調べられたことはありません。そこでアルゼンチン・ブエノスアイレス大学のチームはコレステロール欠乏が内耳蝸牛の老化病変に寄与するとの仮説を立て、若いマウスと老化マウスの内耳のCYP46A1とコレステロール量を調べてみました。すると予想どおり高齢マウスの内耳のCYP46A1は若いマウスに比べて多く、コレステロールは逆に減っていました。続いて若いマウスのCYP46A1を過剰に活性化するとどうなるかが調べられました。その実験にはCYP46A1を活性化することが知られるHIV治療薬エファビレンツが使われました。若いマウスにエファビレンツを投与したところOHCのコレステロールが減り、プレスチンも乏しくなって配置が変わり、難聴がもたらされました。そして研究は脳のコレステロール補強の効果検討というクライマックスを迎えます。若いマウスへのエファビレンツ投与に伴う難聴を脳のコレステロール補強で防げるかどうかが調べられました。上述のとおりコレステロールは血中から脳に入れません。そこでコレステロールに似た構造と働きをし、BBBを通過して脳に到達できる植物ステロールに白羽の矢が立てられました。ここでも狙いどおりの結果が得られ、エファビレンツ投与マウスに植物ステロールを食べさせたところOHC機能が改善し、プレスチンの分布も正常化しました。最近ではエファビレンツが一翼を担うことが多い抗レトロウイルス薬ひとそろいを使用するHIV/AIDS患者に聴覚障害が多いことが報告されています。今回の結果によると植物ステロールがその予防や治療に役立つかもしれません。また、植物ステロールの服用は老化と関連する難聴の手軽な予防法となる可能性もあり2)、動物やヒトでのさらなる検討が期待されます。参考1)Sodero SO, et al. PLoS Biol. 2023;21:e3002257.2)Common supplements might reduce natural hearing loss / Eurekalert

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レビー小体型認知症のパーキンソニズムに対するゾニサミド補助療法

 レビー小体型認知症(DLB)患者のパーキンソニズムに対してレボドパで効果不十分な場合、レボドパの増量とゾニサミド併用の効果および安全性の違いについては、よくわかっていない。大阪大学の池田 学氏らは、レボドパ300mg/日以下で治療されたパーキンソニズムを伴うDLB患者を対象に、ゾニサミド25mg/日併用療法とレボドパ100mg/日増量療法の比較を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年7月20日号の報告。 本DUEL研究は、多施設共同ランダム化非盲検並行群間非劣性試験として実施された。観察期間中、レボドパ300mg/日以下で4週間投与を行った。その後患者は、ゾニサミド25mg/日併用群またはレボドパ100mg/日増量群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの平均変化とした。 主な結果は以下のとおり。・16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの調整平均変化は以下のとおりであった。【ゾニサミド併用群】16週目:-6.3、24週目:-4.4【レボドパ増量群】16週目:-0.8、24週目:2.0・24週目の調整平均差は、-6.4(95%信頼区間:-13.5~0.7)であり、信頼区間の上限値は、非劣性マージン(3.0)よりも低かった。・MDS-UPDRS Part II、Eating Questionnaire、EuroQol-5 dimension-5 level (EQ-5D-5L)、Zarit介護負担尺度、その他の副次的評価項目の総スコアは、両群間で差は認められなかった。・有害事象の発生率は、両群間で差は認められなかった。 その結果を踏まえて著者らは、「レボドパで効果不十分な場合、ゾニサミド25mg/日を併用することで、DLB患者の運動症状に中程度の効果が期待できる。しかし、本研究では、レボドパ増量が想定されているほどの効果が得られなかったため、ゾニサミド25mg/日併用がレボドパ100mg/日と同程度の効果があるかは、検証できなかった」としている。

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第174回 レカネマブ承認へ、医療者を待ち受ける5つの関門

ついにアルツハイマー病(AD)に対する抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬が、日本の臨床現場に登場することが確定的となった。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は8月21日、エーザイと米国・バイオジェンが共同開発したlecanemabの承認を了承した。これにより年内には保険適用となる見込みだ。思えば2012年の米国のファイザーとジョンソン&ジョンソンによる抗Aβ抗体の静脈注射製剤bapineuzumabの開発中止に始まり、死屍累々だったAβ標的の新薬開発は、ようやく一つの成果を得た形だ。一方で、ADの治療現場では患者・家族の期待値と現実とのギャップが原因で、今後は患者・家族とのコミュニケーションで疲弊させられる可能性も増してくる。大雑把に言えば、疲弊させられる“関門”は5つある。まず、ADは認知症の6~7割を占める原因疾患だが、そのほかに脳血管性認知症、レビー小体型認知症があるが、一般人はこれらの個別の疾患よりもざっくりとした「認知症」というキーワードで認識している人のほうが多数派だろう。それゆえにlecanemabが実際に登場した段階では、ADかどうかにかかわらず「私も」「うちの家族も」という誤解した期待の声に医療従事者は振り回されることになる。ここが第1の関門である。さらに、lecanemabはご存じのように軽度ADと軽度認知障害(MCI)を総称した早期ADのみが適応だ。ここで中等度AD以上の患者・家族は落胆するはずだ。第2の関門である。そして第2関門まで通過した早期ADの患者・家族を待ち受けている第3の関門、それが検査方法である。今回の医薬品第一部会ではlecanemabの承認了承に合わせ、Aβを可視化する陽電子放出断層撮影(PET)用の放射性診断薬であるフルテメタモル(18F、商品名:ビザミル)、フロルベタピル(18F、同:アミヴィッド)の効能追加も了承され、検査面で地ならしも行われた。現在、Aβの蓄積を確認するためには、このアミロイドPETか脳脊髄液検査(CSF検査)という手段になる。しかし、前者は放射性物質の半減期が極めて短いため、地域によっては身近な医療機関では物理的に受けられないことが起こり得る。加えて十分なアミロイドPETの読影訓練を受けた医療従事者がいる医療機関も限られる。さらに保険適用になっても患者は数万円の自己負担が必要になる見込みである。一方で脳脊髄液検査は侵襲性の高い腰痛穿刺が必要になり、現在の保険適用されている体液バイオマーカーは脳脊髄液リン酸化タウ値のみ。ADの診断により適した脳脊髄液アミロイドβ42は保険適用となっていない。昨今では島津製作所が開発している簡易血液検査が注目されてもいるが、おそらくこれが承認されても、第一段階のスクリーニングのみの使用になり、最終的な確認のためにアミロイドPETという流れになる可能性は十分ある。いずれにせよこの第3の関門で、経済的、物理的な理由で検査を躊躇する、あるいは受けられない一部の患者・家族の苦悩と医療従事者は向き合わねばならない。さらにこれら3つの関門を通過して晴れて投与対象になったとしても、第4の関門として、年間数百万円の薬剤費という現実に多くの患者が直面する。たとえ高額療養費制度を使ったとしても、かなりの経済的な負担になることは確実で、その金額に尻込みをする患者・家族が少なからず発生することになるだろう。そして最後の関門は、投与を始めたものの効果を“実感”できない患者・家族から不満が出る可能性である。第III相試験「Clarity AD」で示されたlecanemabの有効性とは、臨床的認知症尺度(CDR:Clinical Dementia Rating)の合計点数(CDR-SB、18点満点)から見ると、プラセボに比べ、進行が27%抑制されていたというもの。一般人からすれば、数字だけを聞くと、劇的な効果と思う人もいるだろうが、この効果は患者・家族はおろか医療従事者ですら見た目で実感できるものではない。そもそも一般人の多くが「薬=病気を治すもの」と考えている中では、投与前に入念な説明をしても、この薬でADによる物忘れが以前よりも少なくなるのではないかなどの誤解交じりの期待を抱く人は残るはずだ。もしかしたら、医療従事者が患者・家族とのコミュニケーションで最も疲弊させられるのはこの点かもしれない。そして何より、実はこれらとは別の非常に大きな問題が浮上してくる可能性がある。それはlecanemabの投与対象のうちMCIは本人や周囲も気付かないことも多いため、後々に「もう少し早くlecanemabを使えていれば…」という事態が生じることだ。lecanemabというイノベーションは、これ以外にも予想もしなかった新たな課題を生むかもしれない。今回の承認にやや興奮しながらも、それと同じくらい不安も感じている。

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若年性認知症と紛らわしい、初老期のADHD【外来で役立つ!認知症Topics】第8回

認知症専門クリニックの当院を訪れる患者さんの平均年齢は75歳、偏差は10歳くらいかと思う。だから40~65歳の患者さんが来られると、「若年性認知症か?」とまずは疑う。実際にはそれもあるが、複雑部分発作のようなてんかん性疾患や、睡眠時無呼吸症候群だと診断される人も少なくない。ところがここ数年、認知機能についても脳画像などの生物学的な診断指標についても問題なく、最終的に正常と診断する例が増えてきた印象がある。そこでこうした患者さんには、何か共通する背景があるのではないかと思うようになった。理系の学校卒、技術職で働いてきた人で、いわゆる理屈屋さんの傾向があるか?とまず思い当たった。そこで「そもそもどうして来院されたのですか?」と改めて尋ねると、「実は自分でも悪いとは思っていない。上司(あるいは女房)が認知症かどうか専門医に調べてもらうように言ったから」という回答が多いことがわかった。たまたまこの頃、「60歳以上の注意欠如・多動症ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)にご注意を」という主旨の英文記事1)を読んだ。「60歳以上のADHD」という言葉に、「ほーっ」と感心した。実は20年ほど前に「大人になったADHD」という言葉を知ったとき、まず驚いたものだ。というのは、子供の頃の同級生や知友を思い浮かべても、ADHDは児童期には目立っても成長とともに改善し、多くの場合、成人になると治るものとずっと私は思っていたからである。ADHDは大人になってから表面化することもその専門家である岩波 明氏によると、「ADHDは、成人の3〜4%が持っているといわれており、診断を受ける大人が増えている。とくに症状が軽い場合、また周囲の環境によっては見過ごされることもある。しかし大人になると、就職や結婚などによって行動の範囲や人間関係が複雑になるため、それに対処しきれなくなったときに問題が表面化し、症状に気付くことがある」と述べられている。そして注意に関わる特徴として、「注意を持続するのが難しい」、「ケアレスミスが多い」、「片付けが苦手・忘れ物が多い」などを指摘されている2)。それを思い出した上で、60歳以上のADHDの特徴を丁寧に読み返してみた。(1)スイスチーズ記憶:覚えているものもあるが、スコンと抜けるものもある、いわゆる斑ぼけ。(2)気を逸らされるとやりかけの仕事を忘れてしまう。(3)物を定位置に戻さない。(4)くり返し、真っ白になる。(5)家計などの金銭収支を合わせられない。(6)周りに配慮せずしゃべり過ぎる。(7)他者を遮る。(8)他者と安定した関係が保てない。とあった。こうした目で認知症疑いの受診者を見直してみると、先ほどは最終的に知的正常とした中にも、ADHDと考え直すケースが少なくないと考えた。だから最近では、テストが正常であっても、ADHDでは?と思い直して、そのチェックのためにAQ(自閉症スペクトラム指数)3)を施行している。上記の症状のうち、とくに(1)~(5)は認知機能がらみである。一方で(6)~(8)は、従来からのいわゆる「キャラ」関連であろう。そもそもどうして初老期以降になってADHDが顕在化するのか? 答えはわからないのだが、やはり加齢化による機能低下は重要だろう。認知症は、以前は「痴呆症」と呼ばれたように、知性や知識の病である。ところで精神現象を包括する語に「知情意」がある。「情」とは心、「意」とは意欲である。ADHD の素因がある人は、年齢を重ねた時に、ミニメンタルステート検査(MMSE)、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDSR)などで定量化しやすい知のみならず、情意についても、ほころびを生じやすいのではなかろうか。(6)~(8)は、本来の傾向が、この情意のほころびによって強められた現れなのかもしれない。こうしたことで、当事者の周囲が見て取る「知情意」の変化が認知症の初期症状と捉えられ、認知症専門外来という話になるのかもしれない。初老期のADHD治療さて治療においては、まず自分にはどんな問題があるかを、初老期になった当事者に自覚してもらう必要がある。上記報告1)はこれを簡潔に述べている。(1)先送りにしがちだ。(2)苛つきやすい自分をコントロールする必要がある。(3)制限時間を意識した段取りと進行が求められる。(4)落ち着かなさ、雑念が頭の中を駆け巡る、しゃべり過ぎ。などは過活動の残骸と考えよう。またADHDに適応がある薬物には、メチルフェニデート(商品名:コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)、リスデキサンフェタミン(ビバンセ)の4剤がある。いずれも副作用など危険性も高く、その処方にはADHDに精通した医師の関わりが求められているだけに、医師なら誰でもとはいかないだろう。終わりに、初老期以降のADHDと思しき人の病識、あるいは自覚について。それがある人と、まったくといっていいほどない人にきれいに二分されるという印象がある。筆者がADHD疑いと思っても本人が否定する場合は、本人と近しい人にもAQをやってもらう。それと本人の回答が明らかに乖離することが、こうしたケースの特徴のようだ。参考1)Nadeau K. A Critical Need Ignored: Inadequate Diagnosis and Treatment of ADHD After Age 60. ADDITUDE. 2022 July 14.2)NHK健康チャンネル 大人の「注意欠如・多動症(ADHD)」とは?特徴や治療を解説!(2023年7月21日)3)若林明雄ほか. 自閉症スペクトラム指数(AQ)日本語版の標準化. 心理学研究. 2004;75:78-84.

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アルツハイマー病治療薬レカネマブ、厚労省専門部会が薬事承認を了承/エーザイ・バイオジェン

 2023年8月21日、lecanemab(一般名:レカネマブ、商品名:レケンビ点滴静注200mg/同500mg、以下「レカネマブ」)は、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において製造販売承認が了承された。今回の了承に際して、エーザイとBiogen(米国)は共同ステートメントを発表し、「厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、レカネマブの早期アルツハイマー病治療薬としての製造販売承認が了承されたことは、わが国のアルツハイマー病治療における大きな前進であると受け止めている」とした。 レカネマブは大規模グローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づき、7月に米国食品医薬品局(FDA)よりアルツハイマー型認知症治療薬として「フル承認」を取得していた。

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第177回 血小板因子が脳を若返らせる

血小板因子が脳を若返らせる3チーム3様の視点で取り組んだ脳の若返り因子探索がどれも1つの成分に行き着き、それらの成果が3チームの示し合わせのうえで先週16日にNature誌とその姉妹誌2つに同時に報告されました1)。若い動物と老いた動物の血液循環をつなぐと老いた動物が若返ることが知られています。2014年に発表された実験では、血液から細胞を省いた部分である血漿にその効果があることが示されました。その実験では若いマウスの血漿が老いたマウスに注射されました。すると老化に伴う認知機能障害が改善し、学習や記憶が向上しました2)。その報告の筆頭著者だった米国・カリフォルニア大学のSaul Villeda氏が指揮役になってからのさらなる研究で血小板から放たれる血小板第4因子(PF4)が老化マウスの認知機能を改善することが突き止められ、Nature誌にその成果が発表されました3)。まずVilleda氏らは若いマウスの血漿の血小板分画を老化マウスに投与すると脳の老化の特徴である神経炎症指標が落ち着くことを見出しました。続いて血小板分画のどの成分がそれらの有益効果を担うかという検討に移り、若いマウスの血漿にはPF4が豊富なことを発見します。ヒトでも同様で、老人より若い人の血漿検体にはPF4がより豊富でした。運動は老化に伴う認知機能低下を食い止める働きがあり、脳の海馬(の歯状回)の神経新生が運動で増えることへのPF4の寄与が先立つ研究で示唆されています。また、ヒトやサルのPF4が老化に応じて減ることが確認されています。ということはPF4に若返りの作用があるのかもしれません。どうやらその予想は正しく、Villeda氏らのチームが老いたマウスにPF4を注射したところ若い血漿を投与したときと同様の効果が認められました。PF4が投与された老化マウスでは海馬の神経炎症が和らぎ、シナプス可塑性に携わる指標の発現が高まり、記憶や学習の検査成績が良くなりました。神経新生が運動で増えることにどうやらPF4が寄与することを示した上述の成果を2019年に報告したTara Walker氏らの新たな研究でもPF4の抗老化作用がマウス実験で示され、Villeda氏らのNature誌報告と同時にNature Communications誌にその成果が発表されました4)。Walker氏らの新たな研究の結果、運動で血小板が活性化することで老化マウスの海馬の細胞増殖が向上し、血小板由来の成分であるPF4の全身循環の増加が海馬の神経新生促進を介して認知機能を若返らせることが示されています。同時に発表されたもう1つの報告では、寿命を延ばすことが知られるホルモンの働きに必要な因子の探索でPF4が発掘されました。クロトー(klotho)と呼ばれるそのホルモンは長寿をもたらすことに加えて脳機能も改善します。しかし末梢に投与したクロトーは血液脳関門(BBB)を通過できず、脳に到達しません。そこで、クロトーと脳機能改善の関係を仲立ちする成分が探索され、意外にもPF4がその作用を担うことが突き止められました。Nature Aging誌に掲載されたその研究の結果、クロトーはPF4を含む血小板因子を増やし、末梢に投与したPF4は脳に到達可能であり、マウスの老いも若きもPF4投与で認知機能が上向きました5)。ところで、PF4を欠くマウスでもクロトーは認知機能向上効果を有しました。ということはクロトーと認知機能向上の関連を橋渡しするPF4以外の未知の因子がどうやら存在するようです。血小板因子の手入れで老化による脳の衰えを回復できるかもしれないとVilleda氏らの報告には記されています3)。また、アルツハイマー病などの高齢者の認知症の治療にも血小板因子が役立ちそうです。参考1)Blood factor can turn back time in the aging brain / Eurekalert2)Villeda SA, et al. Nat Med. 2014;20:659-663.3)Schroer AB, et al. Nature. 2023 Aug 16. [Epub ahead of print]4)Leiter O, et al. Nat Commun. 2023;14:4375.5)Park C, et al. Nat Aging. 2023 Aug 16. [Epub ahead of print]

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アルツハイマー病のリスク因子

 アルツハイマー病は最も一般的な認知症であるが、その原因はいまだ不明である。その理由として、多因子疾患であるアルツハイマー病に関する研究が十分に行われていない可能性が挙げられる。オーストラリア・シドニー大学のMichael Allwright氏らは、UK Biobankのデータセットを用いて、アルツハイマー病に関連する既知のリスク因子をランク付けし、新たな変数を模索するため本研究を実施した。その結果、アルツハイマー病の最も重大なリスク因子は、APOE4対立遺伝子の保有であることが再確認された。APOE4キャリアにおける新たなリスク因子として肝疾患が抽出された一方で、「不眠/不眠症」は、APOE4のステータスとは無関係にアルツハイマー病の予防効果が確認された。著者らは、肝疾患を含む併存疾患の将来的な治療により、アルツハイマー病のリスクが同時に低下する可能性があるとしている。Aging Brain誌2023年6月17日号の報告。 高次元データに対するカスタム機械学習アプローチを用いて、後にアルツハイマー病と診断された2,090例以上を含む60~70歳のUK Biobank参加者15万6,209例のサブコホートにおいて、アルツハイマー病との関係をプロスペクティブに調査した。 主な結果は以下のとおり。・APOE4対立遺伝子の保有の次に高ランクのリスク因子は、TOMM40-APOE-APOC1遺伝子座内の他の遺伝的変異であった。・APOE4キャリアのステータス別に層別化すると、APOE4キャリアにおける最大のリスク因子は「AST:ALT比」「治療/投薬の数」「入院期間」であり、保護因子は「不眠/不眠症」であった。・非APOE4キャリアでは、「社会経済的地位の低さ」「教育年齢の少なさ」が上位であったが、エフェクトサイズはAPOE4キャリアよりも小さかった。

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アルツハイマー病、早発型と遅発型の臨床的特徴の違い~メタ解析

 認知症で最も一般的な病態であるアルツハイマー病は、発症年齢による比較検討が多くの研究で行われているが、その違いは明らかになっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのPaige Seath氏らは、アルツハイマー病の早発型(65歳未満、early-onset:EO-AD)と遅発型(65歳以上、late-onset:LO-AD)の臨床的特徴を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、EO-AD患者はベースライン時の認知機能、認知機能低下速度、生存期間においてLO-AD患者と異なる特徴を有しているが、それ以外の臨床的特徴は同様であることが示唆された。International Psychogeriatrics誌オンライン版2023年7月11日号の報告。 Medline、Embase、PsycINFO、CINAHLのデータベースをシステマティックに検索し、EO-AD患者とLO-AD患者における診断までの時間、認知機能スコア、1年当たりの認知機能低下、ADL、神経精神症状、QOL、生存期間を比較した研究を抽出した。変量効果モデルを用いた逆分散法により、各アウトカムへの全体的な影響の推定値を算出した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には42研究(EO-AD:5,544例、LO-AD:1万6,042例)を含めた。・EO-AD患者は、LO-AD患者と比較し、ベースライン時の認知機能が著しく低く、認知機能低下の速度が速かったが、生存期間は長かった。・EO-AD患者は、発症から診断までの期間、ADL、神経精神症状について、LO-AD患者との違いは認められなかった。・EO-AD患者とLO-AD患者のQOLの違いへの全体的な影響の推定には、データが不十分であった。 結果を踏まえて著者は、「アルツハイマー病における発症年齢の影響をより理解するため、臨床症状に焦点を当てた標準化された質問票を用いた大規模研究が必要である」としている。

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機能性ディスペプシア、食物を見るだけで脳の負担に/川崎医大

 全人口の約10%が、機能性ディスペプシア(FD)や過敏性腸症候群(IBS)の症状に悩まされているとされ、不登校や休職など日常生活に支障を来すケースも多い。また、血液検査や内視鏡検査、CT検査などで異常が見つからず、病気であることが客観的に示されないために、周囲の人に苦しみが理解されにくいといった問題がある。精神的ストレスや脂肪分の多い食事が原因とされるものの、メカニズムの解明は進んでおらず、客観的診断法は確立されていない。そこで、川崎医科大学健康管理学教室の勝又 諒氏らは、FD患者、IBS患者に40枚の食物の画像を見せ、食物の嗜好性や脳血流の変化を調べた。その結果、FD患者は健康成人やIBS患者と比較して、脂肪分の多い食物を好まなかった。また、FD患者は、食物を見たときに左背側前頭前野の活動が亢進していた。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2023年8月12日号で報告された。 FD患者(13例)、IBS患者(12例)、健康成人(16例)に、脂肪分の多い(こってりした)食物、脂肪分の少ない(あっさりした)食物、その中間の食物の画像を計40枚、7秒ずつ見せ、表示された食物に対する嗜好性を0~100点で評価させた。また、測定場所を選ばず容易に脳活動が測定でき、導入コストもMRIに比べて低い機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて、脳血流測定も実施した。 主な結果は以下のとおり。・全体の食物に対する嗜好性(平均値±標準偏差[SD])は、健康成人群69.1±3.3点であったのに対し、FD群54.8±3.8点、IBS群62.8±3.7点であり、FD群は健康成人群と比較して有意に嗜好性が低かった(p<0.05)。・脂肪分の多い(こってりした)食物に対する嗜好性(平均値±SD)は、健康成人群78.1±5.4点であったのに対し、FD群43.4±6.3点、IBS群64.7±6.1点であり、FD群は健康成人群と比較して有意に嗜好性が低かった(p<0.05)。脂肪分の少ない(あっさりした)食物、中間の食物については、3群間に有意差は認められなかった。・FD群は健康成人群およびIBS群と比較して、食物の画像を見たときに左背側前頭前野の脳活動が有意に亢進していた(平均Zスコア:健康成人群-0.077点、FD群0.125点、IBS群-0.002点、p<0.001)。 著者らは、本研究結果について「FD患者は脂肪分の多い食物を食べるとすぐに症状が誘発されることから、脂肪分の多い食物に対する苦手意識が生じていると考えられる。また、とくに左背側前頭前野で血流量が増加したことから、特定の食事後に腹痛を何度も経験したことで、どの食物の画像を見てもストレスを感じるようになったことが推定される」と考察している。また、今後の展望として「FD患者の脳には負担がかかっていることが広く認知されることで、これまで客観的な指標がなく、その苦しみが周囲に理解されにくかったFD患者が生きやすい環境作りに役立つことが期待される。さらに、食物の画像を見せ、脳血流を測定する客観的かつ簡便な方法は、臨床現場でFD患者を見分ける新たな診断法の開発につながることも期待される」とまとめた。

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認知症を香りで予防? 睡眠中のアロマセラピーが高齢者の記憶を200%超改善

 高齢者が睡眠中にエッセンシャルオイルの香りに曝露することで、記憶力が大幅に改善したという研究結果が報告された。高齢者の認知機能低下は重要な社会問題であり、安価かつ簡便に家庭内で実施可能な対処法が求められていることから、本研究の手法は非常に有用と考えられた。本研究結果は、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のCynthia C. Woo氏らによって、Frontiers in Neuroscience誌2023年7月24日号で報告された。香りの違いで記憶機能に226%の有意な改善が認められた 認知機能障害や認知症のない60~85歳の男女43人を対象とした。睡眠時にエッセンシャルオイルの香りに曝露する群(嗅覚刺激群)、微量の匂い物質の香りに曝露する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間嗅覚刺激を実施した。嗅覚刺激群は、7種類のエッセンシャルオイルを用いて、毎晩1種類ずつ2時間曝露した。対照群は、同様に微量の匂い物質の香りに曝露した。ベースライン時と6ヵ月後において、神経心理学的評価と機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳機能の解析を行った。記憶機能は、Rey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)を用いて評価した。また、Wechsler Adult Intelligence Scale 3rd edition(WAIS-III)を用いた知能検査も実施した。 睡眠時にエッセンシャルオイルの香りに曝露して記憶機能を評価した主な結果は以下のとおり。・6ヵ月後におけるベースライン時からのRAVLTスコア(第5試行)の変化量(標準偏差)は、微量の匂い物質の香りに曝露した対照群が-0.73点(1.74)であったのに対し、エッセンシャルオイルの香りに曝露した嗅覚刺激群は0.92点(1.31)であり、嗅覚刺激群は対照群と比較して226%の有意な改善が認められた(p=0.02)。・知能検査については、両群間に有意差は認められなかった。・嗅覚刺激群は対照群と比較して、左鉤状束※の平均拡散能(mean diffusivity)が有意に増加した(p=0.02)。・ベースライン時の14日間の平均睡眠時間と6ヵ月後における14日間の平均睡眠時間を比較した結果、微量の匂い物質の香りの対照群は3分減少したのに対し、エッセンシャルオイルの香りの嗅覚刺激群は22分増加した。※ 鉤状束はエピソード記憶、言語、社会的感情処理などの機能を担っていることが示唆されており、加齢やアルツハイマー病によって機能が低下するとされている。

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慢性片頭痛の診断率~6ヵ国の比較

 米国・アッヴィのAubrey Manack Adams氏らは、世界6ヵ国における慢性片頭痛患者の評価に基づいた詳細調査を実施した。その結果、6ヵ国ともに、片頭痛の過小診断の割合が高いことが示唆された。Cephalalgia誌2023年6月号の報告。 カナダ、フランス、ドイツ、日本、英国、米国において、Webベースの横断的観察コホート研究を実施した。最初のスクリーニング調査では、代表的なサンプルより一般的な健康管理情報を収集し、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)基準に基づき片頭痛の有病率を特定した。検証済みの片頭痛特有の評価に基づき詳細調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニング調査に回答した9万613人中1万4,492人が片頭痛基準を満たしていた。・片頭痛基準を満たした人の平均年齢は、40~42歳であった。・1ヵ月当たりの頭痛日数の中央値の範囲は2.33~3.33日であり、中等度から重度の片頭痛(頭痛障害度評価尺度:MIDAS基準)の割合は、日本の30%からドイツの52%の範囲であった。・1ヵ月当たりの頭痛日数が15日以上であった割合は、フランスの5.4%から日本の9.5%の範囲であった。・片頭痛基準を満たした人の診断率は、半数未満であった。

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経口CGRP受容体拮抗薬atogepant、慢性片頭痛の予防に有望/Lancet

 慢性片頭痛の予防治療において、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬atogepantはプラセボと比較して、12週の治療期間における1ヵ月当たりの平均片頭痛日数(MMD)に関して臨床的に意義のある抑制効果を示すとともに、安全性プロファイルも良好で既知のものと一致することが、スペイン・バルセロナ自治大学のPatricia Pozo-Rosich氏らが実施した「PROGRESS試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月26日号で報告された。16の国と地域の無作為化プラセボ対照第III相試験 PROGRESS試験は、日本を含む16の国と地域の142施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月11日~2022年1月20日に参加者の適格性の評価が行われた(Allergan[現AbbVie]の助成を受けた)。 年齢18~80歳で、50歳以前に発症し、1年以上の病歴を有する慢性片頭痛の患者を、atogepant 30mg(1日2回)、同60mg(1日1回)、プラセボを経口投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、修正intent-to-treat(mITT)集団における12週の治療期間中の平均MMDの変化量であった。 778例を登録し、このうち773例(安全性評価集団、atogepant 30mg群255例、同60mg群257例、プラセボ群261例)が実際に試験薬の投与を受け、755例(253例、256例、246例)がmITT集団に含まれた。臨床的に意義のある体重減少効果の可能性も 安全性評価集団の平均年齢は42.1歳、88%が女性、59%が白人で、平均罹患期間は21.4(SD 12.2)年、平均MMDは16.0(5.9)日であり、83%に予防薬の使用歴があった。mITT集団におけるベースラインの平均MMDは、30mg群が18.6(SE 5.1)日、60mg群が19.2(5.3)日、プラセボ群は18.9(4.8)日だった。 12週の治療期間におけるmITT集団でのベースラインからのMMDの変化量は、atogepant 30mg群が-7.5(SE 0.4)日、同60mg群が-6.9(0.4)日、プラセボ群が-5.1(0.4)日であった。プラセボ群との最小二乗平均差は、atogepant 30mg群が-2.4(95%信頼区間[CI]:-3.5~-1.3、p<0.0001)、同60mg群が-1.8(-2.9~-0.8、p=0.0009)であり、いずれもatogepant群で有意に優れた。 atogepant群で最も頻度の高い有害事象は、便秘(30mg群10.9%、60mg群10%、プラセボ群3%)と、吐き気(8%、10%、4%)であった。重篤な治療関連有害事象は、30mg群が2%、60mg群が3%、プラセボ群が1%で、投与中止の原因となった有害事象はそれぞれ5%、3%、4%で発現した。 また、臨床的に有意義な可能性のある体重減少(ベースライン以降の任意の評価時点で7%以上の減少)が、各治療群で観察された(30mg群6%、60mg群6%、プラセボ群2%)。 著者は、「本試験の知見は、atogepantの有益性を慢性片頭痛にも拡大するものである。これにより、慢性片頭痛における初のCGRPを標的とする有効で忍容性が良好な経口予防薬の選択肢が確立された」としている。

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第175回 コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始

コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)を治療しうる手段をいくつかに分類して次々に検討する第II相試験の2つが米国で始まりました1)。それら試験はCOVID-19の長期経過の把握、治療、予防を目指す米国国立衛生研究所(NIH)の取り組みであるResearching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)の一環として実施されています。早速始まった2試験の1つはRECOVER-VITAL2)と呼ばれます。ウイルス感染の持続、ウイルスの再活性化、過剰あるいは慢性的な免疫反応や炎症がlong COVIDに寄与し、ウイルスの除去や炎症の抑制をもたらす治療でlong COVIDが改善しうるという仮説の検証を目的としています。RECOVER-VITAL試験でプラセボと対決する治療の先鋒として白羽の矢が立てられたのはファイザーの抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)です。より長期(25日間)の同剤投与によるlong COVID症状改善効果の検討への被験者組み入れはすでに始まっています。RECOVER-VITALとともに始まったRECOVER-NEURO3)という名称のもう1つの試験は遂行機能や注意などのlong COVID絡みの認知機能の低下を改善しうる治療手段の検討を目当てとしています。RECOVER-NEUROで検討される手段はすでに3つが決まっています。1つはインターネットを介した脳トレで、BrainHQと呼ばれます。BrainHQは認知障害の改善手段としてすでに普及しています。もう1つはPASC-Cognitive Recovery(PASC CoRE)と呼ばれ、BrainHQと同様にインターネットを介した脳トレであり、注意や遂行機能を改善する効果があります。3つ目は脳の活動や血流増加を助けることが知られるSoterix Medical社の製品を利用した脳の電気刺激です。同社の経頭蓋直流刺激(tDCS)製品は自宅で簡単にできるように作られています。睡眠や自律神経に注目した2つの試験RECOVER-SLEEPとRECOVER-AUTONOMICも準備段階にあり、間もなく始まります。RECOVER-SLEEPはコロナ感染後に変化した睡眠習慣や寝付きに対処しうる手段を検討します。同試験の一環として過眠や日中の過度の眠気への覚醒促進薬2種の効果がプラセボと比較されます。また、入眠や睡眠の維持の困難などの睡眠障害に睡眠の質を改善する手段が有効かどうかも検討されます。準備段階のもう1つの試験はRECOVER-AUTONOMICと呼ばれ、心拍、呼吸、消化などの生理機能ひとそろいを制御する自律神経系の失調と関連する症状への対処法を調べます。心拍異常、めまい、疲労などの症状を特徴とする体位性頻脈症候群の治療手段いくつかが手始めに検討されます。免疫疾患治療薬とプラセボの比較がその1つで、心拍亢進を伴う慢性心不全の治療薬とプラセボの比較も予定されています。運動できなくなることや疲労への手段を検討する試験も患者や専門家からの意見を取り入れて開発されています。今後次々に始まっていくRECOVER試験はlong COVIDの影響が最も大きい地域を含めて被験者を募っていきます。試験参加施設は自治体と協力してlong COVIDについての理解を促し、RECOVER試験への参加の普及に努めます。効果的な治療や手当てを検討する臨床試験はlong COVIDへの政府の取り組みの肝であり、苦労が絶えない患者やその家族が楽になるように努力していくと米国政府の役員は言っています1)。参考1)NIH launches long COVID clinical trials through RECOVER Initiative, opening enrollment / NIH 2)RECOVER-VITAL試験(ClinivalTrials.gov) 3)RECOVER-NEURO試験(ClinivalTrials.gov)

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